報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの救命」

2023-03-03 20:21:24 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月22日07時30分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 某診療所]

 覆面パトカーは赤いパトランプを点灯させ、サイレンを鳴らして出発した。
 緊急走行した為か、思ったよりも早く診療所のビルに着いた。
 再び地下駐車場に進入し、そこから非常用エレベーター(通常は荷物用エレベーター)で診療所へと向かう。

 善場「愛原所長、お疲れさまです」

 善場主任が出迎えてくれた。
 土曜日でも午前中は診察が行われる為か、職員達が普通に出勤している。

 愛原「お待たせしました。リサの状態はどうですか?」
 善場「暴走はしていません」

 私は例の物を渡しながら聞いたが、善場主任の返事は曖昧なままだ。
 善場主任は、すぐにBSAAの医官に『アイコール』を渡した。

 愛原「リサの様子は……」

 しかし、私達は入室を禁じられた。
 特別処置室への入室を……。

 善場「えー……単刀直入に申しますと、今のリサは、とても愛原所長方にお見せできる状態ではありません」
 愛原「ど、どういうことですか!?」
 善場「……どう見ても、人間の姿をしていないと申し上げれば良いでしょうか」
 愛原「それって、暴走!?」
 善場「変化に関しては自己制御できなくなった部分はあるでしょう。しかし、変化は著しいものの、ここの建物を破壊しようとしたり、死傷者を出そうとしたりはしておりません。なので、BSAAの定義に当てはまる『暴走』には当たらないのです。ただ、最重要警戒態勢であることに変わりはありません」
 愛原「その割には、診察はやるんですね」
 善場「午前中だけですし、ここは普段から施錠されているドアですので」
 高橋「どう見ても化け物か。よく殺処分にしなかったな?」
 善場「これで暴れたりしたら、もうアウトなんですけどね」
 愛原「この処置室から飛び出るほどの変化とかしたら、どうなるんですか?」
 善場「さすがにタイムリミットでアウトでしょう。こちら側は『通常の』エリアなのですから」
 愛原「タイムリミット……」
 善場「だから、所長方は間に合ったのです。良かったですね」
 愛原「そ、そうですか……」
 善場「お疲れさまでした。あとは私共に任せて、所長方はお休みください」
 愛原「しかし、リサが心配です」
 高橋「先生……」
 愛原「私に、何かできることはないでしょうか?」
 善場「なるほど……」

 善場主任は少し考え込む仕草をした。
 そして……。

 善場「それなら、お願いしましょう」
 愛原「何ですか!?」
 善場「リサの着替えを取ってきてあげてください」
 愛原「は?」
 善場「リサはとんでもない姿に変化したことで、着ていた服が全部破れてしまいました。羽織る物だけでしたら、検査着とかがありますが、それ以外の下着や私服がありません。もしも可哀そうだと思うなら、取りに行ってあげては如何でしょう?」
 愛原「それもそうですね!それと、泊まり込みの準備だ!」
 高橋「は、はい」
 善場「あ、いえ、BSAA関係者以外の泊まり込みは禁止されております」
 愛原「ええー!?」

 もしもリサが伯父さんの発明品で元に戻れたなら、きっと寂しがると思うのだ。

 善場「もしも泊まり込みを御希望でしたら、泊まりの準備をしまして、15時にこのビルのエントランスまでお越しください」
 愛原「えっ?」
 善場「その頃には、リサにも何がしかの変化が起きているかもしれません」
 愛原「そ、そうなんですか?」
 善場「それまでは、御自宅でお休みください」
 愛原「は、はあ……」
 善場「部下に伝えておきますので、御自宅までお送りしましょう」
 愛原「も、申し訳ありません」

 私達は善場主任のお言葉に甘えることにした。

[同日08時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私と高橋は、先ほどの覆面パトカーでマンションまで送ってもらった。
 但し、今度は緊急走行ではない。

 高橋「先生、どうしますか?」
 愛原「そうだな。まずは一眠りしようか。準備はそれからだ。昼過ぎに起きる形にしよう」
 高橋「はい」
 愛原「あー……いや、ちょっと待った。先にリサの着替えから用意してあげよう。バッグはあるか?」
 高橋「キャリーバッグでいいっスか?」
 愛原「そうだな」

 私はリサの部屋に入った。
 心なしか、リサの匂いが充満しているような気がする。
 少女には少女の体臭があるからだろう。
 えーと……リサって、普段なに着てるっけ?
 体操服とブルマは、さすがにダメだろう。
 下着は……。

 高橋「先生。なに化け物のクロゼット開けて、キンチョーしてるんスか?」
 愛原「そりゃ緊張するだろ。17歳になったばかりの女の子の部屋だぞ」
 高橋「見た目は全然中坊でしょう?」
 愛原「そりゃそうだけど、そういう問題じゃない」
 高橋「リサのヤツ、スポプラとかそういうの着けてるんスから、そういうのでいいんスよ」

 高橋は手慣れた様子で、リサの下着が入っている引き出しを開けた。

 高橋「こ、これは……!?」
 愛原「な、何だよ!?」

 高橋はショーツの詰まっている引き出しから、派手なTバックを発掘した。

 高橋「化け物ガキの癖に、こんなもの持ってやがりますよ!?」
 愛原「け、怪しからん……あ、いや、別にいいだろ!」

 リサのヤツ、いつの間に手に入れやがった?
 しかし、穿いている所を見たことがないが……。
 私が清楚な綿パンを穿いているJK動画を観ていることに気づいて、控えているのだろうか。

 高橋「ったく!ねーちゃんが来て、見繕えばいいんだよ!」
 愛原「善場主任は、向こうの監視が忙しいからねぇ……」

 取りあえず、下着数点と着替えを何点か用意して、それをバッグの中に入れた。

 愛原「よし。取りあえず、こんな所でいいだろう。俺達の泊まりセットなんて、適当でいい」
 高橋「そうっスね。いざとなったら、現地調達でもいいっスよね?あの辺、周りにコンビニとかありましたし」
 愛原「そうだとも」

 私達は取りあえず、一眠りすることにした。
 何せ昨夜は、民宿で2~3時間の仮眠を取った後は、ほとんど寝ていないのだ。

 高橋「昼過ぎくらいに起床っスか?」
 愛原「そんなところだ」
 高橋「昼飯は何にします?」
 愛原「冷蔵庫にあるもので、何か適当に作ってくれよ。トーストにベーコンエッグとか」
 高橋「朝飯みたいっスね。まあ、何とかなると思います」
 愛原「頼むよ」

 私はそう言って、自分の部屋に入った。
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“私立探偵 愛原学” 「早朝の帰京」

2023-03-03 16:08:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月22日06時00分 天候:晴 静岡県三島市一番町 JR三島駅→東海道新幹線800A列車16号車内]

 私も高橋も、タクシーの中で居眠りをしてしまったようだ。
 しかし、アンプルの入った箱はちゃんと手に持っている。

 運転手「まもなく着きますよ」

 運転手の言葉で、私はハッと目が覚めた。

 愛原「おっと!」

 私は慌てて中身を確認した。
 しかし、アンプルはちゃんと無事だった。
 危ない危ない。
 今度はちゃんと寝ないようにしないと。
 タクシーは、三島駅北口に到着した。

 愛原「タクシーチケットで払います」

 私は善場主任からもらったタクシーチケットで料金を支払った。
 メーターなので、軽く1万5千円を超えている。

 運転手「ありがとうございました」

 私は眠い目をこする高橋をタクシーから降ろすと、一緒にタクシーから降りた。

 愛原「おいおい、しっかりしろよ」
 高橋「さ、サーセン。あとは帰るだけとなったら、何だか安心しちゃって……」
 愛原「ここは日本だからまだいいが、これが外国だったら、帰りは絶対無事では済まないぞ。タクシーの時点で、国道や高速でヴェルトロの車とカーチェイスだ」
 高橋「! おー!それなら俺に任せてください!全機、ガードレール激突でオシャカにしてみせます!」
 愛原「本当に現れたら、だぞ」

 カーチェイスと聞いたら、急に元気になりやがって……w

 愛原「とにかく、キップを買うぞ」
 高橋「うっス!」

 東京駅までの新幹線のキップを買うと、すぐに改札口の中に入った。

 愛原「昨日と同じ場所に、車が迎えに来てくれるらしい。日本橋口に最も近い車両に乗るぞ。即ち、先頭車だな」
 高橋「分かりました」

 土曜日の早朝ということもあり、ホームに乗客は少なかった。
 これが平日ともあれば、新幹線通勤の利用者で賑わうのだろう。
 早朝ということもあって、まだ空いている店は無い。
 また寝てしまうとマズいので、ホームの自販機でコーヒーを買っておくことにした。

 高橋「先生、俺一服してきます」
 愛原「ああ、分かった」

 高橋はホーム上の喫煙所に向かった。
 その間、私は16号車の位置に並んでおく。

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ まもなく6番線に、6時17分発、“こだま”800号、東京行きが入線致します。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から6号車までと、11号車から16号車です。……〕

 三島の車両所から回送されてきたと思われる、回送列車が入線してくる。
 とはいえ、ここに所属している車両は無い為、あくまでも電留線にて夜明かしをしただけである。
 入線してきたのは、往路と同じN700Aであった。
 ……もしかして、昨日の終電と同じ車両だったりして?

〔「6時17分発、“こだま”800号、東京行きです。まもなくドアが開きます」〕

 ドアが開くと、私は荷物を手に車内に入った。
 そして、先に2人席を確保しておく。

〔「おはようございます。本日も新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。6時17分発、“こだま”800号、東京行きです。三島を出ますと、熱海、小田原、新横浜、品川、終点東京の順に止まります。……」〕

 高橋のことだから、どうせ発車時間ギリギリに戻ってくるだろう。

 高橋「戻りましたー」
 愛原「ありゃ?案外早い」
 高橋「それと先生、朝食です」
 愛原「えっ?」

 高橋は私にアンパンを渡して来た。

 愛原「あれ?キヨスク空いてたか?」
 高橋「自販機で売ってました」
 愛原「ああ、こういう自販機あったのか」

 たまにホームでも、パンやらお菓子やら売ってる自販機が置かれているが、ここにもあったのか。

 愛原「で、アンパン……」
 高橋「張り込みの基本っスよね」
 愛原「いや、別に張り込み中じゃねーし。まあ、いいや。ありがとう。アンパンもいいもんだよ」
 高橋「『アンパン』っスね」
 愛原「ん?」
 高橋「『チョコパン』も『氷砂糖』もありますよ?」
 愛原「クスリか!」

[同日06時17分 天候:晴 東海道新幹線800A列車16号車内]

〔「レピーター点灯」〕

 発車の時間になり、ホームから発車ベルの音が鳴り響く。
 発車メロディが導入されているのは、東京駅のようだ。

〔6番線、“こだま”800号、東京行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください〕

 三島駅にはホームドアが無い。
 なので文言も、『安全柵』ではなくなるわけだ。

〔「6番線から、“こだま”800号、東京行きが発車致します。……ITVよーし!……ドアが閉まります。駆け込み乗車は、おやくめださい。……乗降、終了!……ドアが閉まります」〕

 ブー!というけたたましい客扱い終了合図のフザーと共に、ドアが閉まる。
 東北新幹線などは音声が流れるのに対し、東海道・山陽新幹線はドアチャイムである。
 在来線普通列車のそれと違い、甲高い音色ではない。

 愛原「発車したか?」
 高橋「発車しました」

 列車はダイヤ通りに発車した。

〔♪♪(車内チャイム。“AMBITIOUS JAPAN”)♪♪。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“こだま”号、東京行きです。終点、東京までの各駅に止まります。次は、熱海です〕

 私はアンパンとボトル缶コーヒーを飲み干すと、善場主任にメールした。
 予定通り、始発の新幹線に乗った旨をである。
 すぐに返信が来た。
 下車駅が東京駅であるのと、東京駅からの予定は変わらないらしい。
 しかし、リサの様子を聞いたが、これは既読スルーされた。
 リサのヤツ、そんなに悪いのだろうか?
 暴走したら、それはそれで連絡をくれるはずだから、そうではない所を見ると……。

[同日07:06.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 列車は東へ進む度に乗客を乗せて行く。
 先頭車などは空いている方だろうが、中間車は案外満席に近いかもしれない。
 私はトイレに行ったり、高橋はまたタバコを吸いに行ったりした。
 もちろん、例の物は交替で見張る。
 そうこうしているうちに、列車は新横浜、品川と乗客を降ろしていく。
 列車ダイヤは乱れていないし、ヴェルトロみたいなのが車内でテロしてくることもない。
 日本は平和だ。

〔♪♪(車内チャイム“AMBITIOUS JAPAN”♪♪。まもなく終点、東京です。【中略】お降りの時は、足元にご注意ください。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 品川を出ると、通勤電車達と並走する。
 平日なら通勤・通学客でごった返す日だが、土曜日ということもあって、座席は埋まっていて、吊り革に掴まる客が散見されるものの、満員ということはない。

〔「ご乗車お疲れさまでした。まもなく終点、東京、東京です。14番線に入ります。お出口は、右側です。お降りの際、電車とホーム間が広く空いている所がございます。お足元に、ご注意ください。……」〕

 限りある敷地内で、有効長を確保する為に、新幹線ホームは曲がっている。
 特に14番線・15番線は、元々東北新幹線のホームだった為に、余計曲がっている。

 愛原「忘れ物は無いな?」
 高橋「大丈夫っス」

 列車が停車し、ドアが開く。

〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕

 私達は運転室後ろのドアから降りた。
 そして、進行方向の階段に向かって進む。
 昨夜通ったルートとは、逆方向に向かうわけである。
 日本橋口改札を出ると、その足で日本橋口へ向かう。

 善場の部下「こちらです!」

 そして、丸の内中央ビル横の緊急車両スペースに、あの覆面パトカーが止まっていた。

 愛原「おはようございます!」
 善場の部下「すぐに向かいます。ご乗車ください」
 愛原「分かりました!」

 私と高橋は、再びリアシートに乗り込んだ。
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