チェック:「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」などの人気作家、万城目学の小説を原作にした異色作。琵琶湖周辺を舞台に、不思議な力を持つ一族の跡取り息子と彼のお供をする分家の息子が世界滅亡につながる大事件に挑んでいく。万城目原作の映画化作品に出演経験のある濱田岳と岡田将生がダブル主演を務め、主人公コンビを快演。摩訶(まか)不思議な物語に加えて、深田恭子、貫地谷しほり、佐野史郎ら、奇怪なキャラクターにふんした豪華共演陣が繰り出す怪演も見もの。(シネマトウディより)
ストーリー:琵琶湖のすぐそばの町・石走で、先祖代々不思議な力を継承してきた日出一族。その跡取りで最強の力を誇るとされる淡十郎(濱田岳)は、高校生でありながら住民からあがめられる殿様のような生活を送っていた。そんな彼のもとへ、分家の涼介(岡田将生)が力の修行をするために訪れる。淡十郎と同じ高校に通うものの、彼とおそろいの真っ赤な特注制服を着せられ、従者のように扱われる涼介。そんな中、日出一族と対立する棗一族の広海(渡辺大)とのトラブルが勃発し、それが世界の運命を揺るがす事態に発展する。(シネマトウディより)
万城目学原作の「「偉大なる、しゅららぼん」が映画化されたという事で、やっと見に行くことができた。この人の作品は、現実の世界と摩訶不思議な世界が違和感なく構築され、ひょっとしたら、これが真実なのではと思わせる話が多く、大好きな作家である。映画化されたことで、キャストが原作のイメージと合っているかとか、内容に違いはないかという点に興味があった。
主人公の濱田岳と岡田将生、同級生役の渡辺大が高校生というのは、あまりにも違うだろうという気になるが、個性的な役柄だけに、新人よりネームバリューのある彼らが堂々と演じたことで、物語の奇想天外さを際立たせている。原作では、日出淡十郎はぽっちゃりした体型で、姉の清子からは「ブタん十郎」と呼ばれているほどの太めの少年だが、映画の濱田岳は、それほど太いわけではない。ただ、生まれながらにして殿様のような性格で赤い色を好むなど、やることなすことが現実離れしているという役柄は、まさに濱田岳にはぴったりの役である。この役をできるのは、彼しかいないだろう。
また、淡十郎の姉である日出清子も、淡十郎とは体型やしゃべり方が似ていて「グレート清子」と呼ばれ「見たことがない性格の悪い女」と原作では書かれている。原作を読んだときは、悪役女子プロレスラーをイメージしたくらいだ。映画では、深田恭子が演じたので大分イメージが違うと思ったが、やはり映画ではビジュアルが大事だ。赤ジャージで白馬に乗っている姿は、フカキョンの魅力全開である。あの顔で、「フルボッコにしてやる!!」と聞いたときは、凄みを感じさせるし頼もしい。映画的には深田恭子でOKだ。(ちなみにフルボッコとは、“フルパワーでボッコボコ”の略だという)
頼りなさそうで淡十郎の従者として甘んじている涼介は、次第に日の出家の力に目覚め、成長していく。淡十郎との掛け合いが可笑しく、意外と岡田将生は役に嵌っていた。なんだかドラえもんに出てくるのび太みたいな雰囲気だ。そして、涼介の師匠役の貫地谷しほりや日の出家当主役の佐野史郎、使用人の笹野高史等、個性的な俳優が好演している(怪演といったほうがいいかも)。
ストーリーとしては、ほぼ原作通りで、原作を読んでいない人でも内容はよく理解できるはずだ。キャストも、特に不満はなくよくできた映画だったと言っていい。ただ、原作をすでに読んでいたので、摩訶不思議感とワクワクするような感覚はあまりなかった。映画化されると、視覚的に明確になってしまうので想像力を研ぎ澄ます必要性がなくなってしまう。この手の作品は、文字を追っていった方が、さらに面白さが増すのではないかと感じた。