Lee Morgan with Hank Mobley's Quintet / Introducing Lee Morgan ( 米 Savoy MG 12091 )
若きリー・モーガンの姿が判る貴重な記録ながら、どうもスッキリせず冴えない内容だ。 その理由の1つは、おそらくビ・バップを演奏しているからだと思う。
なぜ、1956年にこんな時代遅れの音楽をやったのかはよくわからない。 モブレーは無理をせず、ビ・バップの形式に上手く自分を溶け込ましてはいるけれど、
元々がこういうタイプの音楽には似合わない人だ。 しかもフロントの2管にはビ・バップの覇気や高揚感がまったくない。
尤もモーガンはさすがに上手くて、長いソロを何の不安げもなく抜群の安定感で吹き切っていて、フレーズの作り方も上手い。 ただのパワー・ヒッターでは
ないところが当時のミュージシャンたちの間で驚異を以って迎えられた理由だけど、その美質がしっかりと刻まれている。
ただ、ハンク・ジョーンズ、ダグ・ワトキンス、アート・テイラーの3人は鉄壁のリズムを作っていてこちらはハード・バップのマイルドな演奏になっているのに、
フロントの2管がビ・バップのリフをやるものだから、音楽的に全然噛み合っていない。 終盤のバラード・メドレーでようやく5人の演奏がハード・バップとして
統一されて、何とかギリギリうまく着地するという感じだ。 やはり、ハンク・モブレーは音楽監督には向いていない。
おまけに、ヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音でカッティングもRVGなのに、なぜか音質が冴えない。 音圧は高いけれど、音自体は表面が曇っている金属を
見ているような感じだ。 空間的な立体感や奥行き感もなく、オーディオ的な快楽度も高くない。
そんなわけで、昨今のこのレコードの高騰ぶりの理由がよくわからない。 悪い演奏だとは言わないけれど、今現在取引されている値段に見合う内容だとは
とても思えない。
ブルーノートの値段に引っ張られてこれも高騰しているんだろうと思います。
でも、内容はかなり落ちるので、今の値段で買わされるのは気の毒だなあ、と。
そろそろ売り時かな、とおもっています。