Vasilis Xenopoulos / Dexterity ~ The Music of Dexter Gordon ( AVJ Productions 0006 )
デックスに捧げたアルバム、となれば聴かずに済ますわけにはいかない。特に、私の好きな "Tanya" と "Tivoli" が入っているところに、
このサックス奏者の本当のデックス愛を感じとった。初めて聞く名前で、何者なのかはわからないが、ネットで "Tanya" をちょい聴きして、
これは "買い" だとわかった。
若者らしからぬ、デックス譲りの重厚なテナーの音が素晴らしく、惚れてしまった。素直にデックス愛を披露している純朴さがいい。
ワンホーンを主軸にしているところも潔くていい。ちゃんとオリジナル曲を書いているところもエライ。
10代の頃に最初に買ったレコードが "Go" だった、というのも泣かせる。
"Tanya" は重量級戦車のような出だしのイントロからシビれてしまう。そのあとで始まるテナーのずっしりと重い音色で吹き切る様に
聴き惚れっぱなしだ。素晴らしい。オリジナルはレコードA面全部を使った長い演奏だが、ここではトランペットがいない分だけ短い。
これを持ってきたセンスが素晴らしい。
"Tivoli" もデックスらしい素敵なワルツの曲で、原曲の良さを最大限に生かした演奏になっているのが素晴らしい。
ありがちなチーズケーキではなく、この曲を選ぶセンスがエライ。
「デクスター・ゴードンの音楽」というタイトルもいい。デックスの演奏を「音楽」として愛したことが伺えるではないか。
この若者はよくわかっている。今の状況では難しいかもしれないけれど、いつか来日してくれたら聴きに行きたいと思う。