[11月4日14:00.天候:晴 静岡県富士宮市 まかいの牧場]
牛の運動場で牛を見ていたら、後ろから誰かに声を掛けられた。
イリーナ:「出たな〜、ロシアンマフィア」
アナスタシア:「誰がロシアンマフィアよ!」
黒服で統一された弟子達をぞろぞろ連れている時点で、どう見ても裏世界の人達です。本当にありがとうございました。
イリーナ:「何しに来たのよ?」
アナスタシア:「そっちこそ何してんの?」
イリーナ:「観光よ」
アナスタシア:「観光でしょ」
ものの見事に質問と答えが被った2人。
イリーナ:「いつまで日本にいるのよ?早くロシアに帰って仕事しなさい」
アナスタシア:「あなたこそ“魔の者”の脅威が無くなったんなら、早いとこイギリスに戻りなって」
イリーナとアナスタシアが師匠同士で舌打ち合戦している中、弟子達は……。
アンナ:「早いとこマリアンナから私に乗り換えなって」
マリア:「帰れ!」
稲生:「あ、いや、お気持ちだけ頂いて……」
マリア:「頂くな!」
のほほん指導のイリーナ組と、ビシバシ指導のアナスタシア組とは師匠も弟子も合わないらしい。
とても同門とは思えぬ違さである。
イリーナ:「さ、2人とも。次へ行くわよ」
マリア:「おー!」
稲生:「えっ?あの!ちょっと!?」
イリーナとマリアは稲生をズルズルと引っ張って行った。
[同日15:00.天候:晴 同市内 富嶽温泉華の湯]
稲生:「もうしばらく散策してから入ろうと思っていたんですけど……」
イリーナ:「ゴメンねぇ。まさか、あそこでナスターシャ達も来るとは思わなかったわ」
ナスターシャとはアナスタシアのロシア語における愛称である。
マリア:(愛称で呼んでいる時点で、仲が悪いとも思えないんだよなぁ……)
と、マリアは思っている。
アンナに関しては、横恋慕して来やがったアホ魔女と思っているが。
最近はポーリン組のエレーナやリリアンヌも稲生に色目を使ってくるようになってきたので、マリアとしてもなかなか気が抜けないところ。
稲生:「最終バスの時間まで、ここの温泉で過ごしましょう」
イリーナ:「了解」
マリア:「まさかここにまでアナスタシア組が来たりはしませんよね?」
イリーナ:「うん。一応聞いてみたら、休暇村富士って所に行くみたいだから」
マリア:「また行くんですか」
イリーナ:「温泉はそこに入るんだって」
稲生:「場所は違えど、向こうも温泉目的ですか……」
イリーナ:「アナスタシア組にも体に傷の付いた魔道師達は多いからね。その傷を癒す為の入浴(湯治)のアイディアをユウタ君が出したことが、門内に広まっているってことね」
稲生:「えっ?別に、アイディアってほどのものでもないですよ?」
イリーナ:「日本の温泉のことについては、日本人に倣うのがベストというのが広まったみたいね」
稲生:「そんな、大したアレでもないのになぁ……」
館内に入り、まずは靴を脱ぐ。
因みに登山の終わった稲生はスーツではなく、普通の私服。
なので靴もスニーカーだ。
マリアはブレザーに合わせていることもあってかローファー。
イリーナはロングブーツである。
稲生:「先生、靴箱に入ります?」
イリーナ:「大丈夫、大丈夫」
イリーナがブーツの頭をトントンと叩くとシューッと丈が短くなった。
イリーナ:「これで入った」
稲生:「魔道師は着ている服から履いてる靴まで、全部魔法仕様ですか」
イリーナ:「そうだよ。もっとも、全部揃える必要は無いけどね」
マリア:「私のもローブと杖だけだ」
稲生:「えっ、そうなんですか?つい、ブレザーとスカートもそうだと思った。どうしてブレザーとスカートなんですか?」
マリア:「ユウタが『この恰好がいい』って言ったから」
稲生:「えっ?……あ、えーと……」
イリーナ:「おお、そうだった!まあ、酒の席での話だったもんね。ちょっとうろ覚えだよね。うんうん、しょうがないしょうがない。でも確かにアタシも聞いたよ」
何故かイリーナが慌てたように、取り繕うように言った。
稲生:「えーと、そうでしたっけ?……あ、何か言われてみればそんな気も……」
イリーナ:「まあ、酒の席だからね。しょうがないよね。さぁさ、ここもチケットとかいるんでしょ?ユウタ君、頼むわ」
稲生:「あ、はい。行ってきます」
稲生は券売機で入館券などを買い求めた。
マリア:「師匠?」
イリーナ:「マリア、さらっとユウタ君が困るようなこと言わない」
マリア:「確かにユウタからは直接その言葉聞いていませんけど……」
イリーナ:(昔、マリアが勝手にユウタ君の私用PC覗いたら、JKモノのエロ動画が沢山あったもんでそれを意識しているってことは、さすがに……)
ブレザー姿の女子高生が【ぴー!】というものだったり、スク水やブルマーもあったらしい。
稲生も健全な男子であったということだ。
その為、それまで寒色のロングスカートのワンピースを着ていたマリアだったが、一新して今の女子高生の制服風ファッションになったのはそれからだった。
但し、悪魔との契約の都合上、悪魔のイメージカラーである緑は外せなかった為、稲生の母校の東京中央学園を参考にしたらしい。
東京中央学園のブレザーの色は緑だからだ。
今のマリアはモスグリーンのダブルのブレザーを着ている。
稲生は黙っているが、その色がどうしても新幹線200系の窓回りやスカートの色や、JR東日本のコーポレートカラーに見えてしょうがないのである。
悪魔としては緑であるなら、緑っぽい色のものなら何でもいいらしい。
大昔は緑なら緑の色合いまで更に細かく指定していたらしいが、昨今の契約者不足により、そこまで厳しく求めなくなった。
稲生:「お待たせしました」
イリーナ:「じゃあ、行きましょう」
当然ながら、また男湯と女湯に分かれる。
稲生は男湯に入ると、渡された鍵の番号を元にロッカーを探した。
稲生:(いや、僕は絶対マリアさんに『女子高生みたいな恰好してください』とは言ってない。多分、あれを見られたんだろうな……)
マリアと見た目が似ている白人女優がJKの制服を着てアレやコレをされているエロ動画が、何故か勝手に再生されていたのだが、今からしてみると……。
稲生:(皆さん、近くに女性がいる場合は十分に気をつけましょう)
稲生は自分に言い聞かせるように心の中で言うと、ロッカーのドアを開けた。
牛の運動場で牛を見ていたら、後ろから誰かに声を掛けられた。
イリーナ:「出たな〜、ロシアンマフィア」
アナスタシア:「誰がロシアンマフィアよ!」
黒服で統一された弟子達をぞろぞろ連れている時点で、どう見ても裏世界の人達です。本当にありがとうございました。
イリーナ:「何しに来たのよ?」
アナスタシア:「そっちこそ何してんの?」
イリーナ:「観光よ」
アナスタシア:「観光でしょ」
ものの見事に質問と答えが被った2人。
イリーナ:「いつまで日本にいるのよ?早くロシアに帰って仕事しなさい」
アナスタシア:「あなたこそ“魔の者”の脅威が無くなったんなら、早いとこイギリスに戻りなって」
イリーナとアナスタシアが師匠同士で舌打ち合戦している中、弟子達は……。
アンナ:「早いとこマリアンナから私に乗り換えなって」
マリア:「帰れ!」
稲生:「あ、いや、お気持ちだけ頂いて……」
マリア:「頂くな!」
のほほん指導のイリーナ組と、ビシバシ指導のアナスタシア組とは師匠も弟子も合わないらしい。
とても同門とは思えぬ違さである。
イリーナ:「さ、2人とも。次へ行くわよ」
マリア:「おー!」
稲生:「えっ?あの!ちょっと!?」
イリーナとマリアは稲生をズルズルと引っ張って行った。
[同日15:00.天候:晴 同市内 富嶽温泉華の湯]
稲生:「もうしばらく散策してから入ろうと思っていたんですけど……」
イリーナ:「ゴメンねぇ。まさか、あそこでナスターシャ達も来るとは思わなかったわ」
ナスターシャとはアナスタシアのロシア語における愛称である。
マリア:(愛称で呼んでいる時点で、仲が悪いとも思えないんだよなぁ……)
と、マリアは思っている。
アンナに関しては、横恋慕して来やがったアホ魔女と思っているが。
最近はポーリン組のエレーナやリリアンヌも稲生に色目を使ってくるようになってきたので、マリアとしてもなかなか気が抜けないところ。
稲生:「最終バスの時間まで、ここの温泉で過ごしましょう」
イリーナ:「了解」
マリア:「まさかここにまでアナスタシア組が来たりはしませんよね?」
イリーナ:「うん。一応聞いてみたら、休暇村富士って所に行くみたいだから」
マリア:「また行くんですか」
イリーナ:「温泉はそこに入るんだって」
稲生:「場所は違えど、向こうも温泉目的ですか……」
イリーナ:「アナスタシア組にも体に傷の付いた魔道師達は多いからね。その傷を癒す為の入浴(湯治)のアイディアをユウタ君が出したことが、門内に広まっているってことね」
稲生:「えっ?別に、アイディアってほどのものでもないですよ?」
イリーナ:「日本の温泉のことについては、日本人に倣うのがベストというのが広まったみたいね」
稲生:「そんな、大したアレでもないのになぁ……」
館内に入り、まずは靴を脱ぐ。
因みに登山の終わった稲生はスーツではなく、普通の私服。
なので靴もスニーカーだ。
マリアはブレザーに合わせていることもあってかローファー。
イリーナはロングブーツである。
稲生:「先生、靴箱に入ります?」
イリーナ:「大丈夫、大丈夫」
イリーナがブーツの頭をトントンと叩くとシューッと丈が短くなった。
イリーナ:「これで入った」
稲生:「魔道師は着ている服から履いてる靴まで、全部魔法仕様ですか」
イリーナ:「そうだよ。もっとも、全部揃える必要は無いけどね」
マリア:「私のもローブと杖だけだ」
稲生:「えっ、そうなんですか?つい、ブレザーとスカートもそうだと思った。どうしてブレザーとスカートなんですか?」
マリア:「ユウタが『この恰好がいい』って言ったから」
稲生:「えっ?……あ、えーと……」
イリーナ:「おお、そうだった!まあ、酒の席での話だったもんね。ちょっとうろ覚えだよね。うんうん、しょうがないしょうがない。でも確かにアタシも聞いたよ」
何故かイリーナが慌てたように、取り繕うように言った。
稲生:「えーと、そうでしたっけ?……あ、何か言われてみればそんな気も……」
イリーナ:「まあ、酒の席だからね。しょうがないよね。さぁさ、ここもチケットとかいるんでしょ?ユウタ君、頼むわ」
稲生:「あ、はい。行ってきます」
稲生は券売機で入館券などを買い求めた。
マリア:「師匠?」
イリーナ:「マリア、さらっとユウタ君が困るようなこと言わない」
マリア:「確かにユウタからは直接その言葉聞いていませんけど……」
イリーナ:(昔、マリアが勝手にユウタ君の私用PC覗いたら、JKモノのエロ動画が沢山あったもんでそれを意識しているってことは、さすがに……)
ブレザー姿の女子高生が【ぴー!】というものだったり、スク水やブルマーもあったらしい。
稲生も健全な男子であったということだ。
その為、それまで寒色のロングスカートのワンピースを着ていたマリアだったが、一新して今の女子高生の制服風ファッションになったのはそれからだった。
但し、悪魔との契約の都合上、悪魔のイメージカラーである緑は外せなかった為、稲生の母校の東京中央学園を参考にしたらしい。
東京中央学園のブレザーの色は緑だからだ。
今のマリアはモスグリーンのダブルのブレザーを着ている。
稲生は黙っているが、その色がどうしても新幹線200系の窓回りやスカートの色や、JR東日本のコーポレートカラーに見えてしょうがないのである。
悪魔としては緑であるなら、緑っぽい色のものなら何でもいいらしい。
大昔は緑なら緑の色合いまで更に細かく指定していたらしいが、昨今の契約者不足により、そこまで厳しく求めなくなった。
稲生:「お待たせしました」
イリーナ:「じゃあ、行きましょう」
当然ながら、また男湯と女湯に分かれる。
稲生は男湯に入ると、渡された鍵の番号を元にロッカーを探した。
稲生:(いや、僕は絶対マリアさんに『女子高生みたいな恰好してください』とは言ってない。多分、あれを見られたんだろうな……)
マリアと見た目が似ている白人女優がJKの制服を着てアレやコレをされているエロ動画が、何故か勝手に再生されていたのだが、今からしてみると……。
稲生:(皆さん、近くに女性がいる場合は十分に気をつけましょう)
稲生は自分に言い聞かせるように心の中で言うと、ロッカーのドアを開けた。