[7月23日22:00.天候:晴 宮城県仙台市宮城野区福室 ホテルキャッスルイン仙台6F客室→駐車場]
温泉施設からホテルに戻ったリサ。
ホテルでは、リサだけシングルである。
リサとしては是非とも愛原達と同じ部屋で寝泊まりしたかったのだが、さすがにもう高校生になったのではと部屋を別々にされている。
リサ:「むー……」
寝る前に歯磨きをしており、客室の窓の前に行く。
窓からは県道23号線(産業道路)や高速道路の仙台東部道路が見えた。
連休中の夜だからか、そんなに交通量は無い。
いすゞのトラックのテーマソングにある『ブレーキランプの天の川』というほど車は多くなかった。
その高速道路の向こう側には、市街地の灯りが見える。
と、ふと、目線を真下にやった。
愛原と高橋が私服に着替え、隣接する仙台コロナワールドへ行こうとしていた。
恐らく、ホール内にあるパチンコ店に向かったのだろう。
リサ:(ズルい!私も行く!)
パチンコ店は18歳未満入店禁止が今は徹底されている。
作者が子供だった昭和時代はそこまで厳しくなく、店内も今ほど明るくて綺麗でもなく、店員の接客態度も今とはウソみたいに無愛想なものだった。
そんなユルユルの風紀では子供が一緒に入っても咎められることはなく、むしろ作者の記憶では父親に連れられて代打ちをやらされた記憶がある。
その為、今は死語になっている『平台』とか『チューリップ』の意味は今でも分かる。
但し、昭和時代の用語は死語になっているらしく、さすがの作者もそんな用語は言わない。
リサは急いで洗面所に行くと、口の中をすすいだ。
それから館内着から私服に着替えて、部屋から出ようとした。
リサ:「!!!」
と、突然背後に気配を感じて振り向いた。
リサ:「!?」
そこにいたのは自分であった。
しかし、服装は研究所にいた時に着せられていたセーラー服を着ていた。
リサ:「な、な……!?」
リサが驚いて変化を解こうとすると、何故か解けない。
第0形態の人間の姿のまま、第1形態の鬼の姿に戻れなくなった。
(便宜上)制服リサ:「何もそんなに驚くこともないでしょう?私は私なんだから」
(便宜上)私服リサ:「い、いや、驚くに決まってるでしょ!?何さも当然のように『もう1人の自分』がそこにいるの!?」
制服リサ:「あなたのテディベアが会いたがってるの。一緒に来てくれる?」
私服リサ:「嫌だと言ったら?」
制服リサ:「その時は、愛原先生達が死ぬことになる」
私服リサ:「そう来たか。分かった。どこへ行けばいい?」
制服リサ:「簡単だよ。愛原先生達を追えばいい。あなたなら、行き先は分かってるでしょう?」
私服リサ:「そうだな」
リサは部屋の外に出た。
私服リサ:「!?」
部屋の外は変な靄が出ていた。
まるで火災が発生して、煙が充満しているかのようである。
私服リサ:「これは一体……?」
制服リサ:「気にしないで。別に火事が起きているとかじゃないから」
私服リサ:「はあ?」
靄が掛かっていて視界は弱くなっているが、廊下の向こうが見えない程度で、手探りでないと歩けないというほどではない。
エレベーターまで行くと、それに乗り込んだ。
私服リサ:「あなたはどうして現れたの?」
制服リサ:「それは後で話してあげる。それより、下に着いたら気を付けてね」
私服リサ:「何が?」
制服リサ:「クリーチャーがウヨウヨいるから。で、あなたはその姿のままで、いつもの力は使えない。ザコばかりだけど、戦おうとすると手強いよ」
私服リサ:「そんなことが……」
エレベーターが1階に着く。
ドアが開いて降りると、確かに変な気配を感じた。
フロントを見ると、誰もいない。
ロビーも誰もいないのだが、しかし何かの気配は感じる。
制服リサ:「隠れて」
私服リサ:「!」
制服リサに促されて、私服リサはフロントの後ろに隠れた。
レヴェナント:「ウゥ……」
ロビーを1匹の化け物が徘徊していた。
全体的に白っぽい2足方向で、一見すると人の形をしているように見えるが、そのパーツの付け方がメチャクチャだ。
無造作に体の部位が縫い付けられているようで非常に醜悪な外見を持っている。
確かに、普通の化け物には見えなかった。
呻き声を上げながら、足を引きずるように徘徊している。
私服リサ:「なるほど。ザコそうだけど、見つかったら面倒そう」
制服リサ:「面倒どころか、今のあなたなら見つかったら殺されるよ?」
私服リサ:「そうなんだ。あれはやり過ごせる」
制服リサ:「顔が変な方向を向いているでしょ?首もろくに回せないでしょうから、奴らの視界に入らず、しかも物音を立てないで進めば見つからないでしょう」
私服リサ:「なるほど。ところであなたは隠れてないけど大丈夫?」
制服リサ:「私は大丈夫。どうせ奴らからは見えないもの」
私服リサ:「どういうこと?」
制服リサ:「今、あなたは自分の心配だけしていればいいの。それより、ホテルの外もあいつみたいなのがウヨウヨいると思うよ。あいつをやり過ごしたら、車の陰に隠れましょう」
私服リサ:「分かった」
リサはそっとフロントの陰から出た。
レヴェナント:「ウゥ……」
ただ単に徘徊しているからなのか、動きは非常に遅い。
私服リサはレヴェナントの右後ろをゆっくり近づいていった。
私服リサ:「ゾンビより気持ち悪い。何こいつ?」
制服リサ:「こいつの名前はレヴェナント。複数の無機物や人間の身体、その一部を縫合させたものにウロボロス・ウィルスを投与して造り出されたBOWだよ」
私服リサ:「ウロボロス・ウィルス?聞いたことあるなぁ……」
と、そのレヴェナントが自動ドアの前で立ち止まった。
この後、自分がどうするべきか悩んでいるかのようだ。
と、そこへ吹き抜けの階段の上、2階から何かが倒れる音がした。
レヴェナント:「ウォォォッ!!」
その音に反応して、レヴェナントは雄叫びを上げ、階段を昇って行く。
動きは遅いのだが、無駄に長い足を伸ばし、階段を2段~3段飛ばしで昇って行くので、必然的に動きが速くなったかのように見えた。
平地でも獲物らしき物を見つけると、ああやって大股歩きで向かって行くのだろう。
油断していると、追い付かれてしまうのは間違いない。
私服リサ:「今のうちに出よう」
2人のリサはホテルの外に出た。
ホテルの外は、まるで濃霧が掛かったかのような視界になっていた。
駐車場の全体が見通せない。
街灯が無ければ、そこに道路があるのか分からないほどの視界だった。
仙台東部道路に至っては、オレンジ色の街灯の灯りしか分からない。
しかも、とても静かだった。
いくら交通量が少ない日かつ時間帯とはいえ、幹線道路や高速道路があれば、そこを走る車の音はよく聞こえるものだ。
少なくとも、リサ達がこのホテルに到着した時はそうだった。
制服リサ:「早くこっちへ」
制服リサに促されて、私服リサは駐車場の車の陰に隠れた。
駐車場は駐車場で、多くのレヴェナントが徘徊していた。
私服リサ:「一体何があった?」
私服リサにはさっぱり分からなかった。
温泉施設から戻って来るまで、その施設もホテルも全く何の異変も無かったというのに。
制服リサ:「愛原先生達の居場所、見当は付くの?」
私服リサ:「見当はつく。コロナワールドの中にあるパチンコ屋に行ったはずだ」
制服リサ:「じゃあ、そこまで行ってみましょう」
私服リサ:「テディベアとは、どう繋がる?」
制服リサ:「慌てない慌てない。必ずあなたはテディベアと会えるから、まずは愛原先生達を捜しましょう。もちろん、その為にはあいつらに見つからないようにしないとね」
私服リサ:「……分かったよ」
私服リサは、もう1人の制服リサの指示に従うことにした。
温泉施設からホテルに戻ったリサ。
ホテルでは、リサだけシングルである。
リサとしては是非とも愛原達と同じ部屋で寝泊まりしたかったのだが、さすがにもう高校生になったのではと部屋を別々にされている。
リサ:「むー……」
寝る前に歯磨きをしており、客室の窓の前に行く。
窓からは県道23号線(産業道路)や高速道路の仙台東部道路が見えた。
連休中の夜だからか、そんなに交通量は無い。
いすゞのトラックのテーマソングにある『ブレーキランプの天の川』というほど車は多くなかった。
その高速道路の向こう側には、市街地の灯りが見える。
と、ふと、目線を真下にやった。
愛原と高橋が私服に着替え、隣接する仙台コロナワールドへ行こうとしていた。
恐らく、ホール内にあるパチンコ店に向かったのだろう。
リサ:(ズルい!私も行く!)
パチンコ店は18歳未満入店禁止が今は徹底されている。
作者が子供だった昭和時代はそこまで厳しくなく、店内も今ほど明るくて綺麗でもなく、店員の接客態度も今とはウソみたいに無愛想なものだった。
そんなユルユルの風紀では子供が一緒に入っても咎められることはなく、むしろ作者の記憶では父親に連れられて代打ちをやらされた記憶がある。
その為、今は死語になっている『平台』とか『チューリップ』の意味は今でも分かる。
但し、昭和時代の用語は死語になっているらしく、さすがの作者もそんな用語は言わない。
リサは急いで洗面所に行くと、口の中をすすいだ。
それから館内着から私服に着替えて、部屋から出ようとした。
リサ:「!!!」
と、突然背後に気配を感じて振り向いた。
リサ:「!?」
そこにいたのは自分であった。
しかし、服装は研究所にいた時に着せられていたセーラー服を着ていた。
リサ:「な、な……!?」
リサが驚いて変化を解こうとすると、何故か解けない。
第0形態の人間の姿のまま、第1形態の鬼の姿に戻れなくなった。
(便宜上)制服リサ:「何もそんなに驚くこともないでしょう?私は私なんだから」
(便宜上)私服リサ:「い、いや、驚くに決まってるでしょ!?何さも当然のように『もう1人の自分』がそこにいるの!?」
制服リサ:「あなたのテディベアが会いたがってるの。一緒に来てくれる?」
私服リサ:「嫌だと言ったら?」
制服リサ:「その時は、愛原先生達が死ぬことになる」
私服リサ:「そう来たか。分かった。どこへ行けばいい?」
制服リサ:「簡単だよ。愛原先生達を追えばいい。あなたなら、行き先は分かってるでしょう?」
私服リサ:「そうだな」
リサは部屋の外に出た。
私服リサ:「!?」
部屋の外は変な靄が出ていた。
まるで火災が発生して、煙が充満しているかのようである。
私服リサ:「これは一体……?」
制服リサ:「気にしないで。別に火事が起きているとかじゃないから」
私服リサ:「はあ?」
靄が掛かっていて視界は弱くなっているが、廊下の向こうが見えない程度で、手探りでないと歩けないというほどではない。
エレベーターまで行くと、それに乗り込んだ。
私服リサ:「あなたはどうして現れたの?」
制服リサ:「それは後で話してあげる。それより、下に着いたら気を付けてね」
私服リサ:「何が?」
制服リサ:「クリーチャーがウヨウヨいるから。で、あなたはその姿のままで、いつもの力は使えない。ザコばかりだけど、戦おうとすると手強いよ」
私服リサ:「そんなことが……」
エレベーターが1階に着く。
ドアが開いて降りると、確かに変な気配を感じた。
フロントを見ると、誰もいない。
ロビーも誰もいないのだが、しかし何かの気配は感じる。
制服リサ:「隠れて」
私服リサ:「!」
制服リサに促されて、私服リサはフロントの後ろに隠れた。
レヴェナント:「ウゥ……」
ロビーを1匹の化け物が徘徊していた。
全体的に白っぽい2足方向で、一見すると人の形をしているように見えるが、そのパーツの付け方がメチャクチャだ。
無造作に体の部位が縫い付けられているようで非常に醜悪な外見を持っている。
確かに、普通の化け物には見えなかった。
呻き声を上げながら、足を引きずるように徘徊している。
私服リサ:「なるほど。ザコそうだけど、見つかったら面倒そう」
制服リサ:「面倒どころか、今のあなたなら見つかったら殺されるよ?」
私服リサ:「そうなんだ。あれはやり過ごせる」
制服リサ:「顔が変な方向を向いているでしょ?首もろくに回せないでしょうから、奴らの視界に入らず、しかも物音を立てないで進めば見つからないでしょう」
私服リサ:「なるほど。ところであなたは隠れてないけど大丈夫?」
制服リサ:「私は大丈夫。どうせ奴らからは見えないもの」
私服リサ:「どういうこと?」
制服リサ:「今、あなたは自分の心配だけしていればいいの。それより、ホテルの外もあいつみたいなのがウヨウヨいると思うよ。あいつをやり過ごしたら、車の陰に隠れましょう」
私服リサ:「分かった」
リサはそっとフロントの陰から出た。
レヴェナント:「ウゥ……」
ただ単に徘徊しているからなのか、動きは非常に遅い。
私服リサはレヴェナントの右後ろをゆっくり近づいていった。
私服リサ:「ゾンビより気持ち悪い。何こいつ?」
制服リサ:「こいつの名前はレヴェナント。複数の無機物や人間の身体、その一部を縫合させたものにウロボロス・ウィルスを投与して造り出されたBOWだよ」
私服リサ:「ウロボロス・ウィルス?聞いたことあるなぁ……」
と、そのレヴェナントが自動ドアの前で立ち止まった。
この後、自分がどうするべきか悩んでいるかのようだ。
と、そこへ吹き抜けの階段の上、2階から何かが倒れる音がした。
レヴェナント:「ウォォォッ!!」
その音に反応して、レヴェナントは雄叫びを上げ、階段を昇って行く。
動きは遅いのだが、無駄に長い足を伸ばし、階段を2段~3段飛ばしで昇って行くので、必然的に動きが速くなったかのように見えた。
平地でも獲物らしき物を見つけると、ああやって大股歩きで向かって行くのだろう。
油断していると、追い付かれてしまうのは間違いない。
私服リサ:「今のうちに出よう」
2人のリサはホテルの外に出た。
ホテルの外は、まるで濃霧が掛かったかのような視界になっていた。
駐車場の全体が見通せない。
街灯が無ければ、そこに道路があるのか分からないほどの視界だった。
仙台東部道路に至っては、オレンジ色の街灯の灯りしか分からない。
しかも、とても静かだった。
いくら交通量が少ない日かつ時間帯とはいえ、幹線道路や高速道路があれば、そこを走る車の音はよく聞こえるものだ。
少なくとも、リサ達がこのホテルに到着した時はそうだった。
制服リサ:「早くこっちへ」
制服リサに促されて、私服リサは駐車場の車の陰に隠れた。
駐車場は駐車場で、多くのレヴェナントが徘徊していた。
私服リサ:「一体何があった?」
私服リサにはさっぱり分からなかった。
温泉施設から戻って来るまで、その施設もホテルも全く何の異変も無かったというのに。
制服リサ:「愛原先生達の居場所、見当は付くの?」
私服リサ:「見当はつく。コロナワールドの中にあるパチンコ屋に行ったはずだ」
制服リサ:「じゃあ、そこまで行ってみましょう」
私服リサ:「テディベアとは、どう繋がる?」
制服リサ:「慌てない慌てない。必ずあなたはテディベアと会えるから、まずは愛原先生達を捜しましょう。もちろん、その為にはあいつらに見つからないようにしないとね」
私服リサ:「……分かったよ」
私服リサは、もう1人の制服リサの指示に従うことにした。