石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

荒波に翻弄される国際石油企業と政策に守られる邦系石油企業:2021年(度)業績比較 (3)

2022-05-20 | 海外・国内石油企業の業績

1. 純利益 (続き)

(シーソーゲームのメジャーズ、低位安定のENEOS、出光!)

(1)2018年(度)~21年(度)年間純利益の推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-11.pdf 参照)

 2018年(度)から2021年(度)までの4年間の年間純利益の推移を見ると、2018年(度)のENEOSの利益は30億ドル(3,223億円、109円/ドル)、出光は7億ドル(815億円、110.8円/ドル)であった。この時メジャーのうちShellは234億ドル、ExxonMobilは208億ドルと200億ドル超の利益を達成し、Chevronの利益は148億ドルであった。これに続きTotalEnergiesとbpが100億ドル前後の利益を計上しており、邦系2社との開きは大きかった。

 

 この傾向は2019年(度)も続き、邦系2社は赤字に陥った(ENEOS▲17億ドル、出光▲2億ドル)。ところが2020年(度)になると状況が一変、メジャーズ各社はコロナ禍と油価の下落により業績が一挙に大幅な欠損となった。特にExxonMobil、Shell、bpの3社は▲200億ドル超の赤字を記録、TotalEnergiesとChevronも▲60~70億ドルのマイナスとなった。このような中でENEOSと出光はそれぞれ11億ドル及び3億ドルの利益を出し、メジャーズを上回る決算となった。

 

  赤字発生時期はENEOSと出光は2019年度、メジャーズは2020年であるが、これはコロナ禍の影響が2020年初頭から始まり、邦系2社は2019年度最終四半期に、またメジャーズは2020年第1四半期に現れたためである。

 

 2021年(度)は景気回復の兆候が見え、同時にOPEC+の生産調整措置により原油価格が上昇したことによりメジャーズ各社は(bpを除き)160億ドルから230億ドル程度の利益を獲得した。またENEOS(48億ドル)、出光(25億ドル)も黒字決算となり、メジャーズと邦系2社の利益は2018年(度)と同等またはそれ以上の水準に達している。

 

 このように4年間の利益の推移をみると、メジャーズ各社は激しい浮き沈みを記録している。これに比べてENEOSと出光2社は損益の変動幅が小さいが、これは2社の事業規模が小さいことに加え、原油輸入価格が上昇しても、それを自動的に製品価格に反映させる政府のエネルギー政策のおかげであろう。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(5月20日)

2022-05-20 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート: https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・原油価格、下げ幅広まる。Brent $107.86, WTI $107.63

(中東関連ニュース)

・ヒズボッラー指導者ナスラッラー、レバノン選挙敗北認める

・小田原外務副大臣がイエメン外相と会談

・米大統領、来月にもサウジ皇太子と会談か?CNN報道

・ヨルダン、国王異母弟ハムザ王子を自宅軟禁。兄弟で骨肉の争い。  *

*レポート「ヨルダン王家に何が起こったのか?」(2021年5月)参照。

 ヨルダン国王家々系図参照。

・エジプト、公定歩合2%引き上げ

・中東北アフリカの難民数、紛争鎮静化で過去10年最低の水準に

・中東全域に砂嵐吹き荒れる。ドバイ超高層ビルも姿隠す

 

 

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