(SF小説) ナクバの東（１）

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(目次)

 

プロローグ（１）

 

001．中東向け夜行便ME514 (１/３)

　その写真を見たのは中東に向かうＭＥ５１４便のビジネスクラスであった。窓の外は漆黒の闇、真下を見ても灯り一つ見えない。マレー半島のジャングルの上空であろうか、それともインド洋の真っただ中なのか解らない。シート・ライトで腕時計を見れば目的地まではまだ数時間以上かかる。何杯目かのオン・ザ・ロックで意識も多少おぼろげになったのでもうひと寝入りするか、と思いつつシートポケットにあった英文雑誌を取り上げパラパラとページをめくる。

 

　この手の雑誌の中東記事はほぼ例外なくパレスチナ問題である。ビジネスマンの彼にはたいして興味が無く見るのは写真とそのキャプションぐらい。そこには鉄製のフェンスを前にした３人の女の後ろ姿があった。

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)