[10月29日05時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅→都営新宿線511T電車最後尾車内]
出発の日になり、私達は早朝の菊川駅にいた。
土曜日の早朝ということもあり、駅構内には人は疎らである。
リサも高橋も、眠そうな顔で電車を待っている。
〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
トンネルの向こうから、電車の轟音と強い風が吹いてくる。
最後尾の車両が止まる位置で電車を待っている為、風をもろに受ける形となるだろう。
リサはグレーのパーカーを着ていて、フードを被っている。
今は人間に化けれているようだが、変異後の状態にまだ慣れていないので、間違って変化しても隠す為である。
愛原「おい、電車が来るぞ。下がってろ」
高橋「うっス……」
都営の車両が入線してきた。
平日の同じ時間と比べると、確かに客は少ない。
〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕
最後尾の車両に乗り込む。
すぐに、短い発車メロディが流れた。
〔1番線、ドアが閉まります〕
電車のドアと、ホームドアが閉まる。
それから、乗務員室から発車合図のブザーが聞こえてくると、電車が動き出した。
関東ではブザー一択だが、名鉄や関西の私鉄ではチンベルを鳴らすようだ。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
私達が最後尾に乗っているのは、何もリサが同行しているからだけではない。
途中の馬喰横山駅で都営浅草線に乗り換えるのだが、向こうの東日本橋駅とは尻合わせの状態になっている為、上り電車からの乗り換えの場合、連絡通路が後ろ側にあるからだ。
リサ「ふわ……!」
リサは大きな欠伸をした。
白いマスクをしているからバレてないが、さすがに牙までは隠せないもよう。
昔は、牙も隠せていたこと考えると、人間から遠ざかっているような気がしてならない。
角も1本増えてしまったし。
[同日06時03分 天候:晴 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅]
〔2番線の電車は、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きです。あさくさ~、浅草~。地下鉄銀座線、東武鉄道線はお乗り換えです〕
京急電車が浅草駅に到着する。
都営浅草線内では京急電車に縁があるが、たまたま京急線内から乗り入れてきたのだろう。
様々な会社の電車が来るからか、浅草駅にはホームドアが無い。
東京メトロの浅草駅よりも東武浅草駅からは離れているので、少し歩かないといけない。
何しろ、住所が違う点でお察しだ。
リサ「前乗りとか、できなかったの?」
愛原「まさかオマエが変化するとは思わなかったんだ。学校を休むわけにはいかなかったし、それで土日の1泊だよ」
さすがに日帰りできるとは思っていなかった。
なので、現地で宿は取っている。
リサ「ふーん……」
都営地下鉄浅草駅から、東武浅草駅に移動する。
その際に一旦地上に出る。
真冬ならまだ暗い時間だが、秋の今はもう日が出ている。
今日は天気が良く、地上に出た瞬間、朝日がアサヒビール本社ビルの方から差し込んできた。
リサ「眩しい……」
リサは日光を手で遮った。
この際、目の色がまた変わる。
白目が黒くなり、瞳がグレー……。
瞳が赤くなる時より、更に不気味さを増している。
愛原「この目の色の変化は、何とかならんのか?」
リサ「えっ?変わってるの?」
自覚が無いのか……。
そう思っていると、また元の色に変わる。
光の加減で変わるのか???
高橋「先生、朝飯は駅弁スか?」
愛原「そうしたいんだけどねぇ、朝早すぎて、駅弁売ってないんだよ」
リサ「ええっ?それじゃ……」
愛原「途中の下今市駅辺りでワンチャン狙うしかない」
リサ「車内販売は?」
愛原「もう東武特急では無くなった」
高橋「……コンビニ買いですかね」
愛原「そういうことだな。まあ、昼飯や夕食は何とかなるだろう」
私達は東武浅草駅前のコンビニに立ち寄ることにした。
[同日06時20分 天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅→東武スカイツリーライン1101列車先頭車内]
愛原「キップは1人ずつ持とう。どうせ終点の会津田島駅も、自動改札じゃないからな」
高橋「分かりました」
新幹線と違って、座席は2人席しかないので、鍵型に乗るしかない。
リサと高橋には後ろに乗ってもらって、私はその前に座ればいいだろう。
特急ホームにはインフォメーションを兼ねた中間改札があり、そこで特急券の確認が行われる。
〔「3番線に停車中の電車は、6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。1号車から3号車が会津田島行き、4号車から6号車が東武日光行きです。お手持ちの特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席をご利用ください。……」〕
ホームの前の方に向かって歩く。
東武浅草駅は、ターミナル駅としては特殊な構造をしていて、駅を出ると、すぐ90度に近い右カーブがあるのである。
駅のホームからして既に曲がっており、前の方に行けば行くほど細くなるという構造になっている。
リサ「代替修学旅行を思い出す」
愛原「ああ。その時も、このリバティだったな」
しかも、同じく先頭車だ。
今回は代替修学旅行と違って夜行列車はなく、朝出発の電車だ。
土曜日の朝ということもあり、既に多くの行楽客がドアが開くのを待っている。
ただ、その多くがお年寄りの団体だったり、外国人グループという辺りに格差を感じるのは、私が格差を一身に受けるロスジェネ世代だからだろうか。
〔「お待たせ致しました。まもなくドアが開きます」〕
ドアが開くと、前の車両の方には渡り板が置かれる。
ホームが湾曲しているので電車とホームの間が広く空く為、乗客が落ちないようにする為である。
この渡り板は、発車の直前に外される。
〔♪♪♪♪。東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。……〕
高橋「飲み物買って来ます」
愛原「そうしよう。まあ、俺はコーヒーだな」
高橋「了解っス」
座席に荷物を置くと、高橋はホームの自販機に向かって行った。
コンビニで食べ物とペットボトルは購入したが、それとは別にコーヒーでもといったところだ。
それにしても、私達のように終点まで乗って行く客はどれだけいるのだろうか?
多くが鬼怒川温泉辺りで降りそうな気がして、しょうがないのだ。
出発の日になり、私達は早朝の菊川駅にいた。
土曜日の早朝ということもあり、駅構内には人は疎らである。
リサも高橋も、眠そうな顔で電車を待っている。
〔まもなく1番線に、各駅停車、笹塚行きが、10両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください〕
トンネルの向こうから、電車の轟音と強い風が吹いてくる。
最後尾の車両が止まる位置で電車を待っている為、風をもろに受ける形となるだろう。
リサはグレーのパーカーを着ていて、フードを被っている。
今は人間に化けれているようだが、変異後の状態にまだ慣れていないので、間違って変化しても隠す為である。
愛原「おい、電車が来るぞ。下がってろ」
高橋「うっス……」
都営の車両が入線してきた。
平日の同じ時間と比べると、確かに客は少ない。
〔1番線の電車は、各駅停車、笹塚行きです。きくかわ~、菊川~〕
最後尾の車両に乗り込む。
すぐに、短い発車メロディが流れた。
〔1番線、ドアが閉まります〕
電車のドアと、ホームドアが閉まる。
それから、乗務員室から発車合図のブザーが聞こえてくると、電車が動き出した。
関東ではブザー一択だが、名鉄や関西の私鉄ではチンベルを鳴らすようだ。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
私達が最後尾に乗っているのは、何もリサが同行しているからだけではない。
途中の馬喰横山駅で都営浅草線に乗り換えるのだが、向こうの東日本橋駅とは尻合わせの状態になっている為、上り電車からの乗り換えの場合、連絡通路が後ろ側にあるからだ。
リサ「ふわ……!」
リサは大きな欠伸をした。
白いマスクをしているからバレてないが、さすがに牙までは隠せないもよう。
昔は、牙も隠せていたこと考えると、人間から遠ざかっているような気がしてならない。
角も1本増えてしまったし。
[同日06時03分 天候:晴 東京都台東区駒形 都営地下鉄浅草駅]
〔2番線の電車は、京成押上線直通、各駅停車、青砥行きです。あさくさ~、浅草~。地下鉄銀座線、東武鉄道線はお乗り換えです〕
京急電車が浅草駅に到着する。
都営浅草線内では京急電車に縁があるが、たまたま京急線内から乗り入れてきたのだろう。
様々な会社の電車が来るからか、浅草駅にはホームドアが無い。
東京メトロの浅草駅よりも東武浅草駅からは離れているので、少し歩かないといけない。
何しろ、住所が違う点でお察しだ。
リサ「前乗りとか、できなかったの?」
愛原「まさかオマエが変化するとは思わなかったんだ。学校を休むわけにはいかなかったし、それで土日の1泊だよ」
さすがに日帰りできるとは思っていなかった。
なので、現地で宿は取っている。
リサ「ふーん……」
都営地下鉄浅草駅から、東武浅草駅に移動する。
その際に一旦地上に出る。
真冬ならまだ暗い時間だが、秋の今はもう日が出ている。
今日は天気が良く、地上に出た瞬間、朝日がアサヒビール本社ビルの方から差し込んできた。
リサ「眩しい……」
リサは日光を手で遮った。
この際、目の色がまた変わる。
白目が黒くなり、瞳がグレー……。
瞳が赤くなる時より、更に不気味さを増している。
愛原「この目の色の変化は、何とかならんのか?」
リサ「えっ?変わってるの?」
自覚が無いのか……。
そう思っていると、また元の色に変わる。
光の加減で変わるのか???
高橋「先生、朝飯は駅弁スか?」
愛原「そうしたいんだけどねぇ、朝早すぎて、駅弁売ってないんだよ」
リサ「ええっ?それじゃ……」
愛原「途中の下今市駅辺りでワンチャン狙うしかない」
リサ「車内販売は?」
愛原「もう東武特急では無くなった」
高橋「……コンビニ買いですかね」
愛原「そういうことだな。まあ、昼飯や夕食は何とかなるだろう」
私達は東武浅草駅前のコンビニに立ち寄ることにした。
[同日06時20分 天候:晴 東京都台東区花川戸 東武浅草駅→東武スカイツリーライン1101列車先頭車内]
愛原「キップは1人ずつ持とう。どうせ終点の会津田島駅も、自動改札じゃないからな」
高橋「分かりました」
新幹線と違って、座席は2人席しかないので、鍵型に乗るしかない。
リサと高橋には後ろに乗ってもらって、私はその前に座ればいいだろう。
特急ホームにはインフォメーションを兼ねた中間改札があり、そこで特急券の確認が行われる。
〔「3番線に停車中の電車は、6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。1号車から3号車が会津田島行き、4号車から6号車が東武日光行きです。お手持ちの特急券の座席番号をお確かめの上、指定の席をご利用ください。……」〕
ホームの前の方に向かって歩く。
東武浅草駅は、ターミナル駅としては特殊な構造をしていて、駅を出ると、すぐ90度に近い右カーブがあるのである。
駅のホームからして既に曲がっており、前の方に行けば行くほど細くなるという構造になっている。
リサ「代替修学旅行を思い出す」
愛原「ああ。その時も、このリバティだったな」
しかも、同じく先頭車だ。
今回は代替修学旅行と違って夜行列車はなく、朝出発の電車だ。
土曜日の朝ということもあり、既に多くの行楽客がドアが開くのを待っている。
ただ、その多くがお年寄りの団体だったり、外国人グループという辺りに格差を感じるのは、私が格差を一身に受けるロスジェネ世代だからだろうか。
〔「お待たせ致しました。まもなくドアが開きます」〕
ドアが開くと、前の車両の方には渡り板が置かれる。
ホームが湾曲しているので電車とホームの間が広く空く為、乗客が落ちないようにする為である。
この渡り板は、発車の直前に外される。
〔♪♪♪♪。東武鉄道をご利用頂き、ありがとうございます。この電車は6時30分発、特急“リバティけごん”1号、東武日光行きと特急“リバティ会津”101号、会津田島行きです。……〕
高橋「飲み物買って来ます」
愛原「そうしよう。まあ、俺はコーヒーだな」
高橋「了解っス」
座席に荷物を置くと、高橋はホームの自販機に向かって行った。
コンビニで食べ物とペットボトルは購入したが、それとは別にコーヒーでもといったところだ。
それにしても、私達のように終点まで乗って行く客はどれだけいるのだろうか?
多くが鬼怒川温泉辺りで降りそうな気がして、しょうがないのだ。