報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再びの長距離旅行準備」

2023-03-26 20:55:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月1日16時00分 天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅]

 実家への電話を終えた私は、その足でJR秋葉原駅に向かった。
 高橋は事務所またはマンションで留守番である。
 今度は仙台方面ということで、秋葉原駅に新幹線のキップなどを買いに行ったのだ。
 都営地下鉄の岩本町駅に近い昭和通り口にも“みどりの窓口”はあったが、そこは廃止され、代わりに指定席券売機が設置されている。
 前回は駅レンタカーの予約の関係もあり、“みどりの窓口”でないとダメな事情で不便を感じたものだが、今回はレンタカーの予定は無いので、新幹線のキップだけで良い。
 そこでキップを買っていると……。

 リサ「先生!」

 後ろから声を掛けられた。
 振り向くと、東京中央学園上野高校の制服に身を包んだリサの姿があった。
 今は人間の姿に化けている状態であり、角とか尖った耳とかは見受けられない。

 愛原「おー、リサか。この時間に下校か」
 リサ「文化祭の準備があったの」
 愛原「おー、文化祭か。もうすぐ文化の日だもんな」
 リサ「そう。何してるの?」
 愛原「また週末、東北へ出張だよ。オマエは何か予定はあるか?」
 リサ「特に無いよ」
 愛原「そうか。上野医師の足取りを探るんだってさ。オマエの記憶が戻る可能性もあるから、一緒に来てもらうぞ」
 リサ「分かった。一緒に帰ろう?」
 愛原「ああ」

 私は購入したキップをしまうと、リサと一緒に岩本町駅に歩き出した。

 愛原「今度は何をやるんだ?まさか、また“バイオハザード”で、オリジナルのリサ・トレヴァーの役をやるんじゃないだろ?」
 リサ「あれはさすがに評判悪かったからね」

 評判が悪かったというよりは、リサがよりオリジナルに近づける為に第3形態くらいまで変化したら、学校中が恐怖のどん底に陥っただけのことである。
 第3形態に無断変化ということでBSAAにも通報が入り、学校上空を何機もの軍用ヘリが飛び交う、リアル“バイオハザード”と化してしまった。

 リサ「うん。不評不評」
 愛原「さすがにもうやらないよな?」
 リサ「今度は“学校の七不思議”ツアーをやることにしました。『魔王軍』で」
 愛原「七不思議って、その殆どにオマエが登場しているだろうが……」
 リサ「わたしは演出役」
 愛原「や、やり過ぎるなよ?またBSAAが誤報で出動したりしたら、シャレにならんぞ?」
 リサ「分かってるよ」

[同日16時12分 天候:晴 千代田区神田岩本町 都営地下鉄岩本町駅→都営新宿線1512T電車先頭車内]

 地下鉄岩本町駅に到着する。
 まだ夕方ラッシュが始まる前ではないが、リサのような学生の姿が目立った。
 岩本町駅も、なかなか地下深い場所にある。
 それでも、ホームは地下3階にある。
 あくまでも、3層目にあるという意味での地下3階なので、ビルの地下階にしたら、地下7階とか、そういう階層になるのではないだろうか。

〔まもなく4番線に、各駅停車、本八幡行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕

 ホームで電車を待っていると、接近放送が鳴り響いた。

 愛原「明日は文化祭前日だから、もっと帰りが遅くなるとか?」

 するとリサ、ニヤリと笑う。
 白いマスクをしているので見えないが、牙が覗いたことだろう。
 一体、何だというのだ?

〔4番線は、各駅停車、本八幡行きです。いわもとちょう、岩本町、秋葉原〕

 電車の先頭車が私達の前で止まり、ホームドアと車両のドアが開く。
 やってきたのは、都営の車両だった。
 乗り入れてくる京王電車と違い、落ち着いた緑色の塗装が特徴だ。
 電車に乗り込んでから、リサは言った。

 リサ「学校に泊まる」
 愛原「えっ!?」

 そして、短い発車メロディが鳴った。

〔4番線、ドアが閉まります〕

 そして、電車のドアとホームドアが閉まる。
 閉まり切ると、運転室の中から発車合図のブザーの音が聞こえ、運転士がガチャッとハンドルを操作する音が聞こえた。
 そして、電車が走り出す。

〔次は馬喰横山、馬喰横山。都営浅草線、JR総武快速線はお乗り換えです。お出口は、左側です〕

 愛原「学校に泊まるって、泊まる所あるの?」
 リサ「うん。講堂があるじゃない?その上にあるの」
 愛原「へえ!」
 リサ「ちょっとした合宿所みたいになっててね。男子用と女子用に分かれていて、どっちも2段ベッドが並んでるの」
 愛原「藤野の研修センターみたいな感じ?」
 リサ「あそこまで立派な物じゃないよ。ベッドだって、パイプベッドの2段ベッドだもん」
 愛原「何だ。風呂とかは付いてるの?」
 リサ「あそこは寝るだけ。でも、水泳部がシャワー貸してくれるって」
 愛原「そうなんだ」
 リサ「『魔王軍』の中には、水泳部もいるからね」
 愛原「あ、そうか。『魔王軍』って別に、文化部だけじゃないんだ」
 リサ「そりゃそうだよ。リンだって、陸上部じゃん」
 愛原「そうだった。……ん?クラスじゃなくて、『魔王軍』で泊まるのか?」
 リサ「うちの学園、少し変わっててね。『クラスごとに出し物』か『部活や同好会ごとに出し物』かって分かれてるの。わたしは今回、後者だね」

 何だ?
 『魔王軍』は同好会か何かの扱いになっているのか?

 愛原「それで、今回は“学校の七不思議”ツアーをやると?」
 リサ「うん、そう。今回泊まる宿泊施設だって、七不思議のオンパレードなんだから」

 どういうわけだか知らないが、その宿泊施設にも幽霊やら妖怪だかの噂があるらしい。
 ただまあ、仮に本当だとしても、人食い鬼のリサに勝てる化け物がいるかどうかは【お察しください】。

[同日16時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 まだ時間も早いので、私とリサはマンションではなく、事務所の方に戻った。

 高橋「何だよ。先生と一緒だったのか?」
 リサ「うん。ちょこっとデート」
 高橋「くぉらぁ!」
 愛原「それより、留守中何かあったか?」
 高橋「ねーちゃんから電話があって、新幹線のキップを買ったら、先に精算するんで、領収証送ってくれってことっス」
 愛原「あ、そうなんだ。じゃあ、そうしよう」

 もちろん私は、領収証も発行していた。
 キップと同じ紙質であるが、指定席券売機で新幹線代の領収証も発行できる。
 但し、ちゃんとした領収証が欲しい場合は、“みどりの窓口”に行かないとダメだ。
 デイライトさんの場合は、券売機で発行された領収証でも良いとのことである。

 高橋「じゃあ、俺は夕飯の支度がありますんで」
 愛原「ああ、頼むよ」
 リサ「今日の夕飯なに!?」
 高橋「あぁ?トンカツ定食にしようって思ってるぜ」
 リサ「やった!」

 高橋が出て行くと……。

 愛原「そういや学校に泊まるって言ってたけど、食事はどうするんだ?風呂はまあ、水泳部のシャワー室が借りられるとして……」
 リサ「ふっふっふ。家政部が料理の試作のついでに、夕食作ってくれることになってるの。それを頂く」
 愛原「ちゃっかりしてるなぁ……」
 リサ「まあ、実際は材料費カンパしたり、わたし達も手伝ったりはするんだけどね」
 愛原「そりゃそうだ。タダメシはダメだぞ」
 リサ「はーい」
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“私立探偵 愛原学” 「晩秋初めの仕事」

2023-03-26 16:05:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[11月1日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 私達は先日の業務報告をしに、善場主任を訪ねた。

 善場「先日はお疲れさまでした」
 愛原「いえいえ、こちらこそ、大した仕事はできませんで……」
 善場「とんでないです。『一般人がたまたま白骨死体を発見した』ことが重要なのです」

 あまり意味の理解できない善場主任の発言だが、BSAAの都合でもあるのだろう。

 愛原「白骨死体からだと、DNA鑑定とかが難しそうですね」

 歯の治療痕などで身元が分かる場合もあるが、今回はかなり損傷が激しい死体だったので、上手く行くのかどうか……。

 善場「そこは専門機関の尽力に期待する他はありません。リサの方ですが、調子はどうですか?」
 愛原「今のところは、大きな暴走も無く、いつも通りです。今朝は新しい制服を着て、登校していきました」
 善場「そうですか」
 愛原「段々と絞り込めそうな感じですか?ついにリサの肉親が、上野という名前の医師だとか……」
 善場「そうですね。少し、話が大きくなりそうですので、もしかすると愛原所長方の出番はしばらく無いかもしれません」
 愛原「ど、どういうことですか?」
 善場「上野医師は医療ミスで患者を死なせてしまった為、福島県桧枝岐村に逃亡したというのは大まかに分かっていることですが……」
 愛原「はい」
 善場「その経緯は不明です。警察の捜査から逃れる為に、なるべく山間の田舎に……というのは心理だと思います。今から50年前……1970年代と言いますと、ろくに国道も開通していなかったでしょうし……」

 なるほど。
 私達が通った国道352号線だの401号線だの、番号の遅い国道は、比較的国道としての指定が最近であることが多い。
 特に、400番台はそうだ。

 善場「縁もゆかりもない村に、どうして上野医師が向かったのか不明です」
 愛原「アンブレラと関係があると……?」
 善場「白井がダイレクトに上野医師を襲撃したことが気になります。実は上野医師は、アンブレラと繋がりがあったのかもしれません。ただ……」
 愛原「ただ?」
 善場「上野医師が勤めていたという病院は今もあるのですが、何しろ50年前ということもあり、記録が残っていません」
 愛原「ああ……確かに」
 善場「医療ミスということは刑事事件になっている可能性がありますので、警視庁に照会中ですが、ちょっと気になる情報がヒットしまして……」
 愛原「何ですか?」
 善場「その上野医師が医療ミスを起こした患者というのは、暴力団員であったということです」
 愛原「ヤクザさんですか!」

 ということは上野医師は警察から逃げていたのではなく、ヤクザから逃げていたのか?
 そのヤーさんがどんな地位の人間だかは知らないが、報復しようとはするだろう。
 今は法律でがんじがらめになっている為、今のヤクザにそこまでできるかどうかは不明だが、半世紀前なら、まだまだヤクザも元気に活動していただろうから、やりたい放題だっただろう。
 警察に駆け込んだら駆け込んだで、今度は刑事罰が待っているだろうし。
 それで逃亡したか。

 愛原「……それじゃ、確かに民間人の私は……出る幕は無さそうですね」
 善場「そういうことです」

 警察からもヤクザからも追われる身になって、医者というのは大変だ。
 ……と、この時はそう思っただけだった。

[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原「ヒマだな……。デイライトさんの仕事は、来ればデカいんだが、引き受けている最中は、他の仕事が受けられないっていうのが難点だな」

 午後は全く仕事の依頼もなく、ヒマだった。

 高橋「斉藤社長がマトモだったら、こういう時に雑用でも仕事をくれたから助かってたっスね」
 愛原「絵恋さんのお守りとかな」
 高橋「そうっス!あのレズガキの世話係!」
 愛原「あと、事務所の移転先とかも探さないといけないし……」
 高橋「俺の知り合いにも当たっていて、いくつか候補があるんスけど、先生のお気に召さないようですし……」
 愛原「全部繁華街とか、ガラの悪い所ばっかじゃねーか。しかも空き店舗になった理由が、犯罪臭プンプンで、とても安心して入居できるもんじゃない」
 高橋「交通の便はいいから、客も来ますよ?」
 愛原「そういう問題じゃない。事務所だけならそういう所でも百歩譲れるが、住む所も一緒に探すんだからな」
 高橋「はあ……」

 だいたい、新宿の歌舞伎町とか池袋の繁華街とか、確かに便利な所ではあるものの、その分、家賃も高い。
 にも関わらず、家賃がここより安いって、事故物件以外の何物でもないだろう。
 暴力団の組事務所に近かったり、半グレの拠点に近かったりと、危険極まりない。
 そういう所で、営業許可を警察に取らないといけない探偵業が事務所を開いていいとは思えない。
 と、そこへ電話が掛かってきた。
 やっとこさ、依頼の電話だろうか?

 愛原「お電話ありがとうございます。愛原学探偵事務所でございます」
 善場「愛原所長、お疲れ様です」
 愛原「ああ、善場主任。お疲れです」
 善場「午前中の話の続きなのですが、今、お電話よろしいでしょうか?」
 愛原「あ、はい。どうぞ」
 善場「愛原所長は、仙台にご実家がありましたね?」
 愛原「はい、そうですが?」
 善場「仙台市若林区○○ですね?」
 愛原「そうです」
 善場「出身中学校はどちらになりますか?」

 私は自分の出身中学校の名前を行った。

 善場「それは好都合というものです」
 愛原「は?」
 善場「上野医師には、数人の女性の姿が周囲にありました」
 愛原「それで?」
 善場「白骨死体のうちの1つなのですが、とても若い女性でした。年齢は10代から20代と思われます。ところが、当時の上野医師の妻や、桧枝岐村で再婚したという未亡人とは年齢が合いません。そこで、もう1人を調べてほしいのです」
 愛原「10代から20代……って、ちょっと待ってください。上野医師って、桧枝岐村にいた時って、いくつくらいだったんですか?」
 善場「50代前半と思われます」

 私は開いた口が塞がらなかった。
 50代前半で、10代から20代の奥さんがいただと!?
 リサだって、私の押しかけ女房みたいなこと言っているが、その年齢差以上だで?

 愛原「その……上野医師の若い奥さんが、私の出身中学校と同じ中学校卒だったんですね?」
 善場「そうです。彼らの足取りを辿れば、何か分かると思いますので、次はその調査をお願いします」
 愛原「分かりました」

 私は電話を切った。
 えーと、1970年代か……。
 卒業アルバムでも見ればいいか。
 今はさすがに個人情報保護の観点から、住所録なんてものは無いと聞くが、当時はあっただろう。
 それと、もう1つ、気づいたことがあった。

 愛原「俺の母親も、同じ中学校卒なんだよな……」
 高橋「そうなんスか?」
 愛原「母親は24~25歳で、俺の父親と結婚して、俺を生んでいる。まあ、1980年代だったから、女性のそのくらいの年齢で結婚というのは平均的だっただろう。つまり、母親はその10年前、1971年くらいに中学校を卒業しているわけだ」

 母親と同窓生だったらウケるが、そう都合よくはいかないか……。
 うーむ……。
 私はスマホを取り出し、それで実家に電話してみることにした。
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