[11月3日20:00.天候:晴 静岡県富士宮市ひばりヶ丘 スーパーホテル富士宮]
イリーナ:「飲んだ食った飲んだ食った」
ほろ酔い気分のイリーナと……。
マリア:「うっぷ……!飲み過ぎた……かも」
稲生:「マリアさん、後でソルマック……」
マリア:「あ、うん……大丈夫」
ヘタにハイにならずに深酔いしたのは、飲み慣れているワインのみ飲んだからだろう。
イリーナ:「さて、あとは温泉でも入るか。ここは天然温泉なんでしょ?」
稲生:「はい。そういうことになっています」
イリーナ:「よしよし。早く部屋に戻って、温泉入る準備するかぁ」
そんな3人、ホテルに戻る。
部屋に戻って……。
稲生:「ビジネスホテルながら浴衣で館内を移動できるのがいいな」
但し、朝食会場へは浴衣での来場は禁止であるとのこと。
稲生:「そろそろ、いいかな?」
稲生はコネクティングルームとして解錠されている仕切り扉を開け、イリーナとマリアの部屋を覗いてみることにした。
覗くといっても変な意味ではない。
ちゃんとドアはノックする。
稲生:「あのー、すいません。そろそろいいですか?」
イリーナ:「いいよ」
中からイリーナの声がしたので、稲生は部屋のドアを開けた。
イリーナはちゃんと浴衣に着替えていた。
しかし、マリアは……。
稲生:「マリアさん、大丈夫ですか?」
マリアは下段ベッドに横になっていた。
マリア:「飲み過ぎた……かもしれない……」
イリーナ:「別にアタシのペースに合わせなくても良かったんだよ?ユウタ君だって、自分のペースだったのに……」
稲生:「マリアさん、僕、ソルマック持ってるんで」
イリーナ:「都合良く持ってるねぇ」
稲生:「僕の予知です」
イリーナ:「ほお!?ユウタ君にも予知能力が?」
稲生:「いえ。先生が恐らく使うだろうという……」
イリーナ:「それは『予知』じゃなく、予想って言うんだよね」
稲生:「はあ……」
イリーナ:「しょうがない。温泉にはアタシとユウタ君で行こう。マリアは下のベッド使っていいから。上へはアタシが寝るよ」
下段はダブルベッドくらいの広さがあるが、上段はシングルの広さである。
元々はそこにマリアが寝ることになっていたが……。
マリア:「いえ……私は上で……」
イリーナ:「梯子から足を踏み外しても困るんだよ。アタシもよく知ってる痛みなんだから」
稲生:(よく知るほど梯子から足を踏み外していたのか……)
イリーナ:「とにかく、上着だけでも脱いどきな。ブレザーがシワになるよ」
マリア:「はい……」
稲生は自分の部屋に置いてある荷物からソルマックを持って来た。
稲生:「じゃあ、マリアさん。ここに置いておきますから」
マリア:「ありがとう……」
稲生とイリーナはタオルを片手に大浴場に向かった。
稲生:「マリアさん、あんなに酒弱かったかな?」
イリーナ:「あのレストランのワインが強かったのかもね」
稲生:「大丈夫かなぁ……」
イリーナ:「うん。少し安静にしておけば大丈夫だよ」
稲生:「そうですか。それなら、まあ……」
エレベーターが1階に到着する。
右に曲がればフロントやロビーがあり、左に曲がれば大浴場だ。
イリーナ:「ねぇ、ユウタ君」
稲生:「何ですか?」
イリーナ:「あなたは何があってもマリアを選ぶでしょう?」
稲生:「えっ?……ええ、それはもちろん」
イリーナ:「そう。良かった」
稲生:「何ですか?」
イリーナ:「いえ、何でもないわ。それじゃ、ここでお別れね」
スーパーホテルでは大浴場は男女入れ替え制という所も多いが、ここはちゃんと男女別になっている。
稲生:(先生、どうしたんだろう?)
稲生は男湯に入って首を傾げた。
稲生:「ふう……」
天然温泉のせいか、湯舟に入ると落ち着く。
男性客:「お疲れさまです。稲生君」
湯気でよく見えなかったが、何だか聞き覚えのある男の声が聞こえた。
横田:「クフフフフフ……。私ですよ。横田です。先般の支部総登山における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
稲生:「わあっ!?横田理事!?」
稲生はびっくりして立ち上がった。
が……。
稲生:「わっ!」
湯舟の底に足を滑らせた。
稲生:「ガバゴボガバベボ……!」
横田:「嗚呼、稲生君。三途の川を渡るのは、まだ先ですよ」
横田、稲生を救出した。
稲生:「プハッ!……はあ、はあ……!またあの205系が!」
横田:「さすがは鉄ヲタですねぇ……。クフフフフフ……」
稲生:「そ、そんなことより何しに来たんだ!?まさか女湯で下着ドロ……!?」
横田:「心外ですよ、稲生君。天丼は2回まで、というではありませんか」
稲生:「はあ!?どの口が言って……!」
横田:「それに、只今はマリアンナさんの御入浴は無い様子。それでは下着ドロに忍び込んでも、何の旨味もありません」
稲生:「…………」
ゴゴゴゴゴと稲生の体から霊力のオーラが噴出する!
横田:「じょ、冗談です。ゴメンナサイ……」
横田は汗を拭き、眼鏡も吹いて咳払いした。
横田:「本当は大石寺の様子を見に来たのです、ハイ」
稲生:「魔界共和党理事としてではなく、本当に顕正会の理事としてか」
横田:「さようでございます。クフフフフ……」
稲生:「って、そんなこと僕に喋ってもいいのか?今の僕は大魔道師の弟子というよりは、法華講員として来たようなものだぞ?」
横田:「大丈夫です。よしんばあなたが法華講の上長に喋ったところで、すぐに信じてもらえますでしょうか?」
稲生:「なるほど。確かに僕が言っただけでは、悪い冗談にしか思ってもらえないかもな」
横田:「でしょう?人間、そういうものです。クフフフフフ……」
稲生:「でも藤谷班長だったら、イリーナ先生の名前を出せば信じてくれるかも……」
横田:「あなた今、大魔道師の弟子としてここにいるわけではないとか仰ってませんでした?」
稲生:「いや、まあ、よくよく考えてみれば、もう登山は終わってるわけだから、法華講員じゃなくていいのかも……」
横田:「嗚呼、何と嘆かわしい。大聖人様が御照覧あそばされば、必ずやお嘆きになるでありましょう」
稲生:「う……。だから、離檀願出したのに……。それで、何か収穫はあった?」
横田:「ありましたとも!」
稲生:「あったのか。何だい?今さら御僧侶が高級車に乗ってることくらい、ネタとして古過ぎるよ」
横田:「あなたはそれでよろしいのですか!?」
稲生:「いいよ!むしろ高貴な人が高貴な車に乗らなくてどうするの!?てか、そんな鉄板ネタ、古過ぎてて腐臭漂ってるよ!」
横田:「あなたと仰る方は……!これだから宗門は堕落しているのです!」
稲生:「むしろ、信徒の方が御僧侶より高い車に乗っていることの方が問題じゃない?その車、御供養しろよって思う」
横田:「ネタ提供、ありがとうございます!イエロー先生ですら、日産シーマですよ。型落ちの」
稲生:「浅井会長は、むしろプレジデントに乗っててもいいと思うけどね」
横田:「おおっ!そう仰ってくれますか?因みにソッカー首領ダイ・サークはロールスロイスですかね?」
稲生:「それは、んっ?さんにでも聞いてみれば?」
横田:「了解です」
稲生:「横田理事は何の車に乗ってるの?」
横田:「私ですか?クフフフフフ……。そうですねぇ……私くらいになりますと、自分で運転することはないですから……」
稲生:「へえ!それもそっか。魔界じゃ、御者付きの馬車だもんね」
横田:「ええ。それでは、そろそろお迎えが来る頃ですので、私はこれで失礼致します。良い旅を」
稲生:「ああ、どうも」
横田はそう言って、先に風呂から上がった。
後から稲生も上がる。
稲生:(珍しく何もしなかったケンショー・グリーンだ……)
浴衣を着込んで、ロビーの方に向かうと……。
稲生:「んっ!?」
エントランスの外から赤ランプの光が見えた。
稲生:「ま、まさか!?」
稲生は急いでエントランスに向かった。
警察官A:「横田高明!大石寺における不法侵入並びに女性信徒の盗撮容疑で逮捕する!」
警察官B:「21時12分、被疑者逮捕!」
横田:「いけません!この私のお迎えに日産クルーとは!せめてトヨタ・ゼロクラウンのパトカーで来なさい!」
警察官A:「何言ってるんだ、コイツ!」
稲生:「迎えって、コレかよ……」
横田:「稲生君達でさえ、石川タクシー富士の日産セドリックだったのですぞ!」
警察官B:「いいから早く乗れ!」
タクシーでは小型(東京では低料金タクシー)に分類される車種のパトカーに乗せられ、富士宮警察署へと連行された横田だった。
稲生:(何だろう?あっさり脱獄して、またさらっと会いそうな気がする……)
弟子としての拙い魔力でもできる予知であった。
イリーナ:「飲んだ食った飲んだ食った」
ほろ酔い気分のイリーナと……。
マリア:「うっぷ……!飲み過ぎた……かも」
稲生:「マリアさん、後でソルマック……」
マリア:「あ、うん……大丈夫」
ヘタにハイにならずに深酔いしたのは、飲み慣れているワインのみ飲んだからだろう。
イリーナ:「さて、あとは温泉でも入るか。ここは天然温泉なんでしょ?」
稲生:「はい。そういうことになっています」
イリーナ:「よしよし。早く部屋に戻って、温泉入る準備するかぁ」
そんな3人、ホテルに戻る。
部屋に戻って……。
稲生:「ビジネスホテルながら浴衣で館内を移動できるのがいいな」
但し、朝食会場へは浴衣での来場は禁止であるとのこと。
稲生:「そろそろ、いいかな?」
稲生はコネクティングルームとして解錠されている仕切り扉を開け、イリーナとマリアの部屋を覗いてみることにした。
覗くといっても変な意味ではない。
ちゃんとドアはノックする。
稲生:「あのー、すいません。そろそろいいですか?」
イリーナ:「いいよ」
中からイリーナの声がしたので、稲生は部屋のドアを開けた。
イリーナはちゃんと浴衣に着替えていた。
しかし、マリアは……。
稲生:「マリアさん、大丈夫ですか?」
マリアは下段ベッドに横になっていた。
マリア:「飲み過ぎた……かもしれない……」
イリーナ:「別にアタシのペースに合わせなくても良かったんだよ?ユウタ君だって、自分のペースだったのに……」
稲生:「マリアさん、僕、ソルマック持ってるんで」
イリーナ:「都合良く持ってるねぇ」
稲生:「僕の予知です」
イリーナ:「ほお!?ユウタ君にも予知能力が?」
稲生:「いえ。先生が恐らく使うだろうという……」
イリーナ:「それは『予知』じゃなく、予想って言うんだよね」
稲生:「はあ……」
イリーナ:「しょうがない。温泉にはアタシとユウタ君で行こう。マリアは下のベッド使っていいから。上へはアタシが寝るよ」
下段はダブルベッドくらいの広さがあるが、上段はシングルの広さである。
元々はそこにマリアが寝ることになっていたが……。
マリア:「いえ……私は上で……」
イリーナ:「梯子から足を踏み外しても困るんだよ。アタシもよく知ってる痛みなんだから」
稲生:(よく知るほど梯子から足を踏み外していたのか……)
イリーナ:「とにかく、上着だけでも脱いどきな。ブレザーがシワになるよ」
マリア:「はい……」
稲生は自分の部屋に置いてある荷物からソルマックを持って来た。
稲生:「じゃあ、マリアさん。ここに置いておきますから」
マリア:「ありがとう……」
稲生とイリーナはタオルを片手に大浴場に向かった。
稲生:「マリアさん、あんなに酒弱かったかな?」
イリーナ:「あのレストランのワインが強かったのかもね」
稲生:「大丈夫かなぁ……」
イリーナ:「うん。少し安静にしておけば大丈夫だよ」
稲生:「そうですか。それなら、まあ……」
エレベーターが1階に到着する。
右に曲がればフロントやロビーがあり、左に曲がれば大浴場だ。
イリーナ:「ねぇ、ユウタ君」
稲生:「何ですか?」
イリーナ:「あなたは何があってもマリアを選ぶでしょう?」
稲生:「えっ?……ええ、それはもちろん」
イリーナ:「そう。良かった」
稲生:「何ですか?」
イリーナ:「いえ、何でもないわ。それじゃ、ここでお別れね」
スーパーホテルでは大浴場は男女入れ替え制という所も多いが、ここはちゃんと男女別になっている。
稲生:(先生、どうしたんだろう?)
稲生は男湯に入って首を傾げた。
稲生:「ふう……」
天然温泉のせいか、湯舟に入ると落ち着く。
男性客:「お疲れさまです。稲生君」
湯気でよく見えなかったが、何だか聞き覚えのある男の声が聞こえた。
横田:「クフフフフフ……。私ですよ。横田です。先般の支部総登山における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
稲生:「わあっ!?横田理事!?」
稲生はびっくりして立ち上がった。
が……。
稲生:「わっ!」
湯舟の底に足を滑らせた。
稲生:「ガバゴボガバベボ……!」
横田:「嗚呼、稲生君。三途の川を渡るのは、まだ先ですよ」
横田、稲生を救出した。
稲生:「プハッ!……はあ、はあ……!またあの205系が!」
横田:「さすがは鉄ヲタですねぇ……。クフフフフフ……」
稲生:「そ、そんなことより何しに来たんだ!?まさか女湯で下着ドロ……!?」
横田:「心外ですよ、稲生君。天丼は2回まで、というではありませんか」
稲生:「はあ!?どの口が言って……!」
横田:「それに、只今はマリアンナさんの御入浴は無い様子。それでは下着ドロに忍び込んでも、何の旨味もありません」
稲生:「…………」
ゴゴゴゴゴと稲生の体から霊力のオーラが噴出する!
横田:「じょ、冗談です。ゴメンナサイ……」
横田は汗を拭き、眼鏡も吹いて咳払いした。
横田:「本当は大石寺の様子を見に来たのです、ハイ」
稲生:「魔界共和党理事としてではなく、本当に顕正会の理事としてか」
横田:「さようでございます。クフフフフ……」
稲生:「って、そんなこと僕に喋ってもいいのか?今の僕は大魔道師の弟子というよりは、法華講員として来たようなものだぞ?」
横田:「大丈夫です。よしんばあなたが法華講の上長に喋ったところで、すぐに信じてもらえますでしょうか?」
稲生:「なるほど。確かに僕が言っただけでは、悪い冗談にしか思ってもらえないかもな」
横田:「でしょう?人間、そういうものです。クフフフフフ……」
稲生:「でも藤谷班長だったら、イリーナ先生の名前を出せば信じてくれるかも……」
横田:「あなた今、大魔道師の弟子としてここにいるわけではないとか仰ってませんでした?」
稲生:「いや、まあ、よくよく考えてみれば、もう登山は終わってるわけだから、法華講員じゃなくていいのかも……」
横田:「嗚呼、何と嘆かわしい。大聖人様が御照覧あそばされば、必ずやお嘆きになるでありましょう」
稲生:「う……。だから、離檀願出したのに……。それで、何か収穫はあった?」
横田:「ありましたとも!」
稲生:「あったのか。何だい?今さら御僧侶が高級車に乗ってることくらい、ネタとして古過ぎるよ」
横田:「あなたはそれでよろしいのですか!?」
稲生:「いいよ!むしろ高貴な人が高貴な車に乗らなくてどうするの!?てか、そんな鉄板ネタ、古過ぎてて腐臭漂ってるよ!」
横田:「あなたと仰る方は……!これだから宗門は堕落しているのです!」
稲生:「むしろ、信徒の方が御僧侶より高い車に乗っていることの方が問題じゃない?その車、御供養しろよって思う」
横田:「ネタ提供、ありがとうございます!イエロー先生ですら、日産シーマですよ。型落ちの」
稲生:「浅井会長は、むしろプレジデントに乗っててもいいと思うけどね」
横田:「おおっ!そう仰ってくれますか?因みにソッカー首領ダイ・サークはロールスロイスですかね?」
稲生:「それは、んっ?さんにでも聞いてみれば?」
横田:「了解です」
稲生:「横田理事は何の車に乗ってるの?」
横田:「私ですか?クフフフフフ……。そうですねぇ……私くらいになりますと、自分で運転することはないですから……」
稲生:「へえ!それもそっか。魔界じゃ、御者付きの馬車だもんね」
横田:「ええ。それでは、そろそろお迎えが来る頃ですので、私はこれで失礼致します。良い旅を」
稲生:「ああ、どうも」
横田はそう言って、先に風呂から上がった。
後から稲生も上がる。
稲生:(珍しく何もしなかったケンショー・グリーンだ……)
浴衣を着込んで、ロビーの方に向かうと……。
稲生:「んっ!?」
エントランスの外から赤ランプの光が見えた。
稲生:「ま、まさか!?」
稲生は急いでエントランスに向かった。
警察官A:「横田高明!大石寺における不法侵入並びに女性信徒の盗撮容疑で逮捕する!」
警察官B:「21時12分、被疑者逮捕!」
横田:「いけません!この私のお迎えに日産クルーとは!せめてトヨタ・ゼロクラウンのパトカーで来なさい!」
警察官A:「何言ってるんだ、コイツ!」
稲生:「迎えって、コレかよ……」
横田:「稲生君達でさえ、石川タクシー富士の日産セドリックだったのですぞ!」
警察官B:「いいから早く乗れ!」
タクシーでは小型(東京では低料金タクシー)に分類される車種のパトカーに乗せられ、富士宮警察署へと連行された横田だった。
稲生:(何だろう?あっさり脱獄して、またさらっと会いそうな気がする……)
弟子としての拙い魔力でもできる予知であった。