たにしのアブク 風綴り

86歳・たにしの爺。独り徘徊と追慕の日々は永い。

初秋の上州路 暮坂峠から 野反湖 尻焼温泉 そして長野原 八ッ場ダム

2010-09-23 15:35:43 | 国内旅行

前回は暮坂峠まで報告した初秋の上州路ツアー。
今回は、野反湖から八ッ場ダム現場までです。

峠から下りは「牧水コース」といわれる街道です。
街道といっても、車がようやくすり違えるような、
熊笹と樺の樹木に覆われた、林間の山路です。
ところどころに「牧水の詩碑」が道標になっています。

突然、視界が開けて野反湖が眼前に飛び込んできました。
マイナスイオンと25度の山風が心地よい。
展望広場の奥に小さな休憩ロッジがあるだけで、周囲は何もない。
湖面には薄い霧がかかった状態で、案内くださった方が
「今日は水量も少なく、晴れていれば輝くようなブルーの湖水がきらめくのに」と残念そうに言う。



それでも、湖水に降りる遊歩道を歩くと、
りんどう、吾亦紅、ススキ、オミナエシ……が風に大きく揺れそよいでいます。
マツムシ草が一面に咲いています。
翠のスリバチの底から見上げる巨大な空間に、風が渉り吹き抜けていった。



野反湖からは長野原への道を走る。
途中、花敷温泉、尻焼温泉を通り抜ける。
尻焼温泉では立ち寄り、川の底からぷかり、ゆらりと、生まれたてのお湯が湧く。
まったく遮るものがないフリーの川湯温泉状態ですね。
女性は水着でも、男はフルのまま。写真を撮ったが掲載を見合わせます。
その代わりに観光案内で見て下さい。
尻焼温泉

六合村の道の駅で昼食のあと、
草津温泉からの道と合流して、長野原・吾妻渓谷へ。
八ッ場ダム完成後には、湖底となる渓谷温泉・川原湯。
コンクリートむき出しの付替道路が、渓谷の両側の山峡にところどころ姿を現す。



17日は前原誠司前国土交通相が、
八ッ場ダムの建設中止を表明してからちょうど1年です。

この表明に対し、たにしの爺、怒りを込めて発言したのも1年前だ。
八ッ場ダム中止へ 暴走する 前原誠司 国土交通大臣

ツアーの車は渓谷の中心に進んでいく。
付替JR吾妻線のトンネルが山峡の中腹に口をあけている。
川原湯温泉駅が山の上に作られている。

県道をつなぐ巨大な橋が峡谷をまたいで工事が進んでいる。
とんでもない高所に、山肌を削った整地が現れる。
川原湯の人たちの代替地だという。
川と共に住んでいた人が川を奪われ、山に上げられた現場だ。
しっかり写真を撮りたいが途中、車を止めるところがない。



八ッ場ダム建設の広報施設「やんば館」に着く。
ここには、八ッ場ダムの歴史が詰まっている。





新聞・テレビよく見る「湖面2号橋」が目の前に見える。高さは最大87メートルだという。

この高さの下に数キロわたって、湖面が現れるわけで、
如何に巨大なダム湖が出来るのか想像もできない。
峡谷を堰き止めるダムの巨大さは想像を絶する。
現在は、周辺の関連工事が着々と進んでいるが、
ダム本体の工事は「ストップ」したままだ。
この先どうするのか―――。



案内してくれた地元の方が言った。決めるのは、私たち。
ここに住んで、これからも生活する、地元の意思が最優先されるべきで、
「ダム中止」と声高に言う無責任さは、許せない、
ここまでたどった歴史は消せないと。

毎日新聞によると17日、
<水没予定地区にある川原湯温泉の観光協会長、樋田省三さん(46)は「馬淵国交相はダムについてどのような考えか、はっきりと説明し、水没予定住民に具体的な生活再建策を示してほしい」>
また、<高山欣也町長は、「国はこれまで『住民に申し訳ない』と謝罪を繰り返してきたが、馬淵国交相は言葉ではなく行動で誠意を示してほしい」と注文した>という。

初秋の上州路 奥四万湖 暮坂峠 ススキ揺れる野反湖

2010-09-19 16:41:35 | 国内旅行

「プレ群馬DC」が行われている初秋の、上州路を走ってきました。

来年の平成23年7月~9月には、群馬DCが展開されます。
JR東日本と群馬県でのデスティネーションキャンペーンです。
観光道路沿いには緑色の1年前企画の幟がはためいていました。

(DC)については、昨年の「うまさぎっしり」新潟DCで書きました。
2回に分けて報告します。まず、四万温泉から暮坂峠まです。





四万川と奥四万湖です。
四万川が「ダム」で堰き止められた人造湖が奥四万湖です。
深緑というか翠藍の湖面がきらめいていました。





国指定重要文化財の薬師堂です。
日向見薬師堂は、江戸幕府が開かれる前の慶長3(1598)年、沼田地方の領主だった真田信幸(真田昌幸の長男)の武運長久を願って建てられたもので、
中のお宮は天文6(1537)年に造られたとされています。
行き詰まりの渓谷奥に鎮座しているかわいい社です。近辺には湯浴み所や足湯の施設もありました。

トップ写真は暮坂峠です。
中之条町と六合村との境に位置し、標高1088mの暮坂峠は、
旅と酒を愛した若山牧水(1885~1928)の碑で有名です。
牧水は、数奇な運命の薄幸な人妻に恋し、
旅とともに想いを詩歌に吐露していった。



*幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく
*接吻くるわれらがまへに涯もなう海ひらけたり神よいずこに
*白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
*なつかしき春の山かな山すそをわれは旅びと君おもひ行く

「君おもひ行く」このフレーズについて、ロバート・キャンベル氏は、
You'Re wha's on my mind(瞼の奥に焼きついた)と解説しています(Jブンガク)
また、キャンベル氏は牧水の歌について、
「多くの人に彼の歌が愛されるのは、哀愁をおびた響きで歌われる孤独のうちに、人恋しさが感じられるからであろう。人妻との許されぬ恋の苦悩を、燃えるような言葉で吐露した若き日、……
旅の中に人生の哀歓を見出す歌は、つねに郷愁の中に息づいており、漂白の歌人の名にたがわぬ名作ぞろいである。」と記している。

マントを羽織った旅姿の牧水像を支える碑には、
「枯野の旅」が刻まれています。

枯野の旅  若山牧水
 乾きたる
 落葉のなかに栗の實を
 濕りたる
 朽葉がしたに橡の實を 
 とりどりに
 拾ふともなく拾ひもちて
 今日の山路を越えて來ぬ

 長かりしけふの山路
 樂しかりしけふの山路
 殘りたる紅葉は照りて
 餌に餓うる鷹もぞ啼きし

 上野の草津の湯より
 澤渡の湯に越ゆる路
 名も寂し暮坂峠



紅葉にはまだ早く、辺りには人の気配も少なく、
夜半の雨の名残か、暮坂峠は薄霧めいた空気に満ちていました。
この後、野反湖から長野原・八ツ場ダム建設現場を、
案内していただきました。

「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」を読み終えた

2010-09-11 13:55:11 | 本・読書

河出書房新社刊
「シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々」
ジェレミー・マーサー著 市川恵里訳 312頁
定価2,730円 初版発行 2010年5月30日

なぜこの本を読む気になったのでしょうか。
たにしの爺が買う本としては、かなり高価である。
幾つもの書店を回ったが店頭にはなかった。
書店に注文したのが7月26日。手に取れたのが8月6日。
奥付の発行日は8月20日 2刷発行となっていた。
読み終えたのが8月31日(1日25分の車中読書)だった。


ジェレミー・マーサーは、カナダで地元新聞の犯罪記者(殺人や麻薬などの事件を追う、日本でいう察廻り記者)をしていたが、自分の書いた本が元で脅されていた。なけなしの金を引き出して、世紀末の1999年の暮れパリに逃げ出した。
2000年ミレニアムを迎えた冬のパリは寒かった。
安いホテルに泊まりながら、食費も削る日々を過ごしていた。所持金も尽きた土砂降りの冬の日、雨宿りした店先から運命が変わりはじめた。

「もうすぐお茶会が始まるの」
カウンターの女性はイヴと名のった。(本書23ページ冒頭)

ドア枠の上には次のように書かれていた。
「見知らぬ人に冷たくするな
変装した天使かもしれないから」(同23ページ末尾)

ノートルダム大聖堂を望む、セーヌ左岸にその書店、「シェークスピア・アンド・カンパニー」があった。書店主は80歳を超すジョージ・ホイットマン。世界を放浪しここで書店を開いた彼は共産主義を信じ、共産主義を実践していた。

そこには金もなく、行き先もない男女が寝泊まりしていた。ただ彼ら彼女たちは、自称作家であり、詩人であり、ゲージツ家であり、いつかものを書く人間になって、店お出ていくことを夢見ていた。恋も友情も、葛藤も妬みも、嫉妬も、失意も……金がないなりの、暮らしの知恵で助け合う互助社会の縮図になっていた。

以下は本の表紙オビからの内容紹介です。
…………………………………………………………………………………………
セーヌのほとりに佇む 奇跡の書店の物語

パリ、セーヌ左岸で、ただで泊まれる本屋。
ジョイスの「ユリシーズ」を生み出した伝説の書店の精神を受け継ぐ
二代目「シェイクスピア・アンド・カンパニー」は、貧しい作家や詩人たちに食事とベットを提供する避難所だった。ヘンリー・ミラー、アナイス・ニン、ギンズバーグらも集ったこの店に、偶然住み着くことになった元新聞記者がつづる、本好きにはこたえられない世にもまれな書店の物語。

冷たい雨の夜に
パリの街にやってきて
シェクスピア書店を見つけたら
ほっとするかもしれません

そこにはたいそう親切で賢明な
モットーがあるのです
見知らぬ人に冷たくするな
変装した天使かもしれないから

………………………………………………………………
表紙から楽しくなる。読み応えのあるいい本でした。
紙に印刷した本はいいですね。
丸ごと触れられて、本がそこにある風景。
電子ブックなどでは味わえない「紙福」ですな。

Webで検索するとこの実在の書店について、
膨大な情報が出てきます。
パリでは有名な書店で、今では観光名所にもなっているという。

そんな訳で写真でも見られます。
画像で見る世界の本屋さん

パリのここ

本屋さんの中は、まさに「ワンダーランド」ですね。
電子ブックには、絶対にまねのできない世界です。

川村記念美術館 緑陰のレストラン

2010-09-03 22:43:39 | 社会見学

9月に入って、日中の熱暑は今も厳しいです。
それでも、朝夕の風には幾分、涼味が感じられます。

先月のお盆休みに、
千葉県佐倉市の川村記念美術館に行ってきたことを、
書いています。3回目は素敵なレストランです。





「ベルヴェデーレ」
イタリア語の「美しい眺め」という意味だそうです。
名前の通り、都会や街のレストランと違って、
窓からの景色が素晴らしいです。





池が一望に眺められる席と、緑陰の席と、
窓からの景色を楽しみながら、食事ができます。





お値段も手ごろで、とてもゆったりとした、
サービスが受けられます。
お昼どきは30~40分待つことになります。

メーンデッシュは周囲の風景ですね。
レストラン「ベルヴェデーレ」

何回も行きたくなる癒しの美術館です。