[10月30日10時00分 天候:曇 福島県南会津郡桧枝岐村 道の駅『尾瀬桧枝岐』]
旅館をチェックアウトした私達は、車に乗り込んで国道352号線を進んだ。
案の定、5分と掛からず、道の駅に到着する。
日曜日ということもあり、駐車場には他県ナンバーの車が多く見受けられた。
そしてその中に、都内でも見覚えのある車を見つけた。
それはBSAAの医療車だった。
くすんだ緑色に、大きく赤十字のマークを付けている所は自衛隊の救急車と酷似している。
日本のBSAAは殆どが自衛隊からの出向者で構成されていることから、こういう車両も自衛隊から出向しているのかもしれない。
で、実際の自衛隊のそれとの見分け方は、ナンバープレートや所属が明記されていることだろう。
自衛隊のナンバープレートと違い、しっかり陸運局からのそれを付けている。
もちろん、8ナンバーだが。
そして、ボディにもBSAA-JFAと書かれている。
JFAとは、『Japan Far East』の略である。
極東支部日本地区本部のことだな。
愛原「高橋、あそこの近くに止めてくれ」
高橋「分かりました」
雨は上がっているが、まだ空はどんより曇っている。
BSAAの車の近くに止めて、そこから降りると、私達の存在に気付いたBSAA隊員も車から降りてきた。
BSAA隊長「この度は、御足労ありがとうございます」
BSAAの軍服を着た隊長が敬礼をした。
愛原「こ、これはどうも、ご丁寧に……。それで、今日は何の御用でしょうか?」
隊長「単刀直入に申し上げます。そこにいるリサ・トレヴァー『2番』の遺伝子を採取させて頂きたいのです」
愛原「遺伝子を採取???」
隊長「ここでは何ですから、車の中へ」
さすがに目立つからか、一般人達がこちらを見ている。
愛原「は、はい」
荷台のハッチを開けると、中は救急車のそれとあまり変わらなかった。
隊長「愛原さんが見つけてくれた白骨死体との関係性を調べたいので、遺伝子採取にご協力をお願いします。具体的には、採血をさせて頂ければと思います」
愛原「そういうことですか。リサ、いいか?」
リサ「先生の命令なら聞くよ」
愛原「じゃあ、協力してやってくれ」
リサ「分かった」
もし私やリサの夢が正夢なのだとしたら、あの白骨死体達は白井が率いるUBCSに殺されたリサの両親なのかもしれない。
しかし、ここで疑問が残る。
愛原「私の推理では、あの白骨死体は人間だった頃のリサの両親ではないかと考えています」
隊長「それを確認したいのです」
愛原「だとしたら、1つ疑問が残るんですよ」
隊長「何でしょう?」
愛原「桧枝岐村は落人伝説が残る村で、村民達の殆どはその子孫だと言われています。その為、苗字も3つしかないと言います」
もちろん、公務員など(小中学校教師、消防職員、医療関係者、郵便局員やインフラ事業、ライフライン事業関係者など)、他地域から来て働いている者は除く。
隊長「そうですね」
愛原「しかしリサの人間だった頃の苗字は、『上野』です。違う苗字の人間が住んでいたなら、この村では目立つと思うのです」
隊長「そうですね。だからこそ、村外れの林道の、それも脇道を入った所に住んでいたのではないでしょうか」
愛原「いやいやいや!林道って言ったら、林業関係者が主に使う道じゃないですか。いくら林道の本道からは見えない所とはいえ、そんな所に家を建てて住んでいたら、それはそれで目立ちませんか?」
この村では、林業も主たる生業の1つだろう。
そして、それこそ地元民の仕事であると思うのだ。
にも関わらず、よそ者がそんな所にいたら……。
隊長「こちらの調査では、それが許されていたのではないかと見られています」
愛原「許されていた?どういうことですか?」
隊長「これは50年くらい前の話になるのですが……」
1970年代の頃だ。
この村に、1人の医者がやってきた。
東京の病院で働いていたのだが、医療ミスで患者を死なせてしまい、それからしばらくして、妻も病気で亡くなったので、その菩提を弔う旅をしていて、この村に流れ着いたのだと、村人に話したのだそうだ。
愛原「その医者、もしかして白井という……」
隊長「いえ、上野という名前だったそうです。白井とは直接何の関係もありません」
愛原「何だ……って、上野!?」
この村で受け入れられたのは、通り掛かった際に、山仕事をしていた村人が急病で倒れていたところを助けたばかりか、村長(桧枝岐村の村長ではなく、地区長という意味)の病気も治したのが理由だった。
上野はこの村に住むつもりは最初は無かったが、村長(地区長)が大事な医者をこの村に留める為、村の未亡人を宛がい、外堀を埋める形で結婚させ、この村に住まわせたのだという。
尚、現在この村は無医村ということはなく、旅館ひのえまたの近くに診療所がある。
隊長「はい」
愛原「ここで、リサのルーツが出てくるのか……」
隊長「そのようです」
愛原「だとしたら、堂々と村の中心部に住めばいいのに、どうしてあんな場所に?」
隊長「今はもうとっくに時効を迎えていますが、医療ミスということで、刑事事件で捜査が行われていたようです。警察に逮捕されるのを恐れていたのではないでしょうか」
愛原「マジか……」
地区長や住民は、それを知っていたのであろうか?
仮に知っていたとしても、無医村だったこの村に、念願の医者を留まらせる為には、村ぐるみで隠ぺいくらいはしたかもしれない。
さすがに今は隠せないだろうが。
で、白井はそれを嗅ぎ付けて、やってきたというわけかな。
でも、どうして上野医師の所だったのだろう?
私がその疑問を投げると、まださすがにそこまでは分かっていないようだった。
隊長「今のところ、こちらで分かっているのは、これだけです」
愛原「ありがとうございます」
リサは採血を受けた。
以前にもされたように、10本くらいは取られていた。
隊長「ありがとうございました。ではまた何かありましたら、ご協力のほど、よろしくお願い致します」
愛原「いいえ、恐れ入ります」
これで話が終わり、私達は解放されたのだった。
愛原「それじゃ、次の道の駅に行くか」
高橋「はい」
旅館をチェックアウトした私達は、車に乗り込んで国道352号線を進んだ。
案の定、5分と掛からず、道の駅に到着する。
日曜日ということもあり、駐車場には他県ナンバーの車が多く見受けられた。
そしてその中に、都内でも見覚えのある車を見つけた。
それはBSAAの医療車だった。
くすんだ緑色に、大きく赤十字のマークを付けている所は自衛隊の救急車と酷似している。
日本のBSAAは殆どが自衛隊からの出向者で構成されていることから、こういう車両も自衛隊から出向しているのかもしれない。
で、実際の自衛隊のそれとの見分け方は、ナンバープレートや所属が明記されていることだろう。
自衛隊のナンバープレートと違い、しっかり陸運局からのそれを付けている。
もちろん、8ナンバーだが。
そして、ボディにもBSAA-JFAと書かれている。
JFAとは、『Japan Far East』の略である。
極東支部日本地区本部のことだな。
愛原「高橋、あそこの近くに止めてくれ」
高橋「分かりました」
雨は上がっているが、まだ空はどんより曇っている。
BSAAの車の近くに止めて、そこから降りると、私達の存在に気付いたBSAA隊員も車から降りてきた。
BSAA隊長「この度は、御足労ありがとうございます」
BSAAの軍服を着た隊長が敬礼をした。
愛原「こ、これはどうも、ご丁寧に……。それで、今日は何の御用でしょうか?」
隊長「単刀直入に申し上げます。そこにいるリサ・トレヴァー『2番』の遺伝子を採取させて頂きたいのです」
愛原「遺伝子を採取???」
隊長「ここでは何ですから、車の中へ」
さすがに目立つからか、一般人達がこちらを見ている。
愛原「は、はい」
荷台のハッチを開けると、中は救急車のそれとあまり変わらなかった。
隊長「愛原さんが見つけてくれた白骨死体との関係性を調べたいので、遺伝子採取にご協力をお願いします。具体的には、採血をさせて頂ければと思います」
愛原「そういうことですか。リサ、いいか?」
リサ「先生の命令なら聞くよ」
愛原「じゃあ、協力してやってくれ」
リサ「分かった」
もし私やリサの夢が正夢なのだとしたら、あの白骨死体達は白井が率いるUBCSに殺されたリサの両親なのかもしれない。
しかし、ここで疑問が残る。
愛原「私の推理では、あの白骨死体は人間だった頃のリサの両親ではないかと考えています」
隊長「それを確認したいのです」
愛原「だとしたら、1つ疑問が残るんですよ」
隊長「何でしょう?」
愛原「桧枝岐村は落人伝説が残る村で、村民達の殆どはその子孫だと言われています。その為、苗字も3つしかないと言います」
もちろん、公務員など(小中学校教師、消防職員、医療関係者、郵便局員やインフラ事業、ライフライン事業関係者など)、他地域から来て働いている者は除く。
隊長「そうですね」
愛原「しかしリサの人間だった頃の苗字は、『上野』です。違う苗字の人間が住んでいたなら、この村では目立つと思うのです」
隊長「そうですね。だからこそ、村外れの林道の、それも脇道を入った所に住んでいたのではないでしょうか」
愛原「いやいやいや!林道って言ったら、林業関係者が主に使う道じゃないですか。いくら林道の本道からは見えない所とはいえ、そんな所に家を建てて住んでいたら、それはそれで目立ちませんか?」
この村では、林業も主たる生業の1つだろう。
そして、それこそ地元民の仕事であると思うのだ。
にも関わらず、よそ者がそんな所にいたら……。
隊長「こちらの調査では、それが許されていたのではないかと見られています」
愛原「許されていた?どういうことですか?」
隊長「これは50年くらい前の話になるのですが……」
1970年代の頃だ。
この村に、1人の医者がやってきた。
東京の病院で働いていたのだが、医療ミスで患者を死なせてしまい、それからしばらくして、妻も病気で亡くなったので、その菩提を弔う旅をしていて、この村に流れ着いたのだと、村人に話したのだそうだ。
愛原「その医者、もしかして白井という……」
隊長「いえ、上野という名前だったそうです。白井とは直接何の関係もありません」
愛原「何だ……って、上野!?」
この村で受け入れられたのは、通り掛かった際に、山仕事をしていた村人が急病で倒れていたところを助けたばかりか、村長(桧枝岐村の村長ではなく、地区長という意味)の病気も治したのが理由だった。
上野はこの村に住むつもりは最初は無かったが、村長(地区長)が大事な医者をこの村に留める為、村の未亡人を宛がい、外堀を埋める形で結婚させ、この村に住まわせたのだという。
尚、現在この村は無医村ということはなく、旅館ひのえまたの近くに診療所がある。
隊長「はい」
愛原「ここで、リサのルーツが出てくるのか……」
隊長「そのようです」
愛原「だとしたら、堂々と村の中心部に住めばいいのに、どうしてあんな場所に?」
隊長「今はもうとっくに時効を迎えていますが、医療ミスということで、刑事事件で捜査が行われていたようです。警察に逮捕されるのを恐れていたのではないでしょうか」
愛原「マジか……」
地区長や住民は、それを知っていたのであろうか?
仮に知っていたとしても、無医村だったこの村に、念願の医者を留まらせる為には、村ぐるみで隠ぺいくらいはしたかもしれない。
さすがに今は隠せないだろうが。
で、白井はそれを嗅ぎ付けて、やってきたというわけかな。
でも、どうして上野医師の所だったのだろう?
私がその疑問を投げると、まださすがにそこまでは分かっていないようだった。
隊長「今のところ、こちらで分かっているのは、これだけです」
愛原「ありがとうございます」
リサは採血を受けた。
以前にもされたように、10本くらいは取られていた。
隊長「ありがとうございました。ではまた何かありましたら、ご協力のほど、よろしくお願い致します」
愛原「いいえ、恐れ入ります」
これで話が終わり、私達は解放されたのだった。
愛原「それじゃ、次の道の駅に行くか」
高橋「はい」