報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「再び市街地へ」

2021-08-25 19:50:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日16:33.天候:曇 宮城県仙台市宮城野区苦竹 JR苦竹駅→仙石線1672S列車先頭車内]

 昼食を取った後は再びラウンドワンに戻り、今度はゲームに興じた。
 さすがにクレーンゲームはやらなかったが、そこでもリサは熱中したあまり……。

 リサ:「暑い暑い」

 クーラーの効いた店内にも関わらず、汗をかいていた。

 愛原:「どうだ?少しは気分転換できたか?」
 リサ:「うん、できた」

 もっとも、リサが見た不思議な夢については後で善場主任に報告しなくてはならないだろう。

 

 愛原:「それじゃ、一旦戻るか。戻ってホテルにチェックインしよう。荷物もその時、置いて行けばいいだろう」
 高橋:「そうですね」

〔ピンポーン♪ まもなく2番線に、上り列車が参ります。黄色い線の内側まで、お下がりください〕

 ここでも接近放送は簡易的なものである。
 ホームの屋根は一部にしか掛かっておらず、吹き曝しのホームに強い風が吹く。

 高橋:「先生。何だか雲行きが怪しいですよ?」
 愛原:「うーん……。こりゃ、ガチでゲリラ豪雨降るかなぁ……」
 リサ:「学校で夏休み前の怪談をやった時に似てる……」

 HIDの眩い前照灯を点けて、4両編成の電車がやってくる。
 隣の小鶴新田駅始発の電車ということもあり、車内は空いていた。
 今度は先頭車に乗り込み、空いている座席に座った。
 発車ベルもメロディも無く、遠くから微かに車掌の笛の音が聞こえてきて、それからドアが閉まる。
 因みに仙石線用に改造されてから、ドアチャイムも鳴るようになった(音色は首都圏のJR車内で流れる運行情報のチャイムに酷似している)。
 電車が走り出す。
 コロナ対策として、一段下降式の窓も少し開けられており、そこから生暖かい風が吹き込んで来る。
 まだ風が生暖かいうちは、ゲリラ豪雨の心配は無いか?
 これが冷たくなると、ゲリラ豪雨に注意である。

〔「次は陸前原ノ町、陸前原ノ町です。お出口は、左側です」〕

 ところで、私が少しリサのことで気になることがある。
 リサはボウリングや体感ゲームなどで運動したことで汗をかいた。
 その汗が匂うのである。
 いや、他の人にはどう匂うかは分からない。
 だが、私にはリサの汗の匂いがフェロモンたっぷりの『女の匂い』に感じて仕方がなかった。

 愛原:「リサ、だいぶ汗かいただろ」
 リサ:「うん。学校の体育以外で、こんなに運動して汗かいたの、久しぶり」
 愛原:「そうか。夏休みになったことだし、運動不足になならないよう、少しは外に出て運動した方がいいのかもな」
 リサ:「私もそう思う。学校のプールはコロナ対策で使えなくなっちゃったし……」
 愛原:「そうなのか……」
 リサ:「まあ、サイトーんちのプールに入らせてもらえばいいことだけど」
 愛原:「そうだよなぁ……。せっかく夏なんだから、プールとかには入りたかったよな。今度考えておくよ」
 リサ:「! おー!」
 愛原:「それとリサ、ホテルに着いたら風呂入って着替えろよ」
 リサ:「えっ?」
 高橋:「あー、そうですね。オマエ、汗臭いぞ」
 リサ:「ええっ?!」
 愛原:「いや、まあ、臭くはないけど、気になる人は気になるから着替えた方がいいな」
 リサ:「先生、私の匂い、嫌い?」
 愛原:「いや、嫌いじゃないけどさ……」
 リサ:「えへへ……ありがとう」

 これが人喰いをしたヤツらだと、もっと体臭がキツい。
 恐らくリサ・トレヴァーなどの人間からの改造BOWは、体臭がしやすい体質になるのだろう。
 それが尚、人喰いをしていると尚更というわけだ。
 うちのリサは人喰いをしたことがないので、そこまで匂うわけではない。

[同日16:42.天候:曇 仙台市青葉区中央 JRあおば通駅]

〔「まもなく終点、あおば通、あおば通です。お出口は、変わりまして左側です。仙台市地下鉄南北線は、お乗り換えです。お降りの際、車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、ご注意ください。今日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございました」〕

 終点のあおば通駅に差し掛かる。
 尚、隣の仙台駅とは500メートルほどしか離れていない。
 ポイントを渡る関係で、電車が大きく揺れた。

 リサ:「着替えがあと一着しかない」
 愛原:「そうなのか。ホテルにコインランドリーがあるから、後で洗濯すればいいさ」
 リサ:「分かった」

 電車が到着してドアが開く。

 高橋:「ここから歩いて行けるんですか?」
 愛原:「一応な」

 地下ホームであるが、地下鉄のホームと違って、そんなに深い所にあるわけではない。
 改札口を出ると、今度は地上の出口へ向かった。
 エスカレーターとエレベーターはあるのだが、エスカレーターは途中までしか無い。
 行きと違って荷物の増えたリサだが、それでも難無く担いで怪談を昇った。

 愛原:「で、ここが青葉通。ホテルは広瀬通にあるから、この道を通って行こう」

 幸いまだ雨は降っておらず、強めの風が吹いているだけであった。
 しかしスマホの天気予報を見る限り、夜には降って来るようである。

 高橋:「先生、夕食会は何を食べる予定で?」
 愛原:「寿司にしようと思う。一応回らない寿司だけど、あまり高い予算にならないようにな」
 高橋:「てことはあれですね。リサにはセーブしてもらわないとってとこですね」
 愛原:「そういうことだ」
 リサ:「後でスイーツ出る?」
 愛原:「……まあ、前向きに善処します」

 政治家がこれを言うと、【お察しください】。

 高橋:「俺は先生と一緒に食事ができるなら何でもいいです」
 愛原:「そうか。……何だか雨が降りそうだ。少し急ごう」

 今年の夏の天気は、予報そのものがころころ変わる年のようだ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「体を動かす」

2021-08-25 15:17:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日11:36.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 JR仙台駅→仙石線1141S列車最後尾車内]

 駅レンタカーで車を返却した私達は駅に向かい、そこから電車に乗ることにした。

〔ピンポーン♪ まもなく10番線に、列車が参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください〕

 仙台駅在来線の地下ホームに行くと、そこは仙石線のホームである。
 地上の在来線ホームは詳細な案内放送が流れるが、こちらは簡易的な接近放送しか鳴らない。
 しばらくして、隣のあおば通駅方向から轟音と強風を伴って電車が接近してきた。
 JRなのだが、まるで地下鉄のようである。

 

 高橋:「東塩釜……。海にでも行くんスか?今から」
 愛原:「夕食会が無かったら、それでも良かったんだがな。リサが体を動かしたいっていうから、そこまでは行かんよ」

 私達は1番後ろの車両に乗り込んだ。
 元は山手線や埼京線を走行していた205系電車を改造したものであるが、内装は大して変わっていない。
 せいぜい、吊り革の持ち手の形が丸から三角へ変わっただけだ。
 発車ベルが鳴る。
 地上のホームはメロディだが、仙石線ホームだけはベルである。
 車掌が吹く笛の音が地下ホームに響いた。
 仙石線も古くから半自動で車両のドア扱いをしているのだが、昨今のコロナ禍による換気促進の為、自動ドア扱いになっている。
 ドアが閉まると、電車がすぐに発車した。
 車両は205系で統一されているものの、ホームドアが設置されているということはない。

〔「本日もJR東日本をご利用頂きまして、ありがとうございます。仙石線普通列車の東塩釜行きです。次は榴ヶ岡、榴ヶ岡です。お出口は、右側です」〕

 仙台市内のトンネルは『仙台トンネル』と言う。
 地下鉄のトンネルというよりは、東京の京葉線のトンネルにイメージは近い。
 仙台市地下鉄のトンネルと違うのは、その断面は大きく、地下鉄の規格ではない車両でも走行できる(見た目で言えば貫通扉が無くても良い)。

 高橋:「一体、どこまで行くんスか?」
 愛原:「このトンネルの出口までだよ」

 SuicaなどのICカードが普及した今の時代ならではの会話。
 キップだと目的地まで買うのが当たり前なので、今の会話は不自然である。

 リサ:「出口ねぇ……」

 リサは後部乗務員室越しに後方を見た。

 愛原:「何だ?」
 リサ:「さすがにネメシスは追って来ないか」
 愛原:「こんな大都市のど真ん中にそんなのがいたら、パニックどころじゃないぞ」
 リサ:「まあ、そうだね」

[同日11:44.天候:晴 仙台市宮城野区苦竹(にがたけ) JR苦竹駅→ラウンドワン]

〔「まもなく苦竹、苦竹です。お出口は、左側です。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください」〕

 仙台トンネルを出た電車は一気に坂を駆け登り、高架線に入った。
 それからカーブの途中にあるホームに滑り込む。

 高橋:「トンネルを出ましたが……?」
 愛原:「もちろん、ここで降りるよ」

 電車のドアが開いてホームに降りる。
 今日は少し風が強い。
 もしかしたら、夜はゲリラ豪雨でも降るのかもしれない。

 

 愛原:「すぐそこだから」

 改札口を出ると、目の前は国道45号線である。
 特にこの辺りは車線減少などがある為、渋滞が起こりやすいポイントとしても有名な場所だ。

 愛原:「はい、ここ」
 高橋:「ここって、ラウンドワンじゃないスか」
 愛原:「ボウリングで汗流せるだろ?」
 高橋:「そういうことですか」
 愛原:「リサはボウリングやったことあるか?」
 リサ:「投げたことはないなぁ……」
 愛原:「投げたこと?」
 高橋:「ってことは、やったことないってことだろ?」
 リサ:「んーとね……。昔、『4番』がボウリングのボールを“獲物”に投げつけて殺すっていう所は見たことがある」
 愛原:「こらぁ!」
 高橋:「こいつらにとっては、球技も殺人スポーツなんスね」
 愛原:「取りあえず、フツーにプレイしたことは無いってことだな。よしよし、いい経験だ。俺達が教えてやろう」
 高橋:「うっス。先生の御指導・御鞭撻、しっかり聞けよ」
 リサ:「分かったー」

[同日13:30.天候:曇 同区 ラウンドワン→ココイチ]

 リサのBOWの怪力で投げようものなら、ボウリングのピンが壊れてしまう。
 そこで力をセーブして投げるように言ったのだが、それでも勢いはあるようだ。
 スピードがある為に、基本ボールは真っ直ぐ進む。
 当たり方によってはパッカーンと良い音がして、きれいにストライクが決まる。
 しかし当たり方が悪いと7番ピンと10番ピンが残ってしまい(スネークアイまたはベッドポッド)、スプリットを狙わなくてはならないのだが、初心者のリサではまだ無理であった。
 7番ピンか10番ピンのどちらかを倒し、一本残して終わるというのがセオリーだった。
 変に曲がったりしないので、ガター(レーンの横の溝を『ガーター』と呼ぶことがあるが、英語的には間違い)に落ちることは無かった。
 しかもリサのヤツ、1番重い16ポンドのボールを難無く使っている。
 あんなに細い腕をしているのに……。

 リサ:「あー、楽しかった!」
 愛原:「さようで。あててて……」
 高橋:「大丈夫ですか、先生?」
 愛原:「久しぶりに手を動かしたら、すぐこれだ。俺もトシかな……。明日は筋肉痛かもしれない」
 高橋:「明日まで休みですから、明日はゆっくりしましょう」
 愛原:「てか、明日はもう帰るけどな」
 高橋:「確かに」

 私達はボウリング場を出ると、ココイチに移動した。

 リサ:「お腹空いたよー」
 愛原:「だろうな。何にする?」
 リサ:「ビーフカレー400グラム、辛さは普通で。あと……ロースカツ、トッピングしていい?」
 愛原:「カツカレーか。いいよ。俺は普通の量でいいけど……あー、俺もトンカツ乗っけるか」
 高橋:「俺も先生のと同じので。辛さは5辛でオナシャス」
 愛原:「5辛か!?大丈夫なのか?」
 高橋:「大丈夫っス」
 愛原:「はー……、まあいいけど」

 リサはとにかく量、高橋はとにかく辛さで選んだ。
 私もそんなに辛いのが得意というわけではないので、普通の中辛で良い。

 愛原:「リサも辛いのは苦手か?」
 リサ:「うん。それと、皆の安全の為」
 愛原:「どういうことだ?」
 リサ:「変化した時に辛いの食べさせられたことがあって、直後に火を噴いた」
 愛原:「サラマンダーか!」
 高橋:「最悪、ドラゴンに変化したりして?」
 愛原:「そこまで変化されたら、ハリアー出撃してもらわないとなぁ……」

 そこまで考えて、私は“バイオハザード”よりも、“ゴジラ”を思い出してしまった。
 ん?ていうか、元人間の怪獣ってそのシリーズに出なかったっけ?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「市街地へ移動」

2021-08-23 19:52:29 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日10:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 コロナワールド仙台]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 ホテルをチェックアウトした私達は、再び隣接するコロナワールドヘと足を運んだ。
 正面入口はまだ封鎖されていたので、別の入口からアクセスする。
 そして、その中にあるゲームセンターへ向かった。

 愛原:「この筐体だが、間違いないか?」
 リサ:「うん、間違いない……」

 リサの夢に出て来たテディベアを扱うクレーンゲームの筐体である。
 実際、私は昨夜、高橋とこのゲームをやった。
 私の結果は散々なものだったが、高橋はものの見事にゲットした。

 愛原:「やってみるなら、お金入れるぞ?」
 リサ:「うん。ありがとう」

 私は500円硬貨を入れた。
 これなら6回操作できる。

 リサ:「まずはこのボタンを押して……」
 高橋:「おっ?」
 リサ:「次にこのボタンを押す……」

 1回ではなかなか取らせてもらえないが、それでもリサは初心者にしては珍しく、いい所に景品を持って行った。

 リサ:「夢の中に出て来た、もう1人の私が教えてくれたの」

 とはいうものの、やはりそこは初心者。
 6回やっても取れなかった。

 リサ:「まあ、そうだよね。夢の中では私が倒れた時、下から顔を覗かせてた……」

 リサがしゃがみ込んで景品取り出し口を覗く。
 私や高橋もつられて取り出し口を覗いた。
 その時、ガタンという音がしたかと思うと、そこからテディベアが顔を覗かせた。

 リサ:「え?」
 愛原:「え?」
 高橋:「え?」

 今度は一斉にケースの中を覗く。
 他のテディベアと一緒にケースの中で転がっていた1つが無くなっていた。
 つまり、景品取り出し口に落ちて来たのだ。

 リサ:「え……と?」
 愛原:「何で落ちて来たんだ?そんなギリギリまで行ってたっけ?」
 高橋:「えっと……」

 私は景品取り出し口からテディベアを取り出した。
 確かに、ケースの中に入っていた物と同じ物だった。
 何らかの拍子に穴に入ってしまったのだろうか?
 リサはいい所までクレーンで連れて行ったものの、ギリギリの所まで運んだわけではない。
 まるで、テディベアが自らの意思で穴に飛び込んだかのようだ。

 愛原:「何か仕掛けが……?」

 しかし、外見上は特に不審な点は見当たらない。
 やはり、何かの拍子に穴に入ってしまったのだろうか。

 愛原:「まあいい。持って帰ろう。高橋、袋持って来てくれ」
 高橋:「分かりました」

 高橋はテディベアを入れる袋を取りに行った。

 愛原:「2つともゲットしちゃったな」
 リサ:「これはサイトーへのお土産にしよう」
 愛原:「なるほど」
 リサ:「私が取ったものだと言えば、喜んで受け取るはず」
 愛原:「……確かにな。なあ、リサ。もしかしたら、オマエがやったから今の不可思議現象が起きたのかもしれない。もう1度やってみないか?」
 リサ:「分かった」

 私はもう1度、500円玉を入れてリサにやらせてみた。
 リサは夢の中のもう1人のリサに教わった通りにやるのだが、やはりある程度上手くはできるものの、やはり6回では普通に取れない。
 そしてさっきと同じように、景品取り出し口を覗かせた。
 今度は私達はケースの方を見ている。
 しかし、ケースの中のテディベアは動くことはなかったし、取り出し口に実はあったなんてこともなかった。
 更に今度は高橋にやらせてみた。
 景品の位置は店員に頼んで元の位置に戻してもらい、そこからやらせてみた。
 ゲームの上手い高橋でさえも、毎回必ず取れるというわけではない。
 前回はたまたま取れたのだろう。
 それさえ、6回目でギリギリ取れたようなものだった。
 で、今回は取れなかった。
 それでも一応、景品取り出し口とケースを同時に見た。
 やはり、不可思議現象は起こらなかった。

 愛原:「……やっぱり、ただの偶然か……。偶然、何かの拍子に景品が穴の中に落ちたんだろうな」
 高橋:「そ、そうですね……」

 腑に落ちないものであったが、私達はそう考えることにした。
 何だか私達も、リサの夢の中に取り込まれているような気がしてしまった。

 愛原:「よ、よし。それじゃあ、ここを離れることにしよう。車を返しに行かないと」
 高橋:「そ、そうですね」

 再び別の出入口から外に出て駐車場に回り、私達は車に乗った。

[同日10:45.天候:晴 仙台市宮城野区榴岡2丁目 ENEOS]

 車を返す前に、近くのガソリンスタンドに寄ってガソリンを満タンに入れる。
 セルフスタンドではなく、店員が給油してくれるフルサービスの店であった。

 リサ:「先生、車返した後はどうする?時間余るでしょ?」
 愛原:「そうだな。まあ、どこかに遊びに行こうかとは思ってる」
 リサ:「先生の御実家でゆっくりされるという手もありますよ?」
 愛原:「どうせ夕方、食事会やるからな。今はコロナ禍だし、今回みたいな調査でも無ければ、本来は家で自粛しているべきはずなんだからな」
 高橋:「そうは言いましても……」
 愛原:「リサはどうしたい?」
 リサ:「私は……思いっ切り体を動かしたい。あの変な夢のせいで、少し鬱になってるから」
 愛原:「なるほど。分かった。それなら1つ思い当たる所がある。そこに行ってみよう」
 リサ:「! おー!」
 高橋:「しかし先生、車は返しちゃいますよ?」
 愛原:「分かってる。ちゃんと電車で行ける所を知ってるさ」
 高橋:「それならいいですが……」

 給油が終わって、私達は駅レンタカーへ向かう。

 高橋:「体を動かしたいっつっても、色々あるだろ」
 リサ:「何でもいいんだけど……」
 愛原:「まあまあ。一応知ってるから、そこに行ってみよう」
 高橋:「先生にお任せします」
 愛原:「おう。俺に任せとけ」

 車を返却した後、私達は仙台駅に向かった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「夢オチ?」

2021-08-23 16:04:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日07:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台]

 リサ:「……はっ!」

 そこで目が覚めた。
 リサはホテル客室のベッドで寝ていた。
 まだ状況が把握しきれない中、突然机の上の電話が鳴った。

 リサ:「!?」

 リサが起き上がると、服は館内着を着ていた。
 いつの間に自分はここで寝ていたのだろうか。
 あれは夢だったのか?

 リサ:「も、もしもし?」

 電話を取ると、その向こう側には……。

 愛原:「おー、リサ、起きたか。朝食、食べに行こうと思うんだけど、どうだ?」
 リサ:「……うん、行く。ちょっと待ってて」

 リサは電話を切ると、バスルームに向かった。
 取りあえず、トイレを済ませておくのと、軽く顔を洗う為だ。
 それから部屋の外に出ると、そこは普通の光景が広がっていた。
 別に、靄が充満していることはないし、レヴェナントなるクリーチャーが徘徊しているわけでもない。

 愛原:「おー、リサ。起きたか。朝食会場に行くぞ。カードキーと朝食券、忘れるなよ」
 リサ:「あ……ちょっと待って」

 リサは部屋に戻ると、カードキーと朝食券を取りに行った。

 リサ:「お待たせ」
 愛原:「よし、行こう」

 エレベーターに乗り込み、朝食会場に向かう。
 会場は1階にあった。
 ロビーの奥にある。

 スタッフ:「いらっしゃいませ」

 朝食はバイキング形式だった。
 朝食券をスタッフに渡して、早速料理を取る。

 愛原:「リサ、取り過ぎるなよ。いくら食べれるからと言っても」
 リサ:「うん、分かってる」
 愛原:「後でリサに渡したいものがあるんだ。帰りに部屋に寄ってくれ。まあ、隣の部屋だけど」
 リサ:「うん……」
 愛原:「何か、浮かない顔してるな?どこか体の具合でも悪いのか?」
 高橋:「生理が来たか?」
 リサ:「違う。そうじゃない。昨夜、変な夢見て……」
 愛原:「変な夢?」

 席に着くと、リサは愛原達に昨夜見た夢の話をした。

 愛原:「確かに研修でウロボロス・ウィルスとか、それを投与して造られたBOWの話は聞いたことがあるが……。しかし、リサとは直接関係無いだろう?」
 リサ:「うん、無い。……はず」
 愛原:「もう1人の自分が現れるなんて、統合失調症の症状にあるらしいな」
 高橋:「ビョーインで観てもらった方がいいんじゃね?」
 愛原:「まあまあ。……というかリサ、食べ終わったら部屋に戻る前に、ちょっと行ってみよう」
 リサ:「んん?」

 今朝のリサはあまり食欲が無く、いつもなら皿に山盛りに料理を乗せて尚おかわりもするのに、今回はおかわりはしなかった。
 朝食を終えると、部屋に戻る前にホテルの外に出た。

 リサ:「一体なに?……って、あれ?」

 ホテルに隣接するコロナワールドの正面入口に、消防車やパトカーが何台か止まっていた。

 リサ:「火事でもあったの?」
 愛原:「あったらしいな。因みにリサ、オマエはどこで発煙筒を拾った?」
 リサ:「そんなの覚えてないよ。霧が濃かったし、レヴェナントから隠れるのに必死だったから」
 愛原:「そうか。じゃあ、発炎筒でレヴェナント1匹を焼き殺した場所は知っているかな?」
 リサ:「入口入ってすぐの所だよ」

 正面入口まで行くと、そこが封鎖されていた。
 温泉施設などはもうオープンしている時間帯なのだが、正面入口からは入れないので、スタッフ達が来客達に別の入口を案内していた。

 スタッフ:「申し訳ありません。館内でボヤが発生しまして、只今警察と消防が現場検証中です」
 愛原:「因みに、どの辺でボヤがありました?」
 スタッフ:「そこの階段の横辺りです。何が燃えたのかは分かりません」

 エントランスには2階へ上がる階段とエスカレーターがあるのだが、その横の床が大きく焦げていたというのだ。
 第一発見者はここで勤務する警備員であった。
 しかし不思議と、火災感知器などは作動しなかったという。
 もちろん、故障していた可能性はあるが、それも含めて現場検証を行っているという。
 不思議なのは床が激しく燃え上がった跡はあるのに、壁や近くにあった子供向けの遊具には全く焦げ1つ付いていなかったことである。

 リサ:「あの辺りって……」

 リサには記憶があった。
 夢の中で襲って来たレヴェナントに対し、発炎筒を焚いて投げつけた場所だ。
 レヴェナントは火に弱く、火の点いた火炎瓶を投げつけただけでも倒せるほどだという。
 また、燃え上がった仲間の近くにいるレヴェナントにも簡単に引火して燃え上がり、纏めて倒すことが可能である。
 それくらい火に弱いレヴェナントであるから、発炎筒を投げつけただけでも倒せるのである。

 リサ:「私がレヴェナントを倒す時に発炎筒を投げつけた所……。レヴェナントは燃え上がって、そのまま倒れたはず」
 愛原:「でも夢の中の話なんだろう?」
 リサ:「そのはず……。先生、昨夜もしかして、私に内緒でパチンコに行った?」
 愛原:「ど、どうしてそれを?」
 リサ:「私、客室の窓から見てたの。先生を追おうとして部屋を出たら、もう1人の私が現れて……あとは夢の中っぽくなった。だから、どこからが夢なのかがさっぱり分からない」
 愛原:「安心しろ。少なくとも、今は現実の世界だ」

 すると高橋が、リサのほっぺたをつねった。

 リサ:「いひゃい!」(←つねられた状態で喋った)
 高橋:「ほら、夢じゃねーだろ?」
 愛原:「そうだ。夢の中でオマエ、第1形態に戻れなくなっていたって言ってたな?今はどうなんだ?部屋に戻ったら、ちょっとやってみろ」
 リサ:「分かった」

 再びホテルに戻る。
 そして今度はリサは、愛原達の部屋に行った。

 愛原:「はい、これ。リサにプレゼント」
 リサ:「テディベア!?」
 愛原:「実はパチンコに行っただけじゃなく、隣のゲーセンにも行ったんだ。そこで高橋が取ってさ。パチンコは負けたんだが」
 リサ:「い、いいの?お兄ちゃんが取ったのなら、あのメイドさんにあげたら……」
 高橋:「パールにテディベアは合わねーよ。よしんばあげたところで、切り刻みの練習台にされるだけだ」
 リサ:「あ、ありがとう」

 リサは嬉しさよりも、夢の中に現れたもう1人のリサの言った通りになったことで、逆に薄気味悪く感じた。

 リサ:「ね、ねぇ。そのゲームセンター、私も行ってみていい?」
 愛原:「どうしたんだ?」
 リサ:「あの夢の終わり……。そのテディベアがいたクレーンゲームの所だったの」
 愛原:「そうなのか。分かった。確か10時オープンのはずだ。このホテルのチェックアウトもその時間だから、それに合わせて行ってみよう」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「もう1人のリサ」 2

2021-08-22 20:32:32 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日22:30.天候:濃霧 宮城県仙台市宮城野区福室 コロナワールド仙台]

 何故か突如として現れた、もう1人のリサ。
 それはかつてリサが研究所で『制服』と称して着せられたセーラー服を着ているので、便宜上、『制服リサ』と呼ぶことにする。
 一方、そんな制服リサに導かれるようにしてホテルを出た本物のリサ。
 彼女は私服を着ているので、便宜上、『私服リサ』と呼ぶことにする。
 そんな彼女達は、レヴェナントと呼ばれるクリーチャーを回避しながら進まなければならない。
 今の私服リサには攻撃力は無いとされるが、それは誤りである。
 例え1番弱い第0形態であっても、身体能力そのものは常人を超える。
 但し、攻撃力が弱いだけだ。
 特に、レヴェナントなるクリーチャーはリサにとっては初見の敵。
 どのような攻撃をしてくるか分からない以上、回避して進むのが無難と思われた。

 レヴェナントA:「ウゥ……」
 レヴェナントB:「アァ……」
 私服リサ:「くそっ、敵が多過ぎて進めない……!」

 私服リサは駐車場に止まっている車の陰に隠れながら、コロナワールドの正面入口を目指した。
 幸いレヴェナントは普段の動きは非常に遅く、また、体のパーツが不自然なほどにメチャクチャに付いているので、歩き方もぎこちない。
 例えば右足と左足が逆に付いていたり、脇腹から足がもう一本生えていたり、首が斜め45度に傾いた状態で固定されていたりと個体によって体つきはバラバラだ。
 共通点としては顔が変な方向を向いており、首が動かせない状態の為、彼らの視界は狭く、聴覚も並みの人間程度のものと思われ、静かに移動しながら彼らの視界に入らなければ襲って来ることは無いようだ。
 また、肥満ではないのだが、体はそこそこ長身で肉付きもそれなりに良い為、車と車の間は通れないようである。
 その為、リサが隠れている車と車の陰にまで入って来ることはない。
 リサが舌打ちしたのは、正面入口の前にレヴェナントが3体も徘徊していたからだ。

 私服リサ:「ん?」

 その時、リサは車の下に何かが落ちているのが分かった。

 私服リサ:「これは……?」
 制服リサ:「おー、いいもの見つけたじゃない」

 それは発煙筒だった。
 車に積まれていたものが落ちたのだろうか。

 制服リサ:「これで奴らを撒けるかもしれないよ」
 私服リサ:「どうやって使うの?」
 制服リサ:「そこに書いてあるでしょ」
 私服リサ:「んん?」

 私服リサはキャップを外して、発煙筒を焚いた。

 レヴェナントA:「!?」

 その時、レヴェナント達がリサ達に気づいた。
 と、同時にリサはレヴェナント達に発煙筒を投げつける。
 煙がモクモク噴き出し、レヴェナント達はそれに巻き込まれた。

 制服リサ:「今のうちに行こう!」
 私服リサ:「分かった!」

 2人のリサは煙に巻かれて視界を失い、パニックになっているレヴェナント達をよそに建物の中に入った。
 だが、ホールにもレヴェナントが何匹か徘徊していた。

 私服リサ:「また発煙筒が落ちている」
 制服リサ:「それは発炎筒だね」
 私服リサ:「え???」
 制服リサ:「さっきのはただ煙をモクモク出すだけの物。でもこれは、出る煙は少ないけど、炎も出す物だよ。まあ、少し大きな花火だと思えばいい」
 私服リサ:「おー、花火!」
 レヴェナントC:「ガァーッ!」
 私服リサ:「しまった!見つかった!」

 レヴェナント数匹のうち、いつの間にかリサ達に接近していた個体がリサ達の存在に気づいて追って来た。

 制服リサ:「しょうがない。それを投げつけて、燃やしてやりなさい」
 私服リサ:「そんなことできるの!?」

 リサは発炎筒を焚いた。
 確かに先ほどの発煙筒と違い、煙よりも眩い赤い炎のの方が目立つ。

 私服リサ:「うりゃっ!」

 私服リサは焚いた発炎筒を大股で向かって来たレヴェナントCに投げつけた。
 発炎筒の炎がレヴェナントCに当たる。

 レヴェナントC:「ギャアアアアッ!!」

 するとレヴェナントCは、たちまち炎に包まれた。

 私服リサ:「凄い!よく燃える!」
 制服リサ:「ザイン島にいた奴らも火に弱かったらしいけど、ここにいる奴らも同じだったみたいだね」
 私服リサ:「ザイン島?」
 制服リサ:「こいつらが現れた外国の島のことだよ。ま、ここじゃ関係無いか。幸いここのレヴェナント達は耳も聞こえないのか、今の騒ぎでも他の奴らは気づいてないよ。今のうちに先に進みましょう」
 私服リサ:「分かった」

 リサ達はパチンコ店に入った。
 パチンコ店も驚くほど静かで、やはりここもレヴェナントが何体が徘徊していた。

 私服リサ:「一体、どこにいるんだろう?」

 パチンコ台には電源が入っているにも関わらず、全く音声が聞こえてこない。
 それどころか、店内には客も店員も誰一人いなかった。
 いるのはレヴェナントくらい。
 幸いパチンコ店はそんなに入り組んだ構造になっているわけではないので、捜すのは簡単だった。

 私服リサ:「おかしい。先生達がいない……!」
 制服リサ:「もうここにはいないのかもね」
 私服リサ:「どこに行ったんだ?」
 制服リサ:「知らないよ。それより、今度はテディベアを探しましょう」
 私服リサ:「ここにいるの?」
 制服リサ:「ここじゃなくて、隣のゲームセンターだよ。大丈夫。そっちにあのブサイク共はいないから」
 私服リサ:「……?」

 私服リサは制服リサの後をついて、ゲームセンターに移った。
 そこにも誰もいなかったが、確かにレヴェナントもいなかった。
 ゲームセンターにはクレーンゲームが何機も設置されていたが、そのうち、大型景品を扱う筐体にテディベアがあった。

 制服リサ:「これだよ。あなたに会いたがっているテディベア。さあ、早いとこ取ってあげて」
 私服リサ:「私、こんなのやっとことないよ」
 制服リサ:「大丈夫。私の言う通りにやればいいから。まずは、このボタンを押して……」
 私服リサ:「このボタン……」

 私服リサは言われた通りのボタンを押した。
 だが、突然彼女に強い眠気が襲う。

 制服リサ:「次はこのボタンだよ。……聞いてる?」
 私服リサ:「う、うん……」
 制服リサ:「ほらぁ、失敗した。もう1回やり直し。もう1度このボタンを押して……」
 私服リサ:「か、体が……動かない……」

 ついにリサは体から力が抜けて、筐体の前に倒れ込んだ。
 目の前には景品取り出し口がある。
 すると、その穴からテディベアが顔を覗かせた。
 制服リサがしゃがみこんで、そこからテディベアを取り出す。

 制服リサ:「完全体になるのは、まだまだ先のようだね」

 そこでリサは完全に意識を失ってしまった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする