報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「3日目も温泉」

2019-09-23 19:08:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日12:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 コロナワールド仙台]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 3日目は仙台市東部の郊外までやってきた。
 最寄り駅から路線バスに揺られること約15分。
 私達は目的の場所に着いた。
 地元では『産業道路』と呼ばれる幹線道路。
 それは片側三車線あり、頭上には仙台東部道路という高速道路も通っている(都市高速ではない)。
 名前の通り、休日の今日も大型トラックの行き交う幹線道路だ。
 恐らく夜は走り屋がかっ飛ばす道路なのだろうと推測する。
 それで高橋は知っているのだろう。
 この沿道に、大きなアミューズメント施設があることを。
 実際に駐車場を覗いてみると、もしかしてもう高橋が到着しているのかと思うような走り屋仕様の車がチラホラ見かけた。
 さすがに『宮城』や『仙台』などの地元ナンバーが多い。

 リサ:「愛原先生、お腹空いた」
 愛原:「ああ、分かった。温泉の前にお昼にしよう」

 メインホールに入ると、そこから各施設に別れているようだ。
 目的の大江戸温泉物語もある。
 その前に、リサの大要望で昼食にすることにした。
 リサにとっては空腹の度合いが過ぎると、私達も食事の対象となる。

 愛原:「えーと……先に食券を買うタイプのようだな」
 斉藤:「食券ですか?」
 愛原:「そう。……ん?もしかして、斉藤さんは……?」
 斉藤:「先に券を買うタイプの店は初めてです」
 愛原:「そうなのか!」

 そこはやはり大富豪の御嬢様なんだな。

 愛原:「もしも東京中央学園の高等部に上がるつもりなら、覚えておいた方がいいよ。高等部の校舎には学食があって、そこも食券方式らしいから」
 斉藤:「あ、はい」
 愛原:「遠慮しないで好きなもん頼んでいいからな。よし、俺はカレーでいいや」
 斉藤:「……カレーで」
 リサ:「ずーん……。カレーで」
 愛原:「ちょっと待て!遠慮しなくていいと言っただろ!」
 高野:「マサに『先生より高い物を頼むとは何事だ!』と言われたのを覚えているんですよ」
 愛原:「そうなのか。いや、今ここに高橋はいないから気にするな。いざとなったら俺から言っておくし、高野君も言ってくれるよな?」
 高野:「ええ、もちろんです」
 愛原:「というわけだ。改めて何がいい?」
 リサ:「トンカツ定食、ご飯大盛り!」
 斉藤:「私もリサさんと同じので!」

 斉藤さんは御嬢様でありながら空手の有段者でもある為、体力などを維持する為に食欲も大きいのだろう。

 高野:「私はカツカレーでお願いします」
 愛原:「へいへい。皆してカツ頼むな」
 リサ:「テキにカツってサイトーに言われた」
 斉藤:「『敵に勝つ』のゲン担ぎです、先生」
 愛原:「本当はそれ、栄養学的にNGらしいからな?」

 どちらかというと、運動には自信の無い私が言うのも何だが。

〔「……宮城県内で二晩続いて起きましたバイオハザード事件ですが、現在も尚、県内2つの現場では事件の後始末に追われており……」〕

 店内ではテレビが設置されていて、それでニュースをやっていた。
 テレビで観ると、改めて凄い事件に2夜連続で巻き込まれたものだと思う。

 愛原:「それにしても斉藤さん、今後はもう少し動きやすい服装で旅行した方がいいかもね。御嬢様っぽくていいんだけど」
 リサ:「私みたいに動きやすい服装」
 斉藤:「ええ。お父さんに言って、今度はそうしてもらいます」
 リサ:「サイトー、スカートだから今、足技使ったらパンツ見えちゃう?」
 斉藤:「思いっ切り見えちゃうよ」
 リサ:「今度やって。私にセーラー服着せるんだから、それくらいいいでしょ?」
 斉藤:「ええ〜?リサさんの頼みなら、嫌とは言えないけどぉ〜?」
 リサ:「むふー」

 これは……。
 リサの表情から察するに、リサはSっ気があり、斉藤さんにはMっ気がある。
 リサはラスボスを張るくらいの存在なのでそれは分かるが、斉藤さんは……。
 学校ではワガママS女王で通っているらしいが……。

 しばらくして、注文した定食やカレーができる。

 リサ:「いただきまーす」
 斉藤:「いただきます」
 高野:「先生、御馳走になります」
 愛原:「ああ」

 子供と大人の食事前挨拶の違い。

[同日13:45.天候:晴 同場所 大江戸温泉物語店内]

 昼食を終えた私達は早速、温泉に入ることにした。
 露天風呂の方が天然温泉らしいので、私は率先してそこに入る。
 何となく寂しいのは、高橋がいないからか。
 しかし、全く高橋が来る様子が無い。
 温泉から出た私は痺れを切らしたわけではないが、高橋に電話してみることにした。
 繋がってコールするが、なかなか出ない。
 まさか、半グレとのケンカに負けてボコされて監禁されているとか、或いは警察の御厄介になっているとか、そんなオチじゃあるまいな?

 男:「はい、もしもし?」
 愛原:「あ、誰だ?」

 やっと電話に出たと思ったら、聞き慣れない声だった。

 男:「愛原先生っスか?」
 愛原:「そ、そうだが、キミは誰だ?」

 声の感じからして、高橋と大して歳の変わらぬ青年といった感じだった。
 あまりガラの良い感じではないので、警察関係者というわけではなさそうだ。
 まさか、ガチで半グレ!?

 男:「マサのダチの佐藤って言います。今、マサは手が離せないんで、代わりに電話に出ろって言われたんで」
 愛原:「な、何だ、そうなのか。手が離せないってどういうことだ?まさか、ケンカ?」
 佐藤:「いや、そんなカッコいいもんじゃないっス。ちょっと遊びに夢中になってるだけで」
 愛原:「まさか、女と?」
 佐藤:「いえ、そんな羨ましいもんじゃないっス。マサは今、確変が止まらなくて……」
 愛原:「パチンコしてんのか!何やってんだ、あいつ!」
 佐藤:「あいつだけウハウハで、マジパネェっす」
 愛原:「色んな意味ではな!早くこっちに来いって言っといてくれ!」
 佐藤:「了解っス。もうすぐ俺、代打ちしますんで」
 愛原:「何の台やってるんだよ!?」
 佐藤:「CR顕正会っス」
 愛原:「意外だね!?意外なのやってるね!?」
 佐藤:「今、ケンショレンジャーモードで16回転目に入ってますんで」
 愛原:「何だよ、ケンショーレンジャーって!最近見かけないと思ってたら、パチンコに出てんのかよ……」
 佐藤:「しかも4円パチっス」
 愛原:「4円パチで確変何回も出してんの!?あいつ、凄ェな!」
 佐藤:「CR創価学会にしようかと思ったんですが、『んっ?さんからクレームから来るからダメだ』と言ってました」
 愛原:「やめろよ、そんなメタ発言……。てか、出そうに無いな、その台は……」
 佐藤:「とにかく、『愛原先生がお怒りだ』とだけ伝えておきますんで」
 愛原:「いや、怒ってはいないよ?ただ、あまり遊び惚け過ぎても困ると言ってるんだ。というか、キミ達はどこのパチ屋にいるの?」
 佐藤:「あ、コロナワールドのD’STATIONです」
 愛原:「1つ屋根の下かーい!」

 ども、ありがとうございましたー。
コメント (1)
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“私立探偵 愛原学” 「地下鉄荒井駅→ミヤコーバス」

2019-09-23 10:17:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日11:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区 仙台市地下鉄荒井駅→ミヤコーバス荒井多賀城線車内]

〔荒井、荒井、大成ハウジング本店前、終点です。お出口は、右側です。お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意ください〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 2泊3日の温泉旅行最終日。
 初日も中日も夜は全くゆっくりできずに、ついに最終日を迎えた。
 いずれも昼間は普通に観光できただけに、今夜もとても心配だ。

 ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン♪(東西線2000系のドアチャイムは4回鳴る)

〔荒井、荒井、終点です。1番線の電車は、回送電車です。ご乗車になりませんよう、お願い致します〕

 私達は電車から降りた。
 この駅は閑散としていて、降りた乗客も僅かだった。
 恐らく西側の終点、八木山動物公園駅とやらは賑わっているのだろう。
 この旅行が平和なものであったならば、むしろ私達は2人の少女の為にそちらに行ったかもしれない。
 だが、引率者の私としては、さすがに二晩続きのバイオハザードはこたえていた。
 それは今回のメンバーのメインでもある斉藤さんも同じ。
 霧生市のバイオハザードを潜り抜け、もしくはバイオハザードのラスボス的な地位にいたわけでもない斉藤絵恋さんには恐怖の二夜以外の何物でもなかったはずだ。
 リサがいなかったら、とっくに入院していただろう。
 で、この旅行は中止、私達も報酬もらえずといったところか。

 愛原:「ここからバスに乗れということらしいが……?」
 高野:「そうですね。駅前のロータリーから出ているバスに乗っていいそうです」
 愛原:「本数少ないだろう?」
 高野:「そうですね。お世辞にも多いとは言えませんが、でも接続いいですよ。あと10分で発車します」
 愛原:「おお!」

 高野君はスマホ片手に乗り換え案内を見てくれている。

 愛原:「せめて最終日くらい、『終わり良ければ総て良し』になってもらいたいものだな」
 高野:「最終日は泊まりませんから、大丈夫だと思いますけど……」

 改札口を出て駅の外に出る。
 晩夏の暑い日差しが駅前のロータリーに降り注いでいるのが分かった。
 暗い地下トンネルから来た身としては、思わず目を細めるところだ。

 愛原:「どうせあれだろ?夕方の新幹線で帰るんだから、もうバイオハザードに巻き込まれることはないはずだ」
 高野:「だと思いますけど……」

 バイオハザードといっても、いきなりボスクラスのBOWが襲って来たというだけで、その前にウィルスだの特異菌だのがバラ撒かれて、周辺の人々がゾンビ化したというわけではない。
 そこが今回のバイオハザードの大きな特徴だ。
 もっとも、2000年代に地中海の海上都市テラグリジアで起きたバイオハザードも似たようなものだったと聞く。

 リサ:「愛原先生、あの赤いバス?」
 愛原:「高野君?」
 高野:「ミヤコーバスですか?そうですよ」
 愛原:「よし、あれに乗るぞ」

 私達はバス停に停車していた中型の路線バスに乗り込んだ。
 あまり乗客はおらず、先客は2〜3人だけ。
 バスに乗り込むと、1番後ろの席に乗り込んだ。

 愛原:「こういう所でもPasmoが使えるのがいいな」
 高野:「便利になりましたね」
 愛原:「発車まで、まだ時間あるかい?」
 高野:「40分発ですよ?」
 愛原:「まだ数分あるな。ちょっと高橋に電話してくる」
 高野:「はい」

 私は中扉から一旦バスを降りると、高橋に電話した。

 高橋:「あ、先生!お疲れーっス!!」

 電話の向こうから、バオオオン!ポヒュュッ!という明らかに改造車の走行音が耳に響いて来る。

 愛原:「エンジン音がうるせーな!」
 高橋:「サーセン!ダチのマシン、俺の知らない間にかなりカスタムされてて……」
 愛原:「知らんわ!今、荒井駅にいるんだ。これから、お前の教えてくれた所にバスで向かうから」
 高橋:「マジっすか!俺の意見、採用してくれたんスね!あざーっす!!」
 愛原:「鶴巻って所で降りればいいんだな?」
 高橋:「そうっス!バス停から見える位置にありますんで、すぐに分かると思います!」
 愛原:「分かったよ」
 高橋:「俺も後から行きますんで!」
 愛原:「分かったから、くれぐれも警察の御厄介になるようことはするなよ?」
 高橋:「大丈夫っス!今のケンカ相手、地元の半グレなんで!」
 愛原:「もっと厄介だな、おい!」

 その時、私の背後でバスがエンジンを掛けるのが分かった。

 高野:「先生、そろそろ発車ですよ!」
 愛原:「ああ!……というわけだ。遊びも程々にして、さっさと合流しろよ?」
 高橋:「了解でヤンス!」

 私は電話を切り、急いでバスに戻った。

 愛原:「高橋のヤツ、思いっ切り楽しんでやがる」
 高野:「まだ20代の遊びたい盛りですから。車も女もね」
 愛原:「結局あいつゲイじゃないのかよ……」

 私は呆れた様子で1番後ろの座席に座った。
 と、同時に中扉が閉まる。

〔発車します。ご注意ください〕

 

 こうして、私達を乗せたバスは荒井駅前を定刻通りに発車した。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。本日もミヤコーバスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは若林体育館前、うみの杜水族館前経由、多賀城駅前行きです。次は荒井六丁目、荒井六丁目でございます。……〕

 高野:「えっ、半グレとケンカ?」
 愛原:「冗談っぽく言ってたから、どこまで本気か分からないよ?」
 高野:「あいつもフザけてますねぇ、今度説教しておきます」
 愛原:「程々によろしくな」

 と、そこへ……。

 斉藤:「愛原先生、リサさんがお腹空いたらしいです」
 愛原:「もう!?」
 高野:「お昼の時間まで我慢しなさい」
 愛原:「バスのダイヤだと、昼前には着くはずなんだ。高橋の話じゃ、飯食う所もあるらしいから、着いたら食べよう」
 斉藤:「……だって。大丈夫?」
 リサ:「うん、がんばる」

 朝飯、あれだけの量で腹八分目とか言ってたもんなぁ……。
 こりゃ、昼飯代も思いやられそうだ……。
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“私立探偵 愛原学” 「行き先が他作品と被ってる?気のせいだよ」

2019-09-21 21:00:21 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日11:05.天候:不明 宮城県仙台市青葉区 仙台市地下鉄仙台駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく仙台、仙台です。お降りの際、お忘れ物、落し物の無いよう、ご注意願います」〕

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 最終日は仙台市内でまったり過ごそうと思っていたのだが、いかんせんどこがいいか分からない。
 すると、市内に走り屋時代の友達がいて、その友達とよく遊びに行った場所があると高橋が言った。
 その場所を教えてもらい、これから向かっているところだ。
 当の高橋は友達と一緒に走りに行ってるようだ。

〔仙台、仙台。東西線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 仙台駅で電車を降りる。
 仙台市の地下鉄は東西南北、十字型に路線が通っている。
 私達はその中心点にある駅で降りた。
 今度はその中心点から右へ向かう電車に乗り換えることとなる。

 愛原:「高橋の話だと、仙台市の結構郊外にあるみたいだぞ?」
 高野:「そりゃ走り屋の行くような所って、案外街中よりは郊外が多いですよ。それも、車でしか行けない所とか……」
 愛原:「マジかよ。車で来てないのにそんな所へ行って大丈夫なのか?」
 高野:「マサは何て言ってたんです?」
 愛原:「今なら地下鉄とバスで行けると言っていたが……」
 高野:「そのバスもかなり本数が少ないと思われます。慎重に行きましょう」
 愛原:「そうだな」
 高野:「先生に御不便をおかけしたら、マサに叩き聞かせておきますので」
 愛原:「……まずは言い聞かせてやろうな?」

 私達は今度は東西線のホームに向かった。
 南北線もなかなか深い所を通っているが、東西線はもっと深い所を走っている。
 地下鉄という鉄道は、新しければ新しいほど地下深くを走るというベタな法則があるが、それは地方の地下鉄も同じことであるようだ。

 愛原:「何だか懐かしいものがある」
 高野:「何ですか?」
 愛原:「こぢんまりとしたトンネルの中のホーム、まるで霧生電鉄の霞台団地駅を思い出すよ」
 高野:「私と会う前、まだ先生とマサがお2人で霧生市を駆けずり回っていた頃ですね?」
 愛原:「そうだ。その鉄道の西の終点が霧生大山寺駅(※)だったわけだが、そこへ向かう前の話だよ」

 ※本編ではただ単に『大山寺駅』と称していたが、名古屋鉄道に同駅名があるということで、区別する為に頭に『霧生』を付けて呼ぶことににする。

 高野:「その駅での活躍、マサから聞いてますよ」
 愛原:「高橋から聞いたんだ?」
 高野:「たまにあいつとは一緒に飲むことがあるんですよ。で、あいつ酔っ払うと先生の話しかしないんです」
 愛原:「相変わらずだな……」

 私はスマホを取り出した。
 実はそこには霧生市で戦った時に撮影した写真なんかもある。
 もちろん、おぞましいゾンビや逆さ女……もとい、サスペンデッドの写真もあって、とても斉藤さんには見せられない。
 が!

 斉藤:「きゃーっ!リサさん、きゃわいぃぃぃっ!

 セーラー服を着て仮面を外した時のリサの姿を撮影した画像を、斉藤さんに見られてしまった。

 愛原:「あっとととと!ダメだよ、斉藤さん!」
 斉藤:「今の何ですか!?リサさん、どうしてセーラー服着てるの!?」
 愛原:「そ、それは……!」

 実験体として拉致された少女達に、赤いアンブレラが『制服』として彼女達に着せたものだ。
 それはリサとて同じ。
 目の所だけ横に細長く開いた白い仮面もまた、そんな少女達に支給されたもの。
 恐らく、制御装置としての意味合いがあったのだと思われる。
 セーラー服は分からない。
 リサが着ていたのは夏用の白い半袖のものであった。
 そしてそれは、今でも家に保管している。
 仮面の方は政府エージェントに押収されたが、セーラー服だけは先に返された。
 今はその仮面も返されているが、制御装置の部分だけは取り外されている。
 リサにとっては研究所に閉じ込められ、過酷な実験を受けさせられていたトラウマの品々であるが、私は保管している。

 高野:「リサちゃんの前の学校の制服だよ。仮面は学芸会の時のものじゃないかな?ねぇ?リサちゃん」
 リサ:「うん。そうだったかも」

 高野君が上手く誤魔化してくれ、リサもそれに合わせた。

〔3番線に、荒井行き電車が到着します。……〕

 7〜8分に1本という地下鉄にしてはローカル線な仙台市地下鉄東西線。
 やっと接近放送がホームに響いた。

 斉藤:「まだその時の制服持ってる!?」
 愛原:「一応、保管してあるよ」
 斉藤:「リサさん、是非着てみて!?私、リサさんのセーラー服姿見てみたい!」

 斉藤さんは鼻息を荒くしてリサに迫った。

 リサ:「ヤダ」
 斉藤:「えー、何でー!?さっきの写真見た限り、物凄く似合ってたよ!?」
 リサ:「ヤダったら、ヤダ」

 基本的には斉藤さんの頼みは聞くリサも、このトラウマの品だけは着たくないようだ。
 もしも東京中央学園の制服がブレザーではなく、セーラー服だったら、リサは行くのを嫌がっただろう。

〔仙台、仙台。南北線、JR線、仙台空港アクセス線はお乗り換えです〕

 そうこうしているうちに電車がやってくる。

 愛原:「ほら、早く乗るぞ」

 南北線同様、乗客がぞろぞろと降りて行く。
 空席の目立つ先頭車に私達は乗り込み、ブルーの座席に腰掛けた。

〔3番線から、荒井行き電車が発車します。ドアが閉まります。ご注意ください〕

 南北線同様、短い発車サイン音がホームに鳴り響く。

〔ドアが閉まります。ご注意ください〕

 耳に響くドアチャイムが鳴りながら、車両のドアが閉まった。
 東西線にもまたホームドアがあり、これが閉まってから電車が走り出した。

〔次は宮城野通、宮城野通。ユアテック本社前です〕
〔The next stop is Miyagino-dori station.〕
〔本日も仙台市地下鉄をご利用頂き、ありがとうございます。お客様に、お願い致します。……〕

 斉藤:「おーねーがーいー!」
 リサ:「ヤダったらヤダ!」
 愛原:「おいおい、いい加減に……」
 斉藤:「今度、空手の道着姿見せてあげるから」
 リサ:「しょ、しょうがないな……」
 愛原:「いいんかーい!」

 かくいう私も、こんな御嬢様が空手の有段者であることを未だに信じられないでいた。
 しかし鳴子における餓鬼の襲撃の際、斉藤さんが見事な手さばきと足さばきで餓鬼を翻弄してくれたおかげで、私達は餓鬼を倒すことができた。
 あれのおかげで斉藤さんが実際に空手の有段者であることを実感したものだ。
 そして私もまた道着を着た斉藤さんの姿を見たことがない。
 それにしても……。
 斉藤社長の指定する場所に行く度にBOWに襲われたり、娘に空手を段位取得まで習わせたり、そして何よりスーパータイラントがリサではなく斉藤絵恋さんを狙ったというのが何とも……。
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“私立探偵 愛原学” 「3日目は平和であれ」

2019-09-20 19:13:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日10:00.天候:晴 宮城県仙台市青葉区某所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今回の旅行、夜は酷いものだった。
 まさか、二晩続けてBOWの急襲を受けるとは……。
 私達はスーパータイラントを倒すと、BSAAのヘリに回収され、仙台市内まで連れて行かれた。
 そしてそこの大きな病院で、検査や治療を受けることになった。
 もっとも、治療など必要無いほど大きなケガはしていない。
 私が心配したのは、斉藤さんの方だ。
 スーパータイラントに掴まれたのだから、それで大きなケガやウィルスに感染していないか、とても心配だった。
 しかしスーパータイラントは本当に斉藤さんを御嬢様扱いしていたのか、斉藤さんに大きなケガは無かった。
 リサもまたあれだけの化け物に変身したにも関わらず、元の人間の姿に戻れていた。
 やはりリサは『完成品』なのだろう。
 ただ、変身すると、とても腹が減るらしい。
 とてつもない空腹を訴え、それがどうしようもない場合、私の服に噛みつく癖があるのだが、そうしてきた。
 このままでは、本当に私が食われてしまう。
 市街地にある吉野家に連れて行ったら、牛丼特盛を何杯も平らげた。
 元々通常時であっても大食漢のリサ。
 ラーメン二郎に連れて行っても、恐らくはペロリと平らげることだろう。

 愛原:「あー、ちょっと領収証もらえないかな?(斉藤さんの親父さんの)会社(か、もしくはBSAAか日本政府)に請求するから」
 店員:「か、かしこまりました……」

 牛丼の値段など大したこと無いはずなのだが、リサが平らげたその金額は【お察しください】。
 まあ、高級フレンチ並みの値段であったとだけ言っておこう。
 店員、レジを操作してレシートではなく、ちゃんと名前の書ける領収証を発行する。

 店員:「こちら領収証です」
 愛原:「ありがとう」
 店員:「ありがとうございましたー」
 他の客:(あのJC、フードファイターか何かか?)

 私とリサは店を出た。
 尚、高橋はこの町に旧友がいるということで、会いに行った。
 そう言えば前この町に来た時、彼の旧友の車に乗せてもらったんだっけ。
 族車ほど派手ではなかったが、イニシャルDに出て来そうな車だったことを思い出した。
 いや、ハチロクではなかったがね。

 リサ:「愛原先生、ごちそうさま」
 愛原:「ああ、いいよ。後でこれは請求しておくから」
 リサ:「お財布大丈夫?」
 愛原:「後で全部返ってくると思えば、何そのこれしき……」

 私は財布をポケットにしまった。

 愛原:「それより、腹一杯になったか?」
 リサ:「腹8分目って言うから……」
 愛原:「あれだけ食って、まだ8分目!?」Σ( ̄ロ ̄lll)

 ちょっと奥さん、聞きました?
 牛丼特盛を高級フレンチ額分食べて、まだ8分目ですって!
 リサは今時の女子中学生の中では、ムッチリとした体付きだ。
 恐らく空手の有段者である斉藤絵恋さんが筋肉質だとしたら、尚更そう見える。
 リサは太っているというわけではないが、恐らく太る為の余ったエネルギーが変身の時に消費されるのだろう。

 愛原:「おっと、電話だ」

 私は電話に出た。
 相手は高野君だ。
 高野君は未だ意識を失っている斉藤さんに付き添っている。

 愛原:「はい、もしもし?」
 高野:「高野です。斉藤さんの意識が戻りましたよ?」
 愛原:「おー、それは良かった。で、容体は?」
 高野:「ほとんどケガはありません。点滴を打って、だいぶ元気です」
 愛原:「そうか。それは良かったな」
 高野:「しかし2夜連続で怖い目に遭ったこともあって、だいぶショックが激しいです。取りあえず、リサちゃんに会いたがっています」
 愛原:「斉藤さん、リサに会いたがってるってよ」

 私はリサに言った。

 リサ:「!」
 愛原:「大丈夫なのか?斉藤さんはリサの正体を……」
 高野:「昨夜のことは殆ど覚えていないみたいです。よほどショックが大きかったんだと思います。ただ、リサちゃんに助けてもらったという記憶だけは強く残っているみたいで……。それで、早くリサちゃんに会いたいと」
 愛原:「そうなのか。分かった。じゃあ、急いでそっちに行くよ」
 高野:「お願いします」

 私は電話を切った。

 リサ:「サイトー、私のこと何か言ってた?」
 愛原:「いや、高野君からは何も。ただ、リサに助けてもらったことだけは覚えているらしい。昨夜のことはとても怖かったから、あまり覚えていないらしいんだ」
 リサ:「!」
 愛原:「だからリサも、あまり言わない方がいいかもしれない」
 リサ:「分かった」
 愛原:「それじゃ、行こう」

 私は手近にいたタクシーを拾った。

 愛原:「東北大学医学部病院までお願いします」
 運転手:「はい」

 タクシーが走り出す。
 いつもなら流れる景色を珍しそうに眺めるリサだったが、今はそんな余裕が無いようで、ただ俯いていた。

[同日11:00.天候:晴 仙台市青葉区 仙台市地下鉄北四番丁駅]

〔1番線に、富沢行き電車が到着します。……〕

 病院に到着した私とリサを待ち受けていたのは、斉藤さんによる抱擁だった。
 いや、もちろん抱きつかれたのはリサだけだ。
 斉藤さんの記憶の中には、本当にスーパータイラントに襲われたことと、リサに助けてもらったことしか記憶に無いらしい。
 その斉藤さんを助けたリサはあの時、クリーチャー化していたのだが。
 今その手を互いに掴んでいる2人のJC。

 愛原:「高橋は友達と遊んでるってさ」
 高野:「その方がいいでしょう」

 私達はやってきた電車に乗り込んだ。

〔1番線から、富沢行き電車が発車します。ドアが閉まります〕

 短い発車サイン音が鳴って、電車のドアが閉まる。
 ホームドアも閉まってから発車するところは東京の地下鉄と変わらない。

〔次は勾当台公園、勾当台公園です。県庁、市役所、青葉区役所はこちらです〕
〔The next stop is Kotodai-koen station.〕
〔日蓮正宗仏眼寺へは愛宕橋で、冨士大石寺顕正会仙台会館へは終点、富沢でお降りください〕

 リサ:「愛原先生、どこまで行くの?」
 愛原:「取りあえず、高橋が勧めてくれた所へ向かうよ。あいつが走り屋だった頃、よく遊びに行ってた所らしい」
 高野:「このコ達が行っても大丈夫な所だと言ってましたけど、何だか不安ですねぇ……」
 愛原:「2夜連続で疲れたから、最後の日くらい体を休める所がいいと言っておいた。一応、あいつを信じることにしよう」
 高野:「もしフザけた場所でしたら、私が後でボコしておきますね」
 愛原:「よろしく」

 電車はそこそこの乗客数を乗せて、市街地へ向かう。
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“私立探偵 愛原学” 「スーパータイラントの最期」

2019-09-20 15:32:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月25日04:00.天候:曇 宮城県宮城郡松島町 国道45号線上]

 私達を追うスーパータイラントが投げ放ったタンクローリーのタンク。
 ガソリン満載のタンクが直撃する前に、BSAAの隊員が放ったガトリング砲のおかげでそれが大爆発した。
 その直前に私達を乗せた装甲車がトンネルの中に入ったので、爆発に巻き込まれることはなかったが、スーパータイラントは巻き込まれたはずだ。
 それで倒せたのならいいのだが……。

 愛原:「なにぃっ!?」

 スーパータイラントは生きていた!
 全身が火だるま状態でありながら、全力ダッシュで私達を追い掛ける。

 隊員B:「不死身かあいつは!?」

 しかも装甲車が急停車!

 隊員C:「おい、どうして止まる!?」
 隊員A:「最悪だ!」

 トンネルの出口には事故った車が数台横転して、道路を塞いでいた。
 避難車両で渋滞していた中、トラックでも追突したのだろう。

 隊員B:「しょうがない!ここで倒すしかない!愛原さん達、俺達がここで食い止める!幸い、あのバスの中から外に出られる。それで逃げてくれ」
 愛原:「分かった。ありがとう。皆、行くぞ!」

 私達は乗り捨てられている観光バスに乗り込んだ。
 そして、後ろの非常口に向かうと、そこからトンネルの外に出られた。
 前後と側面に車が衝突している状態で、乗降口の部分と非常口の部分だけが空いていたのだ。

 高橋:「先生、急いで広い場所へ!」
 愛原:「何だ、どうした!?」
 高橋:「BSAAの奴ら、全滅しました!」
 愛原:「早っ!」

 こ、今度という今度は、私達も年貢の納め時か?
 スーパータイラントは、事故車両で塞がれたトンネルの出口を無理やり開けた。
 それで爆発・炎上した車もいたが、スーパータイラントはそんなこと意にも介さない。

 リサ:「た、タイラント……」
 スーパータイラント:「御嬢様……」
 愛原:「くそっ!」

 私はショットガンをスーパータイラントに向けた。
 高橋はマグナムを、高野君はライフルを構える。

 高橋:「俺は地獄まで先生にお供します!」
 高野:「乗り掛かった舟だからね、私もお付き合いしますよ?」
 愛原:「ありがとう、皆!だけど、死ぬのは俺達だけだ。斉藤さんは助けないと!」
 高野:「それもそうですね。斉藤さん、ここは私達に任せて斉藤さんは逃げなさい。大丈夫。あいつの優先順位はリサちゃん、その次に私達で、斉藤さんは1番後回し……」

 その時、私達の横をスーパータイラントが駆け抜けていった。

 斉藤:「ぎゃっ……!」
 スーパータイラント:「御嬢様……ヤット見ツケタ……」
 愛原:「は!?」
 高橋:「あっ!?」
 高野:「えっ!?」
 リサ:「!?」

 何と、スーパータイラントはリサをスルーし、何故か斉藤さんを捕まえた。

 スーパータイラント:「御嬢様……連レテ行ク……」
 愛原:「お、おい、こら!そこのタイラント!お前が捜している御嬢様はこっちだろ!?」

 私はリサを指さした。
 斉藤さんは恐怖の余り、意識を失ってしまった。
 リサも唖然としていたが、それが却ってスーパータイラントに対する恐怖を薄れさせたらしい。

 リサ:「タイラント!いい加減にしろ!!」
 スーパータイラント:「リサ嬢……邪魔スルナラ、リサ嬢モ殺ス……」
 愛原:「リサ嬢って……!」

 何だ、あのスーパータイラント、トチ狂って斉藤さんを浚ったんじゃないのか?
 リサはリサで、ちゃんと御嬢様扱いしている?
 ということは……。

 愛原:「スーパータイラント!お前は誰の命令でこんなことをしてるんだ!?」
 スーパータイラント:「答エル必要無イ……」

 ドゴン!

 高橋:「先生の質問をスルーするとは、いい度胸だな、ああ?」

 高橋がスーパータイラントにマグナムを放った。
 これが普通のタイラントなら、マグナムでも十分にダメージが与えられるはずなのだが、スーパータイラントには効いていない。

 スーパータイラント:「邪魔スルノナラ、オ前達モ殺ス……!」

 私は辺りを見回した。

 愛原:「リサ、正体を曝け出していい!斉藤さんは気を失っているし、周りに人はいない!」

 私はリサの肩をポンと叩いた。

 リサ:「言われなくても……!」

 リサはミシミシと今の人間の姿を変えていった。
 まずは鬼の姿になり、それから背中から触手を何本も生やす。
 両手もまた長く深く伸び、両足も……って、大丈夫か?ちゃんと人間の姿に戻れるんだろうな?

 スーパータイラント:「邪魔スルノナラ、リサ嬢モ殺ス!」
 リサ:「サイトーに危害ヲ加エル奴ハ、タイラントも殺ス!」

 リサの言葉が片言になった。
 やはり化け物になると、人語も操りにくくなるらしい。

 愛原:「おおっ!?」

 あっという間だった。
 リサの体から生えた触手は鋭い槍のようになり、それでタイラントの体をいくつも貫通させた。

 スーパータイラント:「グオオオオオオオ!」

 さすがに痛かったか、スーパータイラント、思わず斉藤さんを振り放ってしまう。

 リサ:「サイトー!」

 リサは触手を一本伸ばし、投げ飛ばされた斉藤さんをキャッチした。

 斉藤:「リサさん……?」

 しまった!
 今ので斉藤さん、意識が戻ってしまった!
 今のリサを見たら卒倒してしまうぞ!?

 リサ:「愛原先生、サイトーを……」
 愛原:「リサ!お前、どうするんだ!?」
 リサ:「サイトーに正体ヲ見ラレタ。ソレニ、スーパータイラントは、マダ生キテイル……」
 スーパータイラント:「ウウウ……」
 愛原:「うわっ、本当だ!」

 体にいくつも穴が開けれられたというのに、スーパータイラントはまだ生きていた。
 何てヤツだ。

 リサ:「死ナバ諸共……」
 愛原:「おい、ちょっと待て!」

 リサは自爆しようとしている!
 と、その時だった。
 上空にヘリコプターが飛んで来た。
 またもやBSAAのヘリだ。

〔「こちらBSAA、Ζ(ゼータ)チームだ。今からスーパータイラントにロケットランチャーを撃ち込む。直ちに避難してくれ!」〕

 愛原:「マジか!?」
 高橋:「先生、早く!」
 愛原:「リサ、形勢逆転だ!お前が無理する必要は無い!お前も来い!」

 私はリサの触手を引っ張った。

 狙撃手:「何か、クリーチャーがもう一体いるんですが、撃っちゃってもいいんでしょうか?」
 パイロット:「あれは『リサ・トレヴァー』だろ?愛原氏が引っ張って行ってるということは、まだ制御できている状態だ。取りあえず、スーパータイラントだけにしとけ」
 狙撃手:「了解。発射!」

 ズドーン!

 愛原:「うわっ!」

 思いっ切り離れたつもりだが、爆風が飛んで来た。
 ほとんど、見切り発車だな。
 いや、見切り発射か。

 高橋:「BSAAの奴ら、無茶しやがる!」
 愛原:「リサ、もう元の姿に戻っていいぞ!」
 リサ:「はーい……」
 高野:「斉藤さん、大丈夫?」
 斉藤:「…………」

 今の爆発でまた気を失った斉藤さんだった。
 これは上手く誤魔化せるかもしれない。

 HQ:「HQよりΖチーム、スーパータイラントの沈黙を確認」
 パイロット:「了解。ΖチームよりHQ。これより降下し、生存者並びに『リサ・トレヴァー』の確保に入る」
 HQ:「了解」

 ヘリコプターが私達の前に降下する。
 2日目の戦いはもっとハードだったが、またどうやら生き残れたようだ。
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