報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「某ジブリの魔女も風邪でダウンしていた」

2017-11-29 19:31:50 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日23:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 クロ:「真夜中に テトリス興じる スラブ人……ニャ」
 エレーナ:「うるさいな」

 ホテルのフロント夜勤をやっているエレーナ。
 しかし、これが都心の巨大なホテルならまだしも、元はドヤ街だった場所にある小さなビジネスホテルでは、こんな真夜中に客の出入りがあるはずもない。
 ヒマなウクライナ人がテトリスをやってても問題は無いわけだ。
 勤勉な日本人的には、大いにアウトであるが。

 クロ:「あっ、読者の皆様。わっちはエレーナの使い魔で、黒猫のクロでありんす」
 エレーナ:「誰が自己紹介しろっつった。てか、読者は全員忘れてるよ」

 花魁言葉になっていることについては突っ込まないのか。
 因みにテトリスの発祥はロシアである為、テトリスはロシア語である。

 エレーナ:「つーか、猫がカウンターの上に上がんな」
 クロ:「招き猫のポーズで集客率アップ〜!」
 エレーナ:「いや、黒猫が招き猫のポーズやっても不気味なだけだから」

 と、そこへフロントの電話が鳴る。
 外線である。

 エレーナ:「おっと、電話だ」

 エレーナ、テトリスを中断する。
 コホンと咳払いして電話を取った。

 エレーナ:「お電話ありがとうございます。ワンスターホテル、フロント係のマーロンでございます」

 エレーナのフルネームはエレーナ・M・マーロンである。
 ウクライナでは珍しい名字である為、エレーナも実はマリアンナ同様、他国からの移民疑惑が持ち上がっている。

 クロ:(電話応対の時には声のトーンが上がるタイプ……ニャ)

 稲生:「すいません。僕、稲生と申しますが、エレーナさんをお願いできますか?」
 エレーナ:「いや、アタシだよ」
 稲生:「あれっ!?そうだったっけ!?」
 エレーナ:「アタシの名字、マーロンって言うの。よく覚えといて。マリアンナの名字は忘れていいから」
 稲生:「そ、そういうわけにはいかないよ……ハハハハ……。(やべっ!マリアさんの名字、ど忘れした!)」
 エレーナ:「今、微かに『ヤベッ』とか聞こえたけど?」
 稲生:「な、何でもないよ。それより、お願いがあるんだけど……」
 エレーナ:「何?……えっ、風邪薬?」
 稲生:「そうなんだ。さっき、市販の風邪薬は飲ませたんだけど、熱が高くなっちゃったんだ。エレーナの所の組は、魔法薬師のジャンルだろ?だったら、飲んだらたちどころに治る風邪薬って無いかな?」
 エレーナ:「たちどころってわけにはいかないけど、確かにそういう薬ならある」
 稲生:「そ、それを譲ってくれ!マリアさんの熱が39度に上がって大変なんだ!」
 エレーナ:「それ、本当にただの風邪?……まあ、いいわ。確かに、魔女がのこのこと病院に行くのもどうかと思うしね」
 稲生:「やっぱりマリアさん、人間としては『公式に死んだ』ことになっているから、保険も何も無いらしいんだ」
 エレーナ:「うちの先生とかも同じだよ。ていうか、魔女に人間の保険も年金も意味が無いんだけどね。だからケガは魔法で治して、病気は薬で治すわけ」
 稲生:「あとはポーリン組の薬に頼るしか……」

 因みにポーリン組に限らず、他にも魔法薬の研究・開発をしている組はある。
 だが稲生にとって、真っ先に泣きつける組がポーリン組だったようだ。

 エレーナ:「分かった分かった。こっちにもマリアンナには借りがあるから、取りあえず返しには行く」
 稲生:「ありがとう」
 エレーナ:「ついでに、あいつの借金も取り立てに行くからよろしく」
 稲生:「はあ!?」
 エレーナ:「今、どこにいるの?」
 稲生:「埼玉の僕の家だよ。今、地図をそっちにメールで送るから」
 エレーナ:「地理情報をオンラインで送るってのも、昔は魔法だったんだよねぇ……。ま、とにかく薬は見繕っておくから」
 稲生:「よろしくお願い。いつ来れる?」
 エレーナ:「取りあえずホテルの夜勤が明日10時で終わるから、それから向かうよ」
 稲生:「分かった。お願いするよ」

[同日同時刻 天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 稲生:「取りあえず、エレーナに連絡が取れました」
 イリーナ:「ありがとう。これで少しは安心ね」
 稲生:「そうですか」
 イリーナ:「取りあえず夜の分と明日の朝の分は、市販の風邪薬で持たせましょう。あとはエレーナが持って来てくれる薬次第ね」
 稲生:「それにしても、びっくりました。まさか、マリアさんが……あ、いや、前にも倒れたことがあったか……」
 イリーナ:「あれは心労もあったんだろうけどね。今回はただの風邪でしょう」
 稲生:「その割には熱が39度は高くないですか?」
 イリーナ:「これ以上高くなったら、いいわ。アタシがポーリンの所に行ってくる」
 稲生:「ポーリン先生の所へ?」
 イリーナ:「ええ。ま、私の予知ではマリアの熱はこれ以上上がらないはずだけど……」
 稲生:「魔女宅の主人公でさえ風邪でダウンしましたから、マリアさんがそれで倒れること自体は……ですけど、やっぱり心配です」
 イリーナ:「しょうがないわ。実際に病気になっていない私達では、あのコの為に薬を用意してあげることしかできない。あとは、あのコ自身の戦いよ」
 稲生:「はい……」
 イリーナ:「なぁに、心配無いって。『病は気から』って言うでしょう?逆にマリア、安心して気が抜けているから風邪なんか引いたりするのよ」
 稲生:「えっ?えっ?」
 イリーナ:「迫害を受けていた人間時代は、風邪すら引けなかったでしょうよ……!」
 稲生:「!!!」

[11月5日24:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 マモン:「はい、ご苦労さまです。交替します。ゆっくり仮眠を取って来てください」

 エレーナも今やマスター(一人前)である。
 階級はマリアと同じローマスターであるが、マリアの後で登用されたわけだから、本来はそこで先輩・後輩の差ができる。
 組によっては同級であっても、なったタイミングで先輩・後輩の上下関係が発生する所もある。
 で、エレーナは七つの大罪の悪魔、強欲の悪魔マモンと契約した。
 マモンはマリアンナが契約している七つの大罪の悪魔、怠惰の悪魔ベルフェゴールと同じく、タキシードに蝶ネクタイの姿をしていた。
 もちろんこれは、エレーナのホテルで一緒に働くという意味での恰好である。
 ベルフェゴールがイギリス人のマリアンナに合わせ、英国紳士の恰好をしているのとは少し違う。

 エレーナ:「ああ。あとはよろしく」
 クロ:「よろしくですニャ」
 エレーナ:「オマエ、さっきまで寝てたんだから一緒に店番してろ」
 クロ:「ンニャッ!?」
 マモン:「猫は自由気ままでいいですねぇ……」
 エレーナ:「全く……」

 エレーナはエレベーターキーを操作して、エレベーターを地下階に行けるようにした。
 表向きは機械室や倉庫があるフロアということになっており、普段は不停止扱いになっている。
 B1Fのボタンを押してもランプが点灯しないし、この1階から下のボタンを押しても点灯しない。
 そこで切替スイッチの役割を果たす小さな鍵の出番である。
 エレーナは最初、稼働していない客室を使っていたが、このホテルが盛況になってくるとそうもいかなくなり、地下の機械室に居室を作ってそこで寝泊まりするようにした。
 表向きはスタッフの仮眠室・休憩室・シャワー室ということになっているが、実際はエレーナ専用居室である(スタッフ休憩室自体は元から別にある為)。

 エレーナ:「フーム……」

 エレベーターが地下1階に着くと、その先は真っ暗だった。
 ま、誰もいない機械室や倉庫が普段から明るいわけがない。
 エレベーターの横に照明スイッチがある。
 そしてまたエレベーター操作盤に鍵を差し込んで、中からはB1階のボタンを押しても反応しないようにした。
 こっちからは外側の上のボタンを押せば、エレベーターはやってくる。

 エレーナ:(寝る前にざっと薬を見繕っておくか。後でバタバタするよりはいい)

 エレーナはそう考えると、居室の横にある自分の物置のドアを開けた。
 そこには大きな薬箱が入っていた。
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“大魔道師の弟子” 「マリア、ダウン」

2017-11-29 15:20:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月5日21:34.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 列車が南下するに従って、窓に当たる雨粒の量が多くなる。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。上越新幹線、北陸新幹線、高崎線、埼京線、京浜東北線……〕

 稲生:「ん……?おっ、もう大宮か。マリアさん、マリアさん」

 稲生が隣に座るマリアの肩を揺すった。

 マリア:「んっ……」
 稲生:「もうすぐ降りますよ」

 稲生は、すぐ後ろに座るイリーナも起こそうとした。

 稲生:「先生、先生……」
 イリーナ:「あいよ。アタシゃ起きてるよ〜」

 キキィ!(想定外のATCブレーキで列車が大きく揺れた)

 稲生:「わっ!とっとっ……!」

〔「……尚、本日は大宮駅改良工事に伴い、列車の到着ホームが変更されております。この列車も14番線到着のところ、本日に限りまして15番線に到着致します。お出口は変わりまして、右側となります。到着ホームにご注意ください。……」〕

 ガクン!(想定外のポイント通過で、また列車が大きく揺れる)

 稲生:「わぷっ!」

 おおっと!稲生、バランスを崩してイリーナの巨乳に顔面ダイブだ!

 稲生:「すすす、すいませ……!」
 イリーナ:「いらっしゃーい♪」

 イリーナ、笑みを浮かべてそのまま稲生をハグ。

 マリア:「何をフザけて……

 マリア、顔を真っ赤にしてやってくる。
 そして……。

 稲生:「ぐえっ……!」
 イリーナ:「!!!」

 マリア、全体重を掛けた体当たりをかましてきた。

 イリーナ:「ちょっと、マリア!単なるジョークでしょ!何をそんなに……!」
 マリア:「うっ……くっ……!」
 イリーナ:「!?」

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。15番線に到着の電車は……」〕

 稲生:「いっけね!着いちゃった!早く降りましょう!」

 稲生達は慌てて荷物を取り、急いで列車から降りた。

 稲生:「ふう……!」

 ピー!(客終合図)
 プシュー、ガチャガラガラガラガラ………ッ、ガチャン!(E2系0番台の閉扉音はこんな感じ)

 イリーナ:「降り遅れ無くて良かったわね」
 稲生:「危うく上野まで連れて行かれる所でした」

[同日21:45.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 タクシー車内→稲生家]

 大宮駅からタクシーに乗り換えて家に向かう。
 雨はそんなに強いものではないが、道行く人達の殆どが傘を差している。
 タクシーのワイパーも数秒置きに動く程度の雨だ。

 稲生:「さすが先生ですね。予言が当たりましたよ」
 イリーナ:「まあ、このくらいは序の口さね」

 東日本大震災だけは魔界や“魔の者”が関わっていたこともあって、どの魔道師も予知はできなかった。
 “魔の者”と大魔王バァルは全くの面識は無いし、交流も全く無いが、たまたまこの二強魔が偶然同時に行動を起こしたことがあの大災害に繋がったとの見方もある。
 悪魔の考えることを人間に理解することは難しいが、悪魔同士は気が合うのか、そういうことで思わぬタッグを組んで来たりするから鬼以上にタチが悪い。
 今は魔道師達と契約している悪魔も、契約が切れたりすると今度は敵に回ることもあるから物凄く面倒臭い。

 イリーナ:「マリア、どうしたの?」

 マリアはローブを羽織っているが、更にフードも被って俯いていた。

 マリア:「いえ……ちょっと寒くて……」
 運転手:「あ、寒かったですか。どうもすいません」

 運転手はエアコンの暖房を強くした。
 確かに今は外が雨ということもあり、結構肌寒いとは感じる。
 しかし、車に乗った時、稲生は十分に暖房は効いていると思ったのだが……。

 稲生:(まあ、僕とマリアさんじゃ体感温度が違うのかも)

 屋敷の中には機械的なエアコンは見当たらないが、それでも空調が保たれているのは、それが偏に魔法によるものだろう。
 屋敷が魔法で建てられたことが分かる1つの理由である。
 稲生の部屋は夏場、冷房が強めだ。
 これはPCやゲーム機などが置いてあるから、というのを理由にしている。
 で、疑われた。
 そこまで暑くなるものなのか、と。
 マリアに調べられて、その時に見られたのが、PC内に保存していたJKモノやスク水モノもののエロ動画である。

 イリーナ:「…………」
 稲生:「あ、すいません。そこの道、左に入ってください」
 運転手:「はい。ここを左ですね」
 稲生:「はい。……で、あの標識の前で止めてください」
 運転手:「はい」

 タクシーがハザードを点けて止まる。

 運転手:「えー、ちょうど1000円です」
 稲生:「はい。……すいません、カードで」
 運転手:「はい」

 イリーナから渡されたカードで稲生が払っている間、背後で動きがあった。
 もちろん、マリアが先に降りたわけである。

 運転手:「それでは暗証番号を……」
 イリーナ:「マリア!」
 稲生:「!?」

 稲生が驚いて車の外を見ると、マリアが倒れていた。

 稲生:「マリアさん!?」

 イリーナに抱え起こされた。

 マリア:「ちょっと……足がもつれて……」
 イリーナ:「そんなわけないでしょ!」

[同日22:15.天候:雨 稲生家]

 イリーナ:「熱は38度5分。典型的な風邪ね」
 稲生:「そうでしたか。全然、咳をしていなかったので気がつきませんでした」
 イリーナ:「くしゃみとかはしてたけどね。ユウタ君も感染(うつ)されていないか、気をつけた方がいいよ」
 稲生:「今からイソジンでうがいしてきます」

 そこへ稲生の母親の佳子がやってきた。

 佳子:「あのー、パブロンで宜しかったらどうぞ」

 家の救急箱にあった風邪薬を持って来た。

 イリーナ:「どうも、ありがとうございます」
 佳子:「明日になれば近くのクリニックが開いてますよ」
 稲生:「それにしても、僕も魔道師になってから全く風邪なんか引かなかったものだからそういうものだと思ってましたけど、そうでもないんですね」
 イリーナ:「そりゃそうよ。怪我だったら回復魔法で治せるけど、病気は魔法で治せないからね。『不老不死の魔道師を殺すには、病を流行らせろ』ってね。だから風邪でも油断はできないのよ」
 稲生:「へえ……」
 イリーナ:「それじゃ、お言葉に甘えて頂きます」
 佳子:「どうぞどうぞ」

 イリーナは薬を持って客間に入った。

 佳子:「あの人達、保険とか入ってるのかしら?」
 稲生:「えっ?」
 佳子:「ほら、保険入ってないと全額負担になるからね」
 稲生:「そう言えば日本に住む外国人達は、こういう時どうしてるんだろう???」
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