初めてハンガリーの映画を観ました
人生に乾杯!です。シネスイッチ銀座
かつては一時期、ソ連共産党支配下の社会主義国であった東欧の小国・ハンガリー。
1956年、首都ブダベストは、ソ連支配に抵抗する民衆蜂起による動乱の最中であった。
そんな戒厳の街で一組の男女が出会った。
男はソ連共産党による反乱市民摘発の手先となって、
女は富裕家庭の娘として、天井裏に身を隠していた。
それから半世紀、エミルとヘディ。今では81歳と70歳。
わずかな年金では電気代も払えず、明かりもない。
テレビは隣の家で見せてもらう生活だった。
思い出のダイヤのイヤリングも差し押さえ供出、競売にされてしまう。
悲しむ妻・ヘディを見かねて、
腰痛を抱え、日常生活にさえ苦痛を伴う81歳のエミルは怒った。
大事に保管していた旧ソ連の要人専用の名車「チャイカ」を始動させる。
車内に保存していたトカレフ拳銃を手に、向かった先は郵便局。
窓口の女性に、きわめて紳士的にお金の提出を求めた。
市場主義経済の下、生活もままならない年金制度。
怒れるシニヤ・パワーを見せてやる、とばかりに、
チャイカとトカレフを武器に、二人の「紳士強盗」行脚が始まった。
そして、思い出のイヤリングを取り戻して妻の手に。
再び青春のときめきを取り戻す。
悲壮感などない。実におおらかな「紳士強盗」道中。
当然、警察当局は逮捕に乗り出す。
美人刑事とちょっとお人好しで、恋人の相棒が追跡する。
さすが、かつてのソ連要人御用達の名車・チャイカ。
警察のパトカーなどでは太刀打ちできない。
戦車並みの馬力を発揮する。
年金老夫婦の「紳士強盗」がマスコミを騒がすようになると、
全国の年金生活者から「喝采の嵐」が沸き起こる。
マスコミも、ヒーローとして取り上げ、
劣悪な年金制度に国民の怒りが爆発。「年金動乱」の様相さえ出始めるのだった。
やがて老夫婦は息子との思い出の別荘で語り合う。
「もう止めよう」ということになり、人質としていた美人刑事を解放する。
警察当局の包囲網が迫る。
「死ぬまでに一度、海を見たいはわ」というヘディ。
「これも必要になると」ガソリン缶を積み込むエミル。
巨大なブルトーザーで封鎖された一本道を、チャイカは猛スピードで突っ走る。
「止めてっ!」と泣き叫ぶ美人刑事。チャイカはブルに突っ込み炎上。
半世紀前の戒厳動乱下の街で、ダイヤモンドのイヤリングが女の手に。
そして「海を見たいと」言った老妻の願いは……
年金生活に痛めつけられている「後期高齢者」のみなさん。
この映画を観て元気を出しましょう。
静かな感動と勇気の出る映画です。
これから見たい人はここで。
ある映画評には以下のような記述があった。
◆社会主義を信じていた旧世代が経済原則に切り捨てられる姿にスポットをあて、庶民の不満を代弁するかのように世間に復讐する老人を追う。
◆個人の密やかな愛の思い出まで奪ってしまう現代社会の冷たさに彼の怒りは爆発する。