Cecil Payne / Performing Charlie Parker Music ( 米 Charlie Parker Records PLP-801 )
ここではクラーク・テリーを加えたクインテットでパーカーが好んでやっていた楽曲を取り上げている。ロン・カーターがベースを担当していて、
アルコをやったりソロをとったりと存在感が他のベース奏者とは違いがある。クラーク・テリーの演奏が冴えなくて全体の足を引っ張っているが、
ペインとジョーダンは変わらず闊達な演奏をしている。このレーベルとは切っても切れないパーカーの音楽をかつての共演者がやるという、
企画としては当然の流れからくるアルバムだ。
ペインはバリトンだとは思えないくらい軽快な演奏をしていて、他のバリトン奏者たちとの個性の違いを見せている。元々はピート・ブラウンに
師事してアルトを吹いていたそうだから、なるほどと腑に落ちる演奏だ。ビ・バップでもハード・バップでも難なくこなせるのは立派だ。
このアルバムはこのレーベルにしては珍しいことに音質があまり良くないが、そんな中でもデューク・ジョーダンのピアノの音色は彼らしい
琥珀色のような凛とした色彩を帯びていて、印象に残る。裏ジャケットのライナー・ノートはペインのかつての盟友であるランディ・ウェストンが
書いているが、その中で彼はジョーダンのピアノのことを「彼の音色は、まるで雲間から陽が差して鳥たちが歌い出す中降り始める天気雨の
雨だれを想わせる」と形容していて、そのピアノが心象風景を想起させるというデューク・ジョーダンという人の特性を見抜いている。
音楽家たちがこうしてパーカーの音楽集をやるのは珍しくはないが、それはパーカーは演奏力だけに長けていたわけではなく、そこには豊かな
音楽性も兼ね備えられていたということであり、それがパーカーが人々の心の中にいつまでも残り続ける理由なのだろう。その音楽の価値を
守るためにわざわざこのレーベルが未亡人によって立ち上げられて、そこの主要な専属契約としてセシル・ペインとデューク・ジョーダンが
選ばれたのは最適な人選だったのだと思う。他のレーベルでは決して味わえない、滋味深い音楽を聴くことができる。