[10月16日11:30.天候:晴 東京都墨田区江東橋 都立墨東病院]
愛原:「……ええ、そうです。……はい。ありがとうございます。突然のことで申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は栗原蓮華さんの見舞いに行っていたのだが、そこで彼女から驚くべきことを聞いた。
何でも彼女は退院後、リサに決闘を申し込むという。
これは善場主任の再三の警告、説得に従わない彼女に対し、主任が折れた形となったわけだ。
当然リサにもその話が来るだろうが、まずは善場主任に詳しい話を聞きたいと、NPO法人デイライトに電話した。
すると善場主任は在席していて、私と面会してくれるという。
早速今日の午後に向かうと伝えて、私は電話を切った。
高橋:「先生、お帰りなさい」
愛原:「待たせたな」
病院の駐車場には高橋が車で待っていた。
リアシートにはリサが座っている。
私は助手席に乗った。
高橋:「事務所に戻りますか?」
愛原:「いや、これからちょっと行きたい所がある。錦糸町駅まで行ってくれ」
高橋:「車で行きますよ?」
愛原:「新橋のど真ん中じゃ、車を止める所も無いだろう?」
コインパーキングくらいはあるだろうが、都合良く空いているとは限らないし、駐車料金も高い。
高橋:「ということは、善場の姉ちゃんの所ですか?」
愛原:「ああ。ちょっと直接確認したいことがある。リサに関することだから、リサも連れて行くよ」
高橋:「分かりました。じゃあ、この車は……」
愛原:「事務所に置いて、お前は事務所で待っててくれ」
高橋:「ええっ!?」
愛原:「この中で唯一私服のオマエが行くわけにはいかないからな」
リサが学校の制服を着ているのは、学校に行った帰りだからである。
謹慎中ではあるが、レポートの提出を毎日義務付けられているので、その帰りだからだ。
高橋:「急いでスーツに着替えますよ!?」
愛原:「いいから。高野君1人だけ留守番じゃ、寂しがるだろう?」
高橋:「何スか、それ……」
愛原:「その代わり昼飯奢るから。この前連れて行ってくれたラーメン屋。あれ、美味かった。是非もう一度食べてみたいところだ。あそこに連れて行ってくれ」
リサ:「! 私も行くー!」
愛原:「よし、決まりだな」
高橋:「まあ、そういうことでしたら……」
高橋は車を出して、錦糸町駅近くのラーメン屋に向かった。
[同日12:58.天候:晴 JR錦糸町駅→総武快速線1272F電車1号車内]
〔まもなく3番線に、横須賀線直通、久里浜行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この電車は、11両です。グリーン車は、4号車と5号車です。……〕
昼食の後で駅に行く。
この電車なら横須賀線に直通するので、新橋まで一本で行ける。
リサ:「お兄ちゃん、残念がってたね」
愛原:「表向きはNPO法人だが、国家機関の隠れ蓑だからな。ぞろぞろ行ってもアレだ」
善場主任の方から呼ばれたとか、予め前日までにアポを取っていればいいのだろうが、当日急な話だからね。
そこはさすがに遠慮するさ。
尚、錦糸町駅にはまだホームドアが付いていない。
〔きんしちょう~、錦糸町~。ご乗車、ありがとうございます。次は、馬喰町に止まります〕
E217系という電車がやってくると、ここで多くの乗客が乗り降りする。
秋葉原、新宿方面に行く中央緩行線との乗り換え駅でもあり、地下鉄半蔵門線との乗り換え駅でもあるからだ。
電車に乗り込むと、私達は反対側のドアの前に立った。
ホームから発車メロディ(曲名:Water Crown)が聞こえてくる。
〔3番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
2点チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
このタイプのドアチャイムを最初に採用した世代の電車でもある(他に京浜東北線などに投入された209系がいる)。
電車が走り出す。
今は高架区間だが、ここから先は一気に下降して地下トンネルに入る。
まるで地下鉄のような区間になる為、総武快速線を走る電車は地下鉄としても通用する規格の物を採用している。
〔この電車は総武快速線、横須賀線直通、久里浜行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、馬喰町(ばくろちょう)です〕
〔This is the Sobu line rapid service train for Kurihama.The next station is Bakurocho.JO21.〕
リサ:「せっかく地上にいるのに、また地下に潜るのか……うっ!」
リサにまたフラッシュバックが起きたようだ。
頭を抱えてフラつく。
幸い左手でドア横の手すりを掴み、転倒は免れた。
リサ:「檻付きの電車に乗せられて、地下のトンネルまで行って、それから……あれは……『1番』……」
私はリサにはそういうフラッシュバックを見たら、その内容が何かを話すように言ってある。
私はすぐに手帳にリサの言葉を書き記した。
リサ:「私だけ降ろされて……『1番』は……また発車した電車に乗ったまま……」
もしかして霧生電鉄のことを言っているのだろうか。
他に南北線があったようだが、私達が世話になったのは霞台団地駅から東の終点駅である大山寺駅までだ。
それは東西線と呼ばれる路線らしい。
東西南北に2本の鉄道路線がある所は仙台市と似ているが、仙台市は4両固定編成の市営地下鉄なのに対し、霧生電鉄は2~4両編成の中小私鉄である。
その東西線の霞台団地駅から大山寺駅までの間には山岳トンネルがあって、大山寺駅はその山岳トンネルの中にある。
駅名となった新日蓮宗大本山・大山寺は山寺だからだ。
そのトンネルの中には秘密の引き込み線があって、その奥には日本アンブレラの秘密研究所の搬入口に通じているのである。
私達は大山寺からそのトンネルと引き込み線を通って、秘密研究所に侵入したのである。
研究所そのものは秘密裏にはされておらず、表向きには新薬開発のセンターとして存在だけは公表されていたようだ。
愛原:「檻付きの電車か……」
私はかつて旧国鉄に存在した貨車、家畜車を想像した。
大昔、貨物列車は家畜も運搬しており、それに特化した家畜車も存在した。
荷物電車が存在していたのだから、霧生電鉄も、もしかしたら日本アンブレラの特注で家畜電車を保有していたのかもしれない。
何しろこの鉄道会社、株式の50%以上を日本アンブレラが持っていたというのだから可能である。
愛原:「大丈夫だよ、リサ」
私はそっとリサの肩に手を置いた。
愛原:「お前がお前のままでいる間は、もう2度とそんな実験動物扱いの車両に乗せられることはないさ。現に、今お前は人間扱いされてるから、人間専用の電車に乗れるのだよ」
リサ:「ほんと?」
猫:「ニャー」(←網棚の上のキャリーから愛原の言葉を否定する三毛猫)
愛原:「コホン」
リサ:「私も首輪着けるから、先生と一緒に乗りたい」
愛原:「いや、いいんだよ。人間の姿でいるうちは、ハハハハ……」
因みにペットと電車に乗る時、犬は飼い主さんの足元または膝の上、猫は網棚の上がいいらしい(猫は高い所にいる方が落ち着くため)。
もちろん、手荷物料金が掛かるので念の為(自動券売機ではその切符を売っていないので、有人駅では有人改札で、無人駅では車掌または運転士に別料金を払うことになる。尚、定額であり、距離は関係無い)。
愛原:「……ええ、そうです。……はい。ありがとうございます。突然のことで申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は栗原蓮華さんの見舞いに行っていたのだが、そこで彼女から驚くべきことを聞いた。
何でも彼女は退院後、リサに決闘を申し込むという。
これは善場主任の再三の警告、説得に従わない彼女に対し、主任が折れた形となったわけだ。
当然リサにもその話が来るだろうが、まずは善場主任に詳しい話を聞きたいと、NPO法人デイライトに電話した。
すると善場主任は在席していて、私と面会してくれるという。
早速今日の午後に向かうと伝えて、私は電話を切った。
高橋:「先生、お帰りなさい」
愛原:「待たせたな」
病院の駐車場には高橋が車で待っていた。
リアシートにはリサが座っている。
私は助手席に乗った。
高橋:「事務所に戻りますか?」
愛原:「いや、これからちょっと行きたい所がある。錦糸町駅まで行ってくれ」
高橋:「車で行きますよ?」
愛原:「新橋のど真ん中じゃ、車を止める所も無いだろう?」
コインパーキングくらいはあるだろうが、都合良く空いているとは限らないし、駐車料金も高い。
高橋:「ということは、善場の姉ちゃんの所ですか?」
愛原:「ああ。ちょっと直接確認したいことがある。リサに関することだから、リサも連れて行くよ」
高橋:「分かりました。じゃあ、この車は……」
愛原:「事務所に置いて、お前は事務所で待っててくれ」
高橋:「ええっ!?」
愛原:「この中で唯一私服のオマエが行くわけにはいかないからな」
リサが学校の制服を着ているのは、学校に行った帰りだからである。
謹慎中ではあるが、レポートの提出を毎日義務付けられているので、その帰りだからだ。
高橋:「急いでスーツに着替えますよ!?」
愛原:「いいから。高野君1人だけ留守番じゃ、寂しがるだろう?」
高橋:「何スか、それ……」
愛原:「その代わり昼飯奢るから。この前連れて行ってくれたラーメン屋。あれ、美味かった。是非もう一度食べてみたいところだ。あそこに連れて行ってくれ」
リサ:「! 私も行くー!」
愛原:「よし、決まりだな」
高橋:「まあ、そういうことでしたら……」
高橋は車を出して、錦糸町駅近くのラーメン屋に向かった。
[同日12:58.天候:晴 JR錦糸町駅→総武快速線1272F電車1号車内]
〔まもなく3番線に、横須賀線直通、久里浜行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この電車は、11両です。グリーン車は、4号車と5号車です。……〕
昼食の後で駅に行く。
この電車なら横須賀線に直通するので、新橋まで一本で行ける。
リサ:「お兄ちゃん、残念がってたね」
愛原:「表向きはNPO法人だが、国家機関の隠れ蓑だからな。ぞろぞろ行ってもアレだ」
善場主任の方から呼ばれたとか、予め前日までにアポを取っていればいいのだろうが、当日急な話だからね。
そこはさすがに遠慮するさ。
尚、錦糸町駅にはまだホームドアが付いていない。
〔きんしちょう~、錦糸町~。ご乗車、ありがとうございます。次は、馬喰町に止まります〕
E217系という電車がやってくると、ここで多くの乗客が乗り降りする。
秋葉原、新宿方面に行く中央緩行線との乗り換え駅でもあり、地下鉄半蔵門線との乗り換え駅でもあるからだ。
電車に乗り込むと、私達は反対側のドアの前に立った。
ホームから発車メロディ(曲名:Water Crown)が聞こえてくる。
〔3番線の、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕
2点チャイムが3回鳴ってドアが閉まる。
このタイプのドアチャイムを最初に採用した世代の電車でもある(他に京浜東北線などに投入された209系がいる)。
電車が走り出す。
今は高架区間だが、ここから先は一気に下降して地下トンネルに入る。
まるで地下鉄のような区間になる為、総武快速線を走る電車は地下鉄としても通用する規格の物を採用している。
〔この電車は総武快速線、横須賀線直通、久里浜行きです。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、馬喰町(ばくろちょう)です〕
〔This is the Sobu line rapid service train for Kurihama.The next station is Bakurocho.JO21.〕
リサ:「せっかく地上にいるのに、また地下に潜るのか……うっ!」
リサにまたフラッシュバックが起きたようだ。
頭を抱えてフラつく。
幸い左手でドア横の手すりを掴み、転倒は免れた。
リサ:「檻付きの電車に乗せられて、地下のトンネルまで行って、それから……あれは……『1番』……」
私はリサにはそういうフラッシュバックを見たら、その内容が何かを話すように言ってある。
私はすぐに手帳にリサの言葉を書き記した。
リサ:「私だけ降ろされて……『1番』は……また発車した電車に乗ったまま……」
もしかして霧生電鉄のことを言っているのだろうか。
他に南北線があったようだが、私達が世話になったのは霞台団地駅から東の終点駅である大山寺駅までだ。
それは東西線と呼ばれる路線らしい。
東西南北に2本の鉄道路線がある所は仙台市と似ているが、仙台市は4両固定編成の市営地下鉄なのに対し、霧生電鉄は2~4両編成の中小私鉄である。
その東西線の霞台団地駅から大山寺駅までの間には山岳トンネルがあって、大山寺駅はその山岳トンネルの中にある。
駅名となった新日蓮宗大本山・大山寺は山寺だからだ。
そのトンネルの中には秘密の引き込み線があって、その奥には日本アンブレラの秘密研究所の搬入口に通じているのである。
私達は大山寺からそのトンネルと引き込み線を通って、秘密研究所に侵入したのである。
研究所そのものは秘密裏にはされておらず、表向きには新薬開発のセンターとして存在だけは公表されていたようだ。
愛原:「檻付きの電車か……」
私はかつて旧国鉄に存在した貨車、家畜車を想像した。
大昔、貨物列車は家畜も運搬しており、それに特化した家畜車も存在した。
荷物電車が存在していたのだから、霧生電鉄も、もしかしたら日本アンブレラの特注で家畜電車を保有していたのかもしれない。
何しろこの鉄道会社、株式の50%以上を日本アンブレラが持っていたというのだから可能である。
愛原:「大丈夫だよ、リサ」
私はそっとリサの肩に手を置いた。
愛原:「お前がお前のままでいる間は、もう2度とそんな実験動物扱いの車両に乗せられることはないさ。現に、今お前は人間扱いされてるから、人間専用の電車に乗れるのだよ」
リサ:「ほんと?」
猫:「ニャー」(←網棚の上のキャリーから愛原の言葉を否定する三毛猫)
愛原:「コホン」
リサ:「私も首輪着けるから、先生と一緒に乗りたい」
愛原:「いや、いいんだよ。人間の姿でいるうちは、ハハハハ……」
因みにペットと電車に乗る時、犬は飼い主さんの足元または膝の上、猫は網棚の上がいいらしい(猫は高い所にいる方が落ち着くため)。
もちろん、手荷物料金が掛かるので念の為(自動券売機ではその切符を売っていないので、有人駅では有人改札で、無人駅では車掌または運転士に別料金を払うことになる。尚、定額であり、距離は関係無い)。