(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0271BpOil2013.pdf
BPが恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2013」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。
(シェールオイルが米国の埋蔵量を13%押し上げた!)
1.世界の石油の埋蔵量と可採年数
(1) 2012年末の埋蔵量
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G01.pdf参照)
2012年末の世界の石油確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は1兆6,689億バレル(1バレル=159リットル)である。埋蔵量を地域別に見ると、中東が全世界の埋蔵量の48%を占めている。これに次ぐのが中南米の20%であり、以下北米13%、欧州・ユーラシア8%、アフリカ8%であり、最も少ないのがアジア・大洋州の3%である。現在、世界の石油の約半分は中東地域に存在しているのである。この地域別埋蔵量は昨年とほぼ同じである。
次に国別に見ると、世界で最も埋蔵量が多いのはベネズエラの2,976億バレルで世界全体の18%を占めており、第二位はサウジアラビア (2,659億バレル、16%)である。ベネズエラは2005年のBP統計では世界6位の772億バレルに留まっていたが、2009年統計では1,723億バレルに急増し、2011年以降は現在のような数値に置き換わっている。このような埋蔵量の急激な増加はチャベス前大統領の在任時の政府発表によるものであり国家の威信を示すための政治的要素が強いが、BPは同国にオリノコベルトと呼ばれる非在来型の重質油が2,200億バレルあると脚注している。オリノコベルト原油はこれまで商業生産の方法が確立できず、石油業界では重視されていなかった。しかし同じ非在来型のシェールオイルやサンドオイルが米国、カナダで急速に市場での存在感を高めている。従ってチャベス後のベネズエラの石油産業で若し欧米の先端石油開発生産技術が応用されるようになればオリノコベルト原油が市場に登場するのも遠い将来ではないと思われる。
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-T01a.pdf参照)
BP統計上では埋蔵量が1千億バレルを超える国はベネズエラ、サウジアラビアのほかカナダ(1,739億バレル、10%)、イラン(1,570億バレル、9%)、イラク(1,500億バレル、9%)及びクウェイト(1,015億バレル、6%)の6カ国である。これら6カ国のうち4カ国はペルシャ(アラビア)湾岸の国である。これら上位6カ国の埋蔵量を昨年と比較するとベネズエラなど4カ国は殆ど増減がないが、イランおよびイラク両国は4%、約60億バレル増加している。増加率は小さいが量としては超巨大油田1個分に相当する。両国は石油埋蔵量に関してこれまでも一方が増やすと他方がすかさず相手国を上回る埋蔵量を発表するというライバル競争を繰り広げている。数値を客観的に検証する手段を持たないBPとしては両国政府発表をある程度追認せざるを得ないのかもしれない。
以下7位から10位まではUAE、ロシア、リビア及びナイジェリアであり、米国は世界11位である。特記すべきは同国の埋蔵量が昨年に比べ41億バレル、13%増加していることであり、この増加率は上記ベストテンの各国には見られない高いものである。シェールオイルの相次ぐ発見と開発の結果である。
なお世界上位10カ国のシェアの合計は85%に達し、石油が一部の国に偏在していることがわかる。因みにOPEC12カ国の合計埋蔵量は1兆2,119億バレル、世界全体の73%を占めている。「生産量」の項で触れるが、OPECの生産量シェアは43%であり埋蔵量のシェアよりかなり低い。これは生産余力或いは潜在的な生産能力が大きいことを示しておりOPEC諸国の存在感は大きいと言えよう。
(続く)
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