Enrico Pieraninzi / In That Dawn Of Music ( 伊 Soul Note SNMJ 003-2 )
その道では有名な稀少廃盤CDだったらしい本作が再発されたとのことで、店頭試聴してみると、冒頭の "王子様" が見事な演奏だったので購入した。
ピエラヌンツィの稀少廃盤はもう1枚の方(ライヴ盤?)がこの世界では横綱格のようだが、よくわからない。 どうせならそちらも再発してくれればいいのに
と思うけれど、何か事情があるのか、今のところそういう話はないようだ。 廃盤云々の話は置いといても、昔のピエラヌンツィの演奏なら純粋に聴いてみたい。
これはアルバムとして制作されたものではなく、90~93年頃の欧州各地に散らばっていたラジオ放送音源などを集めて雑誌の付録として世に出されたものだそうだ。
だから、メンバーはバラバラ、演奏も音質も統一感なし、という建付けだが、さすがにピーク期にあたるだけあってビックリするくらい素晴らしい演奏がある。
特に凄いと思ったのは冒頭の "王子様"、5曲目の "Je Ne Sais Quoi"、7曲目の "In That Dawn Of Music"。 "王子様" はトリオとしての互角な
取っ組み合いの様がマイルスの第二期クインテットのようだし、5曲目はエヴァンス派の真骨頂、7曲目はアルトのワンホーン・バラードの傑作。
この3曲は、この人にしかできない、他人を寄せ付けない音楽だ。 つまらない演奏も含まれてはいるけれど、これは寄せ集め音源なのだから曲単位の評価で
十分なのではないか。
高額廃盤で実際に聴いている人が少ないせいか、この手の音盤はネット上に評価が見当たらない。 だから、こういう再発には意味があると思う。
音楽は聴いてナンボ、の世界である。 これはただの稀少廃盤ではなかった。 オリジナルがどうだったのかはわからないが、このCDは音質も素晴らしく、
イマドキのCDは凄いなあと思う。