Sonny Rollins / At Music Inn ( 米 Metro Jazz E1011 )
"ミュージック・イン" は1950年代からマサチューセッツ州レノックスにあった音楽学校だが、学校といってもジュリアードやバークリーのような筋金入りの
アカデミーではなく、もっと庶民向けに広く開かれた雰囲気の学校で、MJQのジョン・ルイスが校長を務めた。 一流ミュージシャンを多く招いて
コンサートを開いたり、音楽愛好家が気軽に集まって音楽談義をする音楽サロンとしても機能していたらしい。 ジョン・ルイスの計らいで、オーネットや
ドン・チェリーらも奨学金を貰ってここのサマー・スクールに参加している。
そういう頻繁に行われていたコンサートにロリンズが招かれてMJQと一緒に演奏したものがレコードと残されており、ミルト・ジャクソンが入っているものは
契約上の縛りがあるのでアトランティックから出され、ミルトが抜けたピアノトリオをバックにしたものがこのメトロ・ジャズに収められた。 1958年8月の
演奏だが、これはディスコグラフィー的に見ればブルーノートの "Newk's Time" とコンテンポラリーの "Contemporary Leaders" の間にあり、
ちょうどロリンズがピークを迎えていた時期にあたる。
これが、とにかくすごい演奏なのだ。 ワンホーンの4曲が収録されているが、10km先まで届くのではないかと思えるような豪放な音が鳴り続け、開封したての
ゴムボールが大きく弧を描いてバウンドするようなフレーズが滾々と湧き出し、人の喋り声のような豊かな表情をもった吹き方でとにかく圧倒される。
評価の固まったヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴより、こちらのほうがはるかにいい。 ヴァンガードのほうは高音域帯にフレーズが集中していて
腰が高い感じの演奏だが、こちらの演奏は低音域の深いところで演奏しており、重量感がまったく違う。
また、レコードから出てくる音の質感も対照的で、ヴァンガードのほうは奥行き感のない平面的で鮮度の低い籠った音であるのに対して、こちらは会場の
ホールトーン全体が丸ごと録られていて、その中でロリンズの重低音が鮮度高く陰影深く鳴っており、オーディオ的な快楽度の高さでもヴァンガード盤は
この盤の足許にも及ばない。 楽器の音が立っていて、音圧も高く、ボリュームを普段より下げないと音が大き過ぎて聴けない。
余白にテディー・エドワーズの演奏が2曲含まれていて、演奏自体は悪くないのだが、ロリンズの後では気の毒なくらい分が悪い。
この時期のロリンズは本当に無敵だった。 聴けばわかる。
ロリンズにまるでピン・ポイントでフォーカスしたような録音で、tsの質感、量感共に素晴らしい盤ですね。
それにロリンズのプレイに感嘆するオーディエンスの反応もリアルに録られ、あまり話題に登りませんが羨望と尊敬を集めた頃の異色の1ページですね。
いやはや、これにはちょっとヤラレました。
ロリンズの良さがものすごく引き立つ音場感ですよね。 今まで聴く機会がなかったのが(というか、自分の眼力の無さが)悔やまれます。
こんなのを目の前でみたら、そりゃあ、興奮します。 ジャケットデザイン、何とかならなかったのでしょうか。