石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

前年の悪夢から脱した五大国際石油企業:2021年度業績速報シリーズ(1)

2022-02-14 | 海外・国内石油企業の業績

 国際石油企業(International Oil Companies, IOCs)の2021年第4四半期(10-12月)及び年間(1-12月)の決算が発表された。本稿ではExxonMobil(米)、Shell(英)[1], BP(英), Total(仏)及びChevron(米)の5社を取り上げ、各社の売上高、利益、設備投資額、キャッシュフロー及び石油・ガス生産量を概観し、さらに5社の業績比較を行う。

 

I. 5社の2021年第4四半期(10-12月)及び通年(1-12月)業績概要

以下の各表参照。

表A:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20A.pdf (利益、売上、設備投資)

表B:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20B.pdf (キャッシュフロー)

表C:http://menadabase.maeda1.jp/1-D-4-20C.pdf (石油・ガス生産量)

 

(220億ドルの赤字から230億ドルの黒字に転換!)

1. ExxonMobil[2]

*同社ホームページ:

https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0201_ExxonMobil-earns-23-billion-in-2021_initiates-10-billion-share-repurchase-program

(1)売上高

 ExxonMobilの2021年10-12月の売上高は850億ドルであり、また通年売上高は2,856億ドルであった。前年同期比ではそれぞれ15%及び57%の増加である。2020年は新型コロナウィルス(COVID-19)禍により世界経済が大きく減速、原油及び天然ガスの需要と価格が同時に大幅に下落した。これに対して2021年はOPEC+の協調減産により原油価格が大きく上昇し、また世界経済に復活の兆しが見られ石油需要が回復したためである。原油価格について検証すると、代表的な指標油種である北海Brent原油の2021年の平均価格は54.73ドル/バレルであり、これに対して2020年のそれは41.67ドルであり24%アップしている。

 

(2)利益

 10-12月期及び通年の損益は89億ドル及び230億ドルであった。前年損益がそれぞれ▲201億ドル、▲224億ドルの大幅な損失であったことと比較すると、1年間で劇的に好転している。

 

(3)売上高利益率

 通年ベースの売上高利益率は8.1%であり、前年の▲12.4%から大幅に改善している。10-12月期の利益率は2020年が▲27.2%、2021年は10.4%であり、両年の格差は通年を上回っている。

 

(4)設備・探鉱投資

 2021年の年間の設備・探鉱投資額は166億ドルであり、2020年の214億ドルに比べ22%減少している。

 

(5)キャッシュフロー

 ExxonMobilの10-12月期の営業キャッシュフローは171億ドルで前年同期の40億ドルの4倍強に達している。また年間の営業キャッシュフローは2021年が481億ドルであり、前年の147億ドルにくらべて3倍強に膨らんでいる。

 なおExxonMobilの決算資料では営業キャッシュフローのみが示されており、投資及び財務キャッシュフロー並びに年末残高は示されていない。

 

(6)石油・ガス生産量

 昨年のExxonMobilの石油生産量は日量平均2,289千バレル(以下B/D)であり、前年(2020年)の2,349千B/Dに比べ3%減少している。天然ガスは日量平均8,537百万立法フィート(以下mmcfd)であり前年と横ばいである。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行

 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

        Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

        E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[1] Royal Dutch Shell社は今年1月21日、社名をShellに変更した。

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/royal-dutch-shell-plc-changes-its-name-to-shell-plc.html

レポート:「『女王陛下の Shell(貝)』になったロイヤル・ダッチ・シェル石油」参照。

[2] ExxonMobilの売上、利益、設備投資及びキャッシュフローは決算資料の下記項目による。

売上:Total revenues and other income

利益:Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)

設備投資:Capital and Exploration Expenditures

営業キャッシュフロー:Cash Flow from Operating Activities (U.S. GAAP) / Net cash provided by operating activities (U.S. GAAP)

 

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SF小説:「新・ナクバの東」(5)

2022-02-14 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」

. 三羽の小鳥()

 

「マフィア」はロシア正教を信じるウクライナ地方の貧しい農民の息子である。彼が生まれた当時はまだソ連邦の時代であり、社会主義国家のソ連はキリスト教、イスラム教、ユダヤ教を問わず宗教を敵視し教会を否定した。モスクワ中央政府は集団農場制度により農民はロシア時代の農奴制から解放され、コルホーズは労働者の天国になる、と宣伝した。しかし農民の暮らしは楽になるどころかノルマに追われる生活が続いた。支配者がかつての地主から中央政府の高級官僚に替わっただけだった。それでも農民たちはいつか救われると信じて自宅や集会所でひっそりとキリストのイコンに祈りを捧げていたのである。

 

1985年にソ連でペレストロイカが起こると、帰還法に触発されてソ連から100万人とも言われる大量の移民がイスラエルに流れ込んだ。イスラエルの「帰還法とは祖父母のうち少なくとも一人がユダヤ人ならば誰でも移住できるというものである。母親の実家の祖母がユダヤ人であったことを思い出した「マフィア」一家は当時5歳の息子を連れて新天地を目指した。仲間の中には役人を買収して祖父母がユダヤ人であったと言う偽の証明書を手に入れイスラエルに移住した者も少なからずいた。

 

ロシアからの移住者と言えば医者か農民のどちらかと言われ、おかげでイスラエルの一人当たりの医者の数は世界一となったほどであるが、医者達は病院の勤務医か開業医となってユダヤ人やアラブ人の中に溶け込んでいった。しかし所詮農地を耕すしかない者達は政府の与えた入植地で肩を寄せ合って暮らす他なく、「マフィア」一家が移住した開拓地は同じ境遇のロシア人ばかりであった。彼らのコミュニティではロシア語が使われ、そしてキリストに祈りを捧げた。政府はヘブライ語を半ば強制的に奨励したが、「マフィア」の父親たちの世代は新しい言語を覚えるには遅すぎたのである。

 

イスラエル社会ではヘブライ語を話せないロシア移民たちは冷遇され、二級市民の扱いであった。建前では移住者の出身地、宗教、学歴で差別されないことになっているが、それはあくまで建前である。幼い時は皮膚の色や親の職業など意識することなく小学校で仲良く遊んでいた「マフィア」も大きくなるに従い嫌でも差別を意識するようになった。そのハンディを乗り越えるために「マフィア」は学校では人一倍ヘブライ語を勉強し、優秀な成績を修めた。そして差別が少ない軍隊に入ったと言う訳である。

 

(続く)

 

荒葉一也

 

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石油と中東のニュース(2月14日)

2022-02-14 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・サウジ:アラムコ株4%を国有ファンドPIFに移管

 

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