報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「バスに揺られて大石寺参り」

2017-11-08 19:35:28 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月3日08:34.天候:晴 JR新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、新富士です。新富士の次は、静岡に止まります〕

 右手の車窓に富士山が見えている。
 列車はグングンと速度を落とした。
 恐らくATCブレーキによる減速で、運転士の手動によるものではないだろう。

〔「新富士駅でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。2番線に入ります。お出口は、左側です。停車の際、ポイント通過の為、揺れることがあります。お立ちのお客様、お近くの手すりにお掴まりください」〕

 新富士駅は1988年、地元の請願により設置された請願駅である。
 駅設置に当たっては地元の自治体が半分ほど出資したということだが、ウィキペディアには「宗教団体による大型寄付もあった」とある。
 その宗教団体とは、言わずと知れた日蓮正宗であろう。
 中でも創価学会が突出していたと思われるが、当時の創価学会は日蓮正宗の外郭団体だったので、ここでは日蓮正宗とする。
 尚、外郭団体とは官公庁から出資・補助金を受けている外部団体のことを本来は指すが、官公庁を宗門に置き換えれば大体辻褄が合うので、作者は外郭団体と呼んでいる。

 稲生:「そろそろ到着ですね」
 マリア:「師匠、降りますよ」
 イリーナ:「うんにゃ……」

 列車がポイントを渡って副本線のホームに入る。

〔「ご乗車ありがとうございました。新富士、新富士です。2番線の電車は8時39分発、“こだま”635号、名古屋行きです」〕

 列車が着いて1分もしないうちに、後続の通過列車が轟音を立てて通過した。
 新富士駅の前後は線形が良い為、通過列車は基本的に最高速度で通過する。

 稲生:「ここからバスに乗り換えますけど、どうします?」
 イリーナ:「うーん……。アタシ達はここから別行動にしよう」
 マリア:「!」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「師匠?」
 イリーナ:「どうやらバスは、信徒で一杯になりそうだ。無関係のアタシ達が乗ったら、迷惑だろう」

 新富士駅〜大石寺間の登山バスは貸切扱いではない為、運賃さえ払えば一般乗客も乗れる。

 イリーナ:「それに、この町でやっておきたいこともあるしね」
 稲生:「分かりました。宿泊先は富士宮市内になります。この前の駅前のホテルではありません」
 イリーナ:「ああ、分かった。それじゃ夕方、私達も大石寺に行こう。そこから一緒に移動で」
 稲生:「分かりました」

 駅前で稲生は魔道師の師匠や先輩と別れた。

 稲生:(この町でやっておくことって何だろう?)

 少なくとも稲生がお呼びで無いことは確かだった。

[同日09:50.天候:晴 新富士駅北口バスプール]

 バスプールに入線してきたバスは、普通のノンステップバスだった。
 一般の路線バスと兼用の為、ちょっと乗り慣れていないと戸惑うことがある。
 通常は中扉から乗って前扉から降りる整理券方式なのだが、大石寺登山バスとなると逆転する(前乗り方式)。
 その為、Pasmoなどで乗ろうとすると、中扉の読み取り機に当てて、再び前扉の読取機に当てに行くという面倒なことをやらされる(作者体験談)。
 窓口で乗車券購入または現金で乗るのが良さそうだ。
 但し、高速バスタイプの車両で来ると乗り口が1つしか無いので、このような面倒なことはない。
 どうせ1人だからと、稲生は運転席後ろの1人席に座った。
 ノンステップバスのそこはトラックの運転席によじ登るような感じになるので、バリアフリーとは正反対である。

 稲生:(まさかここでマリアさん達と別れるとはなぁ……)

 稲生はガックリ頭(こうべ)を垂れた。

〔「お待たせ致しました。発車致します」〕

 バスはノンステップバスならではグライドドアを閉め、新富士駅前を発車した。
 この後、在来線のJR富士駅前に止まる。

 稲生:(班長達、もう到着してるかな……)

 稲生は自分のスマホを取り出した。

 稲生:(確か、鈴木組長がツイッターやってるって言ってたな……)

 稲生は鈴木のツイッターを見てみた。
 尚、鈴木は元顕正会の組長だった男だが、何故か正証寺に来ても「鈴木組長」と呼ばれることがある。
 別に強面でも何でも無く、むしろ痩せ型のオタクなのであるが。

 鈴木:『折伏の予定が入って、ニチアサが観れないお』

 稲生:(鈴木君!?ニチアサって……!)

 鈴木:『婦人部のオバちゃん達、超元気。顕正会の婦人部員とそこは変わらない』

 稲生:(だろうねぇ……)

 鈴木:『オバちゃん達トイレ近いから、リアル“こだま”だお』

 稲生:(あー……。その点、イリーナ先生はずっと寝てるからトイレが近いってことは無いな)

 鈴木:『足柄SA到着ーーーーっ!女子トイレ、クソ混んでるみたい。オバちゃん、男子トイレに“街頭折伏”に行くってさw』

 稲生:(マジか!?)

 鈴木:『大石寺到着!やっぱり顕正会の言ってることはウソだった!』

 稲生:(うんうん、そうだろうそうだろう)

 鈴木:『三門が近代的なプレハブになっている!!』

 

 ズコーッ!!(座席から転がり落ちる稲生)

 運転手:「お、お客さん、大丈夫ですか!?」
 稲生:「だ、大丈夫です……。(藤谷班長、ちゃんと教えてあげてー!)」

 鈴木:『顕正会では、三門からしてオンボロで今にも朽ち果てる状態だと言っていたのに!』

 稲生:(それを防ぐ為の改修工事なんだよなぁ……)

[同日10:40.天候:晴 日蓮正宗大石寺 第二ターミナル]

 バスは大石寺のバスターミナルに到着した。
 ここでは前後のドアを開けてくれるので、一斉に降りられる。

 稲生:「えーと……まずは休憩坊に集合だっけ。場所は……報恩坊か」

 稲生はバスターミナルから北に向かい、国道を横断して塔中へと向かった。
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“大魔道師の弟子” 「バスの旅、鉄の旅」 3

2017-11-08 10:15:37 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月3日07:04.天候:曇 東北新幹線“なすの”252号1号車内→東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道新幹線、東海道本線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武快速線、京葉線はお乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お支度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 風が窓を叩き付ける中、ようやく雲間から朝日が顔をチラッチラッと出すようになった。
 このまま台風の残り香により、雲も吹き飛ばしてくれるとベストだ。
 きっと作者と違って富士山が綺麗に顔を出してくれるだろう。
 作者など、大石寺登山の度に天候が悪くて富士山を拝んだ記憶は直近では全くない。

〔「東京駅20番線到着、お出口は左側です。お降りの際、お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください。折り返し車内整備を行いますので、お近くのドアからお降りください。……」〕

 マリア:「師匠、到着しますよ」
 イリーナ:「んあ……?」
 稲生:「ほら、キミ達もバッグの中に入って」
 ミク人形:「アイス」
 ハク人形:「アイス」
 稲生:(こりゃ絶対、途中で手に入れないと大変なことになる……)

 東北新幹線は無事に東京駅に到着した。

〔「ご乗車ありがとうございました。東京、東京です。お忘れ物の無いよう、お降りください。20番線に到着の電車は折り返し、7時16分発、“はやて”111号、盛岡行きとなります。……」〕

 列車から降りた乗客は少なかった。
 その代わり、折り返し列車を待つ乗客達は長蛇の列を作っていた。
 グリーン車以外全部自由席だった“なすの”と違い、“はやて”は全車両指定席のはずだ。
 それがこうして長蛇の列になっているのだから、既に満席となっているのだろう。
 今日が3連休、しかも台風一過の天候の良い行楽日和であることを思い出した稲生だった。

 稲生:「取りあえず、東海道新幹線まで行きましょう」
 マリア:「うん」
 イリーナ:「おー」

[同日07:10.天候:曇 東京駅・東海道新幹線ホーム]

〔新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく16番線に、当駅始発、“こだま”635号、名古屋行きが入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。……〕

 大井の車両基地から回送でやってきた700系C編成が風を切りながらホームに入る頃、階段を上って来る魔道師が3人。
 C編成とはJR東海が所有している700系のこと。

 稲生:「……あんまり混んでませんね」

 ホームに上がって、乗車口を見る稲生。
 確かに、“のぞみ”や“ひかり”のホームは混んでいたが、“こだま”は(入線時間が早いせいか)まだ空いていた。

 稲生:「取りあえず朝食のお弁当とお茶と……」
 イリーナ:「カード使う?」
 稲生:「いや、多分使えないと思うんで、ここは僕が現金で」

 ホームの売店で稲生が纏めて購入する。

 稲生:「あとすいません、これを2つ……」
 店員:「はい、ありがとうございます」

 稲生は何かを購入し、乗車車両に向かう。

 マリア:「な、なに?先頭車?」
 稲生:「はい!空いてますよ!」
 イリーナ:「マリアの場合、運動しなきゃダメよ。屋敷にフィットネスクラブでも作ろうかねぇ」
 稲生:「地下にプールはありますけどね」

 夏場は時々他の魔女達が泳ぎに来る。
 但しその場合、稲生は立ち入り禁止になる(エレーナやリリアンヌ、アンナがいる場合を除く)。

 マリア:「それにしたって……」

 ビュウッ!

 マリア:「おっと!」

 時折吹く突風がホームにいる者達を襲う。

 警備員A:「先輩、すいません。帽子が……」
 警備員B:「ちゃんと顎紐しとけって言ったろ!」

 速度規制まではされていないものの、マリアが自分のスカートの裾を気にしなくてはいけないほどの突風に、ホームを巡回中の警備員や駅員は帽子を気にしなくてはいけないほどだ。

 多摩:「雲羽の先輩?」
 雲羽:「……と、後輩です」

 稲生達は突風と戦いながら、1号車に乗り込んだ。
 確かに稲生の言う通り、車内はガラガラである。
 東北新幹線と同じように、3人席に座った。

〔「新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は7時26分発、“こだま”635号、名古屋行きです。終点名古屋まで、各駅に停車致します。グリーン車は8号車から10号車、自由席は1号車から7号車と13号車から15号車です。……」〕

 稲生:「えーと……これが先生の駅弁です。海鮮丼」
 イリーナ:「ありがとう」
 稲生:「これがマリアさんですね。サンドイッチ」
 マリア:「ありがとう」
 イリーナ:「マリア、減食はする必要無いのよ。食べた分だけ運動すればいいんだから」
 マリア:「朝は軽食というのは、イギリスでは当たり前です」

 パンとコーヒーのイングリッシュ・ブレックファーストだ。

 稲生:「それに、カツサンドですよ」
 イリーナ:「そうなんだ」
 稲生:「大石寺は広いですから、歩くと結構いい運動になりますよ」
 イリーナ:「あ、いや。私とマリアはバスを降りたら、別行動させてもらうわ」
 稲生:「えっ?どうするんです?」
 イリーナ:「まあ、観光でもしてようかねぇ……」
 稲生:「観光は明日に取っているはずですが……」
 イリーナ:「まあまあ」
 稲生:(先生達は先生達で、何かあるのかな?)

[同日07:26.天候:晴 同場所]

〔「レピーター、点灯です」〕

 ホームに発車メロディが鳴り響く。
 JR東日本の新幹線ホームが未だに発車ベルに対して、こちらはメロディ。

〔16番線、“こだま”635号、名古屋行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕
〔「16番線、ご注意ください。まもなく発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。ITVよーし!乗車終了!」〕

 ブーーーーーー!(客終合図)
 ピンポーンピンポーン♪……シュー……ガラガラガラガラ………ッ、バン!(700系C編成の閉扉はだいたいこんな感じ)

 稲生:「よし。こっちもようやく東京出発ですね」

 “こだま”は定時に発車した。
 稲生は『朝のおむすび弁当』に手を付けていた。

〔♪♪(車内チャイム”)♪♪。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります。次は、品川です〕

 JR東日本の新幹線車内自動放送が男声(堺正幸氏)なのに対し、こちらは脇坂京子氏である。
 尚、車内チャイムはJR東海編成だとTOKIOの“AMBITIOUS JAPAN!”のインストゥルメンタル。
 原曲は歌詞の中に“のぞみ”や“ひかり”が出てくるが、“こだま”は出てこない。
 JR西日本編成だと“いい日旅立ち・西へ”。

 ミク人形:「おいしー」
 ハク人形:「おいしー」

 網棚に腰掛ける人形達は、稲生が売店で買ったアイスクリームを美味そうに頬張っていた。
 これで取りあえず、この人形2体が腹いせに非常ボタンを押したり、非常コックを開いたりといったことはしないだろう。
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