国際石油企業(International Oil Companies, IOCs)の2021年第4四半期(10-12月)及び年間(1-12月)の決算が発表された。本稿ではExxonMobil(米)、Shell(英)[1], BP(英), Total(仏)及びChevron(米)の5社を取り上げ、各社の売上高、利益、設備投資額、キャッシュフロー及び石油・ガス生産量を概観し、さらに5社の業績比較を行う。
I. 5社の2021年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)業績概要
以下の各表参照。
表A:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20A.pdf (利益、売上、設備投資)
表B:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20B.pdf (キャッシュフロー)
表C:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20C.pdf (石油・ガス生産量)
(220億ドルの赤字から230億ドルの黒字に転換!)
1. ExxonMobil[2]
*同社ホームページ:
(1)売上高
ExxonMobilの2021年10-12月の売上高は850億ドルであり、また通年売上高は2,856億ドルであった。前年同期比ではそれぞれ15%及び57%の増加である。2020年は新型コロナウィルス(COVID-19)禍により世界経済が大きく減速、原油及び天然ガスの需要と価格が同時に大幅に下落した。これに対して2021年はOPEC+の協調減産により原油価格が大きく上昇し、また世界経済に復活の兆しが見られ石油需要が回復したためである。原油価格について検証すると、代表的な指標油種である北海Brent原油の2021年の平均価格は54.73ドル/バレルであり、これに対して2020年のそれは41.67ドルであり24%アップしている。
(2)利益
10-12月期及び通年の損益は89億ドル及び230億ドルであった。前年損益がそれぞれ▲201億ドル、▲224億ドルの大幅な損失であったことと比較すると、1年間で劇的に好転している。
(3)売上高利益率
通年ベースの売上高利益率は8.1%であり、前年の▲12.4%から大幅に改善している。10-12月期の利益率は2020年が▲27.2%、2021年は10.4%であり、両年の格差は通年を上回っている。
(4)設備・探鉱投資
2021年の年間の設備・探鉱投資額は166億ドルであり、2020年の214億ドルに比べ22%減少している。
(5)キャッシュフロー
ExxonMobilの10-12月期の営業キャッシュフローは171億ドルで前年同期の40億ドルの4倍強に達している。また年間の営業キャッシュフローは2021年が481億ドルであり、前年の147億ドルにくらべて3倍強に膨らんでいる。
なおExxonMobilの決算資料では営業キャッシュフローのみが示されており、投資及び財務キャッシュフロー並びに年末残高は示されていない。
(6)石油・ガス生産量
昨年のExxonMobilの石油生産量は日量平均2,289千バレル(以下B/D)であり、前年(2020年)の2,349千B/Dに比べ3%減少している。天然ガスは日量平均8,537百万立法フィート(以下mmcfd)であり前年と横ばいである。
(続く)
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前田 高行
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[1] Royal Dutch Shell社は今年1月21日、社名をShellに変更した。
レポート:「『女王陛下の Shell(貝)』になったロイヤル・ダッチ・シェル石油」参照。
[2] ExxonMobilの売上、利益、設備投資及びキャッシュフローは決算資料の下記項目による。
売上:Total revenues and other income
利益:Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)
設備投資:Capital and Exploration Expenditures
営業キャッシュフロー:Cash Flow from Operating Activities (U.S. GAAP) / Net cash provided by operating activities (U.S. GAAP)