Coleman Hawkins / The Gilded Hawks ( 米 Capitol T-819 )
サックスはなぜこうも人によって音色が違うのだろう。 マウスピースの種類やリードの硬さ、楽器の製造年代などでも当然違ってくるだろうし、吹き方によっても
変わってくるけど、他の楽器よりもその違いがより顕著だ。 だからサックスを聴くのは楽しくて、その楽しさは人の歌声を聴く楽しさと共通するものがある。
コールマン・ホーキンスはアドリブラインを聴いて感心するタイプではなく、その音色に聴き惚れるというタイプだ。 だからスモール・コンボでバリバリと
ハードバップをやっているものよりは、サックスが朗々と歌うことができるような形式の音楽のほうが向いている。 そういう意味ではこのキャピトル盤なんかは
ホーキンスを聴くのにはうってつけだ。 まるで、シナトラやディック・ヘイムズのレコードを聴いているような錯覚に襲われる。
キャピトルのレコーディング・オーケストラの上品な演奏をバックに、スタンダードを大らかに吹いていく。 聴いていて退屈さを感じることは一切ない。
そのくらいテナーの音色には豊かな表情があり、クルーナーのようなどこまでも深いトーンが腹の底まで響いてくる。 一歩間違えば陳腐なムード音楽に
堕するところが、そうはならずに豊かな音楽として最後まで聴かせるのはパーカーのウィズ・ストリングスと同じだ。
このレコードはラックのインストコーナーに入れるよりは、シナトラのレコードの隣に置きたくなる。