Phil Woods / Woodlore ( 米 Prestige PRLP 7018 )
フィル・ウッズの最高傑作はこれで決まりだけど、若くしてこんなアルバムを作ってしまうと、後はもうやることが無くなってしまったんじゃないだろうか。
この時期にプレスティッジをメインにしてたくさんレコードを作ったけれど、なぜか多管編成ものが多く、ウッズの良さはすべて殺されてしまっている。
一番よくわからないのがジーン・クイルとのコンビで、互いの良さを喰い合ってしまうこのコンビネーションの意味は未だに理解できない。
パーカーが1955年3月に亡くなった時、ニューヨーク界隈は "パーカー・ロス" に陥り、業界では "次のパーカー" はどこにいる?と大騒ぎになった。
当時のニューヨークにはウッズやマクリーンがいたが、マクリーンはまだ演奏が未熟だったし、ウッズは白人だったせいもあってか、これまた白羽の矢が
立つことはなかった。 このアルバムを聴けば当時最もパーカーに近いところにいたんじゃないかと思えるけれど、その後のアルバムを見ていくと、どうも
パーカーに近づくことを周囲が許さなかったんじゃないかと勘ぐりたくなるようなものばかりだ。
何の邪念もなく、ワンホーンですべてを出し切るような歌いっぷりには圧倒される。 若さに満ち溢れて、こんなにみずみずしい感性を感じるジャズは他には
見当たらない。 そしてアルバムの最初から最後まで1本のサックスでこんなにも豊かに歌い切っているのを聴いていて思い出すのはロリンズの同時期の作品群で、
同じような感銘を受ける。 サックスのアルバムでこれ以上の賛辞を贈る必要はないだろう。
ワンホーンのもう1つの代表作 "Warm Woods" は演奏に抑制が効きすぎていて、音楽としては消化不良感が残る。 メジャーレーベルのEPICらしい高級感溢れる
ゴージャズ&ファビュラスな音場感でオーディオ的には "Warm Woods" の方が優れているけれど、イージーリスニング的な要素が強過ぎて、まるでラスヴェガスの
高級ホテルの最上階にある豪華なバーで聴いているような感じがする。 それに比べて、"Woodlore" はバードランドやカフェ・ボヘミアの最前列でかぶりつきで
聴いているような濃厚なジャズの匂いがあって、このアルバムは結局のところ、そこがいいのだと思う。
掲載のものはジャケット裏は普通に汚れていますが、表は奇跡的にきれいで、こういうのは珍しいですね。