廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

新しいヴィブラフォンの響き

2017年04月29日 | Jazz LP (RCA)

Gary Burton / Something's Coming!  ( 米 RCA LPM-2880 )


ジム・ホール、チャック・イスラエル、ラリー・バンカーというエヴァンス一派がバックアップを務めるゲイリー・バートンの若き日の知られざる傑作。
知的で、涼やかで、繊細で、新しい感覚で演奏されていて、これが素晴らしい。 私のゲイリー・バートン観を物の見事にひっくり返してくれた。
まるでポール・デスモンドのRCAの諸作のような、静かで落ち着いていて、ひんやりと冷たい雰囲気を放っている。

ジム・ホールがシングル・ノートでしっかりと弾いている。 彼の枯れた音がヴィブラフォンの冷やかでカラフルな音と対比されて、サウンド全体が安定している。
イスラエルとバンカーの演奏はまんまエヴァンス・トリオの雰囲気で、これが全体を落ち着いたトーンに仕上げている。

バートンは両手にマレットを2本ずつ持って演奏するので、ミルト・ジャクソンのような旋律主体ではなく、和音主体になる。 ピアノで言えば、ブロック・
コードでフレーズを弾く感じだけど、叩きつけたりすることはないので和音は濁らずとても澄んでいて、ジャケット・デザインの印象通りの音楽になっている。

ジャズの世界はマイナー・レーベルが有難がられて、RCAのようなメジャー・レーベルのレコードは軽く見られるけれど、それは本来はおかしいことだ。
予算が潤沢で録音機材や環境も良く、制作ノウハウも豊富なメジャーレーベルが作る作品は高いクオリティーのものが多い。 特に、RCAはクラシックで
録音技術を鍛え上げたレーベルだから、そのサウンド品質は見事だと思う。

デビューの契約がRCAというのは選ばれた人だということを意味していて、その期待を裏切らない作品になっているのではないか。 こうなると、他の作品も
聴かなきゃな、と認識も新たに安レコ漁りに邁進する日々がまだまだ続くのである。


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