Buddy Childers / Sam Songs ( 米 Liberty LJH 6009 )
その名前はそこそこ知られているのになぜかリーダー作がほとんどない人がいる。 その理由は様々なようで、ビッグ・バンドでの活動がメインだった、
定住を嫌い放浪癖があった、麻薬の不法所持で監獄にいた、ソロでは喰っていけず辞めた、人生いろいろである。
このバディ・チルダースもビッグバンドの活動がメインだった人でリーダー作はほとんどないけれど、このお題にもっと適した人がこの中にいる。
それはテナーのハービー・スチュワードである。
ウディ・ハーマンの1947年のセカンド・ハードにいた4人のサックス奏者がフォー・ブラザーズと呼ばれて有名になったのはよく知られている。
スタン・ゲッツ、ズート・シムズ、サージ・チャロフ、そしてこのハービー・スチュワードだったが、彼はソロをあまり取らせてもらえないという
理由でこのビッグバンドを半年も経たないうちに辞めている。 その後もミュージシャンとして活動していたようだが、その足跡はよくわかって
いない。 共演者としての参加だったり、10年に1枚程度のリーダー作(これが誰にも知られていない)があるだけで、事実上、レコード産業とは
無縁の人生だったようだ。 どうやら性格的に難しいところがあったみたいだけれど、それにしてもこの有り様は酷いものである。
このアルバムを聴くと、スチュワードのテナーの上手さと存在感に驚かされる。 チルダースには申し訳ないが、いつの間にかテナーの音色ばかりに
気を取られて、ラッパのことはつい忘れがちになる。 展開される音楽は特に印象に残るところはなく、Sam という名前が入った曲で構成されている
とは言え、知っている曲は1つもなく、音楽としての愉しみは希薄だ。 ただ、その個性の無さが楽器の演奏や音を浮き彫りにしてくれる。
久し振りにこれを再生した時(既に内容のことは何も覚えていなかったが)、共演者のことなど何も気にかけることなく聴いていたが、すぐにテナーの
魅力に耳が釘付けになり、ジャケットをよく見てみるとそれがハービー・スチュワードだということがわかった。 ズートをもっとナチュラルな感じに
したような音色とフレーズ作りが素晴らしい。 アドリブラインもなめらかで自然に流れていく。
50年代にリーダー作がないことがつくづく惜しい。 こういうミュージシャンがゴロゴロいるというところに、アメリカのジャズの凄さがある。
ハービー・スチュワードですが、横浜のマシュマロレコードのアルバムで知り、ファンの一人になりました。1950~60年代の録音が少なく、残念な気持ちでいたのですが、ご紹介のバディ・チルダース名義のレコードはよさそうですね。探してみます。
1962年録音の「So Pretty」というリーダー作は持っています。内容は、ストリングスをバックにクラリネットとテナーを吹いているもので、ジャズ的感興には乏しいものです。
マシュマロ盤は聴いたことがないので、聴いてみたいです。 ぼちぼち探してみますね。
So Pretty、お持ちなんですね。 ナイスです。 まあ、あのジャケットを見る感じではきっとそういう感じなんだろうなあと思っておりました。
やっぱり50年代にリーダー作を作っておくべきだったと思いますね。 きっと傑作になっただろうにと思います。