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プロローグ(2)
002.中東向け夜行便ME514 (2/3)
右側には汚れた服のかなり年配の婦人。左側にはまだ若い女性。そして二人にはさまれた小さな女の子の三人である。年配の婦人は天を仰ぎ、わずかに見える横顔には深い嘆きの表情がうかがわれる。若い女性は両手でフェンスをわしづかみにし、まっすぐ前を見て体を震わせ大声で何かを叫んでいるようだ。小さい女の子は地面にしゃがみこんだままじっとしている。彼女は天を仰いで嘆く祖母も、フェンスをゆすって叫ぶ母親も目に入らないかのように一心不乱に地面を這う蟻の動きを見ている。
彼女の数十メートル先には一台の戦車が砲身をこちらに向けて静止している。イスラエル兵士の姿は見えない。戦車の中から双眼鏡で彼女を監視でもしているのであろうか。フェンスと戦車の間にあるのは地雷原である。三人とも彼らの後ろでカメラマンが自分たちの姿を撮っていることなどまるで気がつかないようだ。
写真のキャプションには『ナクバから〇十年、今も続く悲劇―息子或いは夫をイスラエル兵に殺され悲嘆と怒りも露わな母親と嫁そして何も解らぬ無邪気な幼子』とある。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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