報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「もう1人のリサ」

2021-08-22 16:23:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日22:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台6F客室→駐車場]

 温泉施設からホテルに戻ったリサ。
 ホテルでは、リサだけシングルである。
 リサとしては是非とも愛原達と同じ部屋で寝泊まりしたかったのだが、さすがにもう高校生になったのではと部屋を別々にされている。

 リサ:「むー……」

 寝る前に歯磨きをしており、客室の窓の前に行く。
 窓からは県道23号線(産業道路)や高速道路の仙台東部道路が見えた。
 連休中の夜だからか、そんなに交通量は無い。
 いすゞのトラックのテーマソングにある『ブレーキランプの天の川』というほど車は多くなかった。
 その高速道路の向こう側には、市街地の灯りが見える。
 と、ふと、目線を真下にやった。
 愛原と高橋が私服に着替え、隣接する仙台コロナワールドへ行こうとしていた。
 恐らく、ホール内にあるパチンコ店に向かったのだろう。

 リサ:(ズルい!私も行く!)

 パチンコ店は18歳未満入店禁止が今は徹底されている。
 作者が子供だった昭和時代はそこまで厳しくなく、店内も今ほど明るくて綺麗でもなく、店員の接客態度も今とはウソみたいに無愛想なものだった。
 そんなユルユルの風紀では子供が一緒に入っても咎められることはなく、むしろ作者の記憶では父親に連れられて代打ちをやらされた記憶がある。
 その為、今は死語になっている『平台』とか『チューリップ』の意味は今でも分かる。
 但し、昭和時代の用語は死語になっているらしく、さすがの作者もそんな用語は言わない。
 リサは急いで洗面所に行くと、口の中をすすいだ。
 それから館内着から私服に着替えて、部屋から出ようとした。

 リサ:「!!!」

 と、突然背後に気配を感じて振り向いた。

 リサ:「!?」

 そこにいたのは自分であった。
 しかし、服装は研究所にいた時に着せられていたセーラー服を着ていた。

 リサ:「な、な……!?」

 リサが驚いて変化を解こうとすると、何故か解けない。
 第0形態の人間の姿のまま、第1形態の鬼の姿に戻れなくなった。

 (便宜上)制服リサ:「何もそんなに驚くこともないでしょう?私は私なんだから」
 (便宜上)私服リサ:「い、いや、驚くに決まってるでしょ!?何さも当然のように『もう1人の自分』がそこにいるの!?」
 制服リサ:「あなたのテディベアが会いたがってるの。一緒に来てくれる?」
 私服リサ:「嫌だと言ったら?」
 制服リサ:「その時は、愛原先生達が死ぬことになる」
 私服リサ:「そう来たか。分かった。どこへ行けばいい?」
 制服リサ:「簡単だよ。愛原先生達を追えばいい。あなたなら、行き先は分かってるでしょう?」
 私服リサ:「そうだな」

 リサは部屋の外に出た。

 私服リサ:「!?」

 部屋の外は変な靄が出ていた。
 まるで火災が発生して、煙が充満しているかのようである。

 私服リサ:「これは一体……?」
 制服リサ:「気にしないで。別に火事が起きているとかじゃないから」
 私服リサ:「はあ?」

 靄が掛かっていて視界は弱くなっているが、廊下の向こうが見えない程度で、手探りでないと歩けないというほどではない。
 エレベーターまで行くと、それに乗り込んだ。

 私服リサ:「あなたはどうして現れたの?」
 制服リサ:「それは後で話してあげる。それより、下に着いたら気を付けてね」
 私服リサ:「何が?」
 制服リサ:「クリーチャーがウヨウヨいるから。で、あなたはその姿のままで、いつもの力は使えない。ザコばかりだけど、戦おうとすると手強いよ」
 私服リサ:「そんなことが……」

 エレベーターが1階に着く。
 ドアが開いて降りると、確かに変な気配を感じた。
 フロントを見ると、誰もいない。
 ロビーも誰もいないのだが、しかし何かの気配は感じる。

 制服リサ:「隠れて」
 私服リサ:「!」

 制服リサに促されて、私服リサはフロントの後ろに隠れた。

 レヴェナント:「ウゥ……」

 ロビーを1匹の化け物が徘徊していた。
 全体的に白っぽい2足方向で、一見すると人の形をしているように見えるが、そのパーツの付け方がメチャクチャだ。
 無造作に体の部位が縫い付けられているようで非常に醜悪な外見を持っている。
 確かに、普通の化け物には見えなかった。
 呻き声を上げながら、足を引きずるように徘徊している。

 私服リサ:「なるほど。ザコそうだけど、見つかったら面倒そう」
 制服リサ:「面倒どころか、今のあなたなら見つかったら殺されるよ?」
 私服リサ:「そうなんだ。あれはやり過ごせる」
 制服リサ:「顔が変な方向を向いているでしょ?首もろくに回せないでしょうから、奴らの視界に入らず、しかも物音を立てないで進めば見つからないでしょう」
 私服リサ:「なるほど。ところであなたは隠れてないけど大丈夫?」
 制服リサ:「私は大丈夫。どうせ奴らからは見えないもの」
 私服リサ:「どういうこと?」
 制服リサ:「今、あなたは自分の心配だけしていればいいの。それより、ホテルの外もあいつみたいなのがウヨウヨいると思うよ。あいつをやり過ごしたら、車の陰に隠れましょう」
 私服リサ:「分かった」

 リサはそっとフロントの陰から出た。

 レヴェナント:「ウゥ……」

 ただ単に徘徊しているからなのか、動きは非常に遅い。
 私服リサはレヴェナントの右後ろをゆっくり近づいていった。

 私服リサ:「ゾンビより気持ち悪い。何こいつ?」
 制服リサ:「こいつの名前はレヴェナント。複数の無機物や人間の身体、その一部を縫合させたものにウロボロス・ウィルスを投与して造り出されたBOWだよ」
 私服リサ:「ウロボロス・ウィルス?聞いたことあるなぁ……」

 と、そのレヴェナントが自動ドアの前で立ち止まった。
 この後、自分がどうするべきか悩んでいるかのようだ。
 と、そこへ吹き抜けの階段の上、2階から何かが倒れる音がした。

 レヴェナント:「ウォォォッ!!」

 その音に反応して、レヴェナントは雄叫びを上げ、階段を昇って行く。
 動きは遅いのだが、無駄に長い足を伸ばし、階段を2段~3段飛ばしで昇って行くので、必然的に動きが速くなったかのように見えた。
 平地でも獲物らしき物を見つけると、ああやって大股歩きで向かって行くのだろう。
 油断していると、追い付かれてしまうのは間違いない。

 私服リサ:「今のうちに出よう」

 2人のリサはホテルの外に出た。
 ホテルの外は、まるで濃霧が掛かったかのような視界になっていた。
 駐車場の全体が見通せない。
 街灯が無ければ、そこに道路があるのか分からないほどの視界だった。
 仙台東部道路に至っては、オレンジ色の街灯の灯りしか分からない。
 しかも、とても静かだった。
 いくら交通量が少ない日かつ時間帯とはいえ、幹線道路や高速道路があれば、そこを走る車の音はよく聞こえるものだ。
 少なくとも、リサ達がこのホテルに到着した時はそうだった。

 制服リサ:「早くこっちへ」

 制服リサに促されて、私服リサは駐車場の車の陰に隠れた。
 駐車場は駐車場で、多くのレヴェナントが徘徊していた。

 私服リサ:「一体何があった?」

 私服リサにはさっぱり分からなかった。
 温泉施設から戻って来るまで、その施設もホテルも全く何の異変も無かったというのに。

 制服リサ:「愛原先生達の居場所、見当は付くの?」
 私服リサ:「見当はつく。コロナワールドの中にあるパチンコ屋に行ったはずだ」
 制服リサ:「じゃあ、そこまで行ってみましょう」
 私服リサ:「テディベアとは、どう繋がる?」
 制服リサ:「慌てない慌てない。必ずあなたはテディベアと会えるから、まずは愛原先生達を捜しましょう。もちろん、その為にはあいつらに見つからないようにしないとね」
 私服リサ:「……分かったよ」

 私服リサは、もう1人の制服リサの指示に従うことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「牛タンと温泉とパチンコ」

2021-08-19 20:03:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日18:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区六丁の目北町 伊達の牛たん本舗]

 リサはやはりというべきか、1.5人前の牛たん定食をペロリと平らげた。

 リサ:「あー、美味しかった」
 愛原:「さようで」
 リサ:「先生はビール飲まないの?」
 愛原:「運転してくれている高橋が飲めないんだから、俺も遠慮しておくよ」
 高橋:「先生の大慈大悲に触れる時、心の底から湧き上がる大歓喜は何事にも代えられぬものであり、先生の御心を配する時、自分の不甲斐無さにいても立ってもいられぬもどかしさがこみ上げ、されば今回の大誓願を何としてでも……」
 愛原:「こらこらこら!途中で顕正会員みたいなことを言わない!」

 多摩:「よく顕正会部長の言葉覚えてるな?」
 雲羽:「『顕正会員は死ぬまで顕正会員』とはよく言ったものです。元顕のガチ勢が必死に自分の過去を否定しようと躍起になっていますがね。過去は消えないものです」
 AD:「カントク方、お静かに」

 愛原:「よし。じゃあ、食うもん食ったし、次はホテルに移動するか」
 高橋:「はい」

 私は伝票を手に取った。

 愛原:「リサの牛たん定食1.5人前が一番高い」
 高橋:「リサ、てめぇ、先生に御礼言わんかい」
 リサ:「ゴチになりましたー!」
 高橋:「俺のセリフを取るなぁ!」
 愛原:「仲いいな」

 私は苦笑してレジに向かった。

[同日18:40.天候:晴 同区福室 ホテルキャッスルイン仙台→コロナワールド仙台]

 愛原:「ここだ、ここ」
 高橋:「ここって……」
 リサ:「前にも来たことある」
 愛原:「そうだろそうだろ。前来た時、随分良かったからな。リピーターになってみた」
 高橋:「そうでしたか……」
 愛原:「言った通りだろ。高速のすぐ近くだって」

 私は高架を走る仙台東部道路を指さした。
 田園地帯では盛り土の上を通っていた仙台東部道路も、産業道路と合流すると高架線となる。

 高橋:「た、確かに」

 車を近くの駐車場に止め、荷物を降ろしてホテルに向かった。

 リサ:「おっ、七夕飾りが……」

 ロビーでは七夕飾りがされていた。

 愛原:「仙台では8月上旬に七夕祭りをやるからな、それだよ」
 リサ:「おー」
 フロント係:「いらっしゃいませ」
 愛原:「3名で予約している愛原と申しますが……」
 フロント係:「はい、愛原様でございますね」

 私がチェックインの手続きをしていると、リサがロビーにあるマンガを物色した。

 リサ:「“となりの沖田くん”置いてない?」
 愛原:「置いてない置いてない」

 鍵はカードキーだった。
 宿泊客は滞在中、施設内の大江戸温泉物語に自由に入れるという。
 これが目的のようなものだ。

 リサ:「私のカードキーで開かない?」
 愛原:「開くわけないだろう」

 そんなことを話しながら、館内着を持ってエレベーターに乗り込んだ。
 結局、リサが持っていたゴールドカードは天長会の物であることが分かった。
 天長会の信者だった白井伝三郎が、日本版リサ・トレヴァー達に持たせたのであった。
 『最も危険な12人の巫女たち』、今はリサ1人しか残っていない。

 愛原:「部屋着に着替えたら、すぐ温泉入りに行こう」
 リサ:「混浴!?」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 愛原:「んなワケあるか!」
 リサ:「ちぇっ」

 私と高橋はツインの部屋に入った。

 高橋:「おっ、部屋から高速が見えますね」
 愛原:「だろ?トレインビューならぬ、ハイウェイビューだ」
 高橋:「いいっスね!」

 部屋着に着替える。
 その最中に、高橋が言った。

 高橋:「先生。ここに来た理由は、何も温泉だけとは限らんのでしょう?」
 愛原:「と、言うと?」
 高橋:「パチ屋もありますよね?」
 愛原:「うん、あるね」
 高橋:「確か先生、ここのパチ屋でボロ負けしましたよね?」
 愛原:「したねぇ……」
 高橋:「レッツ・リベンジですよ。ね?」
 愛原:「そのつもりだ。……まあ、明日でいいか。どうせ明日は夕方までやることないし」
 高橋:「マジっスか」
 愛原:「マジです。今日は疲れたから、温泉入ってすぐ寝ようと思う」
 高橋:「まあ、気持ちは分かります」
 愛原:「ただ、予行演習だけはしておきたいかな?」
 高橋:「え?」

[同日19:45.天候:晴 同地区内 大江戸温泉物語(仙台コロナワールド)]

 ホテルと温泉施設の間は、宿泊者専用の通路があり、そこを通って行き来ができる。
 その際、宿泊者以外が出入りしないよう、宿泊者は専用のカードキーが貸与される。
 リサが試しに天長会のゴールドカードを使用してみたが、案の定弾かれてしまった。

 リサ:「天長会の施設だったら自由に開けれるのに……」
 愛原:「当たり前だろ」

 そこでふと気づく。
 昔、探索した豪華客船“正信号”。
 船内では、リサのカードを使って開けられる箇所がいくつもあった。
 あの船、実は天長会が所有していたのではないか?
 今はもう顕正号共々爆破解体されて存在しないわけだが……。
 この温泉施設で過ごした私達だが、私が言った予行演習とは何か。
 それは温泉施設内の休憩所に設置されたゲームコーナーにあるパチンコ台である。
 パチンコ店に設置されていた機種の中古であり、実際に玉がジャラジャラ下から出て来るわけではない。
 当たるとメダルがもらえ、これを集めた枚数によって景品と交換できるというもの。
 しかし、難易度はアミューズメント仕様(パチンコ店に設置されているものと同じ仕様)に設定されている為、たかだか温泉施設のゲームコーナーのパチンコ台だからと言って当たりやすいわけではない。

 愛原:「くっ……!全然当たらねぇ!」

 魚群が動くだけで、たまにリーチが来るものの、全く当たらない。
 パチ屋と違い、こちらは1回100円なのだが、もう1000円分使ってしまった。

 愛原:「俺はマリンちゃんに会いたいだけだぁ!」
 リサ:「あァ!?」

 リサが右手だけ爪を長く鋭く伸ばした。

 愛原:「じょじょじょ、冗談だってば!爪をしまえ!」
 リサ:「私が代わりにやる」
 愛原:「誰がやっても同じだぞ」
 高橋:「そうだぞ。こんなクソ台……」

 パチ屋は18歳未満は入店禁止だが、ここでやる分には構わないだろう。

 リサ:「どうやってやるの?」
 愛原:「高橋、教えてやれ」
 高橋:「うス。まず、ハンドルは右手で……」

 機種によっては『右回り』『左回り』とかあるんだけど、特に指定されていない場合、私は『右回り』『左回り』交互にやっている。

 高橋:「そうそう。この“IN”て書いてある所に玉が入ると、画面の中の『魚群』と言って、魚の絵が右から左へ動くわけだ。そしたら……」

〔「リーチ!」〕

 高橋:「そうそう。3枚の絵のうち、2枚が揃うと『リーチ』と言って、あと1枚揃うか揃わないかの演出が……」
 愛原:「もうリーチなのかよ」

〔チャラララララーン♪〕(←通常の当たりが出た音)

 高橋:「そうそう。全部揃うと、これが当たりとなって……って、ええっ!?」
 愛原:「何いきなり当ててるんだよ!?」

〔「めんそーれ沖縄♪ちゅちゅちゅらちゅら沖海♪レッツゴー!……」〕

 その後もリサは当たらせ続け……。

〔「めでためーでたぁーの♪祭りの夜♪キミと2人きり♪ヤッショーマカショー!シャンシャンシャン!ヤッショーマカショー!シャンシャンシャン!ハイッ!!」〕

 愛原:「じゅ、16回転……」
 高橋:「俺、基本的なことしか教えてないっスよ?」

〔「桜舞う♪春の道♪裸足で駆け出す夏の海♪紅の♪秋の空♪雪降る冬の夜~♪どんぶらこ♪どんぶらこ♪寄せて~は返~す~♪波のように♪美しく♪心洗われるぅ~♪あっぱれジャパン♪春夏秋冬~♪四季の色♪染めらーれて♪幾重にも重な~る~♪帯揚げの花のよう~♪望む金色の夢~♪」〕
〔「めんそーれ沖縄♪ちゅちゅちゅらちゅら沖海♪レッツゴー!……」〕

 リサ:「レッツゴー!」
 愛原:「レッツゴー!」
 高橋:「レッツゴー!」

〔「……沖海フォーッ♪」〕

 リサ:「フォーッ!」
 高橋:「フォーッ!」
 愛原:「フォーッ!」

 幼女:「ねぇ、パパー。あの人達、何してるの?」
 トチロ~パパ:「見ちゃダメだよ」
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“私立探偵 愛原学” 「ぐるっ都・仙台」

2021-08-18 20:22:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日16:50.天候:晴 宮城県柴田郡村田町菅生 東北自動車道・菅生パーキングエリア]

 山形道の山間部でゲリラ豪雨の待ち伏せを受けた私達だったが、何とか切り抜けて村田ジャンクションに差し掛かった。
 ここから東北自動車道の下り線に入る。
 そこから仙台市を目指す途中に、菅生パーキングエリアがある。
 ガソリンスタンドが併設されていることから、まるでサービスエリアを連想させるが、パーキングエリアである。

 

 建物はリニューアルされて、正面入口のエントランスには、伊達政宗の兜の飾りをあしらったモニュメントが設置されている。

 愛原:「最後の休憩だな」
 高橋:「タバコ吸って来ます」
 愛原:「行ってらっしゃい」
 リサ:「この中で牛タン食べれる……」
 愛原:「ここではジュースくらいにしときな。牛タンは後で食べるから」
 リサ:「あ、食べるの!?」
 愛原:「一応そのつもりだから」
 リサ:「わぁい!」

 本館内部はレストランの他に、土産物店がある。
 車で来た客が仙台圏内の土産を買えるようになっている。
 が、何故か“萩の月”は見当たらなかった。

 愛原:「色々なものがあるなぁ……。ぶっちゃけ、斉藤社長へお土産をここから送りたいくらいだ」
 リサ:「お中元?」
 愛原:「そうそう、御中元。7月15日は過ぎたから、8月15日になるのか……」
 リサ:「別にいいんじゃない?」
 愛原:「別にいいかなぁ……。まあ、明日にしよう。どうせ休みは明後日までだし。仙台からなら、午前中発送すれば、次の日には届く流通システムだし」
 リサ:「ねぇ、先生。あの笹かまぼこ、食べていい?」
 愛原:「かまぼこ食べたいのか?」

 笹かまぼこが1枚からの単品で売っていることがある。
 ここもそうだった。

 愛原:「しょうがないな。1枚だけだぞ」
 リサ:「分かったー」

 リサが選んだのは至ってシンプルな、しかし大判サイズのものだった。

 リサ:「じゃあ、これ」
 愛原:「案外、フツーなの選んだな」

 それから飲み物を購入したり、トイレに行ったり……。

 愛原:「よし、最後の休憩終わり。そろそろ次の目的地に行こう」
 高橋:「はい」

 菅生パーキングエリアを出て、再び東北道下り線に入る。

 愛原:「夕食は牛タン定食にしよう。それからホテルへゴーだ。いいかな?」
 高橋:「御意!」
 リサ:「先生の仰せのままに!」

 私はナビに行き先をセットした。

[同日17:30.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区六丁の目北町 伊達の牛たん本舗]

 仙台と言えば伊達政宗なのだろう。
 仙台市に入る時の看板に描かれていたのは、馬に乗った伊達政宗の絵であった。
 東北自動車道の仙台市内区間は、終日時速80キロ規制が敷かれている。
 これは別に騒音対策ではなく、線形が悪い為に規制されているのだ。
 この辺りは用地取得が困難だったのか、高速道路にしては嫌というくらいS字カーブとアップダウンが続く。
 中央高速では線形が改良されて真っ直ぐ走れるようになったらしいが、東北道はこの点まだ遅れている。
 そんな線形の悪い所に仙台南インターが存在する。
 そこから仙台南部道路に入る。
 今でこそ『E48』という山形道と通しの番号が付与されているが、かつては宮城県道路公社が管理する宮城県道としての有料道路だった。
 今でも有料道路だった頃の名残で、路肩が狭かったり、暫定二車線区間が長くあったりする。
 暫定二車線区間は、尾花沢新庄道路と同様、時速70キロ規制になっている。

 リサ:「あっ、電車が止まってる」
 愛原:「あれは地下鉄の富沢車両基地だよ」

 仙台市地下鉄南北線の車両基地。
 今はまだ開業当時の1000系電車しか見られないが、2024年度以降、3000系なる新型車両が順次導入されるという。
 そこを過ぎて東進すると、今度はJRのガード下を潜る。
 更に東へ進むと、仙台東部道路との若林ジャンクションに差し掛かる。
 その下り線へと入る。
 仙台東部道路は『E6』の番号が付与されており、常磐道の一部という認識でいてもおかしくはない。
 盛り土構造であることから、東日本大震災では大津波を食い止めたことで有名であり、津波から逃れてきた被災者がこの盛り土をよじ登って高速道路上に避難し、無事に津波をやり過ごせたというエピソードもある。
 その一方で、名取川に架かる橋では地震による大きな揺れで走行中の車が弾き飛ばされ、怪我人を出すということもあった。
 今回はその橋は渡らないが、しかし津波を食い止めた盛り土区間は走行している。
 そして、最初のインターである仙台東インターで高速を降りた。
 インターを降りると、県道23号線の交差点に差し掛かる。
 これは通称『産業道路』と呼ばれ、片側3車線の道路である。
 なので仙台市民が埼玉県に行き、そこの『産業道路』を紹介されると、大抵そのショボさに驚く。
 同じ県道なのだか……。


〔この交差点を直進した後、次の交差点を左です〕

 愛原:「反対側にあるから、グルッと回れということだな」
 高橋:「なるほど……」

 大きな交差点を直進する。

〔ここを左です〕

 高橋:「はい、左」

 2車線も無いような路地を入る。

〔目的地周辺です。ルート案内を終了します〕

 リサ:「……落ちれば良かったのに」
 愛原:「山道を走っているわけじゃないからな、リサ」
 リサ:「ちぇっ……」
 高橋:「あ、ありました、駐車場」
 愛原:「あった?」

 高橋はハンドルを左に切って、駐車場に乗り入れた。

 愛原:「はい、到着ぅ~!」
 リサ:「わぁ!やっと食べれる!」

 リサ、思わず第一形態に戻ってしまう。

 高橋:「くぉらっ!角と牙と爪と耳を隠せ!」
 愛原:「適格な指摘」
 高橋:「あざっす!!」

 こうして私達は、ようやく夕食にありついた。
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“私立探偵 愛原学” 「ゲリラ豪雨の後で」

2021-08-18 16:04:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日15:30.天候:雷雨 山形県天童市 道の駅天童温泉→宮城県川崎町 山形自動車道・笹谷インター付近]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 そんな探偵が、今は道の駅で足止めを食らっている。
 というのは……。

 高橋:「正に滝のような雨っスね」
 愛原:「うーん……。まさか、ここでゲリラ豪雨と当たるなんてなぁ……」

 私達は道の駅の中にあるレストランにいる。
 仕方ないから、ここでコーヒーでも飲んで時間を潰している。
 尚、リサはソフトクリームを食べていた。

 高橋:「山の方はガチヤバイってことですかね?」
 愛原:「……と、思うよ。まあ、宮城の方に出れば大丈夫だと思うけどな」
 高橋:「そうですか」
 愛原:「奥羽山脈に阻まれて、ゲリラ豪雨の雲も宮城側には行けないだろう」
 高橋:「ということは、宮城側は安全ですか」
 愛原:「……と、思うんだけどね。ただ、いかんせん、このゲリラ豪雨が止んでくれないことにはどうしようもないんで……」
 高橋:「そうっスね」
 リサ:「泊まるのはどこなの?」
 愛原:「仙台に戻ってからだよ。遊ぶ所もあって、温泉もあって、泊まれる所さ。もっとも、この分だと、今日は温泉入って寝るだけになりそうだけどな」
 リサ:「ほおほお」
 愛原:「明日の夜は、両親と夕食会だ。家じゃなくて、外な」
 高橋:「さすが先生、太っ腹っスね」
 愛原:「親孝行だよ」
 リサ:「親孝行か……」
 高橋:「親孝行ですか……」
 愛原:「何でオマエら、遠い目するんだよ。リサは分かるけどさ」

 ゲリラ豪雨は凡そ1時間降り続けた。
 道の駅を出られたのは、16時くらいになってから。
 雨が小降りになった時点で、私達は車に急いで戻った。

 愛原:「よし、今のうちに行こう」
 高橋:「はい!」

 ようやく空には晴れ間も見え、日が差すようになっていた。
 だが、まだ所々に黒い雲が浮かんでいる。
 しかも奥羽山脈の方を見ると、しっかり黒い雲が山頂付近を覆っていた。

 愛原:「国道13号を上って、それから山形道の山形北インターに入る。このルートで行こう」
 高橋:「はい」

 天童市内には東北中央道が通っており、それが山形道とも繋がってはいるのだが、道の駅からわざわざ天童インターまで行くよりは、素直に国道のバイパスを上って行った方が早いということを、車のナビは伝えていた。
 車は国道13号線山形バイパスに入る。
 さすがに県庁所在地に向かうということもあり、車も多くなって来たが、渋滞になる前に山形北インターに入ることができた。

 愛原:「しかし、ここまで走って、途中給油一回もしなくていいんなんて、燃費いいね」
 高橋:「フィットは大体リッター20~30キロは走れますから。昔乗ってたチェイサーとは大違いっと」
 愛原:「チェイサーはナンボだ?」
 高橋:「ツアラーVで、リッター7~8キロってとこっス」
 愛原:「燃費悪ィな。しかもそれ、ハイオクだろ?」
 高橋:「そうです」
 愛原:「走り屋も、金持ちのボンボンの趣味っぽいなー」
 高橋:「先生、そりゃヒドイっス」
 愛原:「あー、悪い悪い」

 山形蔵王インターを過ぎると、風景は山間に一遍する。
 で、途中にある道路情報の看板を見ると……。

 愛原:「関沢~宮城川崎 雨注意だって」
 高橋:「因みにこの場合、雨とは大雨全般を指します」
 愛原:「だな」

 宮城川崎とは、宮城県川崎町にあるインターのことである。
 東名高速の東名川崎と区別する為、宮城川崎と名乗っているのだろう。
 で、実際は関沢インターを通過する前から、雨が降り出して来た。

 愛原:「これは何かのフラグかな?」
 高橋:「これから洋館か何かを探索する時、こういう雨だと盛り上がりますよねぇ……」

 あえて天気が良く、満月がきれいに出ている状態で開始するのもアリだと思う。
 関沢インターを過ぎると、山形道のハイライト、笹谷トンネルに入った。
 宮城県との県境のトンネルで、旧トンネル(上り線用)と新トンネル(下り線用)とに分かれている。
 まだこのトンネルが暫定二車線だった頃、旧トンネルの長さは3385メートルであった。
 お分かり頂けただろうか?
 笹谷(ささや)トンネルの旧トンネルの長さは、338(ささや)5メートルなのである。
 今から思えばつまらないダジャレであるが、笹谷トンネルが旧トンネルしか無かった頃の仙台市の小学生は、社会科の授業でその語呂合わせで覚えさせられたものである。
 その為、新トンネル開通時に改良されたことで、旧トンネルの長さは3411mメートルに延長されたが、今でも改良前の長さで覚えている者は多い。
 因みに旧トンネルと称してはいるが、今でも上り線用として現役である。
 で、この旧トンネル、暫定二車線だった頃の名残がある。
 今では封鎖されているものの、右車線側に非常駐車帯や非常口があったのが分かるようになっている。
 これは暫定二車線時代、右車線が対向の下り車線だった頃の名残だ。
 笹谷トンネルは当初、並行して走る国道286号線のバイパス用トンネルとして供用されたのが始まりで、山形県側の出入口部分には料金所が設置されていた跡地が見える。
 また、トンネルの前後にあったはずの国道とのアクセスルートについては、もう名残も見えなくなっている。
 インターチェンジが設置された際、取り潰されたのだろう。
 で、トンネルの途中、県境を表す壁画が描かれている。

 愛原:「やっと宮城県まで戻って来たな」
 高橋:「(国道)347号と比べると、随分と大仰ッスね」
 愛原:「トンネルで県を越えるということが、それだけ珍しかった時代なんだろう」

 他にも宮城県と秋田県の県境を通る国道108号線の仙秋鬼首トンネルなんてのもあるが、こちらは高速道路ではない。
 で、笹谷トンネルを出ると……。

 愛原:「おわっ!?」

 いきなり豪雨に見舞われた。
 高橋は急いでワイパーを作動させる。

 高橋:「道の駅にやってきた、あのゲリラ豪雨っスよね?」
 愛原:「多分な」
 高橋:「先回りされましたね」
 愛原:「リサ・トレヴァーか!」
 リサ:「呼んだ?」
 愛原:「いや、オマエのことじゃない!」
 リサ:「……オリジナルの大先輩ねぇ、あれは警察隊の人達よりも施設の構造を知り尽くしていたから、先回りができたんだと思うよ」
 愛原:「そうだろうな」

 豪雨に霞む笹谷インターを通過すると、今度はセントメリースキー場の下を潜って行く。
 もちろん夏なので、スキー場としては営業していない。
 日本広しと言えど、高速道路の上をゲレンデコース(コース名:スターライト)とリフトが跨ぐスキー場は全国でここだけだという。

 愛原:「せっかくだから、高速のパーキングエリアも少し寄って行こう。そうだな……。東北道の菅生にしよう。さすがにあそこまで行けば、雨も止むだろう」
 高橋:「分かりました」

 しかし、これだけの雨でも80キロ規制で済むんだから凄い。
 それより厳しい50キロ規制というのは、雪深くなる冬の時季や台風が直撃した時くらいに行われるのだろう(工事や事故は除く)。

 高橋:「“ハイウェイ・ウォーカー”でもパクるんスか?」
 愛原:「フリーペーパーだからいいの」
 リサ:「あめあめあーめ♪あめあーめ♪」
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“私立探偵 愛原学” 「国道13号を往く」

2021-08-16 20:58:53 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月23日14:15.天候:晴 山形県村山市 道の駅むらやま→国道13号線山形北バイパス]

 車に乗って、再び国道13号線を南下する。
 今度は国道をひたすら南下した。
 少し離れた所に東北中央自動車道が通ってはいるのだが、そこまでアクセスするのに却って遠回りであるし、山形北バイパスは高規格道路である為、大して所要時間は変わらないことが分かったからだ。

 愛原:「おっ、何か地元の走り屋さんっぽい車が行ったぞ」
 高橋:「キング・オブ・山形かもしれないっスね。俺1人だけだったら、『挨拶』でもするところですが……」
 愛原:「今回はやめてくれよ」
 高橋:「分かってますって」
 愛原:「ゴツいウイング付けてるな。あれ、絶対純正じゃないだろ?」
 高橋:「当たり前ですよ。あれはどこかで拾って来たヤツでしょう。たまにいるんですよ。イキがってゴツいウイングとか付けたがるヤツ。いやぁ~、若い若い」
 愛原:「オマエは?」
 高橋:「俺のチェイサーは、あそこまでゴツくなかったです」
 愛原:「はは、そうかそうか」
 リサ:

 そんな話をしながら南下する。
 途中、進行方向右手に山形空港が見えた。
 また、道路からは見えないが、左には自衛隊の駐屯地もある。
 まあ、だから偶然だろう。
 軍用ヘリが飛行していて、私達を上空から見張るように旋回しているのは。
 うん、あれは自衛隊のヘリじゃないな。
 多分きっと……BSAA極東支部日本地区本部のヘリ……何でじゃい!?

 愛原:「BSAAのヘリが飛んでるんだが、あれは俺達の護衛機か?」
 高橋:「さすが先生!VIP待遇っスね!」
 愛原:「むしろVIP待遇したがるのはリサの方じゃないか」
 高橋:「そうですねぇ……」

 運転席に座る高橋はルームミラー越しにリアシートに座るリサを、助手席に座る私は直接後ろを振り向いてリサを見た。

 リサ:「ゲヘヘヘ……!先生美味シソウ……!

 リサが寝惚けて第2形態まで変化してるぅ!
 直後、ピーピーピーと私のスマホから警報音が鳴り響いた。
 画面一杯に赤く『BOW接近警報』という文字が表示されていた。
 第1形態までは警報は鳴らないが、暴走の危険性が現れるようになる第2形態以降はアラームが鳴るようになっている。

 愛原:「もしかして、あのBSAAってそれで出動した!?」
 高橋:「くぉらっ!リサ、起きろ!!」

 第2形態になると、背中からも触手が生える。
 また、顔つきもより化け物じみたものになり、角も一本角から二本角へと変わる。

 リサ:「……はっ!」

 居眠りしていたリサは、私達の必死の呼び掛けに目を覚ました。

 愛原:「早く、第0形態になれ!」
 リサ:「おっ!?いつの間に?!」

 リサは急いで、まずは第1形態に戻る。
 恐ろしい鬼娘の形態ではあるが、これくらいなら私が慣れたせいか、愛らしい印象を持つこともできる。
 もちろん、人喰い鬼を模した形態なんですよ。
 それから更に、人間同然の姿である第0形態になった。
 今のリサの正体が先ほどの鬼娘であり、第2形態も第0形態も意図的に変化した姿なのである。
 人間の姿を1の1つ手前である0にしたのは、私達としてはその姿を本来の姿にすることが目的だからである。

 リサ:「これでいい?」

 すると、スマホのアラームが消えた。

 愛原:「大丈夫だ。多分」

 それでもヘリはしばらく付いて来た。
 一応念の為、しばらくは監視することにしたのだろう。

[同日14:35.天候:曇 山形県天童市 道の駅天童温泉]

 そしてどうにか無事に、3つ目の道の駅に到着することができた。
 ここは規模的には今までの中で1番大きく、設備も充実している。
 何しろ、足湯があるのだ。

 リサ:「おおっ!将棋の駒!」
 愛原:「天童市は将棋の駒の生産地で有名なんだ」
 高橋:「さすが先生、博識ですね」
 愛原:「ただの雑学だよ」

 もっとも、最初に知ったのはゲームの“桃鉄”であるということは黙ってておこう。

 愛原:「あったぞ、あそこ。足湯」
 高橋:「あれですか。じゃあ、あそこの近くに止めましょう」

 道の駅の駐車場に入ると、BSAAのヘリは去って行った。
 どうやら、安全が確保されたと判断したのだろう。
 が、どうも違うようだ。

 リサ:「先生。あそこに黒い雲」
 愛原:「なにっ!?」

 西の方の空に、どんよりとした雲がこちらに向かって来るのが分かった。

 愛原:「ありゃゲリラ豪雨の雲だ。降られる前に、さっさと入ろう。タオル忘れるなよ」
 高橋:「はい」
 リサ:「はーい」

 私達は車を降りると、早速足湯に向かった。
 足湯の名前は“駒の湯”という。
 実際、浴槽が将棋の駒の形をしていた。

 愛原:「早速入ろう」

 靴と靴下を脱いで、足湯に入る。

 愛原:「熱ゃ、いい湯だ」
 高橋:「長旅には、いいポイントですね」
 愛原:「そうか。運転してくるから、足が疲れるもんな」
 高橋:「ついで言うと、全身湯にも入りたいです」
 愛原:「任せろ。ここでは足湯だけだが、宿泊先はちゃんとした温泉に入れるように計画してある」
 高橋:「さすが先生です。……まさか、天童温泉ですか?」
 愛原:「いや、さすがに仙台からは少し遠い。国道48号線が通っているとはいえ、な」
 高橋:「そうか!確かに仙台西道路も48号線でしたね!」
 愛原:「48(ヨンパチ)は48で旅情はあるんだが、高橋としては高速をかっ飛ばしたいだろ?」
 高橋:「俺なんかの為に、サーセン……」
 愛原:「だから、宿泊先は高速の近くにしたよ」
 高橋:「さすが先生です」
 愛原:「温泉にも入れて、遊ぶ所もある。リサも遊べた方がいいだろ?」
 リサ:「もちろん!」

 そんなことを話しているうちに、どんどん空が暗くなっていった。
 そして、リサが耳を澄ませる。
 見た目は人間同然の姿をしているが、身体能力については人外同然である。

 リサ:「雷の音が聞こえる」
 愛原:「マジか。もう少しゆっくり入っていたかったが、早く出よう。ここに取り残されたら身動きが取れないぞ」
 高橋:「はい。どうします?車に戻りますか?」
 愛原:「いや、そっちの本館?に入ろう。そこならゲリラ豪雨に遭っても安全だろう」
 高橋:「はい」

 私達は足をタオルで拭くと、急いで靴下と靴を履き、土産物店やレストランが入っている建物に向かった。
 この時点で、雷鳴は私の耳にも聞こえるようになっていた。
コメント (1)
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