とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

映画『麒麟の翼』~劇場版・新参者~

2012-02-13 22:51:51 | 映画


東野圭吾原作の最新書き下ろしミステリー「麒麟の翼」が、早くも映画化された。
ずっと、原作本を読みたくて、図書館の予約が回ってくるのを待っていたが、待ちきれなくて映画を先に見てしまった。
ミステリーと言うと、やはり犯人がわかってしまうと、改めて原作を読むまでもないと思ってしまいそうである。
先に映画か、原作かと悩むところだが、今回は映画が先になってしまったわけだ。
結論としては、映画は映画、原作は原作として別のものと考えればいいと思うことにした。

解説 - 麒麟の翼~劇場版・新参者~(goo映画より)

東野圭吾の推理小説『麒麟の翼』を、東野作品をテレビドラマ化した『新参者』での“加賀恭一郎”役が好評を得た阿部寛主演で映画化。刑事・加賀恭一郎が、日本橋で起きた殺人事件の謎に挑む。共演は「BALLAD 名もなき恋のうた」の新垣結衣、「君が踊る、夏」の溝端淳平。監督は「いま、会いにゆきます」の土井裕泰。

あらすじ - 麒麟の翼~劇場版・新参者~(goo映画より)

東京・日本橋で男性が殺害される事件が発生。被害者はカネセキ金属の製造本部長、青柳武明(中井貴一)。彼は、腹部を刺されたまま8分間も歩き続けた後に、日本橋の翼のある麒麟像の下で力尽きていた。なぜ、誰の助けも求めず、彼は一体どこへ向かおうとしていたのか。一方、事件の容疑者、八島冬樹(三浦貴大)は現場から逃亡しようとしたところを車に轢かれて意識不明の重体だった。報せを聞いた八島の恋人、中原香織(新垣結衣)は、彼の無実を訴えるが……。この難事件の捜査に当たるのは、日本橋署の切れ者刑事、加賀恭一郎(阿部寛)。やがて捜査が進むにつれて、それぞれの家族や恋人の知られざる一面が明らかになってゆく。命が終わるその時に、青柳は誰に何を伝えようとしていたのか?愛する人に何を残そうとしたのか?加賀は事件の裏に隠された謎を解き明かし、真実を見つけ出すことができるのか……?


刑事の加賀恭一郎は、テレビドラマ「新参者」で好評だった阿部寛が演じている。阿部寛は「トリック」の上田次郎のイメージが強かったが、加賀恭一郎役もなかなかはまり役だと言っていい。彼が演じる役は、偉い教授とか高圧的な役人というのが多かったが、この作品ではそこが抑え目になっており、被害者や加害者、その周りにいる人たちへの優しい眼差しのようなものが、上手に表現できていたような気がする。

冒頭で、日本橋の麒麟像の前で倒れたヨレヨレの中年の男性が、中井貴一だと思わなかった。昔の中井貴一のイメージは、ちょっときざな感じがしてあまり好感が持てなかったが、この作品では子を思う親の姿を、見事に演じていて凄く良かった。『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でも、いい味を出していたが、歳を重ね息子との関係を何とか修復しようとする父親の思いをうまく演じていたといえる。この映画では、中井貴一演じる青柳武明が一番重要な役どころだといっていい。青柳武明の行動は、涙なくして見ることはできなかった。

作品全体としては、もの凄い複雑なミステリーと言うわけではなく、親子の絆を描いた感動的なストーリーである。東野作品のなかでも、加賀恭一郎シリーズは、特にお節介ともいえるほどの被害者や加害者周辺への優しい思いやりが感じられる。単なるミステリーで終わらせないという作者の想いみたいなものが感じられるのだ。映画では、その辺りが2時間と言う枠の中では充分描ききれなかったかもしれないが、私の中では、有り余るほどの感動を与えてもらった言っていい。更に原作を読むことで、この感動を大きく満たすことが出来るに違いない。

因みに、この作品のタイトルとなった「麒麟の翼」について調べてみた。麒麟とは、中国神話の伝説上の動物で、鳥類の長である鳳凰と並んで、獣類の長とされている。この麒麟の像が東京日本橋の中央に建てられているわけだ。麒麟には本来翼はないとされているのだが、日本の道路のスタート地点である日本橋から日本中に飛び立てるようにという意味を込めて翼をつけたとされている。何かを始めようとする時、この麒麟像のまえから旅立つのもいいかもしれない。

そして、もう一つ。エンディングテーマのJUJUの「sign」は、まさに作品にピッタリの曲だ。作品の余韻に浸りながら曲を聞いていると、急いで席を立つ気になれなかった。