[10月22日01時15分 天候:晴 静岡県富士宮市下条 民宿さのや]
愛原公一「こっちぢゃ」
公一伯父さんの手引きで、真夜中の民宿に入った私達。
公一「早くワシの部屋へ」
そして、エレベーターで地下室へ下りる。
公一「そこで待っておれ。今、例のブツを持ってくるからの」
愛原学「例のブツって、そこの金庫じゃないの?」
伯父さんは金庫の扉を開けた。
その中から現れたのは、ガラス製のアンプルが数本。
液体が入っていて、それは琥珀色をしていた。
公一「ワシの発明品で、アンブレラが喉から手が出るほど欲しがった化学肥料、『アイコール』ぢゃ」
学「そして、白井が持って来た札束に目が眩んで、売り払ってしまったと……」
高橋「よくタイホされませんでしたね?」
学「いや、逮捕はされているんだよ、この爺さん」
高橋「あっ……」
学「だけど、色んな手立てを使って、起訴猶予になったり、不起訴になったりしてるんだ」
公一「人徳♪人徳♪」
高橋「さ、さすがは先生の御親戚です」
学「よく、新たに作れたね?」
公一「作り方を知っておるのはワシだけぢゃ。政府に教えてやることを条件に、不起訴にしてやったわい」
学「で、まだ教えていないと」
公一「カードは、持っておくに越したことはないのぢゃ」
高橋「よく長生きできますねぇ……」
学「なー?」
公一「それより、オマエの娘だか嫁だかがピンチということぢゃが、これで足りるかの?」
学「多分……」
まあ、アンプル1本につき、箱入りのユンケルくらいの大きさだから、それが5本くらいあれば足りるのだろう。
実際、伯父さんが今持っているストックはこれだけだというし。
学「ありがとう、伯父さん。この御礼は、必ずするよ」
公一「まあ、礼をするのは政府の方ぢゃろうて」
高橋「キーアイテム確保で、クエスト終了っスね!あとは急いで、東京に引き返しましょう!」
公一「待ちなさい、待ちなさい。今何時だと思っておる?まだ、電車も新幹線も走っておらんぞ?」
学「あっ……」
公一「政府の犬どもが、お前達の動向を気にしておるのぢゃろう?まずは、例の物を手に入れたと報告してはどうかね?それから、指示を仰ぐのが良かろうて」
学「そ、それもそうだな」
私は自分のスマホを取り出した。
それで善場主任に連絡してみる。
すると、すぐに主任は出た。
善場「もしもし?」
学「善場主任、愛原です」
善場「愛原所長、お疲れ様です」
私は現況を善場主任に報告した。
善場「なるほど……。30mlアンプルが5本ですか。まあまあですね。それで結構です。それをお持ちください」
学「帰りの足ですが……」
善場「こちらで調べました。朝一の新幹線は、三島駅6時17分発の“こだま”800号です」
学「6時17分。案外遅いんですね。それでは、どこかの駅から在来線の始発電車にでも乗って……」
善場「いえ、タクシーで向かってください」
学「えっ!?タクシー!?」
善場「はい。お渡ししたチケットがありますね?それで、三島駅まで乗車して結構です。それと、三島駅からですが……」
私はこれからの動きについて、善場主任から事細かに指示を受けた。
学「わ、分かりました」
私は電話を切った。
高橋「どうでした?」
学「三島駅までタクシーで行って、そこから始発の新幹線に乗って戻れということだ」
高橋「マジですか!」
公一「なるべく乗り換えのリスクを減らして、例のブツを安全に運ぼうという魂胆じゃな」
公一伯父さんは、机の上の電話を取った。
そして、どこかへ電話した。
公一「あー、こちら、下条の民宿さのやですが……。朝5時に予約を頼めますかな?……そう。行先は三島駅ですぢゃ。久しぶりの長距離客ですよ。……おお、頼めますか。……うむ。民宿の正面玄関に、よろしく頼みますぞ」
伯父さんがタクシーを手配してくれた。
公一「ふふふ。行先を言ってやったら、飛び付いてきたわい」
学「さ、さすが伯父さん」
公一「さて、まだ時間がある。せっかく来たのだから、ゆっくりしていきなさい。何なら、風呂にでも入るかね?」
学「あー……そうだな。高橋、そういえばオマエ、風呂入ってなかっただろ?」
高橋「た、確かに……」
学「伯父さんの厚意だ。一っ風呂浴びてこい」
高橋「あ、あざーす!」
公一「あとは、隣の部屋に仮眠室があるから、そっちで少し寝てて良いぞ」
学「伯父さん、ありがとう」
公一「なぁに。可愛い甥っ子の為ぢゃ」
学「いつかまた、この民宿を利用させてもらうからね?」
公一「そうしてくれると助かる。嫁が『客を斡旋してくるのはいつだ?答えろ!』と、鬼化してしまっての……」
学「お、伯母さん……俺には優しいのに……」
大石寺絡みのイベントにかこつけるのなら、栗原姉妹に聞くのが良いだろう。
学「伯母さんに、また利用させてもらうからって言っておいてよ。そしたら、伯父さんの顔も立つんじゃない?」
公一「う、うむ。そういうことなら……」
お言葉に甘えて、高橋は大浴場に向かい、私は隣の仮眠室を利用させてもらうことにした。
[同日05時00分 天候:晴 同民宿→タクシー車内]
警備会社にいた時、防災センター勤務の時は、夜中の仮眠があった。
それは4時間取られていたが、ベッドを用意したり、シャワーを浴びたりしているうちに残り3時間となり、起きた後もベッドを片付ける準備などの時間を取らないといけない為、実質的に2時間ないし2時間半程度の仮眠時間しかなかった。
今回もそんな感じであった為、それを思い出しながらの仮眠となった。
学「本当に伯父さん、ありがとうね」
公一「いやいや、何の何の。また来てくれな?」
学「分かったよ。伯母さんにもよろしく」
私と高橋は、タクシーのリアシートに乗り込んだ。
今度は都内でも普通に見かける、トールワゴンタイプのタクシーだったが。
学「三島駅までお願いします」
運転手「三島駅までですね。高速道路を使って宜しいですか?」
学「はい、お願いします」
もちろん、高速代は客持ちである。
しかしこの場合、高速代もデイライトが後で持つことは明らかだった。
タクシーは、全く車通りの無い県道を出発した。
高橋「いやあ、先生の伯父さん、いい人っスね」
学「おおかた、善場主任達への点数稼ぎだよ。まあ、結果的に俺達にはいい事をしてくれたってわけさ」
尚、アンプルはフードデリバリーの配達員が持つようなバッグに入れてある。
こうすることで、衝撃から守ることができ、ある程度の保温もできる。
安全の為、床に置いたり、トランクに入れたり、網棚の上に置いたりしないよう、先に善場主任から注意を受けていた。
なので、膝の上に抱える形となる。
学「何だか帰りの方が緊張するな」
高橋「責任重大ですね」
タクシーは県道から国道469号線に出て、国道139号線に向かったが、早朝の田舎の国道は殆ど車通りなど無かった。
愛原公一「こっちぢゃ」
公一伯父さんの手引きで、真夜中の民宿に入った私達。
公一「早くワシの部屋へ」
そして、エレベーターで地下室へ下りる。
公一「そこで待っておれ。今、例のブツを持ってくるからの」
愛原学「例のブツって、そこの金庫じゃないの?」
伯父さんは金庫の扉を開けた。
その中から現れたのは、ガラス製のアンプルが数本。
液体が入っていて、それは琥珀色をしていた。
公一「ワシの発明品で、アンブレラが喉から手が出るほど欲しがった化学肥料、『アイコール』ぢゃ」
学「そして、白井が持って来た札束に目が眩んで、売り払ってしまったと……」
高橋「よくタイホされませんでしたね?」
学「いや、逮捕はされているんだよ、この爺さん」
高橋「あっ……」
学「だけど、色んな手立てを使って、起訴猶予になったり、不起訴になったりしてるんだ」
公一「人徳♪人徳♪」
高橋「さ、さすがは先生の御親戚です」
学「よく、新たに作れたね?」
公一「作り方を知っておるのはワシだけぢゃ。政府に教えてやることを条件に、不起訴にしてやったわい」
学「で、まだ教えていないと」
公一「カードは、持っておくに越したことはないのぢゃ」
高橋「よく長生きできますねぇ……」
学「なー?」
公一「それより、オマエの娘だか嫁だかがピンチということぢゃが、これで足りるかの?」
学「多分……」
まあ、アンプル1本につき、箱入りのユンケルくらいの大きさだから、それが5本くらいあれば足りるのだろう。
実際、伯父さんが今持っているストックはこれだけだというし。
学「ありがとう、伯父さん。この御礼は、必ずするよ」
公一「まあ、礼をするのは政府の方ぢゃろうて」
高橋「キーアイテム確保で、クエスト終了っスね!あとは急いで、東京に引き返しましょう!」
公一「待ちなさい、待ちなさい。今何時だと思っておる?まだ、電車も新幹線も走っておらんぞ?」
学「あっ……」
公一「政府の犬どもが、お前達の動向を気にしておるのぢゃろう?まずは、例の物を手に入れたと報告してはどうかね?それから、指示を仰ぐのが良かろうて」
学「そ、それもそうだな」
私は自分のスマホを取り出した。
それで善場主任に連絡してみる。
すると、すぐに主任は出た。
善場「もしもし?」
学「善場主任、愛原です」
善場「愛原所長、お疲れ様です」
私は現況を善場主任に報告した。
善場「なるほど……。30mlアンプルが5本ですか。まあまあですね。それで結構です。それをお持ちください」
学「帰りの足ですが……」
善場「こちらで調べました。朝一の新幹線は、三島駅6時17分発の“こだま”800号です」
学「6時17分。案外遅いんですね。それでは、どこかの駅から在来線の始発電車にでも乗って……」
善場「いえ、タクシーで向かってください」
学「えっ!?タクシー!?」
善場「はい。お渡ししたチケットがありますね?それで、三島駅まで乗車して結構です。それと、三島駅からですが……」
私はこれからの動きについて、善場主任から事細かに指示を受けた。
学「わ、分かりました」
私は電話を切った。
高橋「どうでした?」
学「三島駅までタクシーで行って、そこから始発の新幹線に乗って戻れということだ」
高橋「マジですか!」
公一「なるべく乗り換えのリスクを減らして、例のブツを安全に運ぼうという魂胆じゃな」
公一伯父さんは、机の上の電話を取った。
そして、どこかへ電話した。
公一「あー、こちら、下条の民宿さのやですが……。朝5時に予約を頼めますかな?……そう。行先は三島駅ですぢゃ。久しぶりの長距離客ですよ。……おお、頼めますか。……うむ。民宿の正面玄関に、よろしく頼みますぞ」
伯父さんがタクシーを手配してくれた。
公一「ふふふ。行先を言ってやったら、飛び付いてきたわい」
学「さ、さすが伯父さん」
公一「さて、まだ時間がある。せっかく来たのだから、ゆっくりしていきなさい。何なら、風呂にでも入るかね?」
学「あー……そうだな。高橋、そういえばオマエ、風呂入ってなかっただろ?」
高橋「た、確かに……」
学「伯父さんの厚意だ。一っ風呂浴びてこい」
高橋「あ、あざーす!」
公一「あとは、隣の部屋に仮眠室があるから、そっちで少し寝てて良いぞ」
学「伯父さん、ありがとう」
公一「なぁに。可愛い甥っ子の為ぢゃ」
学「いつかまた、この民宿を利用させてもらうからね?」
公一「そうしてくれると助かる。嫁が『客を斡旋してくるのはいつだ?答えろ!』と、鬼化してしまっての……」
学「お、伯母さん……俺には優しいのに……」
大石寺絡みのイベントにかこつけるのなら、栗原姉妹に聞くのが良いだろう。
学「伯母さんに、また利用させてもらうからって言っておいてよ。そしたら、伯父さんの顔も立つんじゃない?」
公一「う、うむ。そういうことなら……」
お言葉に甘えて、高橋は大浴場に向かい、私は隣の仮眠室を利用させてもらうことにした。
[同日05時00分 天候:晴 同民宿→タクシー車内]
警備会社にいた時、防災センター勤務の時は、夜中の仮眠があった。
それは4時間取られていたが、ベッドを用意したり、シャワーを浴びたりしているうちに残り3時間となり、起きた後もベッドを片付ける準備などの時間を取らないといけない為、実質的に2時間ないし2時間半程度の仮眠時間しかなかった。
今回もそんな感じであった為、それを思い出しながらの仮眠となった。
学「本当に伯父さん、ありがとうね」
公一「いやいや、何の何の。また来てくれな?」
学「分かったよ。伯母さんにもよろしく」
私と高橋は、タクシーのリアシートに乗り込んだ。
今度は都内でも普通に見かける、トールワゴンタイプのタクシーだったが。
学「三島駅までお願いします」
運転手「三島駅までですね。高速道路を使って宜しいですか?」
学「はい、お願いします」
もちろん、高速代は客持ちである。
しかしこの場合、高速代もデイライトが後で持つことは明らかだった。
タクシーは、全く車通りの無い県道を出発した。
高橋「いやあ、先生の伯父さん、いい人っスね」
学「おおかた、善場主任達への点数稼ぎだよ。まあ、結果的に俺達にはいい事をしてくれたってわけさ」
尚、アンプルはフードデリバリーの配達員が持つようなバッグに入れてある。
こうすることで、衝撃から守ることができ、ある程度の保温もできる。
安全の為、床に置いたり、トランクに入れたり、網棚の上に置いたりしないよう、先に善場主任から注意を受けていた。
なので、膝の上に抱える形となる。
学「何だか帰りの方が緊張するな」
高橋「責任重大ですね」
タクシーは県道から国道469号線に出て、国道139号線に向かったが、早朝の田舎の国道は殆ど車通りなど無かった。