報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「藤野に向かう」

2023-03-08 20:19:41 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月23日13時36分 天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅→中央快速線1331T電車先頭車内]

 リサはラバースーツを着せられ、BSAAのヘリコプターに乗せられて行った。
 私と高橋は一旦帰宅し、更なる連泊の準備をし、それから東京駅に向かった。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、13時36分発、中央特快、大月行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、神田に、停車します〕

 昼食も取った後で、中央線ホームに行く。
 そこで、中央本線に直通する中央特快に乗り込んだ。
 これなら普通の快速よりも速いし、乗り換え無しで藤野まで行ける。
 高橋にとっては、途中の喫煙ポイントが無くなって大変だろうがな。

〔この電車は中央線、中央特快、大月行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、三鷹、国分寺、立川、立川からの各駅です〕

 10両編成の電車は、だいたい座席が埋まるほどの混み具合だ。
 私と高橋はオレンジ色を基調とした色柄の座席に腰かけると、発車を待った。

〔「13時36分発、中央線の中央特快、大月行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時刻になり、ホームに発車メロディが鳴り響く。
 特にオリジナルのメロディというわけではなく、首都圏のJR駅なら、だいたいよく聞くタイプである。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 ドアチャイムを鳴らしながら、電車のドアが閉まる。
 音色は都営新宿線の都営の車両と同じだ。
 そして、中央線ホームにはホームドアが無いので、ドアが閉まり切ればすぐに発車する。
 ここから藤野までは、1時間15分ほど。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、中央線、中央特快、大月行きです。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

 今のところ、善場主任からは何も連絡は無い。
 リサに更なる変化があれば、すぐに連絡してくれることになっているのだが、今の所は放電以外に何も異常は無いってことか。

 高橋「もうしばらく行かなくていいと思ってた場所に、また行くことになるとは……」
 愛原「オマエの免許は、少なくともうちの事務所には必要だってことが分かったか?」
 高橋「サーセン。気をつけます」

 と、その時、善場主任からメールが来た。
 まさか、リサに何かあったのか?
 そう思った私だったが……。

 善場「藤野駅からタクシーで来られる場合は、タクシー代をお支払い致しますので、領収証を取っておいてください」

 とのことだった。
 あー、びっくりした。
 私が一緒にいないと、リサの精神状態が不安定になり、更なる暴走に繋がる恐れがある。
 その為、私も一緒にいないといけないのは分かるが……。

[同日14時50分 天候:曇 神奈川県相模原市緑区 JR藤野駅→国家公務員特別研修センター]

 電車は特快ということもあり、停車駅は少なかった。
 ただ、立川から各駅停車になるので、そこから長く感じられたが。
 高尾駅では、6分ほど停車した。
 そこで乗務員が交替し、中央本線の普通列車として更に西へ進む。
 断続的にトンネルが続く山路を走行し、見覚えのある景色が広がった。

〔まもなく藤野、藤野。お出口は、右側です〕

 そして、平地が少ない故に、幅が狭いホームに滑り込んだ。

 愛原「またもや、ここに来ることになろうとは……」
 高橋「乗り換え無しなのはいいんスけど、ヤニが回復できないのは辛いっスね」
 愛原「知らんよ。だったら、タバコやめりゃいいだろ」
 高橋「ハハハ……」

〔ふじの~、藤野~。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野原に、停車します〕

 私達は電車を降りると、階段に向かって歩いた。

 愛原「ちょっとトイレに行ってこよう」
 高橋「俺も行きます」

 最近では中央快速線用の電車にもトイレが付いて、2023年度からグリーン車も連結されるようになるが、つい最近までトイレは付いていなかったのだ。
 私と高橋は改札口すぐ近くのトイレに立ち寄って、用を足してから改札の外に出た。
 改札口も自動化されていて、ICカードが使える。
 そして駅の外に出ると、タクシー乗り場にはタクシーが止まっていた。
 地元のタクシー会社である。
 これに乗り込み、まずは研修センターに向かった。
 国道20号線に出て、少し走ってから外れて、相模湖の橋を渡る。
 それからしばらく走ると、例の重厚な壁が現れた。
 まるで、刑務所のようである

 運転手「ここでいいですか?」
 愛原「はい、ありがとうございます」

 私達は前回そうしたように、正門前でタクシーを降りた。
 料金を払い、領収証をもらっておく。
 そして、荷物を降ろして、通用口のインターホンを鳴らした。

 愛原「こんにちは。またお世話になります」

 電気錠のロックを遠隔で外してもらい、私達は守衛所の前まで進んだ。
 そして、顔なじみとなってしまった守衛長と対面する。

 守衛長「急に緊急体制が発動されたもので、何事かと思いましたよ」
 愛原「ヘリコプター、ここに来ましたか?」
 守衛長「ええ。向こうにヘリポートがあるんですが、そこに着陸していきましたよ」
 愛原「やっぱり……」

 私は守衛所で入構手続きを行った。

 守衛長「それでは、本日も新館にお泊りください」
 愛原「本館は稼働しませんか?」
 守衛長「いえ、逆です」
 愛原「逆?」
 守衛長「緊急体制が発動されたもので、BSAA関係者や、政府関係者などがわんさかやってきまして、本館はほぼ満室です」
 愛原「マジですか!」
 守衛長「一応、ここでは『一般人』なのは愛原さん達だけなので、新館に入ってもらえれば静かだと思いますので……」
 愛原「あー、すいません」

 しかし、食堂は本館にしかないので、食事は向こうで済まさないといけないだろう。

 愛原「善場主任は来ていますか?」
 守衛長「ヘリコプターで来られた方ですね。本館に入られてます」
 愛原「そうですか……」

 私と高橋は入構証を貸与されると、まずは本館に向かった。
 緊急体制ということもあり、守衛達が巡回を強化している。
 これでもし入構証を持っていなければ、すぐに守衛に見咎められることだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「リサの新しい能力」

2023-03-08 15:47:04 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月23日10時45分 天候:曇 東京都中央区日本橋浜町 都営地下鉄浜町駅周辺→某診療所]

 東武浅草駅前からタクシーに乗り、診療所に向かった私と高橋。
 そして、ようやく診療所のビルの近くまで来た時だった。

 愛原「!?」

 突然、上空から爆発音らしき音と、ガラスが割れる音がした。
 そして!

 運転手「うわっ!」

 タクシーの屋根やフロントガラス、ボンネットなどに、コンクリート片やガラス片が落ちてきた為、運転手は急ブレーキを踏んだ。
 私や高橋の体が前のめりになる。
 法令で決められてるとはいえ、シートベルトを着用していて良かった。

 運転手「も、申し訳ありません!大丈夫ですか!?」
 愛原「あ、ああ!」

 コンクリート片の当たったフロントガラスには、大きなヒビが入り、ボンネットもベッコリ凹んでいた。

 愛原「一体、何が?」

 私は助手席後ろに座っていた。
 すぐに窓を開け、状況を確認してみる。
 高橋は運転席後ろに座っていて、そちら側のドアの窓を開けようとしていたが開かない。
 それもそのはず。
 トヨタ・ジャパンタクシーの運転席後ろのドアの窓は開かない構造になっているのだ。

 愛原「ああっ!」

 診療所のあるビルが、何がしかのダメージを受けていた。
 しかも階層的に、診療所のある辺りのフロアだ。

 愛原「リサに何かあったのかもしれん!」

 まあ、何かがあったから、早く帰って来いと善場主任に言われ、タクシーに飛び乗ったのだが、間に合わなかったようだ。

 愛原「私達はここで降ります!」
 運転手「あ、分かりました。お怪我は無いですか?」
 愛原「大丈夫です!」

 私は料金を払うと、タクシーから飛び降りた。
 高橋も後から続く。
 案の定、ビルの通用口からは、非常ベルや慌ただしい防災センターの様子が見て取れた。

 愛原「7階の診療所まで」
 警備員「ご冗談でしょう!?今、その7階で爆発があったんですよ!」

 防災センターの受付で警備員に行先を告げると、当たり前だが驚かれた。

 愛原「何が爆発したんですか?」
 警備員「不明です!また爆発の危険性があるので、ビルの外に避難してください!」

〔「こちらは、防災センターです。先ほど、7階におきまして、大きな爆発が発生しました。これに伴い、館内が停電しております。また、火災警報につきましても……」〕

 通りで館内が暗いわけだ。
 点いているのは非常灯の明かりと、非常口誘導灯と消火栓の赤ランプだけである。

 高橋「リサのヤツ、今度こそ暴走っスかね?」
 愛原「うわ……!」

 私と高橋が1度、ビルの外に出ようとした時だった。

 善場「愛原所長!」

 奥から善場主任が走って来た。
 爆発の影響を受けたのだろうか、顔などが煤けている。

 愛原「善場主任!一体、何があったんですか?」
 善場「現地で説明します!一緒に来てください!」
 警備員「しかし現在、総避難指示が……」
 善場「いえ、爆発そのものはもう起きません!」
 警備員「えっ!?」
 善場「火災も起こりませんので、その辺は御心配無く!」

 善場主任は、私達をエレベーターホールに引っ張って行った。
 館内は停電しているので、通常のエレベーターは使えない。
 そこで、非常予備電源で動く非常用エレベーターを使うわけだ。
 普段は、荷物用エレベーターに使われている。
 そのエレベーターで、診療所のフロアへと上がった。

 愛原「リサは暴走したんですか?」
 善場「短時間だけですが……。それも、ただの暴走ではないんですよ」
 愛原「ただの暴走ではない?!」

 どういうこっちゃ?

 善場「リサは変化したり、理性を失ったりした暴走をしたわけではありません」
 愛原「えっ?」

 人間の姿で、尚且つ正気のまま暴走したってことか?
 それ、暴走って言うのか?

 善場「こっちです!」

 診療所フロアへと到着する。
 ここは明らかに、焦げ臭い臭いが立ち込めていた。
 診療所はメチャクチャら壊れている。

 善場「ガラスの破片などに気をつけてください」
 愛原「は、はい!」

 BSAAやビル関係者が慌ただしく出入りする中、私達は診療所の中へと入った。

 愛原「人的被害は無かったのですが?」
 善場「リサの監視に当たっていたBSAAの医官と衛生兵が重軽傷です」

 そして、リサがいた特別処置室に入ると……。

 愛原「こ、これは……!」
 高橋「メチャクチャっすね……」

 室内は物がメチャクチャに壊れ、窓ガラスは強化ガラスだったというが、全て割れてしまっている。
 そして、壁も一部が破壊されて穴が開いていた。

 愛原「ああ、なるほど。そういうことか」

 私は壊れた窓から、外を覗いてみた。
 その下には、私達がタクシーを降りた道路がある。
 タクシーに降り注いだ破片は、ここから落ちたものだったのだ。
 人に当たらなくて良かったと思う。

 愛原「……って、人に当たったりはしなかったんですか!?」
 善場「それは目下のところ、調査中です。今、地元の警察署や消防署が確認に当たっています。ビル内での被害は、ここだけですね」
 愛原「一体、どうしてこんなことに?リサは?」
 善場「これから、安全な場所に連れて行きます」
 リサ「ごめんなさい……」

 隣の部屋からリサがやってきた。
 リサ自身に、何も変化は無かった。
 ……いや、厳密に言うとある。
 肩までしかなかった髪は腰まで伸びており、第1形態の時は額の上に一本角が生えるだけだったのだが、それが二本角に変わっていた。
 そして、たまに両手や角、口からパチッと火花が飛び散る。

 善場「放電体質になったようです」
 愛原「放電!?」
 善場「高圧電流が体の中から漏れ、それが先ほどの大爆発を引き起こしたのです」
 高橋「寄生虫より怖ェじゃねーか!直流何ボルトだ!?」
 善場「1500ボルトはあったとされています」
 愛原「JRの在来線並みか……。電車を走らせるほどの電力って……」
 善場「危険ですので取りあえず、隔離します」

 リサもさすがマズいことをしたと思ったか、善場主任の隔離という言葉に拒絶反応を示すことはなかった。

 善場「ヘリコプターで、藤野の施設に連れて行こうと思います。あそこなら地下施設ですので、ここみたいに周辺に被害を及ぼすことはありません」
 愛原「でしょうね」

 このビルの屋上にはヘリポートがあり、そこにBSAAのヘリコプターが到着することのことだ。
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