大活字本で池波正太郎作品を読んでいる。
鬼平犯科帳を読み終えて今は、剣客商売を読んでいる。
以前にも何回か、書いていることですが、
高齢者には、大活字本はストレスなく読めていいです。
とくに時代小説は、大活字の雰囲気に合う気がします。
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図書館に行ったついでに、1巻が3分冊になっている、
池波作品のほかに、2分冊の時代小説を借りてきます。
今回、アップする「不義にあらず」もその1冊です。
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安西篤子著「不義にあらず」埼玉福祉会 (2002年10月刊)。
底本は講談社刊「不義にあらず」 1990年、のち文庫。
江戸時代の武家社会の不条理に命を絶つ妻女の悲劇を描く。
花と植物の名前が付く9篇の短編からなっています。
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時代小説にもいろいろカテゴリーがあります。
武家、市井人、捕物、伝奇、剣豪、股旅など。
本書「不義にあらず」は最後は死につながる。
武家の家督相続、家柄、家格、体面、面目がからんで、
死をもって尊しとする武家の暮らしが、非情に描かれている。
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黄水仙|
家禄200石、御納戸役を務める中野平右衛門。
家には父半兵衛が遺していった、若い継母の澄が居た。
長年一つ屋根の下で暮らす二人は、男女の間になっていた。
その平右衛門は、40歳を超してから娶った、
若くてかわいい妻の春を心から愛していた。
ある日、継母と納屋で睦合う平右衛門を春が見てしまう。
刀架の脇には黄水仙が生けてあった。
惨劇は起こるべきして起きた。
中野家にとって、黄水仙は忌花だった
後家となった義母が妾で、妻も同居する武家の奥向き、
それほど珍しいことではなかったようです。
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山吹|
お豊は、庭の山吹のそばに佇みもの思いにふけっていた。
お豊は、婚家の今里家から突然、離別され生家に戻っていた。
今里作左衛門に嫁して8年経って、子どもには恵まれなかった。
その作左衛門から婚家に戻るよう手紙が来た。
戻った夜、呼び戻したわけを聞いた。
「お前の不始末が世間に知れたからだ」という。
豊には婚家で起きた、不可抗力ともいえる不始末があった。
主の留守に若党の佐太郎に襲われ、身体が応えてしまった。
成敗するために呼んだといって、庭先には佐太郎の惨死体がった。
豊の背後で夫が大刀を振り上げた。
左衛門は若党の佐太郎が乱心して妻を襲ったとして世間体を繕った。
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夏茱萸|
家禄40石の仲田三十郎には3歳になる娘えんが居る。
三十郎は父と継母の看病で蓄財を使い果たしていた。
金策のため、妻のふみを実家に行かせたが、戻っていなかった。
門の脇の夏グミの実が真っ赤に色づいている。
妻に実家への金策を何度も命じたが、首尾は叶わなかった。
三十郎は「能無し女と妻をなじった」。その夜、悲劇が起きた。
血にまみれた妻を抱き起こしこしてみたが、
どうすることもできなかった。
物言わぬ娘の口にグミの実を押し込んで……
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百日紅|
竹内平馬は城下がりの午後、組頭の村尾市右衛門に呼び止められた。
平馬は商家出の小間使いの、きぬに溺れていた。
武家は家格の違う家同士の縁組は許されない。
まして、農家や商家とは縁組は許されない。
その平馬に北上五郎兵衛の娘の縁談を持ち込まれた。
きぬに暇を出さざるを得ない仕儀になってくる。
きぬはいっそ、殺してくれと哀願するのだった。
平馬は庭の百日紅の小枝をきぬの髪に差して、
行方も知れず立ち去っていた。
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曼珠沙華|
祈祷師の卦で、巳年の女がたたっていると言われ、
孫右衛門の妾でもあった、女中のきのは暇を出される。
謂れのないことだと、きのは訴えるが、
荒木家では老親、長男の嫁が相次いで亡くなった。
家督を巡って兄弟も果し合いの末、死んでしまう。
何年かの後、きのの生家を訪ねた孫右衛門は、
そこに家があったという空き地に、真っ赤な曼殊沙華が。、
数本風に揺れているのを見るのだった。
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秋海棠|
八重が嫁いだ今西家と生家の野沢家は先々代から昵懇の間柄であった。
八重と平三郎は惹かれ合う仲だった。祝言を待ち望んでいたが、
平三郎の長兄儀太夫の妻が離縁になり、
その後釜に八重は嫁がされてしまった。
平三郎は義弟となた。二人は夫儀太夫の目を盗む仲になってしまった。
「不義の子を宿した」八重を残して、
秋海棠の花が紅色をにじみ始めた朝、
死ぬときは一緒に、の約束を反故にして、
平三郎は兄にわび状を残して蓄電してしまう。
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紫苑|
お加代は、速水平右衛門に嫁いで3年。子が授からないでいた。
夫の平右衛門は加代が嫁ぐ前から、上女中を妾にしていた。
父松本善兵衛、母きんは、娘の加代に離縁を強く迫る。
上女中は二人目の子どもができた。
お加代には優しい平右衛門が好きで、
平右衛門もまたお加代を愛しているといいながら、
妾との同居を続けている。加代が実家から帰ると、
平右衛門と妾の上女中が心中していた。
風に揺らぐ紫苑の中に加代は立ち尽くすのだった。
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いろは紅葉|
三百石大御番組頭の塩川市之丞の妹の仙。
千代田城大奥に奉公に上がった。
将軍の目にとまり、お手がついて御中臈になる。
懐妊したが流産してしまった。13年後に将軍が死去する。
比丘尼屋敷に幽閉同様の暮らしを強いられることになった仙に、
ある噂がたった。出入りの若い大工と密通したという。
18年ぶりの生家に帰宅した仙は非情な城中の暮らしを訴え、
若い大工との真実を兄に吐露するのだった。
「人をこれほど弄んでよいものか」。風もないのに、
紅葉が一葉、はらりと、仙の髪に簪のようにとまった。
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山茶花|
夫婦仲は良くなかったが、船越小源太には妻の菊が居た。
流産をした菊が去ったあと、
妾の奉公人やすを妻にしようとする小源太と、
口やかましい隠居の伝右衛門が面目を立てに、対立していた。
ある日、口論の果て小源太は自害してしまう。
自分の女より面目を立てることは死に勝るものであった。
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たにしの爺、武家に生まれなくてよかった。――
「家」の体面や家格が死よりも優先する不条理。
救いのない「血飛沫の時代小説」短編集でした。
この作品が数多ある安西篤子作品の中で、
どのように位置付けられるのかは、全く分かりません。
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安西篤子(あんざい あつこ)1927年神戸市生まれ。
1964年『張少子の話』で第52回直木賞
1993年『黒鳥』で第32回女流文学賞。1994年「神奈川文化賞」
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最後までお読みくださった皆さん、
お疲れ様でした。爺も疲れました。一ヵ月費やしました
添付の写真は題名の花とは合致していません。