Ray Bryant / Little Susie ( 米 Columbia CL 1449 )
このレコードがこんなびっくりするような高音質で鳴るなんて、まったく知らなかった。 だから、今更だけどこのレコードにハマっている。
音のいいレーベルはたくさんあるけど、コロンビアの音の良さはその背後にたっぷりとお金をかけて時間とノウハウを積み上げたエンリッチメントさ。
楽器の音の生々しさだったり、空間表現の上手さだったり、深みのある残響感だったり、という他レーベルで褒められるタイプとは全く違う種類の
音の良さがある。
そもそもがクラシック音楽を録音するために大量の設備投資と人財投入をして録音技術を磨いてきたわけだから、マイナーレーベルが勝てるはずがない。
お金のない中で知恵を絞って素晴らしいサウンドを作ってきたマイナーレーベルは立派だった。 だからどちらがどうこうという話では決してないけれど、
コロンビアの音の良さにはやはり基礎工事のしっかりした高い剛性感があるのは事実だと思う。
このアルバムもピアノの音は手で掴めそうなくらいのソリッド感があり、ベースはブンブンと鳴り響き、ブラシさばきが生み出すザラザラした感じも
あまりにリアル。 それらが全くの無音な空間の中で鳴っていて、音の実存感の強さが際立つ。
但し、ただ音が良いだけでは聴く価値はない。 この作品のいいところは、レイ・ブライアントのアルバムの中でも群を抜いて出来が良いという点にある。
録音の良さが後押しして彼の打鍵タッチの正確さと音の余韻のコントロールの上手さ、フレーズのセンスの良さに思わずため息が出る。
曲想の生かし方も上手く、"So In Love" が魅力的に弾かれていて嬉しい。 前に出てくるベースの音の良さやドラムの存在感の高さが絶妙な
バランスで保たれていて、音楽の生命感がハンパない。 レイ・ブライアントはそのピアノの技術的な上手さ、ジャズのフィーリング、
楽曲の取り扱いの上手さ、それらが上手くブレンドした稀有なピアニストであることを再認識させられた。 音の良さがそれを教えてくれた。
確かに、ガーナーの系譜に連なるところはありますね。 私もコロンビアの中では出色の1枚だと思います。