(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0271BpOil2013.pdf
(世界の石油埋蔵量は過去30年以上ほぼ毎年増加し続けている!)
(2) 1980年~2012年の埋蔵量の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G02a.pdf 参照)
各年末の可採埋蔵量は、[ 前年末埋蔵量 + 新規発見(又は追加)埋蔵量 - 当年中の生産量]、の数式で表わされる。従って埋蔵量が増加することは新規発見又は追加埋蔵量が当年の生産量を上回っていることを示している。
1980年以降世界の石油埋蔵量はほぼ一貫して増加してきた。1980年代後半に埋蔵量が大幅に増えたのは1979年の第二次オイルショックにより石油価格が高騰したことにより80年代前半に石油開発に拍車がかかり、その成果が現れた結果だと考えられる。1990年代に入ると毎年の追加埋蔵量と生産量(=消費量)がほぼ均衡し、確認埋蔵量は横ばいの1兆バレルで推移した。2000年代前半には埋蔵量は1.3兆バレル台にアップし、後半は埋蔵量の増加に拍車がかかって、2007年以降2010年末までの埋蔵量は毎年1千億バレずつ増加してきた。2011-12年は1.7兆バレルで横ばい状態にある。
2000年代は中国、インドなど開発途上国の経済が拡大し、それにつれて石油需要がほぼ毎年増加している(石油消費の項参照)。それにもかかわらず各年末の埋蔵量が増加したのは石油価格が上昇して石油の探鉱開発のインセンティブが高まった結果、新規油田の発見(メキシコ湾、ブラジル沖、中央アジア等)或いは既開発油田の回収率向上による埋蔵量の見直しがあったためと考えられる。
(オイル・ピーク論は昔の話!)
(3) 1980年~2012年の可採年数の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/1-1-G02a.pdf 参照)
可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示している。オイルショック直後の1980年は埋蔵量6,800億バレルに対し同年の生産量は6,300万B/D(年換算230億バレル)であり、R/Pはわずか30年にすぎなかった。しかし1990年代にはR/Pは40年台前半で推移し、1999年以後の10年間のR/Pは40年台後半に伸び、2009年末のR/Pはついに50年を突破した。そして2012年末の埋蔵量は1兆6,700億バレル(上記)であり、生産量は8,600万B/D(年換算310億バレル。なお生産量は次章で改めて詳述する)で、R/Pは53年に達している。
このように石油のR/Pは過去30年間ほぼ毎年伸び続け、1980年の30年から2012年の53年へと飛躍しているのである。この間に生産量は6,300万B/Dから8,600万B/Dへ40%弱増加しているのに対して埋蔵量は6,800億バレルから1兆6,700億バレルと2.5倍に増えている。過去30年の間毎年7~8千万B/D(年換算約250~300億バレル)の石油を生産(消費)しながらもなお埋蔵量が2.5倍に増えているという事実は石油が地球上で次々と発見され(あるいは技術の進歩によって油田からの回収率が向上し)ていることを示しているのである。
かつて石油の生産が限度に達したとするオイル・ピーク論が声高に叫ばれ、石油資源の枯渇が懸念された時期があった。理論的には石油を含む地球上の炭化水素資源は有限である。しかし上記の生産量を上回る新規埋蔵量の追加とそれによるR/Pの増加が示すように、現在の技術の進歩を考慮すると当面石油資源に不安は無いと言って間違いないのである。
現代における問題はむしろ人為的なリスクであろう。人為的なリスクとは例えばイラン問題に見られるような地政学的なリスクであり、或いは治安が不安定なナイジェリアのような産油国の国内リスク、公海上のタンカーに対する海賊の襲撃行為に見られる原油輸送段階のリスク、さらには国際的な投機筋の暗躍による市場リスクなのである。
(石油篇続く)
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