報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「復讐人形」 2

2016-08-30 21:00:35 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月27日07:00.天候:晴 宮城県仙台市太白区 平賀家 平賀太一、平賀奈津子、メイドロイド1号機の七海]

 七海:「おはようございます。太一様」
 太一:「ああ、おはよう……」

 平賀太一が大欠伸しながら、寝室から出てくる。
 既にキッチンには、メイド服姿の七海が朝食を作っていた。
 平賀太一はポチッとテレビを点ける。

 奈津子:「ちょっと、あなた!先に顔洗ってからとかにしてちょうだい!」

 妻の奈津子に注意された。

 太一:「へーい……」

 寝ぼけ眼でダイニングの椅子から立ち上がる太一。
 風呂場の洗面所に行くと、壁に掛けているラジオを点けた。
 太一は顔を洗ったり、髭を剃ったり、歯磨きしたりとかで、何だかんだで20分は洗面台にいる。
 そんな中、無音でいるのは何だろうということで、余っている携帯ラジオを置いていた。

〔「おはようございます。朝7時のNHKニュースをお送りします。まずは、速報です。今日午前2時半頃、埼玉県秩父市にあるDCJ、デイライト・コーポレーション・ジャパンの秩父ロボット研究所で、大きな事故が発生しました。この研究所では、5月に発生したデイライト・コーポレーション・インターナショナルのリトルロック研究所で起きたヒューマノイドロボット、通称『アンドロイド』の暴走事故で捕獲されたロボット2体が保管されていた研究所で……」〕

 太一:「ブボッ!」(←事件のショックで、歯ブラシ吹き飛ばした)

〔「……事件を起こしたアンドロイド2機が、何らかの原因により所内で暴走。所内の関係者に重軽傷を負わせて、逃走したもようです」〕

 太一:「マジかよ……!?」

〔「尚、この際、東飯能駅前にてDCJの社員2人が狙撃され、重傷を負っています」〕

 太一:「ジャニスとルディが脱走した!?……こりゃ、ロクでもないことが起きるぞ……!」

〔「そうなんですよ。これはきっと、ロクでもないことが起きると私は見ています」〕

 と、そこへラジオから敷島の声が聞こえて来た。

 太一:「敷島さん!?」

〔「リトルロック事件の再来が起こる恐れがあります。デイライトさんには何としてでも全力で、あの2機を捕獲してもらいたいと思っております。もちろん、私もボーカロイドを専門に扱う芸能事務所の経営者として、できる限りの協力をしたいと思っていますね」「……以上、現場かから中継でお送りしました」〕

 太一:「さすがは“東京決戦”の英雄さんだ。もう現場に掛けつけていたのか……」

 1人感心する太一だった。
 その後、改めてテレビで事件の様相を知った太一達だった。

[同日09:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 東北工科大学・南里志郎記念館 平賀太一&マルチタイプ1号機のエミリー]

 平賀:「エミリー」
 エミリー:「Доброе утро.(ドゥーブラエ・ウートラ)」
 平賀:「? お前、ロシア語モードになってるぞ?」
 エミリー:「……失礼・しました。おはようございます。プロフェッサー平賀」
 平賀:「ああ、おはよう。DCJ秩父研究所の事件のことは聞いてるか?」
 エミリー:「Да.(ダー)」
 平賀:「おい、またロシア語だぞ」
 エミリー:「……失礼・しました。はい、シンディから・聞いて・おります」
 平賀:「ジャニスとルディが脱走したことは、一大事どころの騒ぎじゃない。敷島さんの話によると、ジャニスはしきりに、人間に対する復讐を唱えていたそうだ。あの時のことを恨んでいるとするならば、ここに来て自分やお前に復讐しようとするかもしれない。くれぐれも、油断しないように警戒をしてもらいたい」
 エミリー:「・・・・・・・」
 平賀:「? エミリー?どうした?」

 エミリー、口をパクパクしている。
 そして……バタンと床に倒れた。

 平賀:「おい、エミリー!?」

 エミリーは口から排熱を行うが、時折湯気のようなものが出てくる。

 平賀:「くっ……熱い!」

 どうやらエミリー、体温調節系統に不具合が発生したらしい。

 平賀:「おい、誰か!エミリーを至急運ぶのを手伝ってくれ!」

 平賀は館内にいたセキュリティロボットを呼ぶと、急いで館内の地下研究室に運ばせた。

[8月27日09:30.天候:曇 埼玉県秩父市DCJ秩父研究所 敷島孝夫、アリス敷島、マルチタイプ3号機のシンディ]

 シンディ:「館内探索の結果、ジャニスとルディが潜伏している確率は限りなくゼロに近いことが分かりました」
 アリス:「ご苦労様。警察にはその旨伝えておくから。そうなると、ジャニスとルディはどこへ行ったかってことになるね」
 シンディ:「私達を相当恨んでいるようですから、いつかは私達の所に現れるものと思われます」
 アリス:「だよね。もうこの研究所には用は無いわ。取りあえず、科学館に行くか家に帰って……って、あれ?タカオは?」
 シンディ:「向こうで電話しています」

 すると敷島、電話を切って急いで戻ってくる。

 アリス:「こんな時にビジネスの電話?」
 敷島:「むしろ、そっちの方がハッピーさ。残念だが、深刻な事態が発生した」
 シンディ:「なに?今度はルディが何かやった?」
 敷島:「違う。実は今、平賀先生から電話があったんだが、エミリーが故障したそうだ」
 シンディ:「姉さんが……故障!?そんな……!」
 敷島:「もちろん、平賀先生の手に掛かれば修理可能な程度なんだけども、原因をはっきりさせてから修理完了させるまで、最低3日間は電源を落とさないといけないんだそうだ」
 アリス:「向こうのセキュリティが心配だね。エミリーや平賀教授だって、ジャニス達の恨みの対象なわけでしょう?」
 シンディ:「マリオとルイージでも回す?あんまり役に立たない感じだけどォ……」
 敷島:「おい、シンディ。ああ見えても、マリオとルイージはアリスが作ったロボットだからな?」
 シンディ:「はっ!?」
 アリス:「まあ、確かに最新型とはいえ、所詮バージョン・シリーズな辺りが、たかが知れてはいるけどねぇ……」
 シンディ:「も、申し訳ありません!マスター!口が過ぎました!」
 アリス:「いいのよ。さすがに実弾あっさりパクられたのは、大失態だと思うわ」
 敷島:「それにしても奴ら、どこへ消えたんだ?GPSとか付けてなかったのか?」
 アリス:「それがあったら、苦労しないわよ。まさか、自分で足作って脱走するなんて、考えもしなかったわよ」

 ジャニスとルディは上半身だけアリス達の手で修理されていたが、夜中の間にこっそりと自分の足を作っていたのだった。
 マルチタイプはよほどのことが無い限り、シャットダウンしない。
 再起動が面倒だからだ。
 たかだかエミリーがオーバーヒートの修理程度で、3日間も電源が落ちる状態になるというのもその辺に理由があるようだ。
 ジャニスとルディの場合は、そのせいで裏をかかれてしまったわけだが……。
コメント (7)
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