廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

象を放つ

2020年08月22日 | jazz LP (Metro Jazz)

The Mitchells with Andre Previn / Get Those Elephants Out'a Here  ( 米 Metro Jazz E 1012 )


こういうアメリカ流のウィットは、日本人の我々にはなかなか伝わらない。何かの背景があったとしても、ずいぶんと時間も経っていて
とうに何のことかわからなくなっている。「象たちをここから解き放て!」と言われたって、何のこっちゃ?である。
レッド・ミッチェル、ホワイティ・ミッチェルの兄弟にブルー・ミッチェルを加えて "ザ・ミッチェルズ” としてみたり、レナード・フェザーは
何を考えているのかよくわからない。大体、この人は評論の文章も分かりにくく、取っ付きにくい人である。

ただ、そういうパッケージの仕方はともかく、内容は感じのいい、イカした音楽である。アンドレ・プレヴィン、ペッパー・アダムス、フランク・
レハク(アル・コーンの渦巻きドーンに参加しているトロンボーン)、フランキー・ダンロップと一流メンバーを集めて、軽やかで朗らかで、
それでいてツボを押さえた音楽を演奏している。

ペッパー・アダムスのバリトンの深い音色が強烈で、これが音楽をグッと絞めている。この起用は正解だった。プレヴィンも余裕の演奏で、
センスのいいフレーズで音楽を色付けし、ブルー・ミッチェルの独特の音色も印象的。各人が最適な演奏を持ち寄っており、上質なジャズを
聴くことができる見事なアルバムだ。そういう意味では、レナード・フェザーの采配は適切だったのだろう。

管楽器の演奏の良さに耳が行くが、アルバム最後に置かれた管抜きのピアノトリオの演奏が小粋な仕上がりで、こういう演奏でアルバムが
締め括られるのもセンスがいい。

このレコードは音も良く、聴いていて楽しい。誰からも相手にされないレコードなので、当然、安レコでもある。
しめしめ、と一人ほくそ笑みながら拾って帰ってきて、これはアタリだよ、と小躍りできる良いレコードだ。


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