報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「“荒城の月”聴き道師は東方へ 巡る温泉 巡る杯」

2017-11-23 19:12:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日11:50.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 ミヤコーバス鶴巻バス停→コロナワールド仙台・大江戸温泉物語]

 バスが最寄りのバス停に止まる。
 県道23号線上にあるバス停だ。
 片側3車線の幹線道路で、上空には仙台東部道路という名の高速道路まで通っている。
 この県道、路線名を仙台塩釜線という何とも味気無い名前であるのだが、地元民には別の名前を言った方が通用する。
 産業道路と。
 同じ通称の道路が埼玉県にもあり、何を隠そう顕正会本部会館入口の県道がそうなのだが、大幹線道路としての宮城県道を知っている身としては、埼玉県の産業道路が小規模に見えてしょうがない。
 もちろん、片側1車線しか無いとはいえ、交通量は多く、密度的にはほぼ同じである。
 因みに路線バスの本数に関しては、埼玉県の方が軍配が上がる。
 とはいえ、さすがの埼玉県も顕正本部横の道路で産業道路と名乗るのはさすがにショボいと思ったか、そこから更に東の方に“第二産業道路”を整備しており、そちらは線形も道幅も申し分ないものとなっている。

 稲生:「埼玉県の産業道路のいい所は、人口密度の高い所を通る為に、風の吹き通りが悪いということであります。ここは場合によっては荒れ地の横を通るもんだから、やけに風の通りがいいんです。まあ、何が言いたいかって言うと……」
 マリア:「ユウタ。ラッキースケベというのは、狙ってやるものなのか?ああ?」
 稲生:「風が強い日がやたら多いということです」

 マリア、スカートの裾を押さえている。

 イリーナ:「まあまあ。早いとこ行こうよ。これ、冬だったら吹雪になるってこと?」
 稲生:「仙台市東部は雪が少ないんですが、場合によってはそうなります」

 3人の魔道師達はバスを降りて、目的の場所に向かった。

 マリア:「寒い寒い……」
 稲生:「早いとこ中に入りましょう」

 イリーナとマリアはローブのフードを被っている。
 それでも顔には容赦なく冷たい風が拭き付けるので、それが体感温度を下げていた。

 稲生:「はい、到着しました」
 イリーナ:「さすがに中は暖かいねぇ……」
 マリア:「……ックシュ!」

 マリアはまたくしゃみをした。

 稲生:「大丈夫ですか、マリアさん?」
 マリア:「大丈夫……」
 稲生:「はい、ティッシュ」

 稲生はマリアにポケットティッシュを渡した。

 マリア:「ありがとう」

 取りあえずそれで鼻をかむ。

 イリーナ:「東海地方、地獄界、東北地方と気候の変化が激しい所を巡ったから、体の具合が心配よね」
 稲生:「そっかぁ……」

 確かに東海地方というと温暖な気候の地域というイメージがあるが、そうは言っても富士山の近くの富士宮市では、宮城県とそんなに変わらないような気がする。
 地獄界が問題だ。
 八大地獄は八熱地獄とも称される熱帯地域であるからだ。
 閻魔庁などは温度管理されているせいか、そこまで暑くはなかったが、それでも常春の都アルカディアと比べれば暑い。

 稲生:「まあ、今日は寒波が来て木枯らしも吹く日で、特に寒いらしいです。いつもは、ここまで寒くないので……」
 イリーナ:「取りあえず早く、温泉に入らないとマリアが本当に風邪を引いちゃうから早く行こう」
 稲生:「はい」

 稲生達はコロナワールド仙台の中にある大江戸温泉物語に入った。

 稲生:「先生のブーツは……」
 イリーナ:「大丈夫だよ」
 稲生:「あ、そうでしたね」

 ここも先に靴を脱いで専用の靴箱に入れる方式なのだが、ロングブーツが入らないというもの。
 魔法具でもあるイリーナのブーツは、靴箱に入る大きさに収縮させる。

 稲生:「便利ですねぇ……」
 イリーナ:「何の何の」

 魔法で若作りしているとはいえ、本来は老魔女であるイリーナがさくさく歩けるのは、そのブーツのおかげではないかと稲生は見ている。
 その後、券売機で入浴券などを買い求める。

 稲生:「じゃ、またここでお別れですね」
 イリーナ:「ういっス。あ、横田が来たらね、湯の中に沈めといてね」
 稲生:「ええ〜?確かに僕もあの理事は、いつの間にか娑婆に出ているとは思いますけど、さすがに早くないですか?」
 イリーナ:「ケンショーレンジャーをナメてはダメよ」
 稲生:「そうですか?」
 イリーナ:「“魔の者”が何故かあいつらを狙わなかったというのはあるからね」
 稲生:(アホ集団はさすがに“魔の者”も敬遠したってことか?)

 稲生は脱衣所に入った。

 稲生:(お、そうだ。今日はダイレクトに露天風呂行っちゃおうかな)

 いつもは内湯に入ってから露天風呂に行く稲生だが、ふとそんなことを考えた。
 もちろん、ちゃんと体は洗ってから向かう。

 稲生:「あー、やっぱり大宮や富士宮のとは泉質が違うなぁ……」

 中央にある岩風呂にザブザブと入って行く。

 稲生:「ふう……」

 温度もちょうどいい。
 露天風呂には入口の上に、大きなテレビモニターがあって、ニュースをやっていた。

〔「……某有名侍マンガの原作者が児童ポルノ法で書類送検された事件を受けて、各界に破門が広がっています。名誉監督、多摩準急氏におきましては、姪のパンチラ写真並びにスク水写真の撮影及び写真の単純所持が警察の捜査対象になるのではないかとの噂が……」〕

 稲生:「ううっ!でも上がると、風が冷たい……」

〔「次のニュースです。一昨日夜、静岡県富士宮市のビジネスホテルで、盗撮の容疑で逮捕された男が脱走する騒ぎが起きました」〕

 稲生:「んっ!?」

〔「脱走したのは横田高明容疑者です。横田容疑者は一昨日の昼間、静岡県富士宮市内にあります日蓮正宗大石寺境内において、女性参拝客のスカートの中を盗撮したり、女性トイレに忍び込み、使用済みの生理用品を盗んだ疑いで逮捕されたものです。調べに対し、横田容疑者は容疑を否認しておりましたが、留置場の床に何らかの方法で穴を開け、そこから脱走しているのが見つかりました。静岡県警富士宮警察署では、横田容疑者の行方を全力で……」〕

 お湯の中にズッコケる稲生だった。

〔「……尚、埼玉県さいたま市にあります宗教法人顕正会では、『そのような人物は一切在籍していない』とコメントしています」〕

 稲生:「最初からいなかったことにされてるぅ〜!!」
コメント (3)
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“大魔道師の弟子” 「東方遊覧紀行」

2017-11-23 10:26:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日11:01.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 地下鉄仙台駅東西線ホーム→2000系先頭車]

 ホームに『荒城の月』(作曲:瀧廉太郎 作詞:土井晩翠)のインストゥルメンタルが鳴る。
 これは発車メロディではなく、時報である。
 
〔まもなく3番線に、荒井行き電車が到着します〕

 地下鉄東西線ホームで電車を待っていると、接近放送が流れてきた。
 東西線はトンネル断面の小さい規格で造られた為、駅のホームも南北線と比べるとこぢんまりとしている。
 その為、4両編成ながら有効長が6両編成分設けられているが、これは将来の増結の為というよりは混雑対策の為であるという。

 稲生:「すいません、次の行き先は前も行った所です」
 イリーナ:「いいよいいよ。急ごしらえのプランだし」

 全国の地下鉄の中では1番短い編成である。
 しかも、1両は16メートルという短さ。

 ミク人形:「今荒城の〜♪夜半(よわ)の月〜♪」(←ようやく3番まで行ったらしい)
 マリア:「歌ってる場合か。早く乗るぞ」

 マリア、歌うミク人形と踊るハク人形をバッグに押し込んで電車に乗り込む。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 ホームドアが先に動いて、車両のドアも直後に閉まる。
 南北線1000系が気の抜けたようなドアブザーなのに対し、こちらは2点チャイムが4回鳴る。

 稲生:「魔界高速電鉄のトンネルと比べればきれいで明るいトンネルです」
 マリア:「そりゃあそうだろ」

 電車が走り出す。
 因みに稲生は、乗務員室扉後ろに陣取っていた。

〔次は宮城野通、宮城野通、ユアテック本社前でございます〕
〔The next stop is Miyaginodori station.〕
〔本日も地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕

 ↑先に次駅停車案内をしてから挨拶が流れ、その後にマナー啓発放送と続くのがセオリー。

 マリア:「あそこの地下鉄は普通にトンネルがダンジョンになっているものだから、そこを歩くと敵とエンカウントするぞ」
 稲生:「東京の地下鉄は駅がダンジョンになっているのにねぇ……」

 魔界高速電鉄地下鉄線は最大の一番街駅でさえ、その規模は銀座駅程度。
 路線数が多い割には、大規模な駅はあまり無い。
 それだけ街が分散していると言えばそれまでだが。
 尚、電車が来る時は律儀に待避するというアルカディアシティの魔物達。

 稲生:(うん。“ファイナルファイト”の地下鉄ステージとか、“熱血硬派くにおくん”の地下鉄ステージだな……)

 何故かRPGでははなく、格闘ゲームをイメージした稲生だった。
 2010年代に入ってもまだリリースが続いた“くにおくん”はともかく、“ファイナルファイト”は稲生の世代ではないと思うが、そこはネットサーファーの成せる技か。

[同日11:14.天候:晴 地下鉄東西線荒井駅]

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前、終点です。お出口は、右側です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います〕

 電車が終点駅に着く頃にはガラガラとなったので、稲生達もイリーナの横に座っていた。

 稲生:「ここで最後の乗り換えです」
 イリーナ:「本当に遠くまで来たって感じだね」
 稲生:「ええ。両親に電話したら、どうやって東海から東北まで行ったのかびっくりしていましたが」
 イリーナ:「そ、そうだ。ユウタ君の家にお世話になっていたのよね。後で弁解を考えておかないと……」

 電車がホームに着いてドアが開く。

〔荒井、荒井、終点です。1番線の電車は回送電車です。……〕

 降車ホームの1番線に到着した電車はここで全乗客を降ろした後、車両基地にも続く引き上げ線へと向かい、そこから折り返して乗車ホームの2番線に入る。
 この方式は南北線の富沢駅でも行われている。

 

 稲生:「バスはあるかなぁ……?」

 稲生はSuica片手に、そこが不安であった。

 イリーナ:「別にタクシーでもいいよ。カードは使えるでしょ?」
 稲生:「まあ、そうなんですけど……」

 

 稲生:「何ぶん、地下鉄の終点駅で富沢駅といい勝負の何も無い所でねぇ……」

 

 因みに富沢の車両基地に隣接する市電保存館には、かつての仙台市電が静態保存・展示されてあり、実際に車内に入ったり、運転席に座ってマスコンやブレーキハンドルを握ってみることが可能である。
 荒井駅には本当に何も無いのかというとそうでもなく、駅舎2階には保育園ができた。
 何も無い所に造れば、住宅街に造ることで起きるガキんちょ騒音問題も何のそのだ。
 あと、1階には東日本大震災の被害を後世に伝える為のメモリアル交流館がある。
 魔道師達の誰もが大震災を予知できなかったことについて、大魔王バァルの怒り心頭によるもの(ルーシー女王に騙されて冥界へ向かわされたこと)とか、“魔の者”の揺さぶりとイリーナは言っているが、どうもそんなのは表向きのようだ。

 稲生:「あっ、バスあった」

 駅前バスプールの時刻表を見て行く稲生。
 すると、比較的すぐ発車するバスがあった。

 イリーナ:「おっ、良かったね」
 マリア:「……ックシュ!」

 マリアがくしゃみをした。

 稲生:「寒いですか?今日は晴れてても寒いですね」
 イリーナ:「風が強いのよ」
 稲生:「木枯らしですかねぇ……」

 少しバス停の前で待っていると、紅白の塗装が特徴の中型バスがやってきた。

〔「11時25分発、多賀城駅行きです」〕

 塗装を変えれば大宮駅東口発着の東武バスにいそうな車種である。
 ここはSuicaやPasmoで乗れる。
 車内は暖房が効いていた。

 イリーナ:「また眠くなりそうだよ」
 稲生:「途中で降りますから、お願いしますよ」
 イリーナ:「はいよ」

 そう言いながら1番後ろの席に座る。



 こうして稲生達を乗せたバスは荒井駅前を発車した。
コメント (2)
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