報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「秋深し 隣は何を する人ぞ 魔道師どもが 地獄談義す」

2017-11-25 20:27:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日13:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 大江戸温泉物語“仙台コロナの湯”]

 大浴場から出て食事処に移動する。

 稲生:「昼から飲むなんて、なかなか無いですね」
 イリーナ:「まあまあ。一杯くらいいいでしょ。アタシが奢るから」
 マリア:「さすがは師匠」

 稲生とマリアはビール、イリーナはウィスキーだった。

 稲生:「マリアさん、大丈夫?ビールって、酔いやすいんでしょ?」
 マリア:「一杯くらいなら大丈夫」
 稲生:「そ、そうですか」
 イリーナ:「まあ、酔い潰れたら酔い潰れたで、ユウタ君にとっては大功徳になるわけだね」
 稲生:「酔っ払って女性にわいせつ行為をしたら堕ちる地獄もちゃんとあるので、遠慮しておきます」

 八大地獄の1つ、衆合地獄に落とされる。
 尚、それを取り巻く十六小地獄なのだが……。
 その半分ほどがAVの内容を網羅している為、それらをマネてプレイした者は全員衆合地獄行きだ。おめでとう!

 イリーナ:「仏法やってれば許されるんじゃないの?
 稲生:「さすがに団処や朱誅処行きは無いと思います

 尚、修羅河童においては無彼岸受苦処に飛ばされると思われる。
 あんなのでも、無間地獄までは行きそうに無いんだよなぁ……。
 悪くても大焦熱地獄ってところか。

 稲生:「ってか、先生は地獄界も全てご存知なんですか?」
 イリーナ:「うん。キリスト教の地獄も知ってるよ」
 稲生:「一応あるんですね」
 イリーナ:「あるある」

 イリーナはクイッとウィスキーのグラスを空けた。

 イリーナ:「このウィスキー、美味しい。お代わり頼んじゃお」
 稲生:「一杯だけにするんじゃないんですか?」
 マリア:「酒の飲み過ぎたヤツの堕ちる地獄は無いのか?」
 稲生:「ありますよ。そこが正に、キノの実家がある叫喚地獄です」
 イリーナ:「ただ酒を飲み過ぎるってだけじゃダメなのよ。その酒に毒を入れて人殺しをしたり、他人に酒を飲ませて悪事を働くように仕向けたりしたら堕ちるの」
 稲生:「文献に、『赤い服を着た巨大な獄卒が罪人を追い回して弓矢で射る』ってありますけど、キノを見てたら何となく分かります。あいつは赤銅色の肌をした赤鬼だし、身長も185cmはある筋肉質だから、僕みたいな小柄な人だとズーンとでっかく見えるんですよね。もっとも、武器は弓矢ではなく刀だけど」

 但し、マンガの“刃牙”や“ジョジョ”みたいなあからさまな筋肉ってわけでもない。
 気痩せするタイプなのか、着物を着ていると筋肉質には見えない。
 キノが赤銅色の肌をしているのは、地獄界の炎によって肌が焼けたからだという。
 亡者を獄炎で焼き、責め苦を与える地獄界であるが、責め苦を与える側も何らかのとばっちりを受けているというわけだ。
 閻魔大王でさえ、例外ではない。
 閻魔大王の顔が赤いのは、彼もまた亡者の出身であるが故、部下の獄卒達から責め苦を受けているからだという。

 マリア:「地獄か。私も師匠に拾われなければ、今頃地獄の中か……」
 イリーナ:「そうね。ダンテ先生が自ら地獄界を視察され、『神曲』を作り上げたのよ。作るのに相当苦労されたらしくて、ようやっと世間に公表できるようになった時には14世紀になっていたって」
 稲生:「『神曲』は実際に大師匠様が見て来たキリスト教の地獄でしたか!」

 公表するに当たって、色々と問題があったようである。
 まず、詩人として、あくまでも詩曲として公表するようにという注文が然るべき所から入っただとか……。

 稲生:「もしかして、大師匠様が魔道師の組織を作られた理由って……」
 イリーナ:「ユウタ君の想像にお任せするわ。当たっているかもしれないし、外れているかもしれない。とにかく、あのお爺さんは私達直弟子でさえ、計り知れない所があるから」
 マリア:(その師匠の直弟子である私も、師匠の考えていることが分からない)

 歴史は繰り返す!
 きっとマリアや稲生も弟子を取った際、その弟子からも同じようなことを言われるのだろう。

 イリーナ:「おっと。やっぱり地獄の話はメシマズね。これくらいにしておいて、ランチにしましょう。私達は地獄界に堕ちる者ではない。落とす側なんだから」
 稲生:「えっ?」
 マリア:「私のやった復讐劇が、似たようなものでしたね」

 マリアはそう言って、ビールのジョッキを口に運んだ。

 それから2時間後……。
 リラクゼーションルームでマッサージを受けているイリーナとマリアの姿があった。

 セラピストA:「この辺も、だいぶお疲れですね」
 イリーナ:「そうなのよ。もうあっちこっちガタが来て大変……う〜、そこそこ……!アッー!【ぴー】!【ぴー】!」
 セラピストA:「この辺……この辺ですか?では、この辺を重点的に流していきますね」

 隣のベッドで、その様子を見ていたマリア。

 マリア:(ヨガり方が18禁ものだな。伏せ字になってる。ったく、いい歳して……)
 セラピストB:「それでは足の裏を拳で流していきます。痛かったら仰ってください」
 マリア:「はい……」

 ゴリゴリ……ゴリゴリ……。

 マリア:「かかとと土踏まずの辺りがゴリゴリ言ってる……」
 セラピストB:「そうですね。老廃物が溜まってらっしゃるようです。少し強めに流して参ります」

 グリグリ!グリグリ!

 マリア:「【ぴー】!」
 イリーナ:「マリア、あなたも人のこと言えないわよ」
 マリア:「サーセン……」

 リラクゼーションルームの外にいた稲生は……。

 稲生:「何だろう?一瞬、エロ動画の音声に似たようなものが聞こえて来たような……?」

 後にマリアは旅日記に、こう書いた。
『日本のリラクゼーション最高!』
 と。

[同日16:00.天候:晴 セガ仙台コロナワールド]

 温泉を堪能した魔道師達は、仙台コロナワールド内にあるゲーセンに移動した。

 マリア:「あれ取って、あれ!」
 稲生:「あれですか、はいはい」

 稲生は持ち前の技術でクレーンゲームに挑戦した。

 ミク人形(ロリ形態):「あれ欲しい」
 ハク人形(ロリ形態):「これ欲しい」
 稲生:「はいはい!」

 稲生、器用にクレーンを操作する。

 稲生:「これでいいかな?」
 ミク人形(ロリ):「わぁい」
 ハク人形(ロリ):「わぁい」
 イリーナ:「本当はこれ、簡単に取れるものじゃないんでしょ?よく取れるねぇ……」

 尚、稲生がクレーン操作中、対象物が何らかの力で、ある方向にズズッズズッと僅かに動いていたように見えなくも無かったが、あえてイリーナは黙認したという。
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“大魔道師の弟子” 「“荒城の月”聴き道師は東方へ 巡る温泉 巡る杯」

2017-11-23 19:12:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日11:50.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 ミヤコーバス鶴巻バス停→コロナワールド仙台・大江戸温泉物語]

 バスが最寄りのバス停に止まる。
 県道23号線上にあるバス停だ。
 片側3車線の幹線道路で、上空には仙台東部道路という名の高速道路まで通っている。
 この県道、路線名を仙台塩釜線という何とも味気無い名前であるのだが、地元民には別の名前を言った方が通用する。
 産業道路と。
 同じ通称の道路が埼玉県にもあり、何を隠そう顕正会本部会館入口の県道がそうなのだが、大幹線道路としての宮城県道を知っている身としては、埼玉県の産業道路が小規模に見えてしょうがない。
 もちろん、片側1車線しか無いとはいえ、交通量は多く、密度的にはほぼ同じである。
 因みに路線バスの本数に関しては、埼玉県の方が軍配が上がる。
 とはいえ、さすがの埼玉県も顕正本部横の道路で産業道路と名乗るのはさすがにショボいと思ったか、そこから更に東の方に“第二産業道路”を整備しており、そちらは線形も道幅も申し分ないものとなっている。

 稲生:「埼玉県の産業道路のいい所は、人口密度の高い所を通る為に、風の吹き通りが悪いということであります。ここは場合によっては荒れ地の横を通るもんだから、やけに風の通りがいいんです。まあ、何が言いたいかって言うと……」
 マリア:「ユウタ。ラッキースケベというのは、狙ってやるものなのか?ああ?」
 稲生:「風が強い日がやたら多いということです」

 マリア、スカートの裾を押さえている。

 イリーナ:「まあまあ。早いとこ行こうよ。これ、冬だったら吹雪になるってこと?」
 稲生:「仙台市東部は雪が少ないんですが、場合によってはそうなります」

 3人の魔道師達はバスを降りて、目的の場所に向かった。

 マリア:「寒い寒い……」
 稲生:「早いとこ中に入りましょう」

 イリーナとマリアはローブのフードを被っている。
 それでも顔には容赦なく冷たい風が拭き付けるので、それが体感温度を下げていた。

 稲生:「はい、到着しました」
 イリーナ:「さすがに中は暖かいねぇ……」
 マリア:「……ックシュ!」

 マリアはまたくしゃみをした。

 稲生:「大丈夫ですか、マリアさん?」
 マリア:「大丈夫……」
 稲生:「はい、ティッシュ」

 稲生はマリアにポケットティッシュを渡した。

 マリア:「ありがとう」

 取りあえずそれで鼻をかむ。

 イリーナ:「東海地方、地獄界、東北地方と気候の変化が激しい所を巡ったから、体の具合が心配よね」
 稲生:「そっかぁ……」

 確かに東海地方というと温暖な気候の地域というイメージがあるが、そうは言っても富士山の近くの富士宮市では、宮城県とそんなに変わらないような気がする。
 地獄界が問題だ。
 八大地獄は八熱地獄とも称される熱帯地域であるからだ。
 閻魔庁などは温度管理されているせいか、そこまで暑くはなかったが、それでも常春の都アルカディアと比べれば暑い。

 稲生:「まあ、今日は寒波が来て木枯らしも吹く日で、特に寒いらしいです。いつもは、ここまで寒くないので……」
 イリーナ:「取りあえず早く、温泉に入らないとマリアが本当に風邪を引いちゃうから早く行こう」
 稲生:「はい」

 稲生達はコロナワールド仙台の中にある大江戸温泉物語に入った。

 稲生:「先生のブーツは……」
 イリーナ:「大丈夫だよ」
 稲生:「あ、そうでしたね」

 ここも先に靴を脱いで専用の靴箱に入れる方式なのだが、ロングブーツが入らないというもの。
 魔法具でもあるイリーナのブーツは、靴箱に入る大きさに収縮させる。

 稲生:「便利ですねぇ……」
 イリーナ:「何の何の」

 魔法で若作りしているとはいえ、本来は老魔女であるイリーナがさくさく歩けるのは、そのブーツのおかげではないかと稲生は見ている。
 その後、券売機で入浴券などを買い求める。

 稲生:「じゃ、またここでお別れですね」
 イリーナ:「ういっス。あ、横田が来たらね、湯の中に沈めといてね」
 稲生:「ええ〜?確かに僕もあの理事は、いつの間にか娑婆に出ているとは思いますけど、さすがに早くないですか?」
 イリーナ:「ケンショーレンジャーをナメてはダメよ」
 稲生:「そうですか?」
 イリーナ:「“魔の者”が何故かあいつらを狙わなかったというのはあるからね」
 稲生:(アホ集団はさすがに“魔の者”も敬遠したってことか?)

 稲生は脱衣所に入った。

 稲生:(お、そうだ。今日はダイレクトに露天風呂行っちゃおうかな)

 いつもは内湯に入ってから露天風呂に行く稲生だが、ふとそんなことを考えた。
 もちろん、ちゃんと体は洗ってから向かう。

 稲生:「あー、やっぱり大宮や富士宮のとは泉質が違うなぁ……」

 中央にある岩風呂にザブザブと入って行く。

 稲生:「ふう……」

 温度もちょうどいい。
 露天風呂には入口の上に、大きなテレビモニターがあって、ニュースをやっていた。

〔「……某有名侍マンガの原作者が児童ポルノ法で書類送検された事件を受けて、各界に破門が広がっています。名誉監督、多摩準急氏におきましては、姪のパンチラ写真並びにスク水写真の撮影及び写真の単純所持が警察の捜査対象になるのではないかとの噂が……」〕

 稲生:「ううっ!でも上がると、風が冷たい……」

〔「次のニュースです。一昨日夜、静岡県富士宮市のビジネスホテルで、盗撮の容疑で逮捕された男が脱走する騒ぎが起きました」〕

 稲生:「んっ!?」

〔「脱走したのは横田高明容疑者です。横田容疑者は一昨日の昼間、静岡県富士宮市内にあります日蓮正宗大石寺境内において、女性参拝客のスカートの中を盗撮したり、女性トイレに忍び込み、使用済みの生理用品を盗んだ疑いで逮捕されたものです。調べに対し、横田容疑者は容疑を否認しておりましたが、留置場の床に何らかの方法で穴を開け、そこから脱走しているのが見つかりました。静岡県警富士宮警察署では、横田容疑者の行方を全力で……」〕

 お湯の中にズッコケる稲生だった。

〔「……尚、埼玉県さいたま市にあります宗教法人顕正会では、『そのような人物は一切在籍していない』とコメントしています」〕

 稲生:「最初からいなかったことにされてるぅ〜!!」
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“大魔道師の弟子” 「東方遊覧紀行」

2017-11-23 10:26:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日11:01.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 地下鉄仙台駅東西線ホーム→2000系先頭車]

 ホームに『荒城の月』(作曲:瀧廉太郎 作詞:土井晩翠)のインストゥルメンタルが鳴る。
 これは発車メロディではなく、時報である。
 
〔まもなく3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 地下鉄東西線ホームで電車を待っていると、接近放送が流れてきた。
 東西線はトンネル断面の小さい規格で造られた為、駅のホームも南北線と比べるとこぢんまりとしている。
 その為、4両編成ながら有効長が6両編成分設けられているが、これは将来の増結の為というよりは混雑対策の為であるという。

 稲生:「すいません、次の行き先は前も行った所です」
 イリーナ:「いいよいいよ。急ごしらえのプランだし」

 全国の地下鉄の中では1番短い編成である。
 しかも、1両は16メートルという短さ。

 ミク人形:「今荒城の〜♪夜半(よわ)の月〜♪」(←ようやく3番まで行ったらしい)
 マリア:「歌ってる場合か。早く乗るぞ」

 マリア、歌うミク人形と踊るハク人形をバッグに押し込んで電車に乗り込む。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ホームドアが先に動いて、車両のドアも直後に閉まる。
 南北線1000系が気の抜けたようなドアブザーなのに対し、こちらは2点チャイムが4回鳴る。

 稲生:「魔界高速電鉄のトンネルと比べればきれいで明るいトンネルです」
 マリア:「そりゃあそうだろ」

 電車が走り出す。
 因みに稲生は、乗務員室扉後ろに陣取っていた。

〔次は宮城野通、宮城野通、ユアテック本社前でございます〕
〔The next stop is Miyaginodori station.〕
〔本日も地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕

 ↑先に次駅停車案内をしてから挨拶が流れ、その後にマナー啓発放送と続くのがセオリー。

 マリア:「あそこの地下鉄は普通にトンネルがダンジョンになっているものだから、そこを歩くと敵とエンカウントするぞ」
 稲生:「東京の地下鉄は駅がダンジョンになっているのにねぇ……」

 魔界高速電鉄地下鉄線は最大の一番街駅でさえ、その規模は銀座駅程度。
 路線数が多い割には、大規模な駅はあまり無い。
 それだけ街が分散していると言えばそれまでだが。
 尚、電車が来る時は律儀に待避するというアルカディアシティの魔物達。

 稲生:(うん。“ファイナルファイト”の地下鉄ステージとか、“熱血硬派くにおくん”の地下鉄ステージだな……)

 何故かRPGでははなく、格闘ゲームをイメージした稲生だった。
 2010年代に入ってもまだリリースが続いた“くにおくん”はともかく、“ファイナルファイト”は稲生の世代ではないと思うが、そこはネットサーファーの成せる技か。

[同日11:14.天候:晴 地下鉄東西線荒井駅]

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前、終点です。お出口は、右側です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います〕

 電車が終点駅に着く頃にはガラガラとなったので、稲生達もイリーナの横に座っていた。

 稲生:「ここで最後の乗り換えです」
 イリーナ:「本当に遠くまで来たって感じだね」
 稲生:「ええ。両親に電話したら、どうやって東海から東北まで行ったのかびっくりしていましたが」
 イリーナ:「そ、そうだ。ユウタ君の家にお世話になっていたのよね。後で弁解を考えておかないと……」

 電車がホームに着いてドアが開く。

〔荒井、荒井、終点です。1番線の電車は回送電車です。……〕

 降車ホームの1番線に到着した電車はここで全乗客を降ろした後、車両基地にも続く引き上げ線へと向かい、そこから折り返して乗車ホームの2番線に入る。
 この方式は南北線の富沢駅でも行われている。

 

 稲生:「バスはあるかなぁ……?」

 稲生はSuica片手に、そこが不安であった。

 イリーナ:「別にタクシーでもいいよ。カードは使えるでしょ?」
 稲生:「まあ、そうなんですけど……」

 

 稲生:「何ぶん、地下鉄の終点駅で富沢駅といい勝負の何も無い所でねぇ……」

 

 因みに富沢の車両基地に隣接する市電保存館には、かつての仙台市電が静態保存・展示されてあり、実際に車内に入ったり、運転席に座ってマスコンやブレーキハンドルを握ってみることが可能である。
 荒井駅には本当に何も無いのかというとそうでもなく、駅舎2階には保育園ができた。
 何も無い所に造れば、住宅街に造ることで起きるガキんちょ騒音問題も何のそのだ。
 あと、1階には東日本大震災の被害を後世に伝える為のメモリアル交流館がある。
 魔道師達の誰もが大震災を予知できなかったことについて、大魔王バァルの怒り心頭によるもの(ルーシー女王に騙されて冥界へ向かわされたこと)とか、“魔の者”の揺さぶりとイリーナは言っているが、どうもそんなのは表向きのようだ。

 稲生:「あっ、バスあった」

 駅前バスプールの時刻表を見て行く稲生。
 すると、比較的すぐ発車するバスがあった。

 イリーナ:「おっ、良かったね」
 マリア:「……ックシュ!」

 マリアがくしゃみをした。

 稲生:「寒いですか?今日は晴れてても寒いですね」
 イリーナ:「風が強いのよ」
 稲生:「木枯らしですかねぇ……」

 少しバス停の前で待っていると、紅白の塗装が特徴の中型バスがやってきた。

〔「11時25分発、多賀城駅行きです」〕

 塗装を変えれば大宮駅東口発着の東武バスにいそうな車種である。
 ここはSuicaやPasmoで乗れる。
 車内は暖房が効いていた。

 イリーナ:「また眠くなりそうだよ」
 稲生:「途中で降りますから、お願いしますよ」
 イリーナ:「はいよ」

 そう言いながら1番後ろの席に座る。



 こうして稲生達を乗せたバスは荒井駅前を発車した。
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“大魔道師の弟子” 「仙台入り」

2017-11-21 19:15:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日09:53.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅]

〔まもなく終点、仙台、仙台。お出口は、右側です。新幹線、東北本線、常磐線、仙石線、仙山線、仙台空港アクセス線、地下鉄南北線と地下鉄東西線はお乗り換えです。……〕

 E721系に限り、自動放送が首都圏JRのそれと同じ声優、同じ言い回しである。

 稲生:「……おっ。僕も少し寝ちゃったなぁ……」
 マリア:「そう、か」
 稲生:「何だか寝過ごして、上野駅まで来ちゃったって感じですよ」

 もちろん、線路は実際に繋がっているわけだが。
 いかに休日と言えど、ここまで来れば車内もそこそこ賑わっている。
 座席は全て埋まり、ドア付近などに立ち客が目立ち始める頃。
 なもんで、4人用ボックスシートに座る稲生達の空席にも他人が……。

 稲生:「ん!?」

 そこに座っていたのは1人だけではなかった。
 5〜6歳くらいの少女が2人。
 だが、どこかで見たことがある。

 マリア:「ああ。ミカエラとクラリスか。そんな中途半端に化けるなよな」
 稲生:「どこかで見たことがあると思ったら!?」
 ミカエラ:「はははははは」
 クラリス:「はははははは」
 稲生:「怖っ!無表情で笑われると怖っ!」

 もちろん、成人女性形態も慣れてないと怖い。
 ミカエラとクラリスはそれだとだいぶ表情も感情も豊かにはなるのだが、概してマリアの作ったメイド人形はホラーチックな個体が多い。
 稲生専属メイド人形を率先して行っているダニエラもその1つ。

 イリーナ:「んあ?……なに、もう着いたの?」
 稲生:「そうなんですよ、先生」
 イリーナ:「あら?このコ達、どこのコ?」
 マリア:「私の人形……ミカエラとクラリスです」
 イリーナ:「おお、そうか。幼女形態に変化させられるなんて、マリアも成長したわねぇ」
 稲生:(成人女性より幼女の方が難しいの!?)
 マリア:「いや、私は故意にはしていないんですが……。多分、私も少し居眠りしていたので、寝言か何か言ったのかもしれません」
 稲生:(寝言で魔法!?)
 イリーナ:「そう。でも困ったわ。これだと、子供運賃払ってないから不正乗車を疑われてしまうわ
 稲生:「魔法で変化したところを見られたとか、そういう所は気にしないんですか?

 だが周りを見てみても、そういうことで騒いでいるような乗客はいなかった。

 マリア:「私の人形達、気配を隠すのが得意だから、『何かいつの間にそこにいた』っていうのが上手いから」
 稲生:「あー、ダニエラさんなんかいつもそうですもんね」

 電車がホームに停車してドアが開いた。
 終点駅に着いても半自動ドアのままだから、ボタンの前に立っている乗客が必然的にドアを開ける係をするのがこの地方のルール。

 稲生:「それでは、次は地下鉄に乗り換え……」
 イリーナ:「あ、ちょっと待って。何だか小腹が減ったから、ちょっとカフェにでも寄っていかない?」
 稲生:「そういえば、まだ朝食自体取ってませんでしたね」
 マリア:「このコ達を人形形態にするから、その前にトイレ寄っていい?」
 稲生:「どうぞどうぞ。それにしても、珍しいものですね」

 稲生はトイレに行っている間、あの幼女形態のミク人形とハク人形について何かを思い出そうとしていたのだが、なかなか思い出せなかった。

[同日10:30.天候:晴 仙台駅3階 ずんだ茶寮]

 稲生:「あっ、思い出した!座敷童!」
 イリーナ:「えっ、何が?」
 稲生:「あれ見てたら、さっきの幼女形態のミカエラさんとクラリスさんが何かに似ていると思ったんですよ」

 稲生は着物の女性のポスターを指さした。

 イリーナ:「座敷童。東北地方じゃ有名な幼女の妖怪ね。佇まいは不気味だけど、実際はそこにいてくれた家は栄えるというお話ね」
 稲生:「そうです。で、逆に出て行かれるとその家は潰れるという……」
 イリーナ:「お〜、いいじゃない。屋敷に新たなホラーの色どりを添えられるわ。マリア、今度はあのコ達に着物でも作ってあげなさい」

 マリアは人形を作るのと同時に、人形達の服も作っているのである。
 最初はフランス人形の衣装をモデルに作っていたが、稲生が来てからはメイド服に変わった。
 何故そうなったのかは、あえて言わない。
 まあ、強いて挙げるなら、マリアがどうしてブレザーにプリーツスカートをはくようになったのかという理由と一致するのだが。

 マリア:「私、着物は作ったことが無いんですが……」
 イリーナ:「どこかでオリジナルを手に入れないとダメか」
 稲生:「七五三のシーズンなら、もしかしたら手に入るかもしれません」
 イリーナ:「なるほど。それはいつ?」
 稲生:「10日後です。11月の15日です」
 イリーナ:「さすが日本人だね。よく知ってるね」
 稲生:「僕も子供の頃はしましたし、日蓮正宗でもやるんですよ。正証寺でもやるんですが、まあ最近は子供の数も少ないので、毎年ってわけではないんですね。目師会(もくしえ)のみ行われることが多々……」
 イリーナ:「それだけ有名な行事だってことは分かったわ」
 稲生:「藤谷班長の強面ぶりに、泣く子供が大半だったりするんですが……」
 イリーナ:「それはそれで藤谷さん、可哀想ね」
 稲生:「今じゃ開き直って、『泣く子は居ねがー!!』ってやってるそうです」
 イリーナ:「あえて八寒地獄の獄卒を演じる日蓮正宗法華講員」
 稲生:「何ですか、それ?」
 イリーナ:「なまはげは八寒地獄の獄卒だよ。知らなかった?」
 稲生:「そんなこと、キノは言ってませんでしたよ!?」
 イリーナ:「八大地獄とはあんまり繋がりが無いしね」

 何を基準に堕獄する亡者で、そこから更に八寒地獄に落とされるのかの説明が、どの文献にも書いていないらしい。

 イリーナ:「とにかく屋敷に帰る前に、このコ達の着物を一着ずつ購入しましょう。後で人形形態のものをオリジナルで作るわけだから、既製品でいいわね」
 稲生:「でも先生。いくら既製品だからって、着物は高いですよ?だからレンタルとかが流行ってるわけで……」
 イリーナ:「お金なら、あります」

 イリーナは普段使いのアメリカン・エキスプレスのプラチナカードの他に、世界各国の富豪からもらったという他のカード会社のプラチナカードやブラックカードを取り出した。

 稲生:「す、凄いですね」
 マリア:「そこは札束を出してもらった方が絵面的に面白いんですが」

 欧米の富豪はカードである。

 イリーナ:「ユウタ君の家の近くで、着物を売ってる店があったら教えて」
 稲生:「分かりました。(埼玉で買うつもりか)」

 しかし稲生の頭には、どうしてもイオンモールしか思い浮かばなかった庶民である。
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“大魔道師の弟子” 「東北本線E721系」

2017-11-21 10:11:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日08:23.天候:晴 宮城県登米(とめ)市 JR石越(いしこし)駅]

〔「え、ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、石越駅前です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意願います」〕

 稲生:「ん……」

 運転手の肉声放送により、意識レベルが起動値以下まで落ちていた稲生がパッと顔を上げた。

 稲生:「わっ、もう終点だ。2人とも、起きてください」

 稲生が師匠と先輩を起こしていると、バスは停留所に停車して折り戸の前扉を開けた。
 乗り込んだ時には稲生達しか乗客がいなかったが、この時点では他に7〜8人ほどの乗客が乗っていた。
 日曜日でも中高生の乗車はあるようで、これから部活に行くのか、赤いジャージ姿が目立った。

 イリーナ:「日本から出る時は、時差ボケ対策をしていくんだけど、何しろ今回は急だったからねぇ……」

 イリーナとマリアもようやく席を立った。

 イリーナ:「Fare(運賃)はいくらだい?」
 稲生:「えーと……」

 田舎のバスで1時間以上乗っていたのだから、軽く4桁行ってそうなイメージだったが……。

 稲生:「500円ですね。安っ。……カードは使えないので、ここは僕が……」

 稲生は財布から1500円出した。

 稲生:「大人3人分です」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 稲生は運賃箱に1000円札一枚と500円硬貨一枚を入れた。

 稲生:「あ゛っ……!」

 バスを降りた稲生が見た目の前に、信じられない光景があった。
 駅舎は立て直されて真新しいとか、そういうことではない。
 問題はその先の線路……。
 ガタンゴトンと発車して行く4両編成の電車。
 LED表示で『仙台』と書いてあった。

 稲生:「行ったばっかりだ……orz」

 田舎のバスと鉄道は、往々にして接続が悪いのがセオリーであるが、こういったことが地方の衰退を加速させるのであり、クドクド……。

 イリーナ:「まあ、とにかく中に入ろう。チケットいるでしょ〜?」

 相変わらず暢気なイリーナ。
 促されて駅舎の中に入り、仕方が無いので発車票を見上げる。
 この辺りは1時間に一本がせいぜいだ。
 しかも、全部の電車が仙台まで行くとは限らない。

 稲生:「あっ!」

 だが、ここで奇跡が起きた。
 発車票には『当駅始発普通 8:35 仙台 2』と書かれていた。
 この駅始発の仙台行きの普通列車が、僅か10分後に2番線から発車するという。

 稲生:「やった!功徳だ!」
 イリーナ:「良かったねぇ。じゃ、早いとこチケットよろしく」
 稲生:「はい!」

 稲生は券売機で仙台までの乗車券を購入した。
 自動券売機はあるのだが、指定席券売機は無い。
 また、みどりの窓口はあるので有人駅だが、自動改札口ではなかった。
 Suica対象エリア外ということである。
 この時ばかりは稲生もSuicaではなく、普通乗車券で乗ることになる。

 駅員:「はい、ありがとうございます」

 駅員に赤いスタンプを入鋏してもらう。
 冥鉄の駅員と違って、JRはスマイル。
 2番線は上り本線ホームであり、跨線橋を渡って向かうことになる。
 地方の駅なので構内踏切の方が旅情があって良いような気がするが、東北本線ではその考えは止めた方が良い。
 何故かって?
 首都圏でも宇都宮線に乗っていれば何となく分かると思うが、何だかんだ言ってこの路線は貨物列車の本数が多いのだ。
 多分、この辺りまで来ると電車よりも本数が多いのではないか。
 線形が悪いわけではないので、この辺りを走る貨物列車の通過速度は大宮駅の通過速度より断然速い。
 構内踏切をトロトロ歩かせるわけにはいかないという判断だろう。
 ……というのは現在の考え方で、もともと新幹線開通前はもっと旅客列車の本数も多かっただろうから、やっぱり東北本線で構内踏切はダメだろう。
 もし体験したかったら、仙山線の愛子駅や作並駅などで体験できる。どちらも仙台市内にある。

 稲生:「これですね」

 2番線ホームには4両編成の電車が停車していた。
 最新型のE721系の2両編成を2台繋いだ編成である。
 半自動ドアなので、ボタンを押してドアを開ける。
 717系やキハ53系の手動ドアが懐かしい。

〔この電車は東北本線、普通、仙台行きです〕
〔This is the Tohoku line train for Sendai.〕

 車内放送はほぼ宇都宮線と同じ。
 最後尾のボックスシートに座った。
 宇都宮線のE231系やE233系のそれと比べると、明らかにシートピッチは広く造られている。
 3ドアなのでドア間に余裕があるのだろうが、それでも従来の719系や211系と比べても広い。
 サービスで窓の下にテーブルがあるほどだ。
 2つ窪みが付いているが、明らかにビール缶やワンカップを置くとしっくり来るのは作者だけか。

〔「ご案内致します。この電車は8時35分発、東北本線上り、小牛田(こごた)、松島、塩釜方面、普通列車の仙台行きです。発車まで5分ほどお待ちください」〕

 日曜日で朝ラッシュは無く、始発駅ということもあって、まだ車内は空いている。

 稲生:「飲み物でも買ってきますか」
 イリーナ:「あたし紅茶。レモンティー」
 マリア:「ミルクティーがいい」
 稲生:「分かりました」

 ストレートにパッと答えるところは欧米人だと稲生は思った。
 これが日本人なら、「何でもいい」とか言いそうだが……。

 マリア:「ユウタ、レストルーム(トイレ)ある?」

 稲生:「隣の車両ですね。そこの連結器を通ってすぐ横です」
 マリア:「ありがとう」

 停車中、列車のトイレ使用禁止を常識としている世代は……恐らくポテンヒットさん辺りか。
 E721系くらい新型になると、使用しても問題は無い。
 但し、地方で旧国鉄車両を見かけたらちょっと気を使った方がいいかもしれない(トイレだけは改良されているパターンもあるので、一概には言えない)。
 あと、迷うのが地方三セクの車両。
 トイレの下にタンクがあるかどうかで見分けを付ければいいのだが、果たしていつもいつもそんなことしていられるだろうか?

 稲生は一旦電車を降りて、ホームの自動販売機で飲み物を買った。
 で、戻って来る。

 稲生:「お待たせしました」
 イリーナ:「スゥパスィーバ。……てか、マジで売ってるんだね。魔法でも使った?」
 稲生:「使ってませんw」
 イリーナ:「日本はいい国だね」
 稲生:「マリアさんはまだ戻ってませんね」
 イリーナ:「女の子は時間が掛かるのよ」
 稲生:「なるほど」

 尚、トイレ内では……。

 マリア:(どのボタンが正解なのだろう……?)

 水を流すボタン、上に付いている非常ボタン、下に付いている非常ボタン、ドアを開けるボタン、ドアを閉めるボタン……。
 便利過ぎて却ってワケ分からなくなる国、ニッポン!
コメント (3)
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