前回は暮坂峠まで報告した初秋の上州路ツアー。
今回は、野反湖から八ッ場ダム現場までです。
峠から下りは「牧水コース」といわれる街道です。
街道といっても、車がようやくすり違えるような、
熊笹と樺の樹木に覆われた、林間の山路です。
ところどころに「牧水の詩碑」が道標になっています。
突然、視界が開けて野反湖が眼前に飛び込んできました。
マイナスイオンと25度の山風が心地よい。
展望広場の奥に小さな休憩ロッジがあるだけで、周囲は何もない。
湖面には薄い霧がかかった状態で、案内くださった方が
「今日は水量も少なく、晴れていれば輝くようなブルーの湖水がきらめくのに」と残念そうに言う。
それでも、湖水に降りる遊歩道を歩くと、
りんどう、吾亦紅、ススキ、オミナエシ……が風に大きく揺れそよいでいます。
マツムシ草が一面に咲いています。
翠のスリバチの底から見上げる巨大な空間に、風が渉り吹き抜けていった。
野反湖からは長野原への道を走る。
途中、花敷温泉、尻焼温泉を通り抜ける。
尻焼温泉では立ち寄り、川の底からぷかり、ゆらりと、生まれたてのお湯が湧く。
まったく遮るものがないフリーの川湯温泉状態ですね。
女性は水着でも、男はフルのまま。写真を撮ったが掲載を見合わせます。
その代わりに観光案内で見て下さい。
尻焼温泉
六合村の道の駅で昼食のあと、
草津温泉からの道と合流して、長野原・吾妻渓谷へ。
八ッ場ダム完成後には、湖底となる渓谷温泉・川原湯。
コンクリートむき出しの付替道路が、渓谷の両側の山峡にところどころ姿を現す。
17日は前原誠司前国土交通相が、
八ッ場ダムの建設中止を表明してからちょうど1年です。
この表明に対し、たにしの爺、怒りを込めて発言したのも1年前だ。
八ッ場ダム中止へ 暴走する 前原誠司 国土交通大臣
ツアーの車は渓谷の中心に進んでいく。
付替JR吾妻線のトンネルが山峡の中腹に口をあけている。
川原湯温泉駅が山の上に作られている。
県道をつなぐ巨大な橋が峡谷をまたいで工事が進んでいる。
とんでもない高所に、山肌を削った整地が現れる。
川原湯の人たちの代替地だという。
川と共に住んでいた人が川を奪われ、山に上げられた現場だ。
しっかり写真を撮りたいが途中、車を止めるところがない。
八ッ場ダム建設の広報施設「やんば館」に着く。
ここには、八ッ場ダムの歴史が詰まっている。
新聞・テレビよく見る「湖面2号橋」が目の前に見える。高さは最大87メートルだという。
この高さの下に数キロわたって、湖面が現れるわけで、
如何に巨大なダム湖が出来るのか想像もできない。
峡谷を堰き止めるダムの巨大さは想像を絶する。
現在は、周辺の関連工事が着々と進んでいるが、
ダム本体の工事は「ストップ」したままだ。
この先どうするのか―――。
案内してくれた地元の方が言った。決めるのは、私たち。
ここに住んで、これからも生活する、地元の意思が最優先されるべきで、
「ダム中止」と声高に言う無責任さは、許せない、
ここまでたどった歴史は消せないと。
毎日新聞によると17日、
<水没予定地区にある川原湯温泉の観光協会長、樋田省三さん(46)は「馬淵国交相はダムについてどのような考えか、はっきりと説明し、水没予定住民に具体的な生活再建策を示してほしい」>
また、<高山欣也町長は、「国はこれまで『住民に申し訳ない』と謝罪を繰り返してきたが、馬淵国交相は言葉ではなく行動で誠意を示してほしい」と注文した>という。