報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「バスの旅、鉄の旅」 2

2017-11-06 20:35:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月3日06:30.天候:曇 JR大宮駅コンコース]

 大宮駅西口に1台のタクシーが到着する。

 運転手:「910円です」
 稲生:「はい。カードでお願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 助手席に座る稲生が料金の支払いをしている間、その後ろに座っていたマリアは車を降りた。

 マリア:「……っ!」

 雨は止んでいたが、風がビュウビュウと吹いていた。
 ボブカットの金髪が顔に掛かるので、風向きとは反対方向に向く。

 イリーナ:「台風は過ぎ去ったはずなのに、まだ風が強いねぇ……」

 イリーナも目は細めていたが、口元は苦笑であった。

 稲生:「吹き返しの風ですね」

 稲生はタクシーから降りると、カードをイリーナに返した。
 エスカレーターで2階へ上がる。

 稲生:「新幹線、動いてるといいけど……」

 エスカレーターを上がって右を向くと、改札口がある。
 まだそこは在来線の改札口で、その先に新幹線改札口がある。

 稲生:「キップは1人ずつ持ちましょう」
 イリーナ:「おっ、ありがとう」
 稲生:「すいませんが、新幹線は全部自由席です」
 イリーナ:「いいよいいよ。これでも昔は……」
 マリア:「貨物列車や貨物船に便乗して旅行したんですよね。何度も聞きました」
 イリーナ:「魔女が貨物列車に便乗して旅をするのはセオリーさね」
 マリア:「意味がよく分かりませんが……?」

 稲生も最初は意味が分からなかった。
 だが、在来線改札口を入り、新幹線改札口に向かう途中で左を見た。
 すぐそこには埼京線・川越線ホームへの階段があり、その先には湘南新宿ラインからの下り高崎線・宇都宮線ホームがある。
 元は川越線ホームだった11番線(と廃止になった12番線)だが、湘南新宿ラインとは貨物線に乗り入れた中距離電車のことである。
 そこまで頭で考えた稲生は、(ダンテ一門内の定義における“魔女”ではないが)ホウキ乗りのエレーナを思い出した。

 エレーナ→魔女の宅急便→キキ→宮崎アニメ内での描写→貨物列車に便乗している。

 稲生:「あー、なるほど。そういうことですか」
 イリーナ:「そういうことなのよ」
 マリア:「だから何が!?」
 イリーナ:「マリア、もっと勉強しなさい」
 マリア:「はあ!?」
 稲生:「マリアさん、後で僕が動画見せてあげますから」

 新幹線改札口からコンコースに入る。

 稲生:「先生ってホウキ乗りでした?」
 イリーナ:「違うよ」

 イリーナのあっけらかんとした答えに稲生は、

 稲生:「あっ、そうスか……」

 としか反応できなかった。
 ホウキ乗りでもないのに、何ゆえイリーナは魔女宅を持ち出したのか不明である。

[同日06:38.天候:曇 JR大宮駅新幹線ホーム→東北新幹線“なすの”252号1号車内]

〔14番線に、6時38分発、“なすの”252号、東京行きが10両編成で参ります。この電車は途中、上野に止まります。グリーン車は、9号車。自由席は、1号車から8号車と10号車です。まもなく14番線に、“なすの”252号、東京行きが参ります。黄色い線まで、お下がりください〕

 大宮駅の新幹線ホームは、シェルター構造になっている。
 ホームの中ほどで待っている分には、雨はもちろん、風にも当たりにくいという特長がある。
 ところが今日みたいに、暴風警報が出ている状態だと、そのシェルター内にも風が吹き込んでくるという有り様である。
 台風一過とはいえ、もう11月だから別に暑くはない。
 風が確かに生暖かいという感じだ。
 イリーナはローブを羽織っているが、マリアはローブを脱いで小脇に抱えていた。

〔「14番線、ご注意ください。“なすの”252号、東京行きの到着です。お下がりください。……」〕

 イリーナ:「マリア、スカート注意して!」
 マリア:「!?」

 列車が来るより先に、突風がホーム上を吹き抜けた。
 マリアはパッとスカートの裾を押さえた。

 稲生:「うわっ!……これでよく定時運行できるなぁ……」
 マリア:「師匠、ありがとうございます」
 イリーナ:「ここにいるのがユウタ君だけだったらいいんだけど、さすがに他のオトコには見せたくないでしょ。気をつけな」
 マリア:「はい」

 プシューッ!……シュー……ガチャッ、ガラガラガラガラ……ドン!。(←E2系0番台のドアの開く音を擬音にするとこんな感じ)

〔「大宮ぁ、大宮です。14番線の電車は……」〕

 始発の上り列車は空いていた。
 早速乗り込む3人。
 3人席に座った。
 ホームからは発車ベルの音が聞こえる。

〔14番線から、“なすの”252号、東京行きが発車致します。次は、上野に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 稲生:「藤谷班長、もう出発してますよ。早いですねぇ」
 イリーナ:「でも、その判断は正しいよ。今日の東名高速はカオスになるという予知が出ているからね」
 稲生:「なるほど……」

 ピーーーーー!(客終合図の音)
 プシュー……ガラガラガラガラ……ッ、ドンッ!(E2系0番台の閉扉音はこんな感じ。ギロチンドア、ここに在り)

 列車はVVVFインバータの音を響かせて発車した。

 稲生:「さーて……東京に着いたら、駅弁でも……んっ!?」

 稲生がふと上を見上げると、荷棚からミク人形とハク人形が2号車の方を見据えていた。

 稲生:「あー……お2人さん、“なすの”に車内販売は無いんだよ」
 ミク人形:「ちっ」
 ハク人形:「ちっ」

 マリアの自作で使い魔でもあるメイド人形達は、不貞腐れたようにマリアのバッグの中に引っ込んで行った。
 そこで稲生、ふと気づく。

 稲生:(そういや、乗り換え先の“こだま”も車販が無くなったんだったーっ!)

 車販で買うアイスが無いと人形達はブチ切れ、定時運行は無いものと思えとなる。

 稲生:(何か対策を考えないと、東海道新幹線のダイヤを乱すことになってしまう……!)

 強風が吹く中、元々徐行運転を行う区間を走っているせいか、東北新幹線はほぼ定時に運転していた。
コメント
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