Miles Davis / Miles In Berlin ( 独 Speakers Corner 4260019715418 )
10月に入ると、DUでは中古品の店頭出しがパッタリと途絶える。 冬籠りの準備を始めたエゾリスのように、入荷した中古レコードをひたすら貯め込むのだ。
だから、この時期の店頭在庫は棚はスカスカ、新着は国内盤ばかりで、手ぶらで帰る日々が続く。 まあ、店に行ってレコードをパタパタとめくるのが
楽しいわけだから、別に買う物が無くても構わないけどね。
だからというわけでもないけど、マイルスの "Miles In Berlin" のモノラル・プレスがドイツからリリースされたというので、早速聴いてみた。
このアルバムはマイルスのライヴでは一番好きな作品だけど、公式録音ではなかったので独コロンビアのオリジナル盤でも音質はイマイチだった。
しかも録音自体はモノラルだったのに疑似ステレオとしてリリースされて、これがステレオ効果があまり無く、全体的に音が籠っている。
内容が超一流なのに、何とも勿体ないレコードだった。
結論から言うと、今回のレコードの方が音は良い。 まず、管楽器の音の輝きが違う。 オリジナルはマイルスのトランペットもショーターのテナーも
音色がくすんでいて籠っていて少し奥に下がっている感じだが、こちらは音色がちゃんと管楽器らしく自然な感じで輝いていて、音場の一番前に出ている。
特にショーターのテナーの活きの良さが顕著だ。
ハービーのピアノもオリジナルはのっぺりと生気のない感じだが、こちらはもう少しソリッド感が増していて、演奏がクッキリと締まっているし、残響感も
きちんと捉えられていて良くなっていると思う。
トニーのドラムはオリジナルは他の楽器の音がダメな分、相対的に大きな音量に聴こえて違和感がありながらも大迫力だったが、こちらは各楽器の音が良くなった分
それらと互角なバランスに落ち着くようになって、比較すれば迫力は少し後退しているけど、オリジナルは元々バランスが少しおかしいのでこちらのほうが
アンサンブルとして自然な感じだ。
全体としては、オリジナル盤は淡く薄いレースのカーテン越しにライヴを見ている感じだったのが、今回はカーテンを取っ払った感じと言っていい。
劇的に改善しているわけではないけど、少なくとも今回のレコードは聴いていて気が散るようなサウンド上の違和感が消えてくれているのは間違いないと思う。
ドイツは50年越しで、ようやく雪辱を晴らした。 今後は当然こちらを聴いていくことになるから、もうオリジナル盤は私には必要なくなった。 処分決定、である。