石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油・ガスの生産と消費で米国が四冠:BPエネルギー統計2019年版石油+天然ガス篇 (4)

2019-09-12 | BP統計

(石油と天然ガスを合わせた可採年数は50年!)

(4)可採年数の推移(1980~2018年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/3-1-G04.pdf 参照)

 可採年数(以下R/P)とは埋蔵量を同じ年の生産量で割った数値で、現在の生産水準があと何年続けられるかを示したものであるが、2018年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量を同年の合計生産量(次章参照)で割ると、石油・天然ガス全体の可採年数は50.4年となる。

 

1980年から2018年末までの推移をみると、1980年の可採年数は35年であった。この年の石油の可採年数は30年、天然ガスは50年であり、石油と天然ガスの間には20年の差があった。当時、石油の埋蔵量は天然ガスの1.5倍であったが、石油の生産量が天然ガスの2.6倍であったため石油の可採年数が低く、石油と天然ガスを合わせた可採年数も石油に近い数値となったのである。

 

 その後、1980年代は石油、天然ガスの埋蔵量は共に増加したが、生産に関しては天然ガスが伸びる一方(天然ガス篇2-(3)参照)石油は停滞したため(石油篇2-(3)参照)、石油の可採年数が伸び、天然ガスのそれは停滞した。1990年代は石油、天然ガス共に可採年数は横這いとなり、両者を平均した可採年数も50年前後で推移した。2000年代に入り可採年数は2002年に54年のピークを記録した後、2006年には50年を切り、2011年末には再び56年と緩やかな波を打っている。

 

この間に石油と天然ガスの可採年数は収斂する方向にあり、2011年末は石油55年、天然ガス58年で大きな差はない。1980年のそれが石油30年、天然ガス50年であったことと比べると大きな変化であり、これは石油と天然ガスが同じ化石エネルギーとして相対優位の市場原理で取引されるようになっていることと無関係ではないであろう。

 

2011年以降可採年数は漸減傾向にあり、2018年末の可採年数は石油50年、天然ガス51年、石油と天然ガスを合わせた平均可採年数は50年となっており、減退傾向に歯止めがかからない状況である。

 

(石油+天然ガス篇 埋蔵量完)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行        〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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石油と中東のニュース(9月12日)

2019-09-12 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・イスラエル首相のヨルダン渓谷併合発言に国連が懸念を表明

・エジプト、ムスリム同胞団リーダー11人に終身刑

・キリスト教福音派代表団、サウジ皇太子、世界ムスリム連盟総裁と面談

・サウジ、eスポーツプゲームラットフォーム運営会社、日本に進出

 

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サウジアラムコと五大国際石油企業の2019年1-6月期業績比較 (6)

2019-09-12 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0478AramcoVsIoc2019JanJune.pdf

 

(圧倒的に低いアラムコの経費率、大きな差のない税負担率!)

4.税引き前利益と売上高・純利益の比較 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-6-05.pdf 参照)

 ここでは各社の税引き前利益と売上高及び純利益を比較する。なお各社の税引き前利益額は下記の数値を引用している。

Saudi Aramco: Income before income taxes

Shell: Income/(loss) before taxation

BP: Profit (loss) before interest and taxation

ExxonMobil: Income before income taxes

Total: (Consolidated net income + income taxes)

Chevron: Income before income tax expense

 

なお税引き前利益はEBITDA(Earnings before Interest Taxes Depreciation and Amortization)と呼ばれることが多いようである。本項でも以下EBITDAと表現するが、アラムコ及びIOC5社の上記に該当する数値が厳密にEBITDAの定義に合致しているか定かではない。従って便宜的な比較としてお読みいただきたい。

 

(1)  EBITDA

 アラムコのEBITDAは925億ドルであり、IOC5社のEBITDAはShellが143億ドル、Chevron 99億ドル、BP 97億ドル、Total 94億ドルでありExxonMobilが最も少ない89億ドルである。アラムコのEBITDAはIOC5社に比較して際立って高く、5社トップのShellの6.5倍、最も少ないExxonMobilの10倍以上である。

 

(2)  経費率:(売上-EBITDA)/売上

 アラムコは売上高1,639億ドルに対しEBITDAは925億ドルであり、従って経費率は44%と試算される。これに対してShellの場合は売上1,775億ドルに対しEBITDAは143億ドルで経費率92%となる。同様に試算するとChevronは87%、BP 93%、Total 91%、ExxonMobilは93%となり、IOC5社はいずれも90%前後とアラムコに比べて経費率が極めて高く見える。但し一般的に見て40%もの低い経費率は民間企業ではIT企業のような一部の企業に限定され、製造業などでは9割の経費率はごく普通であろう。アラムコは歴史のあるエネルギー開発専業の企業として償却の済んだ巨大油田からの生産により低い経費率を享受していると言えよう。また同社の油田は今後も低いコストで高水準の生産を続け、従って高水準のEBITDAを維持することは間違いないであろう。

 

(3)  税比率:純利益/EBITDA

 EBITDAと純利益を比較し税負担率を計算すると、最も高いのはBPの50.9%、次いでアラムコは49.3%である。ExxonMobil、Shell及びTotalの税負担率は30%台後半で、Chevronは最も低い29.9%である。各社の税負担率に上下はあるものの、さほど大きな差は見られない。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行        〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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