Kenny Drew / This Is New ( 米 Riverside RLP 12-236 )
ドナルド・バードとハンク・モブレーの2管クインテット、若しくはドナルド・バードのワン・ホーン・カルテットと言えば、反射的にRVGサウンドが頭をよぎるのが
普通だけれど、このアルバムのようにRVGが絡まないサウンドで聴くのも全然悪くない。 リヴァーサイドでは珍しくクリアでシャープな音像でガンガン鳴る。
ケニー・ドリュー名義になっているけれど、これはケニー・ドリューを聴くアルバムではない。 契約関係で看板には使えない2人の管楽器奏者を録りたかった
キープニューズがケニー・ドリューの名義を使ってこっそりと録ったハードバップ・コンボを聴くアルバムだ。 パッケージ上はバードとモブレーの姿を丁寧に
隠している。 そのせいでハードバップの名盤群にはいつも入れてもらえない気の毒極まりないアルバムだけど、ブルーノートやプレスティッジばかりが
持ち上げられて、これが語られないのはどう考えてもおかしい。
演奏の核になっている3人は皆調子が良く、リラックスしてのびのびと自分の得意な演奏をしている。 明快でわかりやすい。 わかりやす過ぎるくらいだ。
これが好きになれないジャズ愛好家がいるとは思えない。
ケニー・ドリューを上手く売り出したのはリヴァーサイドだ。 ブルーノートは失敗している。 同時期に輩出した多くのピアニストの中で最も個性の弱かった
この人の弱点をきちんと把握していて、ミュージカル物やこういうハードバップバンドという企画でうまくリカヴァーしてアルバムを作ってくれた。
一方、ブルーノートはアーティストの素の姿をクローズアップさせるのが大方針で、ケニー・ドリューには本質的に向かないレーベルだった。
そういう制作上の配慮が上手く効いているし、ケニー・ドリュー自身もそれに上手く適応していて、とてもいいアルバムに仕上がっている。