“ボーカロイドマスター”より。
鏡音レンの謹慎が解除された。レンの勇敢な行動が、ついに理事長を動かしたのである。それに……反対派の殆どが爆弾テロによって【Nice boat.】となったのも大きい。
早速新しいミュージカル“白ノ娘と緑ノ娘”の舞台稽古を行う。
予想通り、今度の主役と準主役は弱音ハクと初音ミクとなった。今度のミュージカルは続編というよりは、前作の視点を変えたものとなっている。これもまた原作になるべく忠実になるようにとの配慮から。
「第2弾目でもお前の役回りは重要だからな、頑張れよ」
敷島はレンの肩をポンと叩いた。
「はい!」
あくまでも視点を変えただけで、ストーリー性自体は変わっていない。なので、レン演じるアレン・アヴァドニアがミク演じるミカエラを【禁則事項です】というのも変わっていない。
(さすがに同じ手は2度と食わないぞ。ウィリーのクソジジィ……)
敷島は稽古の様子を客席から見ながらそう思った。
ミュージカルでは一応、前作を見ていない観客のために多少それと被る描写がある。つまり前作の一部描写が今作でも再現されている箇所があるのだ。
「『どうして……こんなことに!』」
物語の後半付近。レン演じるアレンが、死に行くミカエラを抱きかかえて号泣するシーン。
「『ミカエラ、僕は君のことが好きだ!……どうしようもなく好きになってしまったんだ!』」
「はい、ストップ!!」
演出家がパンパンと手を叩く。ウィリーの手の者に拉致・監禁されていた演出家が、また今作も手掛ける。
「レン、今どこを見ていた!?」
「えっ?」
「どうしようもなく好きになってしまった子が、自分の手の中で死のうとしているんだ!顔も見ずに泣き出すヤツがいるか!」
(あれ?台本に書いてあったっけ、それ?)
敷島はパソコンのキーボードを叩いて、すぐに調整する。
(やれやれ、こっちの作業も大変だ)
ちらっとステージの前を見ると、弱音ハクが所属する研究所のプロデューサーがやはりパソコン片手に調整していた。
今回は主要人物が同じ研究所一固まりというわけではないのも特徴だ。
しかし、これとて原作小説で多くの読者が泣いたそうだから、成功すればまた大きな反響を得られるのは確かだった。
「休憩は15分でーす!」
休憩時間に入る。
「はー、こっちも大変だ~」
敷島が大きく伸びをして、椅子にもたれかかった。その時、背後から、
「なにジジ臭いこと言ってんのよ」
と、声を掛ける者がいた。
「あっ、MEIKO」
「ほら、飲み物」
「おっ、ありがとう。MEIKOはステージにいなくていいのか?」
「だって今回、私ほとんど出番ないもの」
「ははっ、そうか」
「それより、ミクを励ましてあげなよ。私やレンはいいからさ」
「えっ?」
「準主役で、今うちの研究所で1番頑張ってるのはむしろミクなんだからね」
「そ、そうか。そうだな」
敷島は慌てた様子で、ステージに向かった。
(フン。鈍感プロデューサーが)
当のミクはレンを励ましていた。
鏡音レンの謹慎が解除された。レンの勇敢な行動が、ついに理事長を動かしたのである。それに……反対派の殆どが爆弾テロによって【Nice boat.】となったのも大きい。
早速新しいミュージカル“白ノ娘と緑ノ娘”の舞台稽古を行う。
予想通り、今度の主役と準主役は弱音ハクと初音ミクとなった。今度のミュージカルは続編というよりは、前作の視点を変えたものとなっている。これもまた原作になるべく忠実になるようにとの配慮から。
「第2弾目でもお前の役回りは重要だからな、頑張れよ」
敷島はレンの肩をポンと叩いた。
「はい!」
あくまでも視点を変えただけで、ストーリー性自体は変わっていない。なので、レン演じるアレン・アヴァドニアがミク演じるミカエラを【禁則事項です】というのも変わっていない。
(さすがに同じ手は2度と食わないぞ。ウィリーのクソジジィ……)
敷島は稽古の様子を客席から見ながらそう思った。
ミュージカルでは一応、前作を見ていない観客のために多少それと被る描写がある。つまり前作の一部描写が今作でも再現されている箇所があるのだ。
「『どうして……こんなことに!』」
物語の後半付近。レン演じるアレンが、死に行くミカエラを抱きかかえて号泣するシーン。
「『ミカエラ、僕は君のことが好きだ!……どうしようもなく好きになってしまったんだ!』」
「はい、ストップ!!」
演出家がパンパンと手を叩く。ウィリーの手の者に拉致・監禁されていた演出家が、また今作も手掛ける。
「レン、今どこを見ていた!?」
「えっ?」
「どうしようもなく好きになってしまった子が、自分の手の中で死のうとしているんだ!顔も見ずに泣き出すヤツがいるか!」
(あれ?台本に書いてあったっけ、それ?)
敷島はパソコンのキーボードを叩いて、すぐに調整する。
(やれやれ、こっちの作業も大変だ)
ちらっとステージの前を見ると、弱音ハクが所属する研究所のプロデューサーがやはりパソコン片手に調整していた。
今回は主要人物が同じ研究所一固まりというわけではないのも特徴だ。
しかし、これとて原作小説で多くの読者が泣いたそうだから、成功すればまた大きな反響を得られるのは確かだった。
「休憩は15分でーす!」
休憩時間に入る。
「はー、こっちも大変だ~」
敷島が大きく伸びをして、椅子にもたれかかった。その時、背後から、
「なにジジ臭いこと言ってんのよ」
と、声を掛ける者がいた。
「あっ、MEIKO」
「ほら、飲み物」
「おっ、ありがとう。MEIKOはステージにいなくていいのか?」
「だって今回、私ほとんど出番ないもの」
「ははっ、そうか」
「それより、ミクを励ましてあげなよ。私やレンはいいからさ」
「えっ?」
「準主役で、今うちの研究所で1番頑張ってるのはむしろミクなんだからね」
「そ、そうか。そうだな」
敷島は慌てた様子で、ステージに向かった。
(フン。鈍感プロデューサーが)
当のミクはレンを励ましていた。