[11月2日09:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]
〔「……台風23号は今後速度を速めながら関東地方に接近、夜遅くには荒れ模様となる見込みです」〕
居間のテレビを観ているイリーナ組。
稲生:「こりゃ完全に直撃コースですね」
イリーナ:「この家の中にいれば安心だとは思うわ。でもこんな嵐なのに、日本人は仕事に行くのねぇ……」
マリア:「電車さえ動いていれば仕事に行く。それが日本という所か」
稲生:「違いますよ、マリアさん」
マリア:「おっ……?(さすがに自粛するか?)」
稲生:「電車が動いて無くても、取りあえず駅まで行くのが日本人の美徳です」(`・ω・´)
マリア:「Why Japanese people!?」(←厚切りジェイソン風に)
イリーナ:「死亡フラグを敢えて立てて向かう。正に、Kamikazeね」
ズズズと紅茶を啜るイリーナ。
イリーナ:「ロシアだったら、こんな嵐が来ようものなら、そもそも鉄道職員が真っ先に休むから仕事もクソも無いわね」
マリア:「イギリスもです」
テレビにはワイパーをフルに動かして走行する山手線の電車の映像が映っていた。
稲生:「魔界高速電鉄はちゃんと営業してるのにねぇ……」
イリーナ:「それでも本数は減らして運転してるのよ」
稲生:「ああ、やっぱり。今日はこっちの電車も本数を減らして運転するそうですよ」
イリーナ:「ううん、そうじゃないの」
稲生:「えっ?」
イリーナ:「嵐でも真面目に電車を走らせるのは、日本人職員だけだって。あとは皆休むから」
マリア:「日本人達がやってくる前までは、平気で全面運休とかしてたらしいですね」
イリーナ:「他の職員達にとっては強制労働の刑みたいなものだから」
稲生は文化と習慣の違いを、日本にいながらにして思い知られた。
イリーナ:「今日は昨夜に引き続き、『東京中央学園の怪談』をユウタ君に話してもらいましょうか」
稲生:「分かりました」
イリーナ組は奥の客間へと移動した。
稲生:「紅茶のお代わり持って来ますね」
イリーナ:「スッパスィーバ!」
客間に移動する。
稲生:「えー、それでは……魔道師が関わっていそうな話ですね」
イリーナ:「何かある?」
稲生:「だいぶ恐ろしい話があるんですけど……」
イリーナ:「おっ、そういうのがいいね」
稲生:「今から20年ほど前の話です。当時の新聞部が、やっぱり学校の七不思議の特集をしたらしいんですよ。当時1年生でまだ新人の部員がその担当に選ばれたそうなんですけどね……」
イリーナ:「それで?」
稲生:「今、その新聞部員はおろか、その部員に学校の七不思議の話をした7人はこの世にいません」
イリーナ:「ほおほお?誰が呪殺したのかしら?」
稲生:「全員が謎の変死です。頭をグチャグチャに潰されて死んでいたそうです」
イリーナ:「グチャグチャ……?」
稲生:「しかも全員が同じタイミングで。新聞部員だけが死に際、ダイイングメッセージを残していたらしいです。『のろいばり』と」
イリーナ:「呪い針!?」
マリア:「師匠、あなたが犯人ですか?」
稲生:「ええっ!?そうなんですか、マリアさん!?」
マリア:「そりゃ私だって呪殺くらいできるさ。私でさえできるんだから、師匠なんかそれはもうお手もの……」
イリーナ:「ユウタ君!その話はパスだわ!次の話は!?」
稲生:「……先生も何気に関わっていたんですね。全く、人が悪い」
マリア:「だから言っただろ?こんな顔して意外と鬼BBA……いでででっ!?」
イリーナ:「マリア、最近脂肪付いて来たんじゃない?ダメよ。ちゃんと運動しなきゃ」
マリアの脇腹をつねるイリーナだった。
マリア:「師匠よりマシです!」
マリアはイリーナの巨乳を指さした。
稲生:「あの……次の話行っていいですか?」
イリーナ:「はいはい。よろしく」
稲生:「えーと……次は、旧校舎で起きた話です。今は教育資料館として再生している旧校舎ですが、まだ放置されていた頃の話ですね。これに出てくる『3時ババァ』の話ですが……」
と、そこへ稲生のスマホが鳴った。
稲生:「あ、ちょっと失礼」
稲生が何気にスマホを取ろうとした時だった。
イリーナがパッと取ってしまった。
イリーナ:「ハイ、お掛けになった電話番号は現在使われてませんよォ!」
マリア:「……あの電話、多分『今の話を続けたら呪殺する』という電話だったかもしれないぞ?」
稲生:「ええっ!?」
イリーナ:「いいじゃないのよ、これも日本観光の一環なんだからぁ。カタいこと言わない。いいでしょ、いいでしょ?」
稲生:「先生のお知り合いからだったようですね」
マリア:「ユウタがそのまま出てたら、多分呪いの魔法を掛けられてたよ」
稲生:「どんだけあの学校は、魔道師に狙われてたんだ……」
マリア:「魔界の入口に建つような絶好条件だものなぁ……」
[同日21:00.天候:暴風雨 稲生家]
〔「……関東地方は現在、台風23号が上陸しており、各地で浸水の被害が出ております。この台風は速度を速めながら東北東の方向へ進んでおり、未明には茨城県沖に抜ける見込みです。各地の警報つきましては……」〕
佳子:「台風の被害はどうだって?」
稲生:「(埼玉の方は)まだ何も言ってない」
稲生は居間で台風中継を観ていた。
宗一郎:「おーい、風呂出たぞー」
佳子:「はいはい。勇太、明日は早いんでしょう?早いとこお風呂入って寝ちゃいな」
稲生:「分かった」
稲生はソファから立ち上がった。
佳子:「明日のゴルフは中止かしら?」
宗一郎:「台風、明日には通過するんだろうが、この分だとコンデションがなぁ……」
両親がそんなことを話している間、稲生は浴室に向かった。
奥の部屋からはイリーナとマリアの話し声がするので、まだ当分寝ないのだろう。
魔道師の夜は長いのである。
稲生:「おっと!」
脱衣場に入ると、稲生のスマホが鳴った。
今度は出る前にディスプレイを見る。
すると、相手は藤谷だった。
稲生:「はい、もしもし?」
藤谷:「おー、稲生君か。明日、気をつけてな」
稲生:「班長も気をつけて」
藤谷:「幸い台風が通過してからの出発ではあるんだが、まだ風が強いからな。明日はずっと台風の吹き返しの風が強いそうだから」
稲生:「あー、なるほど……」
実際に今も、窓がガタガタと鳴っている。
藤谷:「稲生君達は新幹線だろ?止まることは無いと思うけど、気をつけてくれよ」
稲生:「大丈夫です。速度規制食らったくらいでは遅刻しませんよ」
藤谷:「そりゃ頼もしい。それじゃ、御山で」
稲生は電話を切った。
稲生:「班長として班員の登山に気にする、か。顕正会の大会前にも、似たようなのあったなぁ……」
アンチ顕正会の法華講員は悪く見るが、実際には連絡された方はそんなに悪い気はしないものである。
〔「……台風23号は今後速度を速めながら関東地方に接近、夜遅くには荒れ模様となる見込みです」〕
居間のテレビを観ているイリーナ組。
稲生:「こりゃ完全に直撃コースですね」
イリーナ:「この家の中にいれば安心だとは思うわ。でもこんな嵐なのに、日本人は仕事に行くのねぇ……」
マリア:「電車さえ動いていれば仕事に行く。それが日本という所か」
稲生:「違いますよ、マリアさん」
マリア:「おっ……?(さすがに自粛するか?)」
稲生:「電車が動いて無くても、取りあえず駅まで行くのが日本人の美徳です」(`・ω・´)
マリア:「Why Japanese people!?」(←厚切りジェイソン風に)
イリーナ:「死亡フラグを敢えて立てて向かう。正に、Kamikazeね」
ズズズと紅茶を啜るイリーナ。
イリーナ:「ロシアだったら、こんな嵐が来ようものなら、そもそも鉄道職員が真っ先に休むから仕事もクソも無いわね」
マリア:「イギリスもです」
テレビにはワイパーをフルに動かして走行する山手線の電車の映像が映っていた。
稲生:「魔界高速電鉄はちゃんと営業してるのにねぇ……」
イリーナ:「それでも本数は減らして運転してるのよ」
稲生:「ああ、やっぱり。今日はこっちの電車も本数を減らして運転するそうですよ」
イリーナ:「ううん、そうじゃないの」
稲生:「えっ?」
イリーナ:「嵐でも真面目に電車を走らせるのは、日本人職員だけだって。あとは皆休むから」
マリア:「日本人達がやってくる前までは、平気で全面運休とかしてたらしいですね」
イリーナ:「他の職員達にとっては強制労働の刑みたいなものだから」
稲生は文化と習慣の違いを、日本にいながらにして思い知られた。
イリーナ:「今日は昨夜に引き続き、『東京中央学園の怪談』をユウタ君に話してもらいましょうか」
稲生:「分かりました」
イリーナ組は奥の客間へと移動した。
稲生:「紅茶のお代わり持って来ますね」
イリーナ:「スッパスィーバ!」
客間に移動する。
稲生:「えー、それでは……魔道師が関わっていそうな話ですね」
イリーナ:「何かある?」
稲生:「だいぶ恐ろしい話があるんですけど……」
イリーナ:「おっ、そういうのがいいね」
稲生:「今から20年ほど前の話です。当時の新聞部が、やっぱり学校の七不思議の特集をしたらしいんですよ。当時1年生でまだ新人の部員がその担当に選ばれたそうなんですけどね……」
イリーナ:「それで?」
稲生:「今、その新聞部員はおろか、その部員に学校の七不思議の話をした7人はこの世にいません」
イリーナ:「ほおほお?誰が呪殺したのかしら?」
稲生:「全員が謎の変死です。頭をグチャグチャに潰されて死んでいたそうです」
イリーナ:「グチャグチャ……?」
稲生:「しかも全員が同じタイミングで。新聞部員だけが死に際、ダイイングメッセージを残していたらしいです。『のろいばり』と」
イリーナ:「呪い針!?」
マリア:「師匠、あなたが犯人ですか?」
稲生:「ええっ!?そうなんですか、マリアさん!?」
マリア:「そりゃ私だって呪殺くらいできるさ。私でさえできるんだから、師匠なんかそれはもうお手もの……」
イリーナ:「ユウタ君!その話はパスだわ!次の話は!?」
稲生:「……先生も何気に関わっていたんですね。全く、人が悪い」
マリア:「だから言っただろ?こんな顔して意外と鬼BBA……いでででっ!?」
イリーナ:「マリア、最近脂肪付いて来たんじゃない?ダメよ。ちゃんと運動しなきゃ」
マリアの脇腹をつねるイリーナだった。
マリア:「師匠よりマシです!」
マリアはイリーナの巨乳を指さした。
稲生:「あの……次の話行っていいですか?」
イリーナ:「はいはい。よろしく」
稲生:「えーと……次は、旧校舎で起きた話です。今は教育資料館として再生している旧校舎ですが、まだ放置されていた頃の話ですね。これに出てくる『3時ババァ』の話ですが……」
と、そこへ稲生のスマホが鳴った。
稲生:「あ、ちょっと失礼」
稲生が何気にスマホを取ろうとした時だった。
イリーナがパッと取ってしまった。
イリーナ:「ハイ、お掛けになった電話番号は現在使われてませんよォ!」
マリア:「……あの電話、多分『今の話を続けたら呪殺する』という電話だったかもしれないぞ?」
稲生:「ええっ!?」
イリーナ:「いいじゃないのよ、これも日本観光の一環なんだからぁ。カタいこと言わない。いいでしょ、いいでしょ?」
稲生:「先生のお知り合いからだったようですね」
マリア:「ユウタがそのまま出てたら、多分呪いの魔法を掛けられてたよ」
稲生:「どんだけあの学校は、魔道師に狙われてたんだ……」
マリア:「魔界の入口に建つような絶好条件だものなぁ……」
[同日21:00.天候:暴風雨 稲生家]
〔「……関東地方は現在、台風23号が上陸しており、各地で浸水の被害が出ております。この台風は速度を速めながら東北東の方向へ進んでおり、未明には茨城県沖に抜ける見込みです。各地の警報つきましては……」〕
佳子:「台風の被害はどうだって?」
稲生:「(埼玉の方は)まだ何も言ってない」
稲生は居間で台風中継を観ていた。
宗一郎:「おーい、風呂出たぞー」
佳子:「はいはい。勇太、明日は早いんでしょう?早いとこお風呂入って寝ちゃいな」
稲生:「分かった」
稲生はソファから立ち上がった。
佳子:「明日のゴルフは中止かしら?」
宗一郎:「台風、明日には通過するんだろうが、この分だとコンデションがなぁ……」
両親がそんなことを話している間、稲生は浴室に向かった。
奥の部屋からはイリーナとマリアの話し声がするので、まだ当分寝ないのだろう。
魔道師の夜は長いのである。
稲生:「おっと!」
脱衣場に入ると、稲生のスマホが鳴った。
今度は出る前にディスプレイを見る。
すると、相手は藤谷だった。
稲生:「はい、もしもし?」
藤谷:「おー、稲生君か。明日、気をつけてな」
稲生:「班長も気をつけて」
藤谷:「幸い台風が通過してからの出発ではあるんだが、まだ風が強いからな。明日はずっと台風の吹き返しの風が強いそうだから」
稲生:「あー、なるほど……」
実際に今も、窓がガタガタと鳴っている。
藤谷:「稲生君達は新幹線だろ?止まることは無いと思うけど、気をつけてくれよ」
稲生:「大丈夫です。速度規制食らったくらいでは遅刻しませんよ」
藤谷:「そりゃ頼もしい。それじゃ、御山で」
稲生は電話を切った。
稲生:「班長として班員の登山に気にする、か。顕正会の大会前にも、似たようなのあったなぁ……」
アンチ顕正会の法華講員は悪く見るが、実際には連絡された方はそんなに悪い気はしないものである。