石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

サウジアラムコと五大国際石油企業の2019年1-6月期業績比較 (4)

2019-09-05 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0478AramcoVsIoc2019JanJune.pdf

 

(生産量が5倍でも売上はメジャー5社とほぼ同じという怪!)

3.売上高(Sales / Revenue) (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-6-03.pdf 参照)

 今年上半期のアラムコの売上高は1,639億ドルであったが、これに対してIOC5社で最大の売上を誇るのはShellの1,775億ドルである。Shellに続くのはBP 1,390億ドル、ExxonMobil 1,327億ドル、Total 1,024億ドル、Chevron 741億ドルであった。

 

 なお「売上高」の金額は各社の決算資料の下記項目である。

 

Saudi Aramco: Revenue and other income related to sales

Shell: Total revenue and other income

BP: Sales and other operating revenues

ExxonMobil: Total revenues and other income

Total: Sales

Chevron: Sales and other operating revenues

 

 アラムコとIOC5社の売上高を比べると大きな差は無く、むしろShellよりも少ないことは注目に値する。原油・ガス生産量(第1項参照)ではアラムコはExxonMobilの3倍以上、Shellの4倍弱、BPの5倍強である。また原油生産のみに限れば、アラムコはExxonMobilの4倍、Shellの5倍である。アラムコとIOCは共に原油の販売が主力事業であり、原油生産量が売上高に比例すると見るのが普通であろう(原油価格も売上高を大きく左右するが、これはアラムコ、IOC双方共影響はほぼ同じ)。

 

 このような現象を解明するにはアラムコの売上高の詳細な分析が必要であるが、同社が公表した資料には他社のような売上高のセグメント(分野)別内訳など詳しいデータは示されていない。しかし敢えて理由付けをするならば以下のような点を挙げることが出来よう。

 

 まずアラムコの場合天然ガスは自家消費の他、水・電気ユーティリティ企業(SWCC、SEC)向け燃料或はSABIC(基礎産業公社)向け石油化学原料として国内市場で全量消費されている。しかも販売価格は市場価格を大幅に下回る低価格(75セント/立法フィート)である。従ってアラムコの売上高に占める天然ガスはわずかであると推察される。原油については生産量1千万B/Dのうち輸出量は700万B/D程度と言われる。この輸出向け原油はBrent原油、WTI原油と連動した市場価格で販売されており、これがアラムコ売上高の大半を占めると見られる。

 

 一方、IOC各社は天然ガス販売に加え、石油精製販売及び連結決算の石油化学部門の売上がかなりの金額に達すると思われ、それらの点を加味するとアラムコとIOC各社の売上格差が少ないことの説明になる。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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