Greg Abate / It's Christmastime ( 米 Brownstone Recordings BRCD 959 )
最近よく聴いているのが、このグレッグ・アベイト。1947年マサチューセッツ州生まれのマルチリード奏者だ。
特にメディアが取り上げるでもなく、誰かが褒めるわけでもない、知名度という意味では完全にマイナーな人。
でも、楽器はおそろしく上手い。一応アルトがメインのようだが、テナーもフルートも吹くし、ソプラノも物凄く上手い。
非常にオーソドックスなジャズを身上としていて、誰かのモノマネではない、自分の音楽をやっている。
音楽の質感は現代ジャズだが、きちんとメインストリームを踏まえたものなので、古いジャズしか聴かない人にも抵抗感なく
受け入れられるだろう。
アルバムもそこそこ出ており、掲載は間に合わなかったがこういうクリスマス・アルバムも出している。
驚きなのが、ハーブ・ポメロイが参加していること。トランジション・レーベルの記念すべき第1号としてリーダー作を出して以来、
目立ったレコードが残っていない彼も、ジャズ・ミュージシャンとして細く長く活動していたということだったのだろう。
彼もマサチューセッツ生まれで、2007年に同地で亡くなっている。
定番の楽曲を主軸に明るく、切ないバラードも交えて闊達な演奏に終始する。ピアノのポール・ブロードナックスが半分くらいの曲で
上手くはないが渋めの声で雰囲気のある歌を歌っており、悪くない。凝ったアレンジを施したものもあったり、と聴き手を飽きさせない
ようにいろいろと工夫を施している。
アベイトのサックスは音が大きく、楽器がしっかりと鳴っており、非常に聴き応えがある。
バラードで魅せる艶っぽさも見事で、クリスマスらしいしっとりとした雰囲気が上手く表現できており、素晴らしいと思う。
このアルバムは1995年に録音されているが、それがちょっと信じられないくらい音がいい。
演奏も良く、音もいいとくれば、これ以上何を望むのかという感じだ。
高名な名前や名盤と褒められるものばかりがいいジャズということでは決してないのだと思う。