Emily Remler / East To Wes ( 米 Concord Jazz CJ-365 )
こんなに凄いギター・ジャズがあるレーベルは、いいレーベルに決まってる。
コンコードにはケニー・バレルがたくさんアルバムを残しているし、タル・ファーローもバーニー・ケッセルもハーブ・エリスも、とにかく名前を挙げればきりがない。
でも、そんな中での真打ちはやっぱりこれに尽きる。
冒頭の "Daahoud" のカッコよさ、"Sweet Georgie Fame"の典雅さなど、単にギター小僧だけに訴求するのではなく、広く音楽として聴かせる力のある内容で、
最高の出来ではないかと思う。 ウェスへの敬愛に満ちた内容で、ギター奏法も歌心も限りなくウェスに近づきながらも新しい感覚で空気を一新する力にも
満ち溢れている。 後のスムース・ジャズ界に登場したノーマン・ブラウンなんかは明らかにこのレムラーのフォロワーで、その影響力も計り知れない。
古いジャズの物真似ではないところに、このアルバムの重要な価値があるのだと思う。
ハンク・ジョーンズのサポートも完璧で、決してレムラーの邪魔をせず、最小限の音で黄金のカーテンを拡げるようなバックのサウンドを創り上げる。
ピアノトリオをバックにすると普通は和音がぶつかって音楽が濁ることが多いのに、まったくそうなっていないのはハンク・ジョーンズだからこそ。
バックのトリオが、この新しい才能を暖かい気持ちで前面に立てようとしたことがよくわかる。
迷いのない真っすぐな疾走感、しっかりとフレーズを歌わせる音楽観など、褒めるところしか見つからない稀有なアルバムではないか。
コンコードはこうやって大物だけではなく、新しい才能にも積極的に場を提供した。 そのおかげで彼女の素晴らしい作品群が世に出ることができたのだ。
だから、このレーベルはいいレーベルなのだと思う。