報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「仙台入り」

2017-11-21 19:15:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日09:53.天候:晴 宮城県仙台市青葉区 JR仙台駅]

〔まもなく終点、仙台、仙台。お出口は、右側です。新幹線、東北本線、常磐線、仙石線、仙山線、仙台空港アクセス線、地下鉄南北線と地下鉄東西線はお乗り換えです。……〕

 E721系に限り、自動放送が首都圏JRのそれと同じ声優、同じ言い回しである。

 稲生:「……おっ。僕も少し寝ちゃったなぁ……」
 マリア:「そう、か」
 稲生:「何だか寝過ごして、上野駅まで来ちゃったって感じですよ」

 もちろん、線路は実際に繋がっているわけだが。
 いかに休日と言えど、ここまで来れば車内もそこそこ賑わっている。
 座席は全て埋まり、ドア付近などに立ち客が目立ち始める頃。
 なもんで、4人用ボックスシートに座る稲生達の空席にも他人が……。

 稲生:「ん!?」

 そこに座っていたのは1人だけではなかった。
 5〜6歳くらいの少女が2人。
 だが、どこかで見たことがある。

 マリア:「ああ。ミカエラとクラリスか。そんな中途半端に化けるなよな」
 稲生:「どこかで見たことがあると思ったら!?」
 ミカエラ:「はははははは」
 クラリス:「はははははは」
 稲生:「怖っ!無表情で笑われると怖っ!」

 もちろん、成人女性形態も慣れてないと怖い。
 ミカエラとクラリスはそれだとだいぶ表情も感情も豊かにはなるのだが、概してマリアの作ったメイド人形はホラーチックな個体が多い。
 稲生専属メイド人形を率先して行っているダニエラもその1つ。

 イリーナ:「んあ?……なに、もう着いたの?」
 稲生:「そうなんですよ、先生」
 イリーナ:「あら?このコ達、どこのコ?」
 マリア:「私の人形……ミカエラとクラリスです」
 イリーナ:「おお、そうか。幼女形態に変化させられるなんて、マリアも成長したわねぇ」
 稲生:(成人女性より幼女の方が難しいの!?)
 マリア:「いや、私は故意にはしていないんですが……。多分、私も少し居眠りしていたので、寝言か何か言ったのかもしれません」
 稲生:(寝言で魔法!?)
 イリーナ:「そう。でも困ったわ。これだと、子供運賃払ってないから不正乗車を疑われてしまうわ
 稲生:「魔法で変化したところを見られたとか、そういう所は気にしないんですか?

 だが周りを見てみても、そういうことで騒いでいるような乗客はいなかった。

 マリア:「私の人形達、気配を隠すのが得意だから、『何かいつの間にそこにいた』っていうのが上手いから」
 稲生:「あー、ダニエラさんなんかいつもそうですもんね」

 電車がホームに停車してドアが開いた。
 終点駅に着いても半自動ドアのままだから、ボタンの前に立っている乗客が必然的にドアを開ける係をするのがこの地方のルール。

 稲生:「それでは、次は地下鉄に乗り換え……」
 イリーナ:「あ、ちょっと待って。何だか小腹が減ったから、ちょっとカフェにでも寄っていかない?」
 稲生:「そういえば、まだ朝食自体取ってませんでしたね」
 マリア:「このコ達を人形形態にするから、その前にトイレ寄っていい?」
 稲生:「どうぞどうぞ。それにしても、珍しいものですね」

 稲生はトイレに行っている間、あの幼女形態のミク人形とハク人形について何かを思い出そうとしていたのだが、なかなか思い出せなかった。

[同日10:30.天候:晴 仙台駅3階 ずんだ茶寮]

 稲生:「あっ、思い出した!座敷童!」
 イリーナ:「えっ、何が?」
 稲生:「あれ見てたら、さっきの幼女形態のミカエラさんとクラリスさんが何かに似ていると思ったんですよ」

 稲生は着物の女性のポスターを指さした。

 イリーナ:「座敷童。東北地方じゃ有名な幼女の妖怪ね。佇まいは不気味だけど、実際はそこにいてくれた家は栄えるというお話ね」
 稲生:「そうです。で、逆に出て行かれるとその家は潰れるという……」
 イリーナ:「お〜、いいじゃない。屋敷に新たなホラーの色どりを添えられるわ。マリア、今度はあのコ達に着物でも作ってあげなさい」

 マリアは人形を作るのと同時に、人形達の服も作っているのである。
 最初はフランス人形の衣装をモデルに作っていたが、稲生が来てからはメイド服に変わった。
 何故そうなったのかは、あえて言わない。
 まあ、強いて挙げるなら、マリアがどうしてブレザーにプリーツスカートをはくようになったのかという理由と一致するのだが。

 マリア:「私、着物は作ったことが無いんですが……」
 イリーナ:「どこかでオリジナルを手に入れないとダメか」
 稲生:「七五三のシーズンなら、もしかしたら手に入るかもしれません」
 イリーナ:「なるほど。それはいつ?」
 稲生:「10日後です。11月の15日です」
 イリーナ:「さすが日本人だね。よく知ってるね」
 稲生:「僕も子供の頃はしましたし、日蓮正宗でもやるんですよ。正証寺でもやるんですが、まあ最近は子供の数も少ないので、毎年ってわけではないんですね。目師会(もくしえ)のみ行われることが多々……」
 イリーナ:「それだけ有名な行事だってことは分かったわ」
 稲生:「藤谷班長の強面ぶりに、泣く子供が大半だったりするんですが……」
 イリーナ:「それはそれで藤谷さん、可哀想ね」
 稲生:「今じゃ開き直って、『泣く子は居ねがー!!』ってやってるそうです」
 イリーナ:「あえて八寒地獄の獄卒を演じる日蓮正宗法華講員」
 稲生:「何ですか、それ?」
 イリーナ:「なまはげは八寒地獄の獄卒だよ。知らなかった?」
 稲生:「そんなこと、キノは言ってませんでしたよ!?」
 イリーナ:「八大地獄とはあんまり繋がりが無いしね」

 何を基準に堕獄する亡者で、そこから更に八寒地獄に落とされるのかの説明が、どの文献にも書いていないらしい。

 イリーナ:「とにかく屋敷に帰る前に、このコ達の着物を一着ずつ購入しましょう。後で人形形態のものをオリジナルで作るわけだから、既製品でいいわね」
 稲生:「でも先生。いくら既製品だからって、着物は高いですよ?だからレンタルとかが流行ってるわけで……」
 イリーナ:「お金なら、あります」

 イリーナは普段使いのアメリカン・エキスプレスのプラチナカードの他に、世界各国の富豪からもらったという他のカード会社のプラチナカードやブラックカードを取り出した。

 稲生:「す、凄いですね」
 マリア:「そこは札束を出してもらった方が絵面的に面白いんですが」

 欧米の富豪はカードである。

 イリーナ:「ユウタ君の家の近くで、着物を売ってる店があったら教えて」
 稲生:「分かりました。(埼玉で買うつもりか)」

 しかし稲生の頭には、どうしてもイオンモールしか思い浮かばなかった庶民である。
コメント (1)
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“大魔道師の弟子” 「東北本線E721系」

2017-11-21 10:11:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日08:23.天候:晴 宮城県登米(とめ)市 JR石越(いしこし)駅]

〔「え、ご乗車ありがとうございました。まもなく終点、石越駅前です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意願います」〕

 稲生:「ん……」

 運転手の肉声放送により、意識レベルが起動値以下まで落ちていた稲生がパッと顔を上げた。

 稲生:「わっ、もう終点だ。2人とも、起きてください」

 稲生が師匠と先輩を起こしていると、バスは停留所に停車して折り戸の前扉を開けた。
 乗り込んだ時には稲生達しか乗客がいなかったが、この時点では他に7〜8人ほどの乗客が乗っていた。
 日曜日でも中高生の乗車はあるようで、これから部活に行くのか、赤いジャージ姿が目立った。

 イリーナ:「日本から出る時は、時差ボケ対策をしていくんだけど、何しろ今回は急だったからねぇ……」

 イリーナとマリアもようやく席を立った。

 イリーナ:「Fare(運賃)はいくらだい?」
 稲生:「えーと……」

 田舎のバスで1時間以上乗っていたのだから、軽く4桁行ってそうなイメージだったが……。

 稲生:「500円ですね。安っ。……カードは使えないので、ここは僕が……」

 稲生は財布から1500円出した。

 稲生:「大人3人分です」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 稲生は運賃箱に1000円札一枚と500円硬貨一枚を入れた。

 稲生:「あ゛っ……!」

 バスを降りた稲生が見た目の前に、信じられない光景があった。
 駅舎は立て直されて真新しいとか、そういうことではない。
 問題はその先の線路……。
 ガタンゴトンと発車して行く4両編成の電車。
 LED表示で『仙台』と書いてあった。

 稲生:「行ったばっかりだ……orz」

 田舎のバスと鉄道は、往々にして接続が悪いのがセオリーであるが、こういったことが地方の衰退を加速させるのであり、クドクド……。

 イリーナ:「まあ、とにかく中に入ろう。チケットいるでしょ〜?」

 相変わらず暢気なイリーナ。
 促されて駅舎の中に入り、仕方が無いので発車票を見上げる。
 この辺りは1時間に一本がせいぜいだ。
 しかも、全部の電車が仙台まで行くとは限らない。

 稲生:「あっ!」

 だが、ここで奇跡が起きた。
 発車票には『当駅始発普通 8:35 仙台 2』と書かれていた。
 この駅始発の仙台行きの普通列車が、僅か10分後に2番線から発車するという。

 稲生:「やった!功徳だ!」
 イリーナ:「良かったねぇ。じゃ、早いとこチケットよろしく」
 稲生:「はい!」

 稲生は券売機で仙台までの乗車券を購入した。
 自動券売機はあるのだが、指定席券売機は無い。
 また、みどりの窓口はあるので有人駅だが、自動改札口ではなかった。
 Suica対象エリア外ということである。
 この時ばかりは稲生もSuicaではなく、普通乗車券で乗ることになる。

 駅員:「はい、ありがとうございます」

 駅員に赤いスタンプを入鋏してもらう。
 冥鉄の駅員と違って、JRはスマイル。
 2番線は上り本線ホームであり、跨線橋を渡って向かうことになる。
 地方の駅なので構内踏切の方が旅情があって良いような気がするが、東北本線ではその考えは止めた方が良い。
 何故かって?
 首都圏でも宇都宮線に乗っていれば何となく分かると思うが、何だかんだ言ってこの路線は貨物列車の本数が多いのだ。
 多分、この辺りまで来ると電車よりも本数が多いのではないか。
 線形が悪いわけではないので、この辺りを走る貨物列車の通過速度は大宮駅の通過速度より断然速い。
 構内踏切をトロトロ歩かせるわけにはいかないという判断だろう。
 ……というのは現在の考え方で、もともと新幹線開通前はもっと旅客列車の本数も多かっただろうから、やっぱり東北本線で構内踏切はダメだろう。
 もし体験したかったら、仙山線の愛子駅や作並駅などで体験できる。どちらも仙台市内にある。

 稲生:「これですね」

 2番線ホームには4両編成の電車が停車していた。
 最新型のE721系の2両編成を2台繋いだ編成である。
 半自動ドアなので、ボタンを押してドアを開ける。
 717系やキハ53系の手動ドアが懐かしい。

〔この電車は東北本線、普通、仙台行きです〕
〔This is the Tohoku line train for Sendai.〕

 車内放送はほぼ宇都宮線と同じ。
 最後尾のボックスシートに座った。
 宇都宮線のE231系やE233系のそれと比べると、明らかにシートピッチは広く造られている。
 3ドアなのでドア間に余裕があるのだろうが、それでも従来の719系や211系と比べても広い。
 サービスで窓の下にテーブルがあるほどだ。
 2つ窪みが付いているが、明らかにビール缶やワンカップを置くとしっくり来るのは作者だけか。

〔「ご案内致します。この電車は8時35分発、東北本線上り、小牛田(こごた)、松島、塩釜方面、普通列車の仙台行きです。発車まで5分ほどお待ちください」〕

 日曜日で朝ラッシュは無く、始発駅ということもあって、まだ車内は空いている。

 稲生:「飲み物でも買ってきますか」
 イリーナ:「あたし紅茶。レモンティー」
 マリア:「ミルクティーがいい」
 稲生:「分かりました」

 ストレートにパッと答えるところは欧米人だと稲生は思った。
 これが日本人なら、「何でもいい」とか言いそうだが……。

 マリア:「ユウタ、レストルーム(トイレ)ある?」

 稲生:「隣の車両ですね。そこの連結器を通ってすぐ横です」
 マリア:「ありがとう」

 停車中、列車のトイレ使用禁止を常識としている世代は……恐らくポテンヒットさん辺りか。
 E721系くらい新型になると、使用しても問題は無い。
 但し、地方で旧国鉄車両を見かけたらちょっと気を使った方がいいかもしれない(トイレだけは改良されているパターンもあるので、一概には言えない)。
 あと、迷うのが地方三セクの車両。
 トイレの下にタンクがあるかどうかで見分けを付ければいいのだが、果たしていつもいつもそんなことしていられるだろうか?

 稲生は一旦電車を降りて、ホームの自動販売機で飲み物を買った。
 で、戻って来る。

 稲生:「お待たせしました」
 イリーナ:「スゥパスィーバ。……てか、マジで売ってるんだね。魔法でも使った?」
 稲生:「使ってませんw」
 イリーナ:「日本はいい国だね」
 稲生:「マリアさんはまだ戻ってませんね」
 イリーナ:「女の子は時間が掛かるのよ」
 稲生:「なるほど」

 尚、トイレ内では……。

 マリア:(どのボタンが正解なのだろう……?)

 水を流すボタン、上に付いている非常ボタン、下に付いている非常ボタン、ドアを開けるボタン、ドアを閉めるボタン……。
 便利過ぎて却ってワケ分からなくなる国、ニッポン!
コメント (3)
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