チェック:フジテレビ系列で放映された「僕の生きる道」シリーズが、SF作家の眉村卓と2002年にガンで逝去した夫人との感動の実話を基に映画化。毎日1編の短編小説を5年にわたって書き続け、余命1年の宣告を覆した奇跡の記録が朔太郎と節子の物語としてよみがえる。仲むつまじい夫婦を演じるのは、『黄泉がえり』以来の再共演となる草なぎ剛と竹内結子。監督は『笑の大学』の星護。愛する人のためにベストを尽くす二人の感涙のエピソードに心洗われる。
ストーリー:SF作家の朔太郎(草なぎ剛)と銀行員の妻節子(竹内結子)は、高校1年の夏休みに付き合い始めてからずっと一緒だった。だがある日、腹痛を訴えた節子が病院に入院し、彼女の体が大腸ガンに冒されていることが判明。医師(大杉漣)に余命1年と宣告された朔太郎は最愛の妻にだけ向けて、毎日原稿用紙3枚以上の短編小説を書くことにする。
(シネマトゥデイより)
このところ映画はご無沙汰であったが、見たい映画が始まったので妻と一緒に見てきた。これは私が大好きなSF作家の一人である眉村卓さんのエッセイを映画化したものである。眉村卓さんといえばジュブナイル小説では「なぞの転校生」や「ねらわれた学園」が有名である。今回は、眉村卓さんの原作という事と、2003年の『黄泉がえり』以来8年ぶりの共演になる草なぎ剛と竹内結子が出演するという事に大いに関心があって興味を惹いていた。ストーリーは、余命1年と宣告された奥さんを励ますために、毎日3枚以上の笑える短編小説を書き続けたという実話に基づく映画だ。がんの宣告を受けてから、驚くことに5年近くも奥さんは生き続けたのである。
草なぎ剛は問題行動を起こしたこともあったが、演技力はなかなかいいものがある。『山のあなた〜徳市の恋〜』での盲目の按摩役や『BALLAD 名もなき恋のうた』での凛々しい武士役等の演技も記憶に新しい。今回は、SF作家という職業でいつも遠くを見ているようでいて妻を愛する気持ちが人一倍強い男の役をひょうひょうと演じていたのが印象的である。
また、竹内結子は相変わらずきれいな女優さんだ。何故か彼女は最後に死んでしまう役が多いような気がする。映画では、草なぎ君が銀行で預金をおろすときの窓口穣が竹内である。草なぎ君の空想的な話に真顔で応対する竹内とのやり取りが面白い。こんな窓口穣だったら、何度でも銀行に行きたくなるのになーと思ったりもした。そして、このやり取りから恋が生まれ、結婚にいたる導入かと思ったら、草なぎ君が家に帰っているところに竹内が帰って来て食事の支度を始める。既に二人は結婚していたという次第だ。
この映画は、よくある難病にかかった夫婦や家族の涙と感動の物語というジャンルに入るのだろうが、それだけと言うわけではない。ストーリーはむしろ淡々と進行し、グッと来るところはいくつかあったが、それほど涙が溢れ止まらなくなるといった事はなかった。ところどころで、彼が書いた小説のストーリーがいくつも挿入されコミカルなシーンも結構ある。お涙頂戴ものというよりも、「笑うと免疫力が上がることがある」という医者の言葉を信じ、愛する妻にできることは彼女に一日一編の笑える小説を書くことだと決め、最後まで書き綴ったという愛情の強さに、見終わってからじわじわと感動が沸きあがってくる。
毎日原稿用紙3枚以上の短編小説を書くという事は、大変なことである。しかもエッセイではなく、市販しても一般の読者が読むのに堪えられる内容というと並大抵の苦労ではない。私も、このブログを毎日更新するという目標を実は掲げてやっているので、これは大変なことだというのが良くわかる。私の場合は、エッセイ的なこともあれば、映画評や読書感想、旅行記等と比較的ネタは多いし、大変だとは言っても何とかここまできている。だが、まったくの小説となるとネタはほとんど出てこない。プロの小説家って凄いもんだなーとも思う。これは、如何に眉村卓さんが妻を思い1778日もの間小説を書き続け、妻もそれを読むことを生きがいにして存えたという事実を、草なぎ君と竹内結子がたんたんと演じてくれた映画といえる。
映画館では、若いカップルが意外と多かった。これから結婚しようとするカップルを始め熟年カップルにも、将来どんなことになっても如何に夫婦であり続けるかという事を考えさせてくれる映画ではないだろうか。
原作となった「妻に捧げた1778話」というエッセイ集と、1778日の間書き綴ったショートショートの小説集も「日がかり一話」という名前で刊行されているようだ。妻のために書き綴ったというショートショート集をどうしても読みたくなった。